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No.120
更新日 2025年08月31日

見込み客をファンに育てる「ナーチャリング」の基本と7つの方法を解説!

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Webからの問い合わせや交換した名刺を、しっかり売上に繋げられていますか?「すぐには客にならない」見込み客をそのままにしておくのは、大きな機会損失です。

その解決策が、見込み客との関係をじっくり育てる「ナーチャリング(顧客育成)」です。

この記事では、ナーチャリングの基本から、高価なツールを使わずに明日からできる実践方法、BtoBの成功事例までを徹底解説します。初心者の方でも、この記事を読めば「まず何をすべきか」が明確になり、未来の優良顧客を育てるための、具体的な第一歩を踏み出せます。

そもそもナーチャリングとは?

まず、「ナーチャリング」という言葉の基本的な意味と、なぜ今これほどまでに重要視されているのかを見ていきましょう。

ナーチャリングの意味(リードナーチャリング=見込み顧客の育成)

ナーチャリング(Nurturing)とは、英語で「育成」を意味する言葉です。マーケティングの文脈では、一般的に「リードナーチャリング(Lead Nurturing)」を指し、獲得した見込み顧客(リード)に対して、継続的に情報提供やコミュニケーションを行うことで、購買意欲を高め、将来的な受注や商談に繋げるための一連の活動のことを言います。

例えるなら、種(リード)を手に入れて、すぐに収穫(受注)しようとするのではなく、水や肥料(有益な情報提供)を与えながら、芽が出て花が咲く(購買意欲が高まる)までじっくりと育てていく農作業のようなイメージです。

マーケティングプロセス全体におけるナーチャリングの位置づけ

企業のマーケティング活動は、大きく分けて以下の3つのプロセスで構成されており、これを「デマンドジェネレーション」と呼びます。ナーチャリングは、獲得した見込み客を実際の売上に繋げるために不可欠な「橋渡し」の役割を担っています。

プロセス名称主な活動内容
ステップ1リードジェネレーション(見込み顧客の創出)Webサイト、展示会、広告などを通じて、自社に興味を持つ可能性のある個人の連絡先情報(リード)を獲得する。
ステップ2リードナーチャリング(見込み顧客の育成)(←ここが今回のテーマ)
獲得したリードに対し、メルマガやセミナーなどで継続的に情報を提供し、関係性を築きながら購買意欲を高める。
ステップ3リードクオリフィケーション(見込み顧客の選別)育成したリードの中から、特に購買意欲が高まった「ホットなリード」を選別し、営業部門へと引き渡す。

ナーチャリングに取り組む3つのメリット

具体的にナーチャリングを実践すると、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは代表的な3つのメリットをご紹介します。

メリット1:商談化率・受注率の向上とマーケティング活動の効率化

ナーチャリングを適切に行うことで、自社の商品やサービスへの理解度や興味関心が高まった状態で営業担当者に引き渡すことができます。これにより、商談の質が向上し、結果として商談化率や受注率のアップに繋がります。

また、購買意欲の低いリードに営業担当者が時間を費やす必要がなくなり、より確度の高いリードに集中できるため、マーケティングから営業までの一連のプロセスが大幅に効率化されます。

メリット2:機会損失の防止と休眠顧客の掘り起こし

「当時はタイミングが合わなかった」「予算の都合がつかなかった」といった理由で、一度は離脱してしまった見込み顧客も、ナーチャリングを続けることで関係性を維持できます。彼らの状況が変化し、再度検討のタイミングが来たときに、競合他社ではなく自社を第一想起してもらえる可能性が高まり、機会損失を防ぐことができます。

さらに、過去に獲得したものの放置されてしまっている「休眠顧客」のリストも、ナーチャリングの対象です。メルマガ配信などを通じて再度アプローチすることで、再び興味を持ってもらい、新たな商談機会を創出できる可能性があります。これは、ゼロから新規リードを獲得するよりもはるかに低コストで実現できます。

メリット3:顧客ロイヤルティの向上とLTVの最大化

ナーチャリングは、受注して終わりではありません。既存顧客に対しても、製品の活用方法や関連情報などを提供し続けることで、顧客満足度を高め、自社への信頼や愛着(顧客ロイヤルティ)を育むことができます。

ロイヤルティの高い顧客は、製品を継続して利用してくれるだけでなく、アップセルやクロスセル(より高価なプランへの変更や関連商品の購入)にも繋がりやすくなります。結果として、一人の顧客が生涯にわたって自社にもたらす利益であるLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の最大化に貢献します。

明日から実践できる!ナーチャリングの具体的な手法7選

ここからは、いよいよナーチャリングの具体的な手法をご紹介します。高価なMAツールがなくても、今すぐ始められるものも多くありますので、自社の状況に合わせて取り組めそうなものから試してみてください。

1. メールマーケティング(メルマガ・ステップメール)

最も手軽で代表的なナーチャリング手法です。

メルマガ

定期的に、お役立ち情報や業界の最新動向、セミナーの案内などを一斉配信します。自社を思い出してもらう「リマインダー」としての役割も担います。

ステップメール

「資料請求から3日後に活用事例を送る」「セミナー参加の1週間後にお礼と関連資料を送る」など、あらかじめ設定したシナリオに沿って、段階的にメールを自動配信する手法です。顧客の行動を起点にできるため、よりパーソナルなアプローチが可能です。

【ポイント】

MAツールがなくても、Gmailなどのメールクライアントや、Mailchimpなどの無料プランがあるメール配信ツールを使えば、すぐに始められます。まずは顧客リストを整理し、月1~2回のメルマガ配信から挑戦してみましょう。

2. コンテンツマーケティング(ブログ記事・ホワイトペーパー)

顧客の課題解決に役立つコンテンツを作成し、自社のWebサイト(オウンドメディア)で発信する手法です。

ブログ記事

顧客が検索しそうなキーワードで記事を作成し、継続的に情報を提供します。

ホワイトペーパー(お役立ち資料)

より専門的で詳細な情報をまとめた資料(Ebook、調査レポートなど)をPDFで作成し、メールアドレスなどの情報と引き換えにダウンロードしてもらいます。これは新たなリード獲得(リードジェネレーション)にも繋がります。

これらのコンテンツをメルマガで案内することで、顧客の興味関心度合いを測ることもできます。

3. セミナー・ウェビナーの開催

特定のテーマについて深く解説するセミナーや、オンラインで実施するウェビナーは、見込み顧客と直接的・双方向のコミュニケーションが取れる、関係構築に特に効果的な手法です。
製品デモを見せたり、質疑応答の時間を設けたりすることで、顧客の疑問や不安をその場で解消し、一気に購買意欲を高めることができます。

4. SNS(LINE公式アカウントやFacebookなど)の活用

特にBtoCビジネスや、BtoBでも比較的単価の低い商材で有効な手法です。
FacebookやX(旧Twitter)、LINE公式アカウントなどを通じて、より気軽に、そしてリアルタイムに情報を届けることができます。コメントや「いいね!」を通じて顧客とフランクな関係性を築けるのも魅力です。

5. インサイドセールスによる個別アプローチ

電話やメール、Web会議システムなどを使って、社内にいながら行う営業活動です。
メルマガの開封率が高い、特定のページを何度も閲覧している、といった行動データをもとに、興味関心が高まっていると判断したリードに対して個別でアプローチします。「何かお困りのことはありませんか?」と声をかけることで、顧客の具体的な課題を引き出し、適切な提案に繋げることができます。

6. リターゲティング広告による再アプローチ

一度自社のWebサイトを訪れたユーザーに対して、他のサイトを閲覧している際に自社の広告を表示させる手法です。
自社を忘れられてしまうのを防ぎ、繰り返しアプローチすることで再訪を促します。比較的低コストで実施でき、ナーチャリングの初期段階で有効です。

7. DM(ダイレクトメール)の送付

デジタル全盛の時代だからこそ、手元に届く物理的なDM(手紙やパンフレット)は、かえって新鮮で印象に残りやすい場合があります。
特に、長期間アプローチできていない休眠顧客や、企業のキーパーソンに対して、特別感のあるオファーを送る際に効果を発揮することがあります。

手法別比較表

手法主な目的メリットデメリット
メールマーケティング定期的な接点、情報提供低コスト、一斉配信できる開封されない、埋もれやすい
コンテンツマーケティング課題解決、専門性の提示資産になる、プル型で集客作成に時間と手間がかかる
セミナー・ウェビナー深い理解促進、関係構築双方向、商談化率が高い準備が大変、集客が必要
SNS気軽な接点、ファン化拡散力、リアルタイム性炎上リスク、継続的な投稿
インサイドセールス個別課題のヒアリング確度が高い、個別最適化人員コスト、人的スキル依存
リターゲティング広告再認知、サイトへの再訪低コスト、ターゲット精度嫌悪感を持たれる可能性
DM(ダイレクトメール)特別感の演出、休眠掘起目に留まりやすい、保存性郵送コスト、効果測定が難しい

【5ステップ】効果的なナーチャリング戦略の進め方

ただやみくもに施策を実行しても、ナーチャリングの成果は最大化できません。ここでは、戦略的にナーチャリングを進めるための5つのステップをご紹介します。

ステップ1:ペルソナとカスタマージャーニーマップの設計

まずは、「誰に」「何を」届けるのかを明確にします。

ペルソナ設計

あなたの理想の顧客像を、年齢、役職、抱えている課題、情報収集の方法など、具体的な人物像として詳細に設定します。

カスタマージャーニーマップ作成

設計したペルソナが、あなたの会社や商品を知り、興味を持ち、最終的に購入に至るまでの思考や感情、行動のプロセスを時系列で可視化します。

これにより、顧客がどの段階で、どのような情報を必要としているのかが明確になり、アプローチの精度が高まります。

ステップ2:見込み顧客(リード)のセグメント分け

保有している全てのリードに同じ情報を提供しても、効果は限定的です。リードの属性や行動履歴に基づいてグループ分け(セグメンテーション)を行いましょう。

セグメント分けの例

  • 属性:業種、企業規模、役職など
  • 興味関心:ダウンロードした資料の種類、閲覧したブログ記事のカテゴリなど
  • 検討段階:情報収集段階か、比較検討段階か、など

セグメントごとに最適なアプローチを考えることが重要です。

ステップ3:提供するコンテンツの準備とシナリオ設計

ステップ1、2で明確になったターゲットとニーズに合わせて、提供するコンテンツを準備します。そして、「どのセグメントに」「どのタイミングで」「どのコンテンツを」「どの手法で」届けるかという一連の流れ(シナリオ)を設計します。

シナリオ設計の例

「価格ページの閲覧履歴があるリード(比較検討段階)には、3日後に導入事例のホワイトペーパーをメールで送り、さらに開封したリードにはインサイドセールスが電話でフォローする」

ステップ4:施策の実行とデータ計測

設計したシナリオに沿って、メール配信やコンテンツ公開などの施策を実行します。このとき重要なのが、必ずデータを計測することです。

  • メールの開封率、クリック率
  • Webサイトのページビュー数、滞在時間
  • 資料のダウンロード数
  • セミナーの申込数、参加率

これらのデータを取得できる仕組みを整えておきましょう。

ステップ5:効果測定と改善(PDCA)

最後に、収集したデータを分析し、施策の効果を測定します。

  • どのコンテンツの反応が良かったか?
  • どのシナリオが商談に繋がりやすかったか?

結果をもとに、「なぜそうなったのか」という仮説を立て、コンテンツの内容や配信のタイミング、アプローチ手法などを改善していきます。このPlan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)のPDCAサイクルを回し続けることが、ナーチャリングを成功させるために重要です。

【BtoB向け】ナーチャリングの成功事例から学ぶ実践のヒント

ここでは、BtoBビジネスにおけるナーチャリングの具体的な成功事例を2つご紹介します。自社で取り組む際のヒントにしてください。

事例1:ステップメール活用で商談化率を1.5倍にしたA社の例

抱えていた課題

Webサイトからの資料請求は多いものの、フォローが各担当者任せ(属人化)になっており、なかなか商談に繋がらなかった。

具体的な施策

  1. セグメント分け:資料請求者を抱える「課題別」に分類。
  2. シナリオ設計:各グループに対し、ステップメールを全5回配信。
    • 配信内容:課題解決ブログ、導入事例など
  3. 重点アプローチ:メールのリンクをクリックしたような反応の良い見込み客に、インサイドセールスが優先的に電話などでアプローチ。

得られた結果

  • リードからの商談化率が1.5倍に向上した。
  • 確度の高い商談が増えたことで、受注率も改善した。

事例2:ウェビナーとインサイドセールスの連携で大型受注に繋げたB社の例

抱えていた課題

サービスが専門的かつ高額なため検討期間が長引き、最終的な受注に至る前に顧客が離脱してしまうケースが多かった。

具体的な施策

  1. ウェビナー開催:見込み客の検討段階に合わせたテーマで、月2回の無料ウェビナーを実施。
  2. アンケート活用:ウェビナー参加者アンケートで課題意識の高い参加者を特定。
  3. スピーディーな連携:課題意識の高い参加者に対し、インサイドセールスが即日電話でアプローチし、個別相談会を提案。
  4. 個別提案:相談会で課題をさらに深掘りし、最適なプランを提示。

得られた結果

  • ウェビナー経由での商談化率が大幅に向上した。
  • アプローチが難しかった大手企業の決裁者クラスとの商談が増加し、複数の大型受注に成功した。

【Q&A】ナーチャリングに関するよくある質問

最後に、ナーチャリングに関してよく寄せられる質問にお答えします。

Q. ナーチャリングはBtoCビジネスでも有効ですか?

A. 非常に有効です。BtoBほど検討期間が長くない商材でも、例えば高額な化粧品や自動車、不動産などではナーチャリングが効果を発揮します。LINE公式アカウントでのクーポン配信や、購入後の顧客に対するアップセルを目的としたメルマガなど、様々な形で活用されています。

Q. どのくらいの期間で効果が出始めますか?

A. 商材やターゲット、施策の内容によって大きく異なりますが、一般的には最低でも3ヶ月~半年程度はかかると考えておくと良いでしょう。
ナーチャリングは即効性のある施策ではなく、顧客とじっくり関係性を築いていく長期的な取り組みです。短期的な成果を求めすぎず、PDCAサイクルを回しながら継続していくことが重要です。

Q. MAツールを導入すべきタイミングはいつですか?

A. MAツールはナーチャリングを効率化する上で非常に便利なツールですが、導入にはコストもかかります。導入を検討すべきタイミングの目安は以下の通りです。

  • 管理すべきリードの数が数百~1,000件を超えてきた
  • 手動でのメール配信や顧客管理に限界を感じ始めた
  • リードの行動履歴(Web閲覧など)に基づいた、より高度なシナリオを組みたい

まずは本記事で紹介したようなスモールスタートできる手法から始め、リード数が増え、施策が本格化してきたタイミングで導入を検討するのがおすすめです。

まとめ

この記事では、見込み顧客を優良顧客へと育てる「ナーチャリング」について、その基本から具体的な手法、戦略の立て方までを詳しく解説しました。

ナーチャリングとは、獲得した見込み顧客の購買意欲を高める「育成」の活動であり、顧客自身が情報を集める現代においてその重要性はますます高まっています。適切に取り組むことで、商談化率の向上や機会損失の防止といった多くのメリットが期待できます。

MAツールがなくてもメールやコンテンツ配信など、すぐに始められる手法は数多く存在します。成功のためには、まず顧客を理解し、セグメント分けやシナリオ設計を行った上で、実行と改善のサイクルを回していくことが不可欠です。

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