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No.134
更新日 2025年07月25日

失敗しない営業KPIの作り方とは?KGIとの違いからメリットまで徹底解説!

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「チームの目標は『売上1億円』だが、達成への道筋が見えない…」
「月末に結果を見ては、『来月こそ頑張ろう』と精神論で終わってしまう…」
「アポ数だけを追いかけたら、質の低い商談ばかり増えてしまった…」

営業マネージャーや経営者であれば、このような目標管理の悩みに、一度は突き当たったことがあるのではないでしょうか。

営業チームを「目標達成し続ける集団」へと変革する鍵、それは「営業KPI」の正しい設定と運用です。

本記事は、KGI・KSFとの違いや、営業スタイル別のKPI例、成果直結の5ステップ、失敗を招く3つの原因と対策を解説します。

営業KPIとは?KGI・KSFとの違い

KPIを正しく設定するためには、まず関連する用語である「KGI」「KSF」との違いを正確に理解する必要があります。

KGI (Key Goal Indicator)

KGI(重要目標達成指標)は、組織が最終的に達成したいゴールを定量的に示したものです。営業部門であれば、「年間売上10億円達成」「新規顧客からの売上シェアを30%向上」などがこれにあたります。全ての活動は、このKGIを達成するために行われます。

KPI (Key Performance Indicator)

KPI(重要業績評価指標)は、KGIという最終ゴールを達成するためのプロセスが、適切に実行されているかを日々計測・評価するための中間指標です。例えば、「年間売上10億円(KGI)」を達成するために、「月間商談数50件」「商談からの受注率20%」といった具体的な指標を設定します。

KSF (Key Success Factor)

KSF(重要成功要因)は、KGIを達成するために、最も重要となる要素は何かを言語化したものです。これは定性的な目標であることが多く、「何に注力すればゴールに近づけるか」を示します。例えば、「新規顧客へのアプローチ強化」「既存顧客へのアップセル提案の成功」などがKSFにあたります。

もたらされる4つのメリット

正しくKPIを設定・運用することで、営業組織は大きな変革を遂げることができます。

メリット1:取るべきアクションが明確になり、日々の行動に迷いがなくなる

「受注率20%」というKPIを達成するためには、「質の高い商談を増やす必要がある」→「そのためには、〇〇という業界へのアプローチを強化しよう」というように、日々の具体的なアクションにまで落とし込めます。メンバーは「今日何をすべきか」に迷うことがなくなり、主体的に行動できるようになります。

メリット2:営業プロセスを可視化し、客観的なデータで課題を発見できる

「商談数は多いのに、受注率が低い」というデータが見えれば、「提案の質に問題があるのではないか」という仮説が立てられます。KPIは営業プロセス全体を可視化し、これまで感覚的にしか捉えられなかった組織の課題を、客観的なデータに基づいて特定することを可能にします。

メリット3:公正で納得感のある人事評価・フィードバックが可能になる

売上という最終結果だけでなく、そこに至るまでのプロセス(KPI)も評価の対象とすることで、より公正で納得感のある人事評価が実現します。成果が出なかったメンバーに対しても、「君はアポイント数は目標達成しているが、商談化率が低い。次はヒアリングの練習をしてみよう」といった、具体的で建設的なフィードバックが可能になります。

メリット4:組織全体の目標達成意識が高まり、生産性が向上する

チーム全員が同じKPIを共有することで、「自分たちの行動が、どのように最終ゴールに繋がっているのか」を常に意識するようになります。個々の活動がチーム全体の目標達成に貢献しているという実感は、メンバーのモチベーションを高め、組織としての一体感を醸成し、生産性を向上させます。

【営業スタイル別】KPI設定例一覧

KPIは、自社の営業スタイルや役割によって設定すべきものが異なります。ここでは、代表的な営業スタイル別にKPIの設定例をご紹介します。

2つの指標をバランス良く設定する

KPIは、大きく2種類に分けられます。

行動KPI(プロセスKPI)

行動量を測る指標。コントロールしやすく、若手メンバーの育成にも適しています。(例:架電数、訪問件数)

成果KPI(結果KPI)

行動の結果として得られる成果を測る指標。(例:受注数、売上金額)

重要なのは、この2つをバランス良く設定することです。「アポ数(行動)」だけを追うと質が下がり、「受注額(成果)」だけを追うとプロセスが見えなくなります。両方を設定し、その相関関係を見ることが重要です。

インサイドセールス(SDR/BDR)のKPI例

電話やメールで内勤営業を行うインサイドセールスは、行動量が成果に繋がりやすい職種です。

行動KPI例

架電数、メール送信数、有効会話数(担当者と話せた数)、セミナー参加者へのフォローアップ率

成果KPI例

アポイント獲得数(商談化数)、商談化率、受注貢献数・金額

フィールドセールス(新規開拓)のKPI例

顧客先を訪問し、商談を進める外勤営業です。行動の量だけでなく、質も重要になります。

行動KPI例

新規商談数、提案数(コンペ参加数)、既存顧客への訪問回数

成果KPI例

受注件数、受注率(対商談数)、受注金額、平均顧客単価

ルートセールス/カスタマーサクセスのKPI例

既存顧客との関係を維持・発展させることがミッションです。

行動KPI例

既存顧客への定例訪問数・連絡回数、サポート対応件数

成果KPI例

契約更新率(リピート率)、解約率(チャーンレート)、アップセル・クロスセル件数/金額、LTV(顧客生涯価値)

【5ステップで実践】営業KPIの正しい設定方法

ここからは、実際に自社のKPIを設定するための具体的な5つのステップを解説します。

Step1: KGI(組織の最終目標)を明確に定義する

まず、自社の営業部門が半年後、1年後に達成すべきKGIを明確にします。「売上〇〇円」「新規契約数〇〇件」「市場シェア〇%」など、誰が見ても誤解のない、具体的な数値目標を設定しましょう。

Step2: KGI達成のためのKSF(重要成功要因)を特定する

そのKGIを達成するために、最もクリティカルな要素(KSF)は何かを議論します。例えば、「売上目標を達成するには、『既存顧客からのアップセルを増やすこと』と『新規の大型案件を獲得すること』が重要だ」といった形です。

Step3: KSFを具体的なKPI(行動指標)に分解する

特定したKSFを、具体的な行動レベルのKPIにまで分解していきます。

KSF

既存顧客からのアップセルを増やす

KPI

既存顧客への提案数、アップセル商談数、アップセル受注率

この時、「そのKPIを達成すれば、本当にKSFの達成に繋がるか?」という論理的な繋がりを強く意識することが重要です。

Step4: SMARTの法則で、KPIの妥当性をチェックする

設定したKPIが、達成可能で意味のあるものになっているかを確認するために、「SMARTの法則」というフレームワークを活用します。

SMART基準チェックポイント
S (Specific)具体的に分かりやすいか?
M (Measurable)定量的に測定可能か?
A (Achievable)達成可能か?(高すぎず、低すぎないか)
R (Related)KGI(上位目標)と関連しているか?
T (Time-bound)達成までの期限が明確か?

全ての項目を満たしているか、一つひとつチェックしましょう。

Step5: 現場を巻き込み、チームで合意形成する(最重要!)

これがKPI設定で最も重要なステップです。マネージャーが一方的に設定したKPIは、現場にとって「やらされ感」のあるノルマでしかありません。設定の段階からチームメンバーを巻き込み、「なぜこのKPIが必要なのか」「この数値目標は妥当か」を徹底的に議論しましょう。メンバー自身が「このKPIを達成すれば、チームの目標達成に貢献できるし、自分も成長できる」と納得して、初めてKPIは生命を宿します。

KPI管理が必ず失敗する「3つの原因」と回避策

せっかく設定したKPIも、運用を間違えれば逆効果になりかねません。多くの組織が陥る3つの原因と、その回避策をご紹介します。

原因1:KPIが「やらされ感のあるノルマ」と化し、現場が疲弊する

KPIの達成だけが目的化し、マネージャーが「なぜ達成できないんだ!」と詰問するだけの管理になると、現場は疲弊します。KPIは、メンバーを追い詰めるための道具ではありません。

回避策

KPIはあくまで「チームの状態を知るための計器」と位置づけましょう。未達の場合は、個人を責めるのではなく、「目標が高すぎなかったか?」「行動プロセスに何か問題があるのか?」「別のサポートが必要か?」といった、改善のための対話を始めるきっかけとして活用します。

原因2:「設定して終わり」で形骸化し、誰もKPIを見ていない

KPIを設定したことに満足してしまい、その後の進捗を誰も追わなくなるケースです。これでは、KPIはただの「お飾り」になってしまいます。

回避策

週次や月次の営業会議で、必ずKPIの進捗を確認するアジェンダを設けましょう。ダッシュボードなどでKPIを常に見える化し、チーム全員が進捗を意識できる環境を作ることが重要です。

原因3:KPIが個人の評価と直結しすぎ、不正や隠蔽の温床となる

KPIの達成率が、給与や賞与といった評価に過度に直結すると、メンバーは目標達成のために質の低いアポを量産したり、都合の悪いデータを隠したりといった、本末転倒な行動に走りかねません。

回避策

評価は、KPIの達成率という「結果」だけでなく、そこに至るまでの「プロセス」や、チームへの貢献度といった多面的な視点で行うことを明確にしましょう。KPIは、あくまで能力開発や業務改善のためのツールであり、評価はその一部である、というスタンスが大切です。

KPIマネジメントを成功させる運用サイクルとツール活用法

週次・月次での振り返り(KPT法など)と、建設的なフィードバック

定期的な1on1ミーティングなどでKPIの進捗を振り返りましょう。その際、KPT法(Keep/Problem/Try)などのフレームワークを使うと、建設的な対話がしやすくなります。

フレーム質問内容
Keepうまくいったこと、継続すべきことは何か?
Problem問題点、課題は何か?
Try次に挑戦することは何か?

このサイクルを通じて、メンバーの自律的な成長を促します。

SFA/CRMを活用したKPI管理の自動化とダッシュボードの作り方

日々の営業活動をSFA/CRM(営業支援/顧客管理システム)に入力すれば、KPIの多くは自動で集計できます。マネージャーは集計作業から解放され、より本質的な分析やメンバーとの対話に時間を使えます。さらに、SFA/CRMのデータをもとに、チーム全体のKPI進捗が一目でわかるダッシュボードを作成すれば、リアルタイムでの状況把握と、迅速な意思決定が可能になります。

よくある質問(Q&A)

Q1. KPIを設定すると、達成できないメンバーを追い詰めることになりませんか?

A1. KPIはメンバーを追い詰める道具ではありません。目標未達の場合は個人を責めるのではなく、「目標は適切だったか」「やり方に問題はないか」をチームで一緒に考える「健康診断の指標」と捉えましょう。改善のための対話のきっかけとして使うことが重要です。

Q2. とりあえず「アポイント数」をKPIにするのはダメなのでしょうか?

A2. 「アポイント数」のような量のKPIだけだと、商談の質が下がり、結果的に受注に繋がらない可能性があります。「受注率」や「商談化率」といった質のKPIとセットで設定し、量と質のバランスを取ることが成果への近道です。

Q3. KPIの目標数値は、どのように決めるのが正しいですか?

A3. まずは最終目標(売上など)から逆算して、必要な行動量を算出します。その上で、過去の実績を参考にしたり、現場の意見を聞いたりして、高すぎず低すぎない「達成可能な目標」に調整することが重要です。一方的に押し付けず、チームで納得感を持つことが成功の鍵です。

まとめ

本記事では、営業KPIの基本的な考え方から、具体的な設定方法、そして失敗しないための運用法までを体系的に解説しました。

KPIは、正しく設定し、賢く運用すれば、営業組織を劇的に変革する力を秘めています。それは、メンバー一人ひとりの日々の行動に意味を与え、成長を促し、そしてチーム全体を同じゴールへと導く、強力な「コンパス」です。

決して、メンバーを管理し、縛り付けるための「鎖」ではありません。

この記事を参考に、ぜひあなたのチームに合ったコンパスを手に入れ、データに基づいた科学的な営業マネジメントへの第一歩を踏み出してください。その先には、必ずや「目標を達成し続ける強い営業組織」という未来が待っています。

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