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No.137
更新日 2025年09月04日

これ1記事でOK。顧客満足度(CS)を高める具体的な打ち手10選

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「リピート率が伸び悩んでいる」「価格競争から抜け出したい」。多くの企業が抱えるこの課題の解決の鍵は「顧客満足度」にあります。しかし、その重要性は理解していても、「具体的に何から手をつければ良いのか分からない」と悩むご担当者様は少なくありません。

本記事では、そのような方のために顧客満足度の現状を測る3つの重要指標から、明日から実践できる10の具体的施策、業界別の成功事例までを網羅的に解説します。貴社の顧客がファンに変わる、次の一手が見つかるはずです。

顧客満足度の向上が事業成長に繋がる3つの理由

「顧客満足度が重要」という言葉はよく聞かれますが、なぜそれほどまでに重要視されるのでしょうか。その理由は、顧客満足度の向上が単なる「お客様のため」に留まらず、企業の利益に直結する具体的なメリットをもたらすからです。ここでは、事業成長に繋がる3つの主要な理由を解説します。

リピート率向上とLTV(顧客生涯価値)の最大化

ビジネスの安定的な成長には、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客に継続して製品・サービスを利用してもらうことが不可欠です。一般的に、「新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかる(1:5の法則)」と言われています。

顧客満足度が高い顧客は、当然ながらリピート購入やサービスの継続利用に至る可能性が高まります。このリピート率の向上が、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の最大化に直結します。

LTV(顧客生涯価値)とは?

一人の顧客が、取引を開始してから終了するまでの間に、自社にどれだけの利益をもたらすかを表す指標です。

顧客満足度を高め、顧客との長期的な信頼関係を築くことは、広告宣伝費に過度に依存することなく、安定した収益基盤を構築するための確実な方法なのです。

ポジティブな口コミによる新規顧客獲得(UGCの創出)

スマートフォンやSNSが普及した現代において、消費者の購買行動は第三者の「口コミ」に大きく影響されます。満足度の高い顧客は、自身のポジティブな体験を家族や友人に話したり、SNSやレビューサイトに投稿したりする可能性が高まります。

このようなユーザーによって作られるコンテンツは UGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ) と呼ばれ、企業発信の広告よりも信頼性が高い情報として、他の潜在顧客の購買意欲を高めます。SNSでの商品レビュー投稿やECサイトの口コミ評価、ブログでのサービス体験談といったUGCは、コストをかけずに新たな顧客を呼び込む好循環を生み出すのです。

競合との差別化とブランドイメージの構築

多くの市場で製品やサービスのコモディティ化が進み、機能や価格だけで競合と差をつけることが困難になっています。このような状況下で効果的な差別化要因となるのが、CX(Customer Experience:顧客体験)です。

CX(顧客体験)とは?

顧客が商品を認知し、購入を検討、利用、アフターサポートを受けるまでの一連のプロセス全体で感じる「感情的な価値」のことです。

顧客満足度は、このCXの質を測るバロメーターと言えます。問い合わせへの丁寧な対応、期待を超えるアフターフォローなど、優れた顧客体験の積み重ねは、顧客の中に「この会社なら信頼できる」「またこのブランドを選びたい」というポジティブな感情(顧客ロイヤルティ)を育みます。これが結果として、価格競争から脱却し、長期的に愛されるブランドイメージを構築することに繋がるのです。

顧客満足度を可視化する代表的な指標

顧客満足度向上のためには、まず現状を客観的に把握することが不可欠です。ここでは、そのために活用される代表的な3つの指標について、それぞれの特徴を解説します。

CSAT (顧客満足度スコア)

特定の取引やサービス提供直後の短期的な満足度を測定する指標です。「Customer Satisfaction Score」の略称で、最もシンプルで導入しやすい指標の一つです。

項目詳細
測定対象商品購入、問い合わせ対応、セミナー参加後など、個別の接点に対する満足度。
主な質問例「〇〇の購入にご満足いただけましたか?」(5段階評価など)
メリット特定の接点における課題をピンポイントで発見しやすい点です。
デメリットあくまで短期的な感情を測るため、顧客の長期的な愛着や信頼(ロイヤルティ)の測定には向いていません。

NPS® (ネット・プロモーター・スコア)

企業やブランド全体に対する愛着・信頼(顧客ロイヤルティ)を測定する指標です。「Net Promoter Score」の略称で、事業の収益性との相関が高いことから、経営指標として用いられることも多いのが特徴です。

項目詳細
測定対象企業、ブランド、製品、サービス全体への推奨度。
主な質問例「〇〇を、ご友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」
(0~10点の11段階評価)
メリット企業の収益性と連動しやすく、事業成長の先行指標として活用できます。
デメリットなぜその評価なのかという理由をセットで深掘りしないと、具体的な改善アクションに繋げにくい点です。

※NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

CES (カスタマー・エフォート・スコア)

問題解決や目的達成までにかかった顧客の負担・労力を測定する指標です。「Customer Effort Score」の略称で、顧客体験のスムーズさに焦点を当てます。

項目詳細
測定対象問い合わせ解決、商品購入手続き、情報検索など、特定の目的を達成するまでのプロセス。
主な質問例「お問い合わせの問題を解決するために、どのくらいの労力がかかりましたか?」
(7段階評価など)
メリット顧客の手間やストレスといった具体的な課題を発見しやすく、解約率低下に直接繋がりやすい点です。
デメリットあくまで「負担の少なさ」を測る指標のため、感動体験のようなポジティブな感情は測定できません。

これら3つの指標は、それぞれ測定できる側面が異なります。自社の目的や課題に応じて、適切な指標を組み合わせ、定期的に観測していくことが重要です。

顧客満足度を向上させる10の具体的施策

顧客満足度の現状を把握できたら、次はいよいよ具体的な改善施策の実行です。ここでは、基本的な施策から応用的な施策まで、10個のアイデアを具体的にご紹介します。

施策1:顧客の声を「仕組み」で収集する

全ての改善は、顧客の声を聴くことから始まります。前述の指標などを活用し、顧客の声を継続的に収集する「仕組み」を構築しましょう。例えば、商品の購入直後や問い合わせ完了後といったタイミングで、EメールやWebサイト上のポップアップを通じてアンケートを依頼するのが効果的です。重要なのは「聞きっぱなし」にせず、次の分析と改善アクションに繋げることです。

施策2:集めた声を分析し、改善の優先順位を決定する

収集したアンケート結果やレビューは、改善のための貴重なデータです。スコアの分布から全体の傾向を掴む定量分析と、自由回答から具体的な課題を抽出する定性分析を組み合わせて行いましょう。全ての要望に応えるのは難しいため、「影響度(多くの顧客に関わるか)」と「実現性(コストや工数)」の2軸で評価し、最も費用対効果の高い課題から着手することが現実的です。

施策3:カスタマージャーニーマップで顧客体験の全体像を可視化する

顧客は、個別の接点だけでなく、その前後のプロセス全体を通して企業を評価します。カスタマージャーニーマップを作成し、顧客体験の全体像を可視化しましょう。これは、顧客が商品を認知してからファンになるまでの一連のプロセスにおける行動・思考・感情を時系列で整理したものです。部署ごとに分断されがちな顧客接点を俯瞰的に捉え、顧客が不便を感じる箇所を発見するのに役立ちます。

施策4:問い合わせ対応の品質と速度を改善する

カスタマーサポートは、顧客満足度を大きく左右する重要な接点です。対応の「速度」と「品質」の両面から改善を図りましょう。

対応速度の向上

顧客の自己解決を促すため、Webサイト上の「よくある質問(FAQ)」を充実させることが第一歩です。さらに、簡単な質問に24時間自動で応答するチャットボットを導入すれば、オペレーターはより複雑な問題に集中でき、全体の対応速度が向上します。

対応品質の向上

担当者による対応のばらつきを防ぐため、応対マニュアルやトークスクリプトを整備しましょう。また、定期的な研修を通じて、商品知識だけでなく、顧客の状況に寄り添う傾聴力などを高めることも大切です。応対履歴を分析し、優れた対応をチームのナレッジとして共有する仕組みも有効です。

施策5:CRM/MAツールでパーソナライズされた体験を提供する

一人ひとりの顧客に合わせたコミュニケーションは、満足度を大きく向上させます。CRM(顧客関係管理)やMA(マーケティングオートメーション)ツールを活用し、顧客の属性や購買履歴、行動履歴に基づいたアプローチを行いましょう。例えば、閲覧した商品に関連する情報をメールで送ったり、誕生日月に特別なクーポンを届けたりすることで、「自分を大切にしてくれている」という感覚を顧客に与えることができます。

施策6:従業員満足度(ES)を高め、接客品質を向上させる

顧客と直接接する従業員のモチベーションは、提供するサービスの質に直結します。従業員満足度(ES)なくして顧客満足度(CS)の向上はあり得ません。これは「サービス・プロフィット・チェーン」という理論でも示されています。

自社に誇りを持ち、仕事に満足している従業員は、自然と顧客に対して親身な対応ができます。企業のビジョンを共有し、公正な評価制度を整え、従業員の意見を経営に反映させるなど、働きがいのある職場環境を作ることが、巡り巡って最高の顧客サービスに繋がるのです。

施策7:顧客コミュニティを形成し、ファンを育成する

顧客同士が交流できる「場」を提供することで、顧客のエンゲージメントは深まります。オンラインのSNSグループやオフラインのユーザーミーティングなどを通じて、顧客が単なる「利用者」から「ブランドの一員」へと意識が変わるきっかけを作りましょう。コミュニティは、顧客同士での情報交換を促すだけでなく、製品改善に繋がる貴重なフィードバックの源泉にもなります。

施策8:VOC(顧客の声)を基に製品・サービスを継続的に改善する

アンケートやレビューで得られた顧客の声(VOC:Voice of Customer)を、開発部門や企画部門に確実にフィードバックし、改善サイクルを回す仕組みを構築しましょう。重要なのは、VOCを関係部署全体で共有することです。さらに、顧客からの指摘を改善した際には、「お客様のご意見を元に、〇〇を改善しました」と公表することで、企業への信頼感を高めることができます。

施策9:ロイヤルティプログラムで優良顧客との関係を強化する

自社への貢献度が高い優良顧客を大切に扱うことで、より強固な関係を築くことができます。購入金額に応じたポイントプログラムや会員ランク制度、会員限定のセールへの招待といったロイヤルティプログラムは有効な手段です。また、商品に手書きのサンクスカードを添えるなど、感謝を伝える小さな工夫も、顧客の心に残り、「このブランドを使い続けたい」という気持ちを後押しします。

施策10:期待を超える「感動体験」をデザインする

顧客満足には「当たり前品質(言われたことをきちんとやる)」と「魅力的品質(期待を超える)」の2種類があります。他社との差別化を図るには、後者の「魅力的品質」を追求することが重要です。これは、顧客の期待値をわずかに超える「ちょっとした感動体験」を意図的にデザインすることで生まれます。例えば、ECサイトで注文した商品と一緒に手書きのメッセージが入っていたり、記念日での利用と伝えたホテルでささやかなお祝いが用意されていたりといった体験は、顧客の記憶に深く刻まれます。

【業界別】顧客満足度向上の成功事例3選

ここでは、実際に顧客満足度の向上に成功した企業の事例を3つご紹介します。

【BtoC企業の事例】スターバックス コーヒー ジャパン

スターバックスは、高品質なコーヒーだけでなく、卓越した顧客体験を提供することで知られています。マニュアルに縛られない、従業員(パートナー)一人ひとりの主体的な接客がその源泉です。カップへのメッセージや常連客との会話といったパーソナルなコミュニケーションが、居心地の良い「サードプレイス(第三の場所)」という価値を生み出し、高い顧客ロイヤルティに繋がっています。

【BtoB企業の事例】ansan株式会社

名刺管理サービスを提供するSansanは、「カスタマーサクセス」の体制強化によって顧客満足度を高めている企業です。サービス導入後、顧客がその価値を最大限に引き出し、ビジネス上の成果を出せるように能動的に支援する専門チームを設置。定期的な活用セミナーの開催やデータに基づく利用促進の提案など、顧客の成功にコミットする姿勢が、高い継続利用率を実現しています。

【ECサイトの事例】株式会社土屋鞄製造所

高品質な革製品で知られる土屋鞄製造所は、オンラインストアにおいても顧客の不安を解消し、信頼を獲得しています。購入前の相談にチャットや電話で丁寧に対応するだけでなく、購入後の修理を長期間受け付ける体制を整備。高価な商品をオンラインで購入する際の顧客心理に寄り添い、購入前から購入後まで一貫して手厚いサポートを提供することが、ブランドへの深い信頼と満足に繋がっています。

【Q&A】顧客満足度向上でよくある質問

Q. 顧客満足度向上は、まず何から手をつければ良いですか?

A. まずは「現状把握」から始めることをお勧めします。いきなり施策に飛びつくのではなく、本記事で紹介したCSATやNPSなどの指標を用いて、客観的なアンケートを実施しましょう。どこに課題があるのか、どの顧客層の満足度が低いのか、といった「現在地」を正しく把握することが、効果的な施策立案の第一歩となります。

Q. アンケートの回収率を上げるコツはありますか?

A. いくつかの工夫を組み合わせることが効果的です。回答者へクーポンなどのインセンティブを提供したり、設問数を絞ってスマートフォンでも答えやすくしたりする方法があります。また、サービス利用直後など、顧客の記憶が新しいうちに依頼メールを送り、「サービス改善のため」という目的を誠実に伝えることも、回答率の向上に繋がります。

Q. 予算が限られていてもできる施策はありますか?

A. コストをかけずに始められる施策も多数あります。例えば、無料のアンケートツール(Googleフォームなど)を活用して顧客の声を収集したり、SNSで顧客のコメントに丁寧に返信したりすることから始められます。また、商品発送時に手書きのサンクスカードを一枚添えるといった小さな工夫も、費用をかけずに満足度を高める有効な手段です。

まとめ

本記事では、顧客満足度の重要性から具体的な測定指標、明日から実践できる10の施策、そして成功事例までを網羅的に解説しました。

顧客満足度の向上は、特定の部署だけで完結するものではありません。マーケティング、営業、開発、カスタマーサポート、そして経営層まで、全社が一丸となって「顧客視点」を共有し、継続的に改善サイクルを回していく文化を醸成することが成功の鍵となります。

ご紹介した施策の中で、自社ですぐに取り組めそうなものから、ぜひ一歩を踏み出してみてください。顧客の声に真摯に耳を傾け、期待を超える体験を提供し続ける努力が、競合には真似のできない競争力となり、あなたのビジネスを次のステージへと導いてくれるはずです。

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