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No.139
更新日 2025年09月04日

伸び悩む営業成績が劇的に変わる!「成果」と「成長」を両立させるインセンティブ制度の作り方

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「営業チームの成績が伸び悩んでいる」「もっとメンバーの士気を高めたい」。こうした経営者や管理職が抱える悩みの解決策として、「営業インセンティブ制度」が改めて注目されています。

しかし、この制度は設計を誤れば、不公平感や個人主義を招く“諸刃の剣”にもなりかねません。

本記事では、インセンティブの基本から、失敗しないための具体的な制度設計ステップ、国内外の成功事例、注意点までを網羅的に解説します。

営業インセンティブとは?

営業インセンティブとは、個人の営業成績やチームの目標達成度に応じて、通常の給与とは別に支給される報酬のことです。「営業報奨金」や「セールスインセンティブ」とも呼ばれます。

その目的は、社員の労働意欲(モチベーション)を刺激し、より高い成果を引き出すことにあります。金銭的な報酬に限らず、表彰や特別な休暇といった非金銭的な報酬も含まれます。

インセンティブとボーナス(賞与)・歩合制との違い

インセンティブと混同されやすい言葉に「ボーナス(賞与)」と「歩合制」があります。それぞれの違いを明確にしておきましょう。

項目営業インセンティブボーナス(賞与)歩合制
支払基準個人の業績や目標達成度(明確な基準に基づく)会社の業績や個人の総合評価(会社の裁量によるところが大きい)売上や契約件数など、個人の成果に完全に連動
支払時期毎月、四半期ごとなど、比較的短期間年1〜2回が一般的毎月の給与と同時に支払われることが多い
目的目標達成への意欲向上、モチベーション刺激利益の分配、日頃の労い成果に対する直接的な報酬
特徴成果がダイレクトに報酬に反映されるため、目標達成意欲を高めやすい安定した収入の一部として捉えられることが多い成果がなければ収入が不安定になるリスクがある

簡単に言えば、インセンティブは「未来の目標達成を動機づけるための報酬」、ボーナスは「過去の実績や貢献に対する報酬」、歩合制は「成果そのものが給与になる仕組み」というニュアンスの違いがあります。

営業インセンティブが重要視される理由

現代のビジネス環境において、営業インセンティブの重要性はますます高まっています。その背景には、いくつかの社会的な変化が挙げられます。

働き方の多様化と成果主義の浸透

終身雇用が当たり前ではなくなり、社員は企業への帰属意識よりも、自身の成果やスキルが正当に評価されることを求めるようになりました。この流れを受け、年功序列から成果主義へと移行する企業が増え、個々のパフォーマンスを評価し、報酬に反映させる仕組みが必要とされています。

優秀な人材の獲得と定着

人材の流動化が進む現代において、優秀な人材を惹きつけ、定着させる(リテンション)ためには、魅力的な報酬制度が不可欠です。成果が正当に報われる環境は、優秀な人材にとって大きな魅力となります。

企業が掲げる目標と社員個人の目標を一致させ、組織全体のパフォーマンスを最大化するための戦略的なツールとして、営業インセンティブは非常に有効なのです。

営業インセンティブの主な種類と特徴

営業インセンティブは、大きく分けて「金銭的インセンティブ」と「非金銭的インセンティブ」の2種類があります。それぞれの特徴を理解し、組み合わせて活用することが成功の鍵です。

まずは、どのような種類があるのか、以下の一覧表で全体像を確認しましょう。

インセンティブの種類具体的な手法主な特徴・目的
金銭的インセンティブ成果報酬型(コミッション)個人の売上や成果に連動した報酬で、直接的なモチベーションに繋がります。
目標達成型(ボーナス)設定された目標の達成度に応じて支払われ、行動を目標に集中させます。
順位型(ランキング報奨)社内での競争を通じて、組織全体のパフォーマンス向上を促します。
非金銭的インセンティブ表彰制度(MVPなど)功績を称えることで承認欲求を満たし、名誉や誇りを高めます。
昇進・昇格の機会キャリアアップの道筋を示し、社員の長期的な成長意欲を刺激します。
特別な休暇・研修機会自己成長やリフレッシュの機会を提供し、エンゲージメントを向上させます。

成果に直結する「金銭的インセンティブ」

金銭的インセンティブは、社員のモチベーションに直接的に働きかける最も分かりやすい報酬です。

成果報酬型(コミッション)

売上高や契約件数など、個人の成果に対して一定の割合(コミッションレート)で報酬が支払われる方式です。成果がダイレクトに収入に反映されるため、高いモチベーション維持に繋がりやすいのが特徴です。
例:売上の3%をインセンティブとして支給する。

目標達成型(ボーナス)

個人やチームに設定された目標(売上目標、新規顧客獲得数など)を達成した場合に、定額の報酬が支払われる方式です。明確なゴールを提示することで、社員の行動を具体的な目標達成へと導きます。
例:四半期目標を120%達成したチームに、1人あたり10万円を支給する。

順位型(ランキング報奨)

一定期間の成績を全営業社員で競い、上位入賞者に報酬が支払われる方式です。社内に健全な競争意識を生み出し、全体の士気を高める効果が期待できます。
例:年間売上ランキングTOP3に、1位100万円、2位50万円、3位30万円を支給する。

エンゲージメントを高める「非金銭的インセンティブ」

社員の満足度や企業への愛着(エンゲージメント)を高める上では、非金銭的インセンティブが非常に効果的です。金銭的な報酬だけでは満たされない「承認欲求」や「自己実現欲求」に応えることができます。

表彰制度(MVP、社長賞など)

全社員の前で優れた功績を称える表彰式や、社内報での紹介などは、受賞者の名誉と誇りを高めます。他の社員にとっても良い目標となり、組織全体のモチベーション向上に繋がります。

昇進・昇格の機会

より責任のある役職や裁量権の大きいポジションへの昇進・昇格は、社員の成長意欲を強く刺激します。キャリアアップの道筋を明確にすることも、重要なインセンティブの一つです。

特別な休暇、研修機会の提供

リフレッシュ休暇や、海外カンファレンスへの参加、外部の専門的な研修プログラムへの参加機会の提供なども有効です。社員の自己成長を支援する姿勢は、エンゲージメント向上に大きく貢献します。

【最新トレンド】モノや経験を提供するユニークなインセンティブ

最近では、現金や役職だけでなく、よりユニークなインセンティブを導入する企業も増えています。どのようなものがあるか、表で見てみましょう。

インセンティブの種類概要主な目的・効果
カタログギフト・ポイント制度従業員が好きな商品やサービスを選べる制度です。従業員個人の多様な好みに応え、満足度を高めます。
体験型ギフト食事、旅行、観劇といった「特別な経験」を贈ります。記憶に残りやすく、金銭では得られない喜びを提供します。
ストックオプション自社の株式を購入できる権利を従業員に付与します。会社の成長と個人の利益を結びつけ、中長期的な貢献意欲を引き出します。

これらのインセンティブは、社員の多様な価値観に応え、他社との差別化を図る上でも効果的です。

営業インセンティブを導入するメリット

適切に設計されたインセンティブ制度は、企業に多くのメリットをもたらします。

1. 従業員のモチベーション向上と主体性の育成

「頑張れば報われる」という分かりやすい仕組みは、社員のモチベーションを直接的に刺激します。目標達成のために何をすべきか、自ら考えて行動する主体性も育まれます。

2. 営業目標の達成と業績アップ

インセンティブという明確な目標があることで、営業活動が活性化し、会社全体の売上や利益向上に直結します。

3. 公平で透明性の高い評価制度の実現

「誰が、何を、どれだけ達成したか」という客観的な成果に基づいて評価・報酬が決定されるため、社員の納得感を得やすくなります。評価の公平性と透明性は、組織への信頼感を高める上で不可欠です。

4. 優秀な人材の定着(リテンション)と獲得

成果が正当に評価される環境は、ハイパフォーマー(優秀な人材)にとって魅力的です。離職率の低下に繋がるだけでなく、採用活動においても他社との差別化要因となり、優秀な人材を獲得しやすくなります。

5. 企業が目指す方向性・価値観の浸透

インセンティブの評価基準に、企業が重視する行動(例:新規顧客開拓、顧客満足度の向上、アップセル・クロスセルなど)を組み込むことで、社員の行動を会社が目指す方向へと自然に導くことができます。

押さえておくべきデメリットと具体的な対策

多くのメリットがある一方、制度設計を誤るとデメリットも生じます。事前にリスクを理解し、対策を講じることが重要です。

1. 個人主義の助長とチームワークの低下

個人の成果のみを追求するあまり、ノウハウの共有を怠ったり、他のメンバーの足を引っ張ったりするなど、チームワークが阻害される可能性があります。
この対策としては、
チーム単位のインセンティブを導入することが有効です。チーム全体の目標達成度も評価対象とすることで、メンバー間の連携や協力を促し、一体感を育むことができます。

2. 不公平感によるモチベーションの低下

評価基準が曖昧だったり、担当する顧客や地域によって有利・不利が生じたりすると、社員の間に不公平感が生まれ、かえってモチベーションを下げてしまいます。
これを防ぐには、誰が見ても納得できる
明確で客観的な評価基準を設定することが不可欠です。また、評価プロセスを可能な限りオープンにし、透明性を確保することが重要です。

3. 短期的な成果への固執と顧客満足度の低下

目先の売上や契約件数ばかりを追い求め、強引な営業やアフターフォローの軽視に繋がり、長期的な顧客満足度(CS)を損なうリスクがあります。
対策として、売上のような量的指標だけでなく、
顧客満足度アンケートの結果や契約継続率といった質的指標も評価基準に加えることが有効です。これにより、営業活動の質を高め、顧客との長期的な関係構築を促します。

失敗しない営業インセンティブ制度の設計6ステップ

ここからは、本記事の核となる「成果につながるインセンティブ制度」を設計するための具体的な6つのステップを解説します。

STEP1:目的とKPI(重要業績評価指標)を明確化する

「何のためにインセンティブ制度を導入するのか?」という目的を明確にすることが全ての出発点です。

「新規顧客からの売上を前年比150%に伸ばす」「主力製品Aのクロスセル率を20%向上させる」「解約率を5%未満に抑える」

目的が定まったら、その達成度を測るための具体的な指標であるKPI(重要業績評価指標)を設定します。KPIは、具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、関連性がある(Relevant)、期限がある(Time-bound)という「SMART」の原則を意識して設定しましょう。

STEP2:対象者と評価基準を設定する

次に、インセンティブの対象者を誰にするか(営業全員、特定のチームなど)、そして何を評価するのか(評価基準)を決定します。評価基準は、STEP1で設定したKPIと連動させることが重要です。

評価基準の種類と具体例

評価基準の種類具体的な指標の例
量的基準売上高、利益額、新規契約件数、アポイント獲得数
質的基準顧客満足度、契約継続率、新サービスの提案件数

公平性を保つため、担当エリアや既存顧客の状況などを考慮し、必要であれば難易度に応じた調整を行うことも検討しましょう。

STEP3:インセンティブの種類と報酬レベルを決定する

評価基準が決まったら、どのような種類のインセンティブを、どのくらいのレベルで支給するのかを設計します。

インセンティブの種類と報酬レベルの決定ポイント

検討項目決定のポイント
インセンティブの種類金銭的インセンティブ(成果報酬やボーナスなど)と、非金銭的インセンティブ(表彰や特別休暇など)を効果的に組み合わせることが重要です。
報酬レベル競合他社や業界水準を参考に設定します。社員が「挑戦したい」と思える魅力的な水準であり、かつ会社の利益を圧迫しないバランスを見つける必要があります。

STEP4:シミュレーションを行い、予算を策定する

制度の骨子が固まったら、必ずシミュレーションを行いましょう。

過去の営業データに基づき、「もしこの制度があったら、誰に、いくらのインセンティブが支払われたか」を試算します。これにより、人件費の総額がどの程度になるか、制度設計に矛盾や不公平な点がないかを確認できます。

シミュレーション結果を基に、インセンティブの年間総額予算を策定します。

STEP5:社員への丁寧な説明と周知を徹底する

新しい制度を導入する際は、社員への丁寧な説明が不可欠です。説明会などを開催し、以下の点を明確に伝え、社員の理解と納得を得ましょう。

  • 制度導入の背景と目的
  • 具体的な評価基準と報酬内容
  • 評価期間と支払時期
  • 制度によって社員と会社にどのような良い影響があるか

一方的な通達ではなく、質疑応答の時間を設け、社員の疑問や不安を解消することが、制度をスムーズに浸透させるための鍵となります。

STEP6:定期的な効果測定と制度の見直しを行う

インセンティブ制度は「導入して終わり」ではありません。定期的に効果を測定し、必要に応じて見直しを行うことが重要です。

  • 導入前と後で、KPIの数値がどのように変化したか
  • 社員のモチベーションや満足度に変化はあったか(アンケート等で調査)
  • 想定外の問題や不公平感は生じていないか

市場環境や会社のフェーズによって、最適なインセンティブの形は変化します。PDCAサイクルを回し、常により良い制度へと改善していく姿勢が求められます。

【具体例】国内外の営業インセンティブ成功事例3選

理論だけでなく、実際の成功事例から学ぶことで、より自社に合った制度設計のヒントが見つかります。

事例1:SaaS企業のMRR(月次経常収益)に連動したチームインセンティブ

あるSaaS企業では、個人の新規契約数だけでなく、チーム全体の「MRR(月次経常収益)」の増加額をインセンティブの評価基準にしました。これにより、個人の成果だけでなく、既存顧客へのアップセルやクロスセル、さらには顧客の成功(カスタマーサクセス)までをチーム全体で意識する文化が育まれました。結果として、個人プレーに走る社員が減り、チームワークが向上。安定した収益基盤の構築に成功しました。

事例2:不動産会社の顧客満足度を評価基準に加えたインセンティブ

契約件数だけを追い求め、強引な営業が問題視されていたある不動産会社。そこで、従来のインセンティブに加えて「契約後の顧客満足度アンケート」の結果を評価項目に導入しました。アンケートの評価が高い営業担当者には、追加でインセンティブを支給。これにより、営業担当者の意識が「売って終わり」から「顧客に満足してもらう」ことへと変化し、結果的に紹介案件の増加や企業の評判向上に繋がりました。

事例3:金銭以外で成功したメーカーのユニークな表彰・研修制度

ある部品メーカーでは、金銭的なインセンティブとは別に、ユニークな表彰制度を導入しました。例えば、「最も難しい案件を粘り強く成約させたで賞」や「部署間の連携を最も円滑にしたで賞」など、売上数字だけでは測れない貢献を全社集会で表彰。副賞として、海外の先進工場への視察研修の機会を提供しました。これにより、社員の名誉欲や成長意欲が刺激され、組織全体のエンゲージメントが大きく向上しました。

営業インセンティブ導入前に確認すべき注意点

制度を導入・運用する上で、法的な側面や公平性の担保は非常に重要です。

労働基準法における賃金との関連

インセンティブは、就業規則や賃金規程で支給条件が明確に定められている場合、労働基準法上の「賃金」とみなされます。そのため、残業代の計算基礎に含まれる可能性があるなど、法的な取り扱いを正しく理解しておく必要があります。制度設計の際には、社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。

公平性と透明性を担保するための仕組みづくり

繰り返しになりますが、制度の生命線は公平性と透明性です。誰もが評価基準やプロセスを確認できる状態にしておくことが、社員の信頼を得る上で不可欠です。評価者によって判断がブレないよう、評価者向けのトレーニングを実施することも有効です。

【Q&A】営業インセンティブに関するよくある質問

Q. インセンティブの相場はどのくらいですか?

A. 業界や企業規模、営業職の給与体系によって大きく異なるため、一概に「相場は○%」と言うことは困難です。一般的には、基本給とのバランスを考慮し、年収の10%〜30%程度をインセンティブの目安とするケースが多いようです。競合他社の求人情報や、業界専門の転職エージェントから情報を得るのも一つの方法です。重要なのは、社員にとって魅力的であり、かつ会社の経営を圧迫しないバランスを見つけることです。

Q. 導入に失敗する典型的なパターンは何ですか?

A. 最も多い失敗パターンは、「目的が曖昧なまま、他社の制度をそのまま真似てしまう」ことです。会社の文化や課題に合っていない制度は、機能しないばかりか、逆効果になることもあります。その他、「個人の成果に偏りすぎてチームワークが崩壊する」「評価基準が不公平で社員がしらけてしまう」「短期的な成果を追い求め、顧客をないがしろにする」といったパターンが挙げられます。本記事で紹介した「設計6ステップ」を丁寧に行うことが、失敗を避ける最善策です。

Q. チームに対するインセンティブを設計するコツはありますか?

A. チームインセンティブ成功のコツは、「個人の貢献度も評価する仕組み」を組み合わせることです。チーム目標の達成度に応じたインセンティブを基本としつつ、その中で特に貢献度の高かったメンバーに追加の報酬(MVP賞など)を用意するハイブリッド型が有効です。これにより、「タダ乗り(フリーライド)」を防ぎ、個々のモチベーションも維持しやすくなります。また、チームの目標設定において、メンバー全員が納得し、達成に向けて協力できるようなプロセスを踏むことも重要です。

まとめ

本記事では、営業インセンティブの基本から、具体的な設計ステップ、成功事例、注意点までを網羅的に解説しました。

営業インセンティブは、営業チームのモチベーションを高め、企業の成長を加速させるための非常に有効なツールです。しかし、その成功はいかに自社の目的や文化に合った制度を設計できるかにかかっています。

この記事で紹介した6つの設計ステップを参考に、ぜひあなたの会社に最適なインセンティブ制度の導入を検討してみてください。社員一人ひとりの「やる気」を最大限に引き出し、会社全体を次のステージへと導く、戦略的な一手となるはずです。

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