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No.143
更新日 2025年09月16日

今さら聞けない「AISAS」とは?現代の消費者を本当に動かす「2つのS」の正体

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「良い商品なのに、なぜか売上が伸びない…」多くのマーケティング担当者がこの壁に直面しています。その原因は、消費者の購買プロセスが、企業からの情報を待つ時代から、自ら「検索」し、購入後にSNSで「共有」する時代へと大きく変化したことにあります。

この現代の消費者行動を的確に捉え、戦略の指針となるのが「AISAS(アイサス)モデル」です。

本記事では、AISASの基本から旧来モデルとの違い、明日から使える実践的なヒントまでを分かりやすく解説します。

AISAS(アイサス)とは?

AISAS(アイサス)とは、2005年に日本の広告代理店である株式会社電通によって提唱された、インターネットが普及した現代における消費者の購買行動プロセスを示したモデルです。

以下の5つのプロセスの頭文字を取って名付けられました。

  • Attention(注意・認知)
  • Interest(興味・関心)
  • Search(検索)
  • Action(行動・購買)
  • Share(共有)

このモデルの最大の特徴は、消費者が商品やサービスを認知してから購買するだけでなく、その後に「検索(Search)」し、さらに購買後にその体験を「共有(Share)」するという、インターネット時代ならではの行動が組み込まれている点にあります。

AISASが提唱された背景

AISASが登場する以前は、マスメディアが主役の時代に生まれた「AIDMA(アイドマ)」というモデルが主流でした。しかし、2000年代に入り、検索エンジンやSNSなどが台頭すると、消費者は企業から与えられる情報を一方的に受け取るだけでなく、自ら能動的に情報を探し、発信する存在へと変化しました。

このような市場環境の変化を受け、新しい消費者行動の実態に即したモデルとしてAISASは提唱されたのです。企業は情報を発信するだけでなく、消費者に「検索」され、そしてポジティブな「共有」を生み出すことが、持続的な成長の鍵となりました。

AISASの5つのプロセスの詳細解説

それでは、AISASの5つの段階を、具体例を交えながら詳しく見ていきましょう。

Attention(注意・認知)

すべての購買行動のスタート地点であり、消費者が商品やサービスの存在を初めて知る段階を指します。例えば、テレビCM、Web広告、雑誌、インフルエンサーのSNS投稿などがきっかけとなります。

Interest(興味・関心)

商品を認知した消費者が、「これは何だろう?」「自分に関係ありそうだ」と興味を持つ段階です。広告のキャッチコピーに惹かれたり、Webサイトで見た商品のデザインや機能に魅力を感じたりすることが挙げられます。ここでは、消費者に「自分ごと」として捉えてもらうための工夫が求められます。

Search(検索)

興味を持った商品やサービスについて、消費者が能動的に情報を収集する段階です。これはAISASモデルを象徴する、非常に重要なプロセスです。具体的には、Googleで「商品名 + 口コミ」と検索したり、Instagramのハッシュタグでリアルなユーザーの投稿を探したり、YouTubeでレビュー動画を視聴したりといった行動が含まれます。

Action(行動・購買)

集めた情報を基に、消費者が最終的な意思決定を下し、商品を購入したり、サービスに申し込んだりする段階です。ECサイトで商品を購入する、実店舗に足を運ぶ、資料請求のフォームを送信するといった行動がこれにあたります。ユーザーがストレスなく行動を完了できるスムーズな導線設計が重要になります。

Share(共有)

購入した商品や利用したサービスの体験を、SNSやレビューサイトなどを通じて他者と共有する段階です。これもまた、AISASの核心となるプロセスです。Instagramへの写真投稿、ECサイトへのレビュー書き込み、友人への口コミなどが含まれます。この「共有」された情報は、他の誰かの「注意・認知」や「検索」の対象となり、新たな購買行動のサイクルを生み出します。

【徹底比較】AISASとAIDMA、SIPSなど他の購買行動モデルとの違い

AISASをより深く理解するために、旧来の代表的なモデルである「AIDMA」や、その他の関連モデルとの違いを明確にしておきましょう。

AISASとAIDMAの決定的な違いは「S」と「S」

AIDMA(アイドマ)は、1920年代に提唱された古典的な購買行動モデルです。プロセスは「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」で構成されます。

AISASとAIDMAの違いは、以下の表で明確になります。

モデルプロセス特徴
AIDMAAttention → Interest → DesireMemory → Actionマスメディアが主役。企業から消費者への一方的な情報伝達が前提。
AISASAttention → Interest → Search → Action → Shareインターネットが主役。消費者の能動的な情報収集・発信が組み込まれている。

AIDMAでは、消費者は興味を持った後、その商品を「欲しい(Desire)」と感じ、広告などで繰り返し刷り込まれた情報を「記憶(Memory)」し、購買に至るとされていました。

一方、AISASでは、「Desire(欲求)」と「Memory(記憶)」が、「Search(検索)」と「Share(共有)」に置き換わっています。これは、現代の消費者が「欲しい」と思ったら、まず「検索」して納得できる情報を探すこと、そして購買後にその体験を「共有」することで、次の消費者の購買プロセスに影響を与えるという、決定的な変化を示しています。

その他のモデル(SIPS、DECAXなど)との関連性

AISAS以外にも、SNSの普及をさらに色濃く反映したモデルが存在します。

SIPS(シップス)

SNS上での「共感」を起点とし、企業と消費者が対等な立場で「参加」し、情報が「拡散」していくプロセスを重視したモデルです。(Sympathize→Identify→Participate→Share & Spread)

DECAX(デキャックス)

コンテンツマーケティングを重視し、ユーザーにとって有益なコンテンツを「発見」してもらい、継続的な「関係構築」を経て購買につなげるモデルです。(Discovery→Engage→Check→Action→Experience)

これらのモデルはAISASの発展形と理解するとよいでしょう。まずは基本となるAISASをしっかり押さえることが、現代マーケティング理解の第一歩となります。

【最新事例で学ぶ】AISASモデルを活用したマーケティング成功事例3選

理論を学んだところで、次はAISASが実際のビジネスでどのように活用されているのか、最新の事例を見ていきましょう。

事例1:SNSでのUGCを最大化したアパレルブランド

あるD2Cアパレルブランドは、Instagramを主軸にAISASのサイクルを構築しています。人気インフルエンサーとのタイアップで注意・興味(Attention/Interest)を引き、ユーザーがハッシュタグで検索(Search)すると、他の購入者による多くのコーディネート投稿(UGC)が見つかるようにしています。Instagramのショッピング機能からECサイトへ誘導して購買(Action)を促し、商品到着後、ユーザーが自ら投稿したくなるような工夫で、さらなる共有(Share)を生み出しています。

事例2:検索ニーズに応えるコンテンツで成功したBtoBサービス

あるSaaS企業は、見込み客の検索(Search)行動に着目しています。Web広告などで課題を提示して注意・興味(Attention/Interest)を喚起し、顧客が課題解決の方法を検索した際に、自社のオウンドメディア記事が上位表示されるようSEO対策を徹底。記事内で信頼性を獲得し、自然な流れで無料トライアルなどの行動(Action)へと誘導します。導入企業の成功事例を記事として公開することで、それが次の見込み客にとって信頼できる共有(Share)情報として機能しています。

事例3:インフルエンサーとの連携で「Share」を生み出した化粧品メーカー

新商品を発売したある化粧品メーカーは、TikTokを活用して大規模な共有(Share)を生み出しました。まずトップインフルエンサーのPRで注意・興味(Attention/Interest)を引きつけ、話題を喚起。ユーザーはその反応を検索(Search)し、購買(Action)へとつながります。このメーカーの優れた点は、ハッシュタグを使った動画投稿キャンペーンを実施したことです。これにより一般ユーザーが次々と関連動画を投稿し、情報が連鎖的に拡散される状況を作り出しました。

自社のマーケティングにAISASを活かすための実践的ステップ

AISASモデルを理解したら、次はいよいよ自社のマーケティング戦略に落とし込んでいきましょう。

Step1:各段階の顧客接点を洗い出す

まず、自社の顧客がAISASの各段階で、どのような媒体や情報(タッチポイント)に触れているかを洗い出します。自社の強みと弱み、そしてどこに注力すべきかが見えてきます。

段階顧客接点(例)
AttentionWeb広告, SNS広告, テレビCM, 雑誌, インフルエンサー, イベント出展, プレスリリース
Interest広告のクリエイティブ, LP, 自社サイトのトップページ, 商品・サービス紹介ページ
Search検索エンジン, SNS, YouTube, 口コミサイト, 比較サイト
Action自社ECサイト, 実店舗, 問い合わせフォーム, 電話
ShareSNS, ブログ, レビューサイト, 友人・知人への口コミ

Step2:「Search」で発見されるためのSEO・MEO対策

現代の消費者は、購入前に検索することが一般的です。検索結果に自社の情報が表示されなければ、選択肢にすら入れない可能性があります。

SEO(検索エンジン最適化)

顧客が検索しそうなキーワードを予測し、そのキーワードで自社のWebサイトや記事が上位表示されるようにコンテンツを最適化します。

MEO(マップエンジン最適化)

実店舗を持つビジネスの場合、Googleマップ上で「地域名 + 業種」などで検索された際に、自社の店舗情報が上位に表示されるよう対策します。

Step3:「Share」を促進させる仕組み作り

ポジティブな「共有(UGC)」は、有効な広告となります。これを自然発生に任せるのではなく、企業側から促す仕組み作りが重要です。SNSでのハッシュタグキャンペーンを企画したり、ECサイトのレビュー機能を充実させたり、インセンティブを用意したりする方法が考えられます。

AISASモデルの限界と今後の展望

有用なAISASモデルですが、万能ではありません。その限界と、今後の動向についても触れておきましょう。

AISASの注意点・デメリット

このモデルを運用する上では、注意すべき点もあります。第一に、コンビニでの衝動買いや日用品のリピート購入など、「Search」や「Share」がほとんど介在しない購買行動も数多く存在します。AISASは、特にある程度の検討を伴う商材で機能しやすいモデルと言えます。また、実際の消費者の行動は、InterestからいきなりShare(友人に相談)に飛ぶなど、より複雑な動きをします。モデルはあくまで思考の枠組みとして捉えることが重要です。

AISASの次に注目されるモデルとは?

AI技術の進化などにより、消費者行動はさらにパーソナライズされていくと予測されます。今後は、個々のユーザーの行動履歴や嗜好性を分析し、一人ひとりに最適化された情報を提供する「パーソナライズド・カスタマージャーニー」の重要性が増していくでしょう。特定のモデルに固執するのではなく、データに基づき、常に顧客一人ひとりと向き合う姿勢が求められます。

【Q&A】AISASに関するよくある質問

Q. AISASの提唱者は誰ですか?

A. AISASは、日本の広告代理店である株式会社電通によって、2005年に提唱されました。同社の登録商標でもあります。

Q. BtoBビジネスでもAISASは使えますか?

A. 有効です。BtoBでは、個人の買い物以上に合理的な判断が求められるため、「Search」のプロセスが特に重要になります。導入事例や詳細な仕様、他社比較などのコンテンツを充実させ、顧客の検索行動に応えることが、受注につながります。

Q. AISASの各段階で特に重要なのはどこですか?

A. すべての段階が重要ですが、現代マーケティングの観点では、AIDMAにはなかった「Search」と「Share」が特に重要と言えます。顧客に「発見」してもらうためのSearch対策と、顧客を「ファン」に変え、新たな顧客を呼ぶためのShareの仕組み作りが、企業の競争力を左右します。

まとめ

今回は、現代の購買行動モデルである「AISAS」について、その基本からAIDMAとの違い、具体的な成功事例、実践ステップ、そして今後の展望までを網羅的に解説しました。

AISASは「Attention → Interest → Search → Action → Share」の5段階で構成され、インターネット時代の消費者の特徴である「検索」と「共有」という行動が組み込まれている点が最大の特徴です。そして、「共有」された情報は、次の消費者の購買活動につながり、サイクルを生み出します。

AISASは単なるマーケティング用語ではなく、情報過多の時代を生きる消費者の心理を理解し、企業が顧客と新しい関係を築くための、思考の枠組みとして役立ちます。ぜひ、本記事の内容を参考に、自社のマーケティング活動を見直し、顧客から選ばれ、応援されるブランドを築き上げてください。

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