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No.15
更新日 2025年08月11日

パイプライン管理とは?SFA活用で営業組織を強化する全技術を徹底解説!

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「各営業担当者が、今どんな案件を抱えているのか全く見えない」
「月末になると、部下に『今月の着地はどうなりそう?』と聞いて回るのが恒例行事になっている」
「トップセールスは育つが、チーム全体の成果は一向に安定しない」

営業組織を率いるマネージャーや経営者であれば、一度はこのような課題に直面したことがあるのではないでしょうか。個々の営業担当者の経験と勘、そして根性に頼る「属人的な営業」は、再現性がなく、組織としての成長に繋がりません。

この記事では、営業組織の成果を最大化するための「パイプライン管理」について、その基本的な概念から、導入のメリット、具体的な実践ステップ、そしてSFAを活用した高度なマネジメント手法までを、網羅的かつ体系的に解説します。

パイプライン管理とは?

まず、全ての基本となる「パイプライン管理」の定義と、その重要性を正確に理解しましょう。

パイプライン管理の定義

パイプライン管理とは、営業活動における一連のプロセス(初回接触から受注まで)を、一本のパイプ(pipeline)のように捉え、その中に存在するすべての案件の状況を時系列で可視化・管理するマネジメント手法のことです。

各案件が、現在どの「フェーズ(段階)」にあり、それぞれのフェーズに何件の案件が存在し、その総額はいくらなのかを俯瞰的に把握することで、営業活動全体をデータに基づいてコントロールすることが可能になります。

なぜ必要?

パイプライン管理がなければ、案件の進捗は各営業担当者の頭の中にしか存在しません。マネージャーは「あの案件、どうなってる?」と確認するしかなく、担当者が「順調です」と答えれば、それ以上踏み込めません。これでは、問題の早期発見は不可能です。

パイプライン管理は、このブラックボックス化された営業活動を「見える化」し、個人の感覚ではなく、客観的なデータに基づいて組織全体で営業活動を前に進めるための、現代の営業組織に不可欠な羅針盤なのです。

パイプライン管理がもたらす5つのメリット

パイプライン管理を導入することで、組織は具体的にどのような恩恵を受けられるのでしょうか。ここでは5つの代表的なメリットを紹介します。

メリット1:売上予測の精度が劇的に向上する

各フェーズの案件数と金額、そして過去のデータから算出した「フェーズごとの受注率(歩留まり率)」を掛け合わせることで、「今月末、このパイプラインからは約〇〇円の売上が見込める」といった、精度の高い売上予測が可能になります。月末に慌てるのではなく、月初から着地見込みを把握し、先手を打つことができます。

メリット2:営業プロセスの「ボトルネック」が特定できる

パイプラインを可視化すると、「提案フェーズからクロージングフェーズへの移行率が極端に低い」といった、営業プロセス上の「ボトルネック(滞留箇所)」が一目でわかります。原因が提案内容にあるのか、価格交渉にあるのかを深掘りし、集中的に改善策を講じることで、プロセス全体の流れをスムーズにできます。

メリット3:データに基づいた的確な営業指導が可能になる

部下のパイプラインを見れば、「A君は初回訪問は得意だが、提案でいつも失注している」「Bさんはクロージングが少し弱いな」といった、個々の営業担当者の得意・不得意がデータとして明確になります。これにより、マネージャーは「もっと頑張れ」といった精神論ではなく、「この提案資料を改善してみよう」といった、具体的で的確な指導(コーチング)が可能になります。

メリット4:営業担当者間の情報共有が円滑になる

パイプラインは、チーム全員の共有財産です。担当者が急に不在になっても、他のメンバーがパイプラインを見れば、案件の状況をすぐに把握し、顧客対応を引き継ぐことができます。これにより、顧客満足度の低下を防ぎ、チーム全体で案件を進める文化が醸成されます。

メリット5:組織としての「勝ちパターン」を構築できる

受注に至った案件のパイプラインを分析することで、「どのような顧客に、どのタイミングで、どのようなアプローチをすれば受注しやすいか」という組織としての「勝ちパターン」が見えてきます。この勝ちパターンを形式知としてチーム全体に共有することで、トップセールスのノウハウを組織の力に変え、全体の営業力を底上げできます。

失敗しないパイプライン管理の始め方5ステップ

理論を理解したところで、次はいよいよ実践です。ここでは、パイプライン管理を導入するための具体的な5つのステップを解説します。

STEP1:自社の「営業プロセス」を分解し、フェーズを定義する

まず、自社の営業活動を、顧客との初回接触から受注までの流れに沿って、複数の「フェーズ(段階)」に分解します。これがパイプラインの設計図となります。重要なのは、自社のビジネスモデルに合った、シンプルで分かりやすいフェーズを設定することです。

STEP2:各フェーズの「移行条件」を明確にする

各フェーズの定義だけでは不十分です。案件が次のフェーズに進むための「移行条件(完了の定義)」を明確にルール化することが極めて重要です。例えば、「『提案』フェーズへの移行条件は、単に提案書を送ったことではなく、顧客から『提案内容を基に検討を進める』という合意を得たこと」といった具体的な基準を設けます。これにより、担当者による進捗の認識のズレを防ぎます。

STEP3:追うべき重要指標(KPI)を設定する

パイプラインの健全性を測るためのKPI(重要業績評価指標)を設定します。見るべき指標は主に以下の4つです。

  • パイプライン内の案件数・金額
  • 各フェーズの案件数・金額
  • フェーズ移行率(歩留まり率)
  • 平均販売サイクル(受注までの期間)

STEP4:管理ツール(SFA/CRM)を選定・導入する

パイプライン管理を効率的に行うには、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)といったツールの活用が事実上必須です。これらのツールを使えば、リアルタイムでの情報共有、データ集計・分析の自動化が可能です。Excel管理の限界については、後述のQ&Aで詳しく解説します。

STEP5:チームで運用ルールを定め、PDCAサイクルを回す

ツールを導入したら、「商談後は必ずその日のうちにSFAを更新する」といった具体的な運用ルールをチームで定めます。そして、週次や月次の営業会議でパイプラインの状況を確認し、「なぜこのフェーズの移行率が低いのか?」といった課題を議論し、改善策を実行するPDCAサイクルを回し続けることが、パイプライン管理を文化として定着させる鍵です。

自社に合った「営業フェーズ」の具体的な設計例

パイプラインの「フェーズ設計」は、管理の成否を分ける最も重要な工程です。ここでは、ビジネスモデル別の設計例を紹介します。

BtoB SaaSビジネスにおけるフェーズ設計例

フェーズ内容
フェーズ1:リード(MQL)マーケティング部門から引き継がれた有望な見込み客
フェーズ2:商談化(SQL)インサイドセールスが接触し、具体的な課題とニーズを確認
フェーズ3:デモ・トライアル実際に製品のデモを実施、またはトライアル環境を提供
フェーズ4:見積・提案正式な見積書と提案書を提出
フェーズ5:契約交渉価格や契約内容の最終調整
フェーズ6:受注
フェーズ7:失注

代理店型ビジネスにおけるフェーズ設計例

フェーズ内容
フェーズ1:初回アプローチターゲット企業への初回接触
フェーズ2:課題ヒアリング担当者から現状の課題やニーズを詳細にヒアリング
フェーズ3:提案・プレゼン課題解決のための具体的な企画を提案
フェーズ4:コンペティション競合他社との比較検討
フェーズ5:条件交渉契約条件や価格の交渉
フェーズ6:受注
フェーズ7:失注

フェーズ設計で失敗しないための3つの注意点

フェーズを細かくしすぎない

多すぎると入力の手間が増え、現場が疲弊します。多くても7〜8段階程度に収めるのが理想です。

担当者の行動ではなく、顧客の行動を基準にする

「提案書を送付した」ではなく「顧客が提案内容の検討に合意した」など、顧客側の変化を基準にフェーズを定義しましょう。

チーム全員で定義を合意する

マネージャーが一方的に決めるのではなく、チーム全員で議論し、全員が納得する定義を作ることが定着の秘訣です。

パイプラインを活用した営業会議の進め方

パイプラインは、ただ眺めるだけでは意味がありません。営業会議で活用してこそ、真価を発揮します。

パイプラインレビューで確認すべき3つのポイント

週次の営業会議では、個人の案件の詰問ではなく、チーム全体のパイプラインの健全性を確認することに焦点を当てます。

全体の健全性

先週と比較して、パイプライン全体の案件数や総額は増えているか?目標達成に必要な案件は十分にあるか?

流れの健全性

特定のフェーズに案件が滞留していないか?そのボトルネックの原因は何か?

個別の健全性

長期間フェーズが動いていない「停滞案件」や、急に進捗した「躍進案件」はないか?その要因は何か?

ネクストアクションを引き出すコーチング術

マネージャーの役割は、部下を問い詰めることではありません。「この案件、どうなってる?」ではなく、「この案件が次のフェーズに進む上で、何が一番の障壁になっているかな?」「その障壁を取り除くために、明日からできることは何だろう?」といった「なぜ?」と「次の一手」を引き出す質問(コーチング)を投げかけることで、担当者の自律的な思考と行動を促します。

パイプライン管理に関するQ&A

Q. Excelでのパイプライン管理は可能ですか?限界はどこですか?

A. 可能ですが、強く推奨しません。 営業担当者が1〜2名のうちは機能するかもしれませんが、人数が増えるとすぐに限界が訪れます。限界点は主に、①リアルタイムでの情報共有ができない、②複数人での同時更新が困難で、ファイルが先祖返りする、③データの入力ミスや表記ゆれが発生しやすい、④グラフ作成や分析に多大な手間がかかる、という4点です。これらの課題は、ビジネスの成長スピードを著しく阻害します。

Q. 営業担当者がSFAにデータを入力してくれません。どうすればいいですか?

A. これは多くの組織が直面する課題です。対策は、①入力するメリットを現場に実感させること(例:「入力すれば日報が自動作成される」)、②入力項目を必要最小限に絞ること、そして③マネージャー自身がSFAのデータを基に指導や会議を行うことです。「SFAを見ないと状況が分からない」という状態をマネージャーが作ることで、入力は文化として根付きます。

Q. パイプラインが特定のフェーズで滞留してしまいます。対策は?

A. まずは「なぜ」そのフェーズで滞留するのか、原因を徹底的に分析します。「提案」フェーズで滞留するなら、提案資料の質に問題があるのかもしれません。「条件交渉」フェーズで滞留するなら、価格設定や競合との差別化に課題がある可能性があります。失注した案件の理由を分析し、チーム全体で改善策を議論・実行することが重要です。

まとめ

本記事では、パイプライン管理の基本から、具体的なメリット、実践のステップ、そして日々のマネジメントへの活用法まで、網羅的に解説しました。

パイプライン管理とは、単なる案件管理の手法ではありません。それは、自社の営業活動という複雑なプロセスを可視化し、課題を発見し、改善を繰り返すための「設計図」であり、経験と勘に頼る属人的な営業から脱却し、科学的アプローチで成果を出し続ける、強い営業組織を構築するための経営基盤そのものです。

あなたのチームのポテンシャルを最大限に引き出し、持続的な成長を実現するために、ぜひ今日からパイプライン管理の導入を検討してみてください。

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