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No.17
更新日 2025年08月12日

売上予測の立て方は?精度を高める5つの計算方法を徹底解説

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「なぜ、うちの会社の売上予測は毎月のように外れるのだろうか?」
「部下たちの『頑張ります』という言葉を信じて計画を立てたのに、月末になると大幅にショートしてしまう…」

企業の経営者や営業マネージャーであれば、一度ならず経験したことのある、胃の痛くなるような悩みではないでしょうか。売上予測の精度は、企業の舵取りを左右する極めて重要な要素です。しかし、多くの組織では、いまだに担当者の経験と勘、そして希望的観測に頼った、根拠の薄い予測が横行しているのが実情です。

この記事では、企業の経営判断の根幹をなす「売上予測」について、その重要性から、初心者でも実践できる具体的な立て方(計算方法)、そしてSFAを活用して予測精度を飛躍的に高めるための高度なマネジメント手法までを、網羅的かつ体系的に解説します。

なぜ精度の高い「売上予測」が経営に不可欠なのか?

まず、売上予測がいかに重要であるか、その本質的な意味を再確認しましょう。

売上予測とは?

売上予測とは、過去の実績や現在の営業活動状況といった客観的なデータに基づき、将来の一定期間(月次、四半期、年次)における売上高を、科学的に算出することです。

これは、経営陣が掲げる「こうなってほしい」という願望である「売上目標」とは全く異なります。売上予測は、いわば企業の進むべき未来を映し出す「羅針盤」であり、目標という目的地にたどり着くために、今どのルートを進むべきか、どんな準備が必要かを教えてくれる、極めて重要な経営指標なのです。

予測が外れることで会社が被る、3つの深刻なダメージ

もし、この羅針盤が狂っていたらどうなるでしょうか。売上予測が大幅に外れると、企業は深刻なダメージを負います。

1. キャッシュフローの悪化

売上が予測を下回ると、予定していたキャッシュインがなくなり、支払い計画や借入返済に支障をきたし、最悪の場合、黒字倒産のリスクさえ生じます。

2. 機会損失の発生

逆に売上が予測を大幅に上回った場合も問題です。生産計画や人員配置が追いつかず、製品の欠品やサービスの品質低下を招き、顧客を待たせてしまう「機会損失」が発生します。

3. 組織の士気低下

達成不可能な高すぎる予測は、現場の疲弊と士気の低下を招きます。一方で、低すぎる予測は、組織の成長意欲を削いでしまいます。

売上予測を立てることで得られるメリット

逆に、精度の高い売上予測を立てることで、企業は大きな競争優位性を手に入れることができます。

メリット1:的確な経営判断(人員、在庫、投資)が可能になる

正確な売上見込みが立つことで、経営者は自信を持って意思決定を下せます。「来期は売上が伸びそうだから、営業担当者を2名増員しよう」「この製品の需要が高まっているので、原材料の在庫を増やそう」といった、的確なリソース配分が可能になります。

メリット2:目標達成に向けた具体的なアクションプランが立てられる

月の初めに「目標まであと2,000万円足りない」という予測が立てば、月末に慌てる必要はありません。「今月は新規顧客をあと10件獲得する必要がある」「既存顧客へのアップセル提案を強化しよう」といった、目標とのギャップを埋めるための具体的なアクションプランを、早期に計画・実行できます。

メリット3:営業組織の課題が可視化される

売上予測のプロセスは、営業組織の健全性を測る健康診断のようなものです。「そもそも商談の数が足りていない」「提案フェーズで案件が滞留している」など、予測を立てる過程で、組織が抱える根本的な課題が浮き彫りになります。

メリット4:早期の資金調達や銀行交渉を有利に進められる

データに基づいた客観的な売上予測は、企業の成長性を示す強力なエビデンスとなります。金融機関からの融資や、投資家からの資金調達を検討する際に、信頼性の高い事業計画の根拠として、交渉を有利に進めることができます。

【レベル別】売上予測の主な計算方法5選

売上予測には様々な計算方法があります。ここでは、代表的な5つの手法を、実践のしやすさや対象者別に紹介します。

【基本】過去の実績から算出する方法(時系列分析)

過去の売上データを基に、将来の売上を予測する最も基本的な方法です。例えば、「前年同月比110%で成長しているから、来月もその傾向が続くだろう」と予測します。季節変動などを考慮することで、精度を高めることができます。

計算式例: 来月の予測売上 = 前年同月の売上 × 成長率

【担当者向け】営業担当者の感覚値を基にする方法(セールス担当者調査法)

各営業担当者に、自身が抱える案件の受注確度や見込み金額をヒアリングし、それらを合算して組織全体の予測を立てる方法です。顧客と直接対話している担当者の肌感覚を反映できる一方、個人の希望的観測や過小評価が入り込みやすいというデメリットがあります。

【マネージャー向け】営業パイプラインのフェーズを基にする方法

営業プロセスを複数のフェーズ(例:初回接触、提案、見積、クロージング)に分け、各フェーズにある案件の総額に、過去のデータから算出した「フェーズごとの受注率」を掛け合わせて予測する方法です。SFAを活用したパイプライン管理と連動させることで、非常に精度の高い予測が可能になります。

計算式例: 予測売上 = (Aフェーズの案件総額 × Aフェーズの受注率) + (Bフェーズの案件総額 × Bフェーズの受注率) + ...

【企画部門向け】市場の成長率や占有率から算出する方法

自社が属する市場全体の規模や成長率、その中での自社のシェア(占有率)などを基に、トップダウンで売上を予測する方法です。新規事業の立ち上げや、長期的な経営計画を立てる際に用いられます。

【データ分析者向け】複数の要素から予測する回帰分析

過去の売上実績に加え、広告宣伝費、営業担当者数、Webサイトのアクセス数など、売上に影響を与える複数の要素(変数)の関係性を統計的に分析し、予測モデルを構築する方法です。高い精度が期待できますが、専門的な統計知識が必要となります。

明日からできる、精度の高い売上予測の立て方

理論を学んだら、次は実践です。ここでは、組織で売上予測を立てるための具体的な5つのステップを紹介します。

STEP1:予測の目的と期間を明確にする

まず、「何のために、いつまでの予測を立てるのか」を明確にします。資金繰りのためなら月次、人員計画のためなら四半期や年次、といったように、目的に応じて予測の期間と粒度を決定します。

STEP2:必要なデータを収集・整理する

STEP3で選択する計算方法に合わせて、必要なデータを収集します。過去の月次売上データ、現在の全商談リスト(顧客名、商談フェーズ、見込み金額など)、営業担当者数など、信頼できるデータを一箇所に集めます。

STEP3:自社に合った計算方法を選択し、仮説を立てる

企業のステージやデータの整備状況に合わせて、最適な計算方法を選択します。例えば、設立間もない企業なら過去実績法、営業組織が確立されているならパイプライン法、といった形です。選択した手法に基づき、予測の数値を算出します。

STEP4:営業チーム全体で予測をレビューし、現実とのギャップを埋める

算出した数値を基に、営業チームでレビュー会議(ヨミ会)を実施します。データ上の予測と、現場の肌感覚との間にギャップがないかを確認します。「この大型案件は、来月にずれ込む可能性が高い」「この顧客は、競合の動きが活発だ」といった定性的な情報を加味し、予測の精度を高めていきます。

STEP5:実績と比較・分析し、予測モデルを継続的に改善する(予実管理)

予測期間が終了したら、必ず実績との差異(予実差)を分析します。「なぜ予測と実績がズレたのか?」その原因を特定し、次の予測モデル(計算方法や、フェーズごとの受注率など)の改善に繋げます。このPDCAサイクルを回し続けることが、予測精度を継続的に高める唯一の方法です。

精度を劇的に向上させる5つの習慣

多くの組織で売上予測が外れるのには、共通した理由があります。予測精度を向上させるために、組織として身につけるべき5つの習慣を紹介します。

習慣1:Excelでの属人管理をやめ、SFA/CRMで情報を一元化する

予測の精度は、元となるデータの質で決まります。各担当者がバラバラのExcelで案件管理していては、正確なデータをリアルタイムで収集することは不可能です。SFA/CRMを導入し、全ての商談情報を一元管理することが、精度の高い予測を立てるための大前提です。

習慣2:「ヨミ会」を「詰め会」にしない。客観的なファクトで議論する

営業会議が、マネージャーが部下を「この数字、本当に達成できるのか?」と問い詰めるだけの場になっていませんか?それでは、担当者は萎縮し、保守的な数字しか報告しなくなります。会議では、SFA上の客観的なデータ(ファクト)を基に、「どうすればこの案件の受注確度を上げられるか」をチームで建設的に議論する文化が必要です。

習慣3:パイプラインのフェーズ定義と移行条件を厳格にする

「提案中」の定義が、担当者によって「提案書を送った段階」だったり、「顧客と内容を協議中の段階」だったりすると、予測の前提が崩れます。各フェーズの定義と、次のフェーズへの移行条件を組織全体で標準化し、厳格に運用することが重要です。

習慣4:予測を週次など、短いサイクルで見直す

月次の予測も、月末に一度だけ見るのではなく、毎週見直す習慣をつけましょう。顧客の状況は日々変化します。短いサイクルで予測と現状のギャップを確認し、軌道修正を行うことで、最終的な着地精度は格段に向上します。

習慣5:個人の「希望的観測」を排除し、チームで予測をコミットする文化を創る

売上予測は、個人の目標達成宣言の場ではありません。「この案件は受注したい」という希望的観測を排除し、客観的なデータと事実に基づいて算出された予測に対し、チーム全体でコミットする文化を醸成することが、精度の高い予測と目標達成の両立に繋がります。

売上予測に関するQ&A

Q. 設立したばかりで過去のデータがありません。どうすればいいですか?

A. まずは市場調査から始め、類似のビジネスモデルを持つ企業のデータや、業界の平均的な数値を参考に、トップダウンで仮説を立てます(市場占有率法など)。並行して、日々の営業活動で得られるデータをSFAなどに蓄積し、数ヶ月後にはボトムアップでの予測(パイプライン法など)に切り替えられるように準備を進めましょう。

Q. 季節変動が大きいビジネスの場合、どう予測に反映させればいいですか?

A. 過去3〜5年程度の月次売上データを分析し、季節ごとの変動パターン(季節指数)を算出します。その指数を、基本的な予測値に掛け合わせることで、季節性を考慮した、より精度の高い予測を立てることができます。

Q. 予測が未達の場合、マネージャーは何をすべきですか?

A. まず、①原因の特定(商談数が足りないのか、受注率が低いのか)、②対策の立案(新規リード獲得を強化する、提案内容を見直すなど)、③アクションプランへの落とし込み(誰が、いつまでに、何をするか)、という3つのステップを踏むことが重要です。担当者を責めるのではなく、データに基づいて具体的な次の一手をチームで考え、実行を支援するのがマネージャーの役割です。

まとめ

本記事では、売上予測の基本的な考え方から、具体的な計算方法、そして予測精度を高めるためのマネジメント手法までを網羅的に解説しました。

精度の高い売上予測は、未来を正確に当てるための「占い」ではありません。それは、自社が進むべき未来(目標)と、現在地とのギャップを客観的に把握し、そのギャップを埋めるための具体的なアクション(戦略)を導き出すための、極めて強力な経営ツールです。

経験と勘に頼る不安定な経営から脱却し、データに基づいた持続的な成長を実現するために、ぜひ今日から、あなたの組織の売上予測プロセスを見直してみてはいかがでしょうか。

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