ファネルとは?営業の基本から応用までこれ1記事でOK!意味・種類・活用法を解説
目次
営業成果が伸び悩んでいませんか?その原因、見込み客が顧客になる前に離脱してしまう「ファネル」の穴にあるかもしれません。
ファネルとは何か、どう活用すれば売上UPに繋がるのか? 本記事では、この必須概念の基本から具体的な作り方、分析・改善法まで徹底解説します。
ファネルとは?
ファネル (Funnel) とは、英語で「漏斗(じょうご、ろうと)」を意味する言葉です。液体や粉末を口の狭い容器に移す際に使う、逆三角形の器具を思い浮かべてください。
ビジネスにおけるファネルは、この漏斗の形状に例えて、見込み客が製品やサービスを認知してから、最終的に顧客となり購入に至るまでの段階的なプロセスを図式化したモデルを指します。

漏斗が上部の広い入り口から入ってきたものを、段階的に絞り込みながら下の狭い出口へと導くように、ファネルモデルでは、多くの「認知者」の中から、段階を経て「興味・関心を持つ人」「比較・検討する人」へと絞り込まれ、最終的に「購入者」となる様子を表します。
各段階に進むにつれて対象者の数は減っていくため、逆三角形の漏斗の形になるのです。
なぜ営業活動にファネルが重要なのか?
では、なぜこのファネルという考え方が、日々の営業活動において重要なのでしょうか?主な理由は以下の通りです。
顧客の購買プロセスを可視化できる
顧客がどのような心理や行動を経て購入に至るのか、その道のりを段階的に把握できます。これにより、顧客視点に立ったアプローチが可能になります。
営業プロセスのボトルネックを発見しやすい
「認知から興味」「検討から購入」など、各段階への移行率(転換率)を計測することで、どのプロセスに課題があるのか(=ボトルネック)を特定しやすくなります。
各段階で最適なアプローチを計画できる
顧客がどの段階にいるのかを把握できれば、その段階に応じた適切な情報提供やコミュニケーション戦略を立てることができます。例えば、認知段階の顧客にいきなりクロージングを迫るのは効果的ではありません。
効果測定と改善の指標となる
各段階の数値(リード数、商談化数、成約数、転換率など)をKPI(重要業績評価指標)として設定し、施策の効果測定や改善活動をデータに基づいて行うことができます。
チーム内で共通認識を持てる
営業チームやマーケティングチーム全体で、顧客獲得プロセスに関する共通言語を持つことができ、連携をスムーズにします。
ファネルは、感覚や経験頼りになりがちな営業活動を、データに基づいた科学的なアプローチへと進化させるための羅針盤と言えるでしょう。
代表的なファネルモデルの種類
ファネルにはいくつかの種類がありますが、ここでは特に重要で代表的なモデルを2つ紹介します。
パーチェスファネル (Purchase Funnel)
最も一般的で基本的なファネルモデルです。顧客が商品やサービスを購入するまでの心理プロセスを表します。元々は広告宣伝の効果測定モデル「AIDMA(アイドマ)」などがベースになっています。
認知 (Awareness)
商品やサービスの存在を知る段階。
営業/マーケのアクション例: Web広告、SEO、SNS発信、展示会出展、マス広告など
興味・関心 (Interest)
商品やサービスに興味を持ち、情報を集め始める段階。
営業/マーケのアクション例: オウンドメディア記事、ホワイトペーパー、メルマガ、セミナー開催など
比較・検討 (Consideration / Desire)
複数の選択肢と比較し、購入を具体的に考え始める段階。欲求が高まる。
営業/マーケのアクション例: 詳細な製品資料、導入事例、デモンストレーション、比較表、営業担当者からのヒアリング・提案など
購入 (Action / Purchase)
実際に商品やサービスを購入する段階。
営業/マーケのアクション例: 見積もり提示、契約手続き、クロージング、導入サポートなど
インフルエンスファネル (Influence Funnel)
インターネットやSNSの普及により、顧客が購入後に情報発信(レビュー、口コミ、紹介など)を行う影響力が大きくなったことを反映したモデルです。購入後の顧客行動にも焦点を当てます。
認知 (Awareness)
パーチェスファネルと同様。
興味・関心 (Interest)
パーチェスファネルと同様。
行動 (Action)
購入だけでなく、問い合わせ、資料請求、会員登録なども含む広い意味での行動。
共有・推奨 (Share / Advocate)
購入・利用後に満足した顧客が、SNSや口コミサイトで情報を共有したり、知人に推奨したりする段階。これが新たな「認知」を生み出すループにつながる。
その他のモデル
ダブルファネル
マーケティング部門が担当するリード獲得までのファネルと、営業部門が担当する商談から受注までのファネルを組み合わせたモデル。部門間の連携を示すのに有効です。
フライホイールモデル
近年注目されているモデルで、顧客を中心に据え、「惹きつけ (Attract)」「信頼関係を築き (Engage)」「満足させる (Delight)」というサイクルを回し続けることで、顧客の満足度向上と推奨による新規顧客獲得を目指します。ファネルのような一方通行ではなく、継続的な関係性を重視します。
自社のビジネスモデルや顧客特性に合わせて、適切なファネルモデルを理解し、活用することが重要です。
営業におけるファネルの作り方【5ステップ】
概念を理解したところで、実際に自社の営業活動にファネルを構築する手順を見ていきましょう。
ステップ1: ターゲット顧客(ペルソナ)の明確化
まず、どのような顧客をターゲットとするのかを具体的に定義します。BtoBであれば、業種、企業規模、役職、抱えている課題などを明確にした「ペルソナ」を設定します。
ステップ2: カスタマージャーニーの設計
ターゲット顧客が、自社の商品やサービスを認知し、最終的に購入・契約、そしてリピートや推奨に至るまでのプロセス(思考、感情、行動、タッチポイント)を時系列で洗い出します。「カスタマージャーニーマップ」を作成すると良いでしょう。
ステップ3: ファネルの各段階の定義
ステップ2で設計したカスタマージャーニーをもとに、自社の営業プロセスに合わせてファネルの各段階を具体的に定義します。
例(BtoB SaaS企業の場合)
・リード(認知・興味): Webサイトからの問い合わせ、資料ダウンロード、名刺交換など
・MQL (Marketing Qualified Lead):マーケティング活動で創出された、有望な見込み客
・SAL (Sales Accepted Lead):営業担当がアプローチ可能と判断した見込み客
・SQL (Sales Qualified Lead):営業担当が商談可能と判断した見込み客(ヒアリング、デモ実施など)
・商談化:具体的な提案・見積もり段階
・受注(成約)
ステップ4: 各段階のKPI設定
各段階の状況を定量的に把握するために、KPIを設定します。
例
・リード獲得数
・MQLからSQLへの転換率 (%)
・商談化率 (%)
・受注率(成約率)(%)
・平均商談期間
・受注単価
ステップ5: 必要なツールや体制の整備
ファネルの各段階の情報を効率的に管理・分析するために、CRM(顧客関係管理)システムやSFA(営業支援システム)を導入・活用することが非常に有効です。また、マーケティング部門との連携体制を構築することも重要です。
ファネル分析のポイントと活用法
ファネルを構築したら、それを分析し、営業活動の改善に活かすことが重要です。
各段階の移行率(転換率)を計測・監視する
定期的に各段階の数値と転換率を確認し、推移を追います。
ボトルネックとなっている段階を特定する
転換率が特に低い段階があれば、そこが営業プロセス全体のボトルネックとなっている可能性が高いです。
ボトルネックの原因を分析する
なぜその段階の転換率が低いのか、具体的な原因を探ります。「リードの質が低い」「初回アプローチがうまくいっていない」「提案内容が顧客ニーズとずれている」「競合に負けている」など、様々な要因が考えられます。
改善施策を立案・実行する
特定された原因に対して、具体的な改善策を考え、実行します。
例
・リードの質改善 → ターゲットを見直し、マーケティング施策を修正
・初回アプローチ改善 → トークスクリプトの見直し、ヒアリング力強化研修
・提案力強化 → 顧客事例の充実、デモの質の向上
・クロージング改善 → 価格交渉術のトレーニング、フォローアップ体制強化
効果検証を行う
実施した施策が、実際にKPIの改善につながったかどうかを測定し、評価します。必要であれば、A/Bテストなどを用いて効果的な手法を見つけます。
この「計測 → 分析 → 施策実行 → 効果検証」のサイクルを継続的に回していくことが、ファネルを活用した営業改善の鍵となります。
ファネルを活用するメリット
ファネルを営業活動に取り入れることで、以下のようなメリットが期待できます。
営業活動の効率化
各段階で適切なアプローチを行うことで、無駄な動きを減らし、効率的に成果を追求できます。
売上予測の精度向上
各段階の転換率とリード数を把握することで、将来の売上を高い精度で予測しやすくなります。
マーケティング施策との連携強化
マーケティング部門と営業部門が共通のファネル認識を持つことで、リードの質向上やスムーズな情報連携が実現します。
顧客理解の深化
顧客の購買プロセスを段階的に追うことで、顧客のニーズや心理をより深く理解できます。
データに基づいた意思決定
経験や勘に頼るのではなく、客観的なデータに基づいて戦略立案や改善策の意思決定を行えます。
営業担当者の育成
営業プロセスが可視化されることで、新人教育やスキルアップの指導がしやすくなります。
ファネルの注意点・限界
非常に有用なファネルですが、活用する上でいくつか注意点もあります。
顧客行動は必ずしも一直線ではない
現代の顧客は、Webサイト、SNS、口コミなど様々な情報源に触れ、ファネルの段階を行き来したり、飛び越えたりすることもあります。ファネルはあくまで基本的なモデルであり、実際の顧客行動の多様性を考慮する必要があります。
「購入」がゴールではない
特にサブスクリプションモデルなど継続的な関係性が重要なビジネスでは、購入後の顧客満足度向上や継続利用、推奨といった「購入後」のプロセスも非常に重要です。インフルエンスファネルやフライホイールモデルの考え方も取り入れましょう。
部分最適に陥らない
ファネルの各段階のKPI達成のみに固執しすぎると、全体としての顧客体験(CX)を損なう可能性があります。常に顧客全体の視点を持ち、部門間の連携を意識することが大切です。
定期的な見直しが必要
市場環境や顧客行動の変化に合わせて、ファネルの定義やKPIは定期的に見直し、最適化していく必要があります。
まとめ
この記事では「ファネルとは何か?」から具体的な活用法まで解説しました。ファネルは、営業のボトルネック特定や成果予測に役立ち、感覚頼りではないデータドリブンな活動を可能にします。重要なのは、一度作って終わりではなく、継続的に分析し改善を続けること。ぜひファネル思考を取り入れ、営業成果の最大化を目指しましょう。