SalesNowDB Logo
No.18
更新日 2025年08月15日

人材育成とは?手法とや成功のポイントを徹底解説

メイン画像

「若手や新人が、なかなか一人前に育たない…」
「せっかく育てた社員が、すぐに辞めてしまう…」
「部下の育成をしたいが、日々の業務に追われて後回しになっている…」

企業の成長の根幹をなすのは、間違いなく「人」です。しかし、多くの経営者やマネージャー、人事担当者が、この「人材育成」というテーマに対して、深刻で根深い悩みを抱えています。変化の激しい現代において、かつての「見て学べ」という属人的な育成スタイルは、もはや通用しなくなっています。

本記事では、企業の持続的な成長に不可欠な「人材育成」について、その基本的な考え方から、現代において主流となる具体的な手法、そして成果に繋がる育成計画の立て方までを、網羅的かつ体系的に解説します。

人材育成の定義

人材育成とは、社員一人ひとりが持つ能力やスキル、知識を計画的に開発・向上させることで、企業の経営目標達成と持続的な成長を目指す、戦略的な活動全般を指します。

それは単なる「研修」や「教育」といった個別の施策を指す言葉ではありません。社員の入社から退職まで、キャリアのあらゆる段階において、その成長を支援し、ポテンシャルを最大限に引き出すための、長期的かつ継続的な取り組みなのです。

変化の時代における人材育成の3つの目的

現代の企業が人材育成に取り組む目的は、主に以下の3つに集約されます。

1. 生産性の向上

社員一人ひとりのスキルや専門性が向上することで、業務の質とスピードが上がり、組織全体の生産性が向上します。これは、企業の競争力に直結する最も基本的な目的です。

2. 離職率の低下と人材定着

企業が自身の成長に投資してくれると感じることで、社員のエンゲージメント(仕事への熱意や貢献意欲)は高まります。自身のキャリアパスが描ける環境は、優秀な人材の離職を防ぎ、定着率を向上させる上で極めて重要です。

3. イノベーションの創出

VUCAと呼ばれる予測困難な時代において、企業が生き残り、成長し続けるためには、常に新しい価値を創造し続ける必要があります。自律的に学び、挑戦する意欲のある人材を育てることこそが、イノベーションを生み出す土壌となるのです。

人材育成がうまくいかない企業に共通する課題

「育成の重要性は分かっている。でも、うまくいかない」。そう感じている企業には、いくつかの共通した課題が存在します。

課題1:場当たり的で、育成に一貫した方針がない

新人が入社すれば新人研修、昇進すれば管理職研修、といったように、単発の施策がバラバラに行われているだけで、全社として「どのような人材を、どのように育てていきたいか」という一貫した方針や戦略が存在しないケースです。これでは、育成が場当たり的になり、効果が持続しません。

課題2:管理職(マネージャー)が育成のスキルを持っていない

人材育成の最前線に立つのは、現場の管理職です。しかし、その管理職自身が、部下の指導やコーチング、フィードバックといった育成に関するスキルを学んでいない場合が多くあります。自身のプレイング業務で手一杯だったり、効果的な指導法を知らなかったりするため、育成が機能不全に陥ってしまいます。

課題3:社員自身の成長意欲やキャリア意識が低い

企業側がどれだけ立派な育成プログラムを用意しても、それを受ける社員自身に「成長したい」という意欲がなければ、効果は半減します。日々の業務に追われ、将来のキャリアを考える余裕がなかったり、成長の機会が評価や処遇に結びついていなかったりすると、社員の学習意欲は低下してしまいます。

【5ステップで実践】成果に繋がる人材育成計画の立て方

場当たり的な育成から脱却し、戦略的な人材育成を実現するためには、しっかりとした「計画」が不可欠です。ここでは、実践的な5つのステップを紹介します。

STEP1:現状の課題と、目指す「理想の人材像」を明確にする

まず、自社の経営戦略や事業計画に基づき、「3年後、我が社にはどのようなスキルやマインドを持った人材が必要か?」という「理想の人材像」を定義します。そして、現状の社員のスキルレベルや組織体制と比較し、そのギャップ(課題)を洗い出します。これが、育成計画の出発点となります。

STEP2:対象者(新人、中堅、管理職など)と育成目標を設定する

洗い出した課題に基づき、「誰を(対象者)」、「いつまでに(期間)」、「どのような状態に(育成目標)」したいのかを具体的に設定します。例えば、「入社3年目の中堅社員を、半年後には、一人でプロジェクトを完遂できる状態にする」といった形です。目標は、具体的で測定可能なもの(SMARTの法則など)にすることが重要です。

STEP3:具体的な育成手法を組み合わせ、プログラムを設計する

設定した目標を達成するために、どのような育成手法が最適かを考え、組み合わせていきます。OJT、研修、eラーニング、メンター制度など、後述する様々な手法の中から、対象者のレベルや業務内容に合わせて、効果的なプログラムを設計します。

STEP4:育成計画を実行し、進捗を記録・フィードバックする

設計したプログラムに沿って、育成を実行します。重要なのは、実行しっぱなしにしないこと。定期的な1on1ミーティングなどを通じて、計画の進捗を確認し、うまくいっている点や課題について、本人と上司の間でこまめにフィードバックを行い、軌道修正を図ります。

STEP5:効果を測定・評価し、次年度の計画に反映させる

計画期間が終了したら、育成の効果を測定・評価します。当初設定した目標の達成度はもちろん、本人の成長実感や、周囲からの評価、業績への貢献度などを多角的に評価します。そして、その結果を分析し、「この研修は効果があった」「OJTのやり方を見直そう」といった形で、次年度の育成計画の改善に繋げるPDCAサイクルを回していきます。

人材育成の代表的な7つの手法

ここでは、人材育成で用いられる代表的な7つの手法について、それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説します。

手法1:OJT(On the Job Training)

職場での実務を通じて、上司や先輩が部下を直接指導する手法。

項目内容
メリット実務に即したスキルが身につく。
個人のレベルに合わせて指導できる。
コストが低い。
デメリット指導者のスキルや熱意によって効果に差が出る(属人化しやすい)。
体系的な知識が身につきにくい。

手法2:Off-JT(Off the Job Training)/ 集合研修

職場を離れて行われる研修やセミナー。 新人研修や階層別研修、スキル別研修など。

項目内容
メリット体系的な知識や理論を集中して学べる。
他の参加者との交流で刺激を受けられる。
デメリット研修内容が実務に結びつかない場合がある。
受講コストや時間がかかる。

手法3:自己啓発支援(書籍購入補助、資格取得支援など)

社員が自発的に学習することを、企業が金銭的・制度的に支援する手法。

項目内容
メリット社員の学習意欲を高め、自律的な成長を促せる。
幅広い知識やスキルの習得に繋がる。
デメリット社員の意欲に依存するため、全社的なレベルアップには繋がりにくい。

手法4:eラーニング

PCやスマートフォンを使い、オンラインで学習する手法。

項目内容
メリット時間や場所を選ばずに学習できる。
繰り返し学習が可能。
全社員に均質な教育を提供できる。
デメリット実技や対話が重要なスキルの習得には不向き。
自己管理能力がないと継続が難しい。

手法5:コーチング

対話を通じて、相手の内にある答えや可能性を引き出し、自発的な行動を促す指導法。

項目内容
メリット社員の主体性や思考力を高めることができる。
個別の課題に深く寄り添える。
デメリット指導者側に高度なコーチングスキルが求められる。
短期的な成果が出にくい。

手法6:メンター制度

年齢や社歴の近い先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ)の業務上・精神面の悩み相談に乗る制度。

項目内容
メリット新人・若手社員の早期離職防止に繋がる。
部署を超えた人間関係が構築できる。
デメリットメンター役の社員に負担がかかる。
相性の問題が発生する場合がある。

手法7:1on1ミーティング

上司と部下が1対1で定期的に行う面談。 業務の進捗確認だけでなく、キャリアの相談や心身のコンディション確認など、テーマは多岐にわたる。

項目内容
メリット上司と部下の信頼関係が深まる。
課題の早期発見と解決に繋がる。
部下の成長をきめ細かく支援できる。
デメリット上司側の面談スキルが必要。
形骸化すると、ただの業務報告会になってしまう。

リモートワーク環境下での人材育成のコツ

リモートワークの普及は、従来型のOJTを中心とした人材育成に大きな課題を突きつけました。

OJTの形骸化を防ぐ、意図的なコミュニケーション設計

「先輩の背中を見て学ぶ」ことが物理的に困難なリモート環境では、OJTが機能不全に陥りがちです。これを防ぐためには、意図的にコミュニケーションの機会を設計する必要があります。例えば、毎日の朝会・夕会での進捗共有、チャットツールでの分報(分単位の報告)の推奨、週1回の1on1ミーティングの徹底などが有効です。

プロセス評価と、こまめなフィードバックの重要性

成果物しか見えないリモートワークでは、結果だけで評価してしまいがちです。しかし、育成の観点では、「どのようにその成果に至ったか」というプロセスを評価することが重要です。日報やチャットでのやり取りから、部下の思考プロセスや努力の過程を汲み取り、「このアプローチは良かったね」「次はこうしてみようか」といった、こまめなフィードバックを返すことが、部下の成長と安心感に繋がります。

育成を「文化」にするためにマネージャーが意識すべきこと

人材育成は、人事部だけの仕事ではありません。組織に育成文化を根付かせる上で、現場のマネージャーの役割は絶大です。

「ティーチング」と「コーチング」の使い分け

手法内容
ティーチング知識やスキル、答えを直接「教える」こと。
業務の基本を教える新人指導などでは有効。
コーチング質問を投げかけ、相手に考えさせ、答えを「引き出す」こと。
部下の自律性を育む上で不可欠。

マネージャーは、相手のレベルや状況に応じて、この2つの手法を意識的に使い分ける必要があります。

失敗を許容し、挑戦を促す心理的安全性の醸成

人が最も成長するのは、少し背伸びをした「挑戦」の場面です。しかし、失敗を過度に恐れる組織では、誰も挑戦しようとしません。マネージャーは、「失敗は学びの機会である」というメッセージを伝え、部下が安心して挑戦できる「心理的安全性」の高いチーム環境を作ることが求められます。

人材育成に関するQ&A

Q. 育成に割く時間がない場合、何から始めればいいですか?

A. まずは「週に1回、30分の1on1ミーティングを必ず実施する」ことから始めることをお勧めします。部下の話を聞き、悩みや課題を共有するだけでも、立派な育成活動の第一歩です。多忙なマネージャーにとって、育成は「特別なイベント」ではなく、「日々のマネジメントに組み込むべき習慣」と捉えることが重要です。

Q. 社員のモチベーションを高めるには、どうすればいいですか?

A. モチベーションの源泉は人それぞれですが、共通して重要なのは「承認」「成長実感」です。日々の努力や小さな成功を具体的に褒める(承認)、少し難易度の高い仕事を任せて達成感を味わわせる(成長実感)、といった働きかけが有効です。また、本人のキャリア志向と会社の方向性をすり合わせることも重要です。

Q. 人材育成の成果は、どのように評価すれば良いですか?

A. 育成の成果は、多角的に評価することが望ましいです。①本人のスキルレベルの変化(資格取得、できる業務の範囲拡大など)、②行動の変化(主体性の向上、周囲への働きかけなど)、③業績への貢献(生産性向上、目標達成率など)といった複数の指標で評価します。また、本人や上司、同僚へのアンケートで、成長実感や満足度を測ることも有効です。

まとめ

本記事では、人材育成の基本的な考え方から、具体的な計画の立て方、多様な手法、そして組織に文化として根付かせるためのポイントまで、網羅的に解説しました。

人材育成は、コストや時間がかかる、いわば「守り」の活動ではありません。それは、社員という最も大切な資産の価値を最大化し、企業の持続的な成長とイノベーションを生み出すための、最も確実で、最もリターンの大きい「未来への投資」です。

会社の未来を創るのは、今いる社員一人ひとりの成長の総和に他なりません。この記事が、あなたの会社の人材育成を、より戦略的で、より効果的なものへと進化させる一助となれば幸いです。

戦略的人材育成を支える企業データベース「SalesNow」

効果的な人材育成には、明確なターゲット市場や顧客像の理解が欠かせません。

「SalesNow」は全国540万社を網羅した業界最大級の企業データベースで、部署・拠点・人物単位の連絡先情報を収録。市場や顧客のリアルなデータを活用し、営業・マーケティング人材のスキル向上と即戦力化を後押しします。

CTA