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No.208
更新日 2025年07月14日

Salesforce Data Cloudとは?AI時代の必須知識を徹底解説!

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多くの企業が、顧客データの分散やCookieレス時代への対応、AI活用の精度に課題を抱えています。Salesforceの「Data Cloud」は、増え続けるデータを統合・活用し、AI時代の新たな顧客アプローチを可能にする革新的なソリューションです。従来のCDPとは異なり、リアルタイムでのデータ連携と高度な分析が強みで、全社的な顧客理解と最適なアクションを支援します。

本記事では、Data Cloudの仕組みや活用事例、導入ポイントまで詳しく解説します。

Data Cloudとは?一言でいえば「AI時代のデータ司令塔」

Salesforce Data Cloudとは、企業内外に散在するあらゆる顧客データをリアルタイムで統合し、AI(人工知能)の力を最大限に引き出すためのデータ活用基盤です。単なるデータを貯めておく倉庫(データウェアハウス)や、特定の用途に特化したデータマートとは異なり、データをビジネスアクションに繋げるためのインテリジェンスを持つ「司令塔」の役割を果たします。

Salesforceが提唱する「CRM + AI + Data + Trust」の中核

Data Cloudを理解する上で重要なのが、Salesforce(セールスフォース)が掲げる「CRM + AI + Data + Trust」という統合戦略です。これは、世界No.1のCRM(顧客関係管理)を基盤に、信頼できる(Trust)高品質なデータ(Data)を燃料として、革新的なAIがビジネスを動かすというビジョンです。

この中でData Cloudは、まさに「Data」と「Trust」の根幹を担います。AIがその能力を最大限に発揮するためには、質の高い統合されたデータが不可欠です。Data Cloudは、Salesforceのコアアーキテクチャである「Einstein 1 Platform」上にネイティブに構築されており、Salesforce内のあらゆるデータはもちろん、社内外の膨大なデータを統合・調和させることで、AIにとって最高の「燃料」を生成します。

つまり、Data Cloudは単独の製品ではなく、Salesforceエコシステム全体の能力を底上げし、真のAIドリブンなCRMを実現するための心臓部なのです。

Data Cloudの仕組みは?3つの主要ステップ

Data Cloudが膨大なデータを価値あるアクションに変えるプロセスは、大きく3つのステップに分けることができます。「つなぐ(Connect)」「調和させる(Harmonize)」「活用する(Activate)」という一連の流れを見ていきましょう。

ステップ1:あらゆるデータを「つなぐ」(Connect)

最初のステップは、社内外に存在するあらゆるデータをData Cloudに接続し、集約することです。その対象は極めて広範にわたります。

Salesforce CRMデータ

Sales Cloudの商談情報、Service Cloudの問い合わせ履歴、Marketing Cloudのキャンペーン反応など、Salesforce製品内のデータとはシームレスに連携します。

外部システム

ERPや基幹システム、POSの購買データ、自社ECサイトの行動ログ、モバイルアプリの利用状況など、様々なシステムと接続できます。

データレイク/ウェアハウス

Amazon S3、Google BigQuery、Snowflake、Databricksといった主要なクラウドデータ基盤に格納されているデータも接続対象です。

リアルタイムストリーミングデータ

WebサイトのクリックストリームやIoTデバイスから送られてくるセンサーデータなど、リアルタイムで発生するデータも取り込めます。

これらの多様なデータを接続するために、Data Cloudは柔軟な方法を提供しています。標準で用意されている「組み込みコネクタ」を使えば、主要なサービスとは比較的簡単に接続できます。さらに、「ゼロコピー連携(Zero-Copy Integration)」は特筆すべき機能です。これは、Snowflakeなどに存在するデータを物理的にData Cloudへコピー&ペーストすることなく、直接参照・活用できる技術です。これにより、データ移動に伴うコストや時間を削減し、常に最新のデータに基づいた分析が可能になるため、データの鮮度とガバナンスを維持する上で絶大な効果を発揮します。

ステップ2:データを「調和」させる(Harmonize)

データをただ集めるだけでは意味がありません。次の「調和」のステップで、異なる形式や意味を持つデータを整理・統合し、一貫性のある形に整えます。このプロセスこそが、データの価値を飛躍的に高める鍵となります。

データマッピングとモデリング

取り込んだデータを、Salesforceが標準で提供する「Customer 360 データモデル」にマッピング(紐付け)します。例えば、システムAでは「顧客名」、システムBでは「氏名」となっている項目を、統一された「個人名」という項目に対応させます。これにより、システムの違いを乗り越えてデータを横断的に扱えるようになります。この作業は、専門知識がなくても直感的に操作できるツールによってサポートされます。

ID解決(Identity Resolution)

これは調和プロセスにおける核心的な機能です。一人の顧客が、WebサイトではCookie ID、ECサイトではメールアドレス、実店舗では会員IDといったように、複数のIDを持っているケースは珍しくありません。ID解決は、これらの異なるIDを名寄せし、「すべて同一人物である」と特定するプロセスです。柔軟な一致ルール(例:メールアドレスが一致、または氏名と電話番号が一致など)を設定することで、高精度な顧客の特定を実現し、断片的な情報を統合した「統合プロファイル」を生成します。

計算済みインサイト(Calculated Insights)

統合されたデータから、新たな指標を計算して顧客プロファイルに付与します。例えば、「顧客生涯価値(LTV)」「最終購入日からの経過日数」「特定カテゴリへの関心スコア」などを算出し、顧客の状況をより多角的に、そして深く理解するためのインサイトを付加することができます。

ステップ3:データを「活用」する(Activate)

データをつなぎ、調和させた最終目的は、それを「活用」して具体的なビジネス成果を生み出すことです。このステップでは、インテリジェントなデータ基盤をビジネスの最前線へと展開します。

高度なセグメンテーション

統合プロファイルに含まれるあらゆる属性(デモグラフィック、行動履歴、計算済みインサイトなど)を組み合わせて、動的な顧客セグメントを作成できます。「過去3ヶ月以内に特定商品を購入し、かつメールマガジンの開封率が高く、LTVが高い優良顧客」といった複雑な条件でも、直感的な操作で抽出できます。

全チャネルでのパーソナライゼーション

作成したセグメントや個々の顧客プロファイルに基づき、あらゆるチャネルで一貫したパーソナライズ体験を提供します。Webサイトのコンテンツ表示、メールマーケティング、LINEでのメッセージ配信、デジタル広告、さらには営業担当者やコールセンターの対応まで、顧客一人ひとりに最適化されたコミュニケーションを実現します。

AIとアナリティクスの加速

整備された高品質なデータは、SalesforceのAI「Einstein」の予測精度を劇的に向上させます。顧客の行動予測(購入、解約など)、最適なアクションの推奨(ネクストベストアクション)といったAIの能力を最大限に引き出します。また、BIツール「Tableau」と連携させることで、より深いデータ分析や視覚的なレポーティングも可能になります。

ワークフローの自動化

特定のデータイベントをトリガーに、業務プロセスを自動化します。例えば、「解約リスクが上昇した顧客を自動でリストアップし、担当営業にフォローアップのタスクを割り振る」「高額商品をカートに入れたまま離脱した顧客に、1時間後、特別なオファーを記載したメールを自動送信する」といったシナリオを実行し、業務効率を大幅に向上させます。

Data Cloudは従来のCDPと何が違う?選ばれる3つの決定的理由

Data Cloudは、広義にはCDP(Customer Data Platform)の一種と見なされますが、従来のCDPが抱えていた課題を克服し、その枠組みを大きく超える価値を提供します。その違いは、以下の比較表で明確になります。

特徴/観点従来のCDPSalesforce Data Cloud
主な焦点主にマーケティング活動の支援顧客ライフサイクル全体(セールス、サービス、マーケティング、コマース等)
Salesforce連携外部連携/コネクタ経由が一般的(開発コスト/時間がかかる場合も)ネイティブ/シームレスな統合(追加開発不要)
リアルタイム性製品により性能差が大きい。バッチ処理が中心の場合も。ハイパースケールなリアルタイム処理能力を前提に設計
AI連携製品により様々。後付けや外部連携の場合も。Einstein AIとのネイティブ連携。AIのためのデータ基盤として最適化。
データ範囲主に顧客接点データ(行動履歴、属性情報など)あらゆるエンタープライズデータ(取引、IoT、非構造化データ等も含む)
部門横断活用限定的。マーケティング部門内での利用が中心。全部門で高い有用性。セールス、サービス、ITなど全社で活用。

この表が示すように、Data Cloudは単なるデータ統合ツールではなく、Salesforceエコシステム全体で、リアルタイムに、AIをフル活用してビジネス価値を最大化することに特化しています。部門最適ではなく、顧客を中心とした全社最適を目指す企業にとって、極めて強力な選択肢となるでしょう。

導入で何が変わる?Data Cloudがもたらすビジネスインパクト

Data Cloudを導入することで、企業は具体的にどのようなメリットを享受できるのでしょうか。そのビジネスインパクトは多岐にわたります。

メリット①:顧客理解が劇的に深化する

ID解決によって真の「顧客360度ビュー」が実現することで、これまで断片的にしか捉えられなかった顧客の全体像を正確に把握できます。これにより、顧客の潜在的なニーズや次の行動を予測し、より的確なアプローチを行うための強固な土台が築かれます。

メリット②:真のパーソナライズ体験を実現する

深化された顧客理解は、高度にパーソナライズされた顧客体験へと直結します。個々の顧客に対して最適なタイミングで、最適なチャネルを通じて、最適なメッセージやオファーを届けることが可能になり、顧客エンゲージメントとロイヤルティを飛躍的に向上させます。

メリット③:業務効率の向上と定型業務の自動化

データに基づいたワークフローの自動化は、従業員を単純作業から解放します。マーケティングのターゲットリスト作成、営業へのリード自動割り当て、サービスへの問い合わせの適切な振り分けなどを自動化し、従業員がより創造的で付加価値の高い業務に集中できる環境を生み出します。

メリット④:AIの予測精度を飛躍的に加速させる

「Garbage in, garbage out(ゴミを入れればゴミしか出てこない)」という言葉通り、AIの精度はデータの質に大きく依存します。Data Cloudは、AIにとって最高品質の「ご馳走」を提供し、予測やレコメンデーションの精度を最大化します。これは、信頼できるAI(Trustworthy AI)を実現する上で不可欠です。

メリット⑤:データドリブンな意思決定文化の醸成

営業、マーケティング、サービスといったあらゆる部門が、信頼できる単一のデータソースに基づいて意思決定を行えるようになります。勘や経験だけに頼るのではなく、客観的なデータに基づいた戦略立案や施策実行が可能になり、ビジネスの精度と成果を大きく高めます。

メリット⑥:俊敏性と拡張性(アジリティとスケーラビリティ)

Data Cloudはローコード/ノーコードで操作できるツール群を提供しており、ビジネスの変化や新たなニーズに迅速に対応できます。スモールスタートで始めて段階的に機能を拡張していくことも容易であり、企業の成長に合わせてデータ活用基盤を柔軟にスケールさせることが可能です。

Salesforce Data Cloudの具体的な活用事例

理論だけでなく、実際のビジネスシーンでData Cloudがどのように活用され、成果を生み出しているのか、具体的な事例を見ていきましょう。

事例1:F1®(スポーツ・エンターテイメント)- ファンエンゲージメントの革新

課題

世界中に数億人のファンを持つF1®は、レースイベント、デジタルプラットフォーム、商品購入など、多岐にわたるファンとの接点から得られる膨大なデータを保有していましたが、これらが分散し、個々のファンを深く理解することが困難でした。

活用

Data Cloudを導入し、様々なソースからのファンデータをリアルタイムで統合。ファンの行動履歴、コンテンツの嗜好、エンゲージメントレベルなどを分析し、詳細なファンプロファイルを構築しました。

成果

統合されたファンデータを活用し、個々のファンに合わせたコンテンツ配信やターゲット広告を展開。これにより、ファンエンゲージメントが大幅に向上し、より熱狂的なファンコミュニティの育成に成功しています。

事例2:L'Oréal(化粧品)- Cookieレス時代に適応したマーケティング

課題

サードパーティCookieの廃止が進む中、新規顧客の獲得や既存顧客との関係維持において、新たなデータ戦略が急務でした。

活用

Data Cloudを活用して、自社サイトや会員プログラムから得られるファーストパーティデータを統合。顧客の同意に基づいた質の高いデータ基盤を構築し、ID解決によって顧客理解を深めました。

成果

統合されたファーストパーティデータを用いて、広告のターゲティング精度を向上させ、広告費用対効果(ROAS)を大幅に改善。顧客との直接的な関係を強化し、Cookieに依存しない持続可能なマーケティング基盤を確立しました。

事例3:製造業 - 営業部門とサービス部門の連携強化

課題

営業部門が持つ顧客情報と、製品納入後のメンテナンスや修理といったサービス部門が持つ情報が分断。アップセルやクロスセルの機会を逃したり、顧客の不満に迅速に対応できないケースがありました。

活用

Data Cloudで営業(Sales Cloud)とサービス(Service Cloud)のデータを統合。さらに、製品に搭載されたIoTセンサーからの稼働データも取り込みました。

成果

サービス担当者は、顧客からの問い合わせ時に過去の商談履歴を瞬時に確認。一方、営業担当者は、担当顧客の製品でエラーが頻発しているというサービス情報やIoTデータを基に、故障前の予防保全や新モデルへの買い替えをプロアクティブに提案できるようになり、顧客満足度の向上と新たな収益機会の創出を両立しました。

気になる価格は?Salesforce Data Cloudの料金体系

Data Cloudの料金は、企業の利用状況に応じて個別に見積もるのが基本ですが、いくつかのエディションや課金要素を理解しておくことが重要です。

まずは試せる「無償版」から

SalesforceのEnterprise Edition以上を契約している企業は、「Data Cloud Provisioning」という形で、最大1万件の統合プロファイル作成など、一部機能を無償で利用開始できます。まずはここで、自社のデータを一部統合してみて、その効果の片鱗を体験することが可能です。

本格活用のための「スターターパッケージ」

本格的な活用には有償版へのアップグレードが必要です。「Data Cloud Starter」エディションは、データインジェスチョン、データマッピング、ID解決、セグメンテーション、アクティベーションといった基本機能をパッケージにした年間契約プランです。ここからスタートし、必要に応じて機能を拡張していきます。

利用量に応じた「消費ベースの課金」

スターターパッケージに含まれる上限を超えて利用する場合、消費ベースのクレジットが必要になります。主な課金対象は以下の通りです。

項目説明
統合プロファイル数管理する顧客プロファイルの総数。
データサービスクレジットセグメントの計算や外部システムへのデータ連携(アクティベーション)の量に応じて消費されます。
データストレージ保存するデータ量に応じて追加費用が発生します。

最終的な費用は、これらの要素に加えて、利用するアドオン機能や連携する他のSalesforce製品によって大きく変動します。したがって、導入を検討する際は、自社のビジネス課題と将来的な拡張計画を明確にし、Salesforceの営業担当者や認定パートナーに相談して、自社に最適なプランの見積もりを取得することが不可欠です。

Data Cloudを最大限に活用するための5つのポイント

Data Cloudは非常に強力なプラットフォームですが、その価値を最大限に引き出すためには、技術的な導入だけでなく、戦略的なアプローチと組織的な取り組みが不可欠です。

1.明確なビジネス目標から始める

テクノロジー導入ありきではなく、「顧客解約率を5%削減する」「クロスセルによる売上を10%向上させる」といった具体的なビジネス目標を最初に設定します。これにより、導入プロジェクトの優先順位が明確になり、投資対効果(ROI)の測定も容易になります。

2.データ品質とガバナンスを確立する

Data Cloudに取り込むデータの品質が、その後の全ての成果を左右します。データの正確性、完全性、一貫性を担保するためのデータクレンジングプロセスや、データの所有者、アクセス権限、利用ポリシーなどを定めたデータガバナンス体制の確立が成功の鍵です。

3.部門横断的なコラボレーションを推進する

Data Cloudの真価は、部門の垣根を越えて統一された顧客ビューが活用されることで発揮されます。プロジェクトの初期段階からマーケティング、セールス、サービス、ITといった関連部門を巻き込み、共通の目標に向かって協力する体制を構築することが重要です。

4.スモールスタートと継続的な改善

一度に全ての機能やユースケースを実現しようとせず、最もインパクトの大きい特定の課題解決からスモールスタートし、成果を検証しながら段階的に範囲を拡大していくアプローチが有効です。市場やビジネスの変化に合わせ、継続的に設定を見直し、改善していくことが求められます。

5.AI倫理とプライバシーへの配慮

顧客データを活用する上では、常にAI倫理とプライバシー保護への配慮が不可欠です。データの利用目的の透明性を確保し、バイアスを排除し、顧客のプライバシー権を尊重するというSalesforceの「信頼(Trust)」の原則に沿った運用を徹底する必要があります。

まとめ

本記事では、Salesforce Data Cloudが単なるデータ統合ツールではなく、AI時代のビジネス成長を牽引する戦略的なプラットフォームであることを、その仕組みから活用法、成功のポイントに至るまで、網羅的に解説しました。

散在する顧客データをリアルタイムで繋ぎ、調和させ、AIを通じて価値あるインサイトへと昇華させる。この一連のプロセスにより、企業は顧客一人ひとりを深く理解し、心に響くパーソナライズ体験を提供できるようになります。それは、顧客ロイヤルティの向上だけでなく、業務の自動化やデータドリブンな文化の醸成にも繋がり、企業全体のデジタルトランスフォーメーションを力強く推進します。

顧客の期待がかつてないほど高まり、ビジネス環境の変化が激しさを増す現代において、データを制するものがビジネスを制します。Salesforce Data Cloudは、そのための最も確かな羅針盤であり、顧客と企業のより良い未来を繋ぐ架け橋となるでしょう。

まずは、自社のデータ活用の現状と課題を整理することから始めてみてはいかがでしょうか。そして、Salesforce公式サイトでの情報収集やデモを通じて、Data Cloudがもたらす変革の可能性をぜひ体感してください。

データ活用の基盤整備に、企業データベース「SalesNow」

Salesforce Data Cloudの効果を最大化するには、正確で信頼性の高い顧客データの整備が不可欠です。

「SalesNow」は全国540万社を網羅した企業データベースで、部署・拠点・人物単位の詳細な連絡先情報を提供。AI時代のパーソナライズ戦略や営業DXの基盤として、活用価値の高いデータ資源を整える第一歩に最適です。

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