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No.22
更新日 2025年08月16日

アフターセールスとは?7つの手法や成功事例を徹底解説

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「新規顧客の獲得コストは上がり続ける一方なのに、一度買ってくれたお客様がリピートしてくれない」
「顧客サポート部門は、クレーム対応ばかりでコストがかさむ一方だ」

企業の成長が頭打ちになる時、その原因はしばしば「売った後」の顧客との関係性、すなわち「アフターセールス」の欠如にあります。多くの企業が新規顧客の獲得に躍起になる一方で、最も大切なはずの既存顧客を「釣った魚」として扱い、膨大な機会損失を生んでいるのです。

この記事では、現代のビジネスにおいて企業の成長を左右する「アフターセールス」について、その本質的な重要性から、具体的な手法、そして戦略的な導入ステップまでを網羅的かつ体系的に解説します。

なぜアフターセールスが重要なのか

まず、アフターセールスがいかに重要であるか、その定義と現代における重要性を確認しましょう。

アフターセールスの定義

アフターセールスとは、商品やサービスを顧客が購入した後に行う、全ての活動を指します。製品の保証や修理、メンテナンスといった伝統的な「アフターサービス」はもちろん、使い方に関するトレーニング、有益な情報提供、ユーザーコミュニティの運営など、顧客の満足度を高め、購入後の体験価値を最大化するための能動的な働きかけ全般が含まれます。

「1:5の法則」と、顧客維持の重要性

マーケティングの世界には、「新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかる」という有名な「1:5の法則」があります。競争が激化し、新規顧客の獲得がますます難しくなる現代において、一度関係を築いた既存顧客との関係を維持し、ファンになってもらうことの重要性は、かつてなく高まっているのです。アフターセールスは、この「顧客維持」を担う、極めて重要な経営活動と言えます。

「アフターフォロー」「カスタマーサポート」との違い

アフターセールスと混同されやすい言葉に、「アフターフォロー」と「カスタマーサポート」があります。それぞれの違いを明確にしておきましょう。

カスタマーサポート

顧客からの問い合わせやクレームに対し、受動的に対応する活動が中心です。「守り」の活動と言えます。

アフターフォロー

購入後の顧客に対し、企業側から「お困りごとはありませんか?」と能動的に接触する活動です。しかし、個別の営業担当者が感覚的に行う場合が多く、属人的になりがちです。

アフターセールス

これら二つの活動を含み、さらにLTV(顧客生涯価値)の最大化という経営目標に基づき、戦略的かつ組織的に購入後の顧客体験全体を設計・実行する、より広範で能動的な「攻め」の活動を指します。

アフターセールスがもたらすメリット

戦略的なアフターセールスは、企業に計り知れないメリットをもたらします。

メリット1:LTV(顧客生涯価値)が向上し、収益が安定する

購入後も続く手厚いサポートや有益な情報提供は、顧客の信頼を醸成します。信頼は、次の購入(リピート)や、より高価格帯の商品への乗り換え(アップセル)、関連商品の購入(クロスセル)に繋がり、顧客一人ひとりが生涯にわたって企業にもたらす利益(LTV)を最大化させ、安定した収益基盤を築きます。

メリット2:顧客満足度が向上し、リピート・アップセルに繋がる

「買って終わり」にせず、購入後も気にかけてくれる企業に対し、顧客は高い満足度と愛着(ロイヤルティ)を抱きます。「次もこの会社から買いたい」という気持ちが自然と芽生え、リピート率の向上に直結します。

メリット3:口コミや紹介(リファラル)が生まれ、新規獲得コストが下がる

満足度の高い顧客は、企業の「最高の広告塔」になります。友人や知人に自らの体験を語り(口コミ)、新たな顧客を紹介してくれる(リファラル)ようになります。これにより、多額の広告費をかけずとも、質の高い新規顧客を獲得できる好循環が生まれます。

メリット4:顧客の生の声(VoC)が、商品・サービス改善のヒントになる

アフターセールスは、顧客の生の声(VoC:Voice of Customer)を収集する絶好の機会です。製品の使い勝手に関する意見や、改善要望、新たなニーズなどをヒアリングし、商品開発やサービス改善にフィードバックすることで、より競争力のある製品を生み出すことができます。

成果に繋がるアフターセールス戦略の立て方

効果的なアフターセールスは、思いつきではなく、しっかりとした戦略に基づいて設計する必要があります。

STEP1:顧客をセグメンテーションし、ターゲットを明確にする

全ての顧客に同じアフターセールスを提供するのは非効率です。まずは、購入金額や購入頻度、利用状況などに基づき、顧客をいくつかのグループに分類(セグメンテーション)します。そして、「ロイヤル顧客」「一般顧客」「休眠顧客」など、どの層をメインターゲットとしてアプローチするかを明確にします。

STEP2:カスタマージャーニーを描き、タッチポイントを洗い出す

ターゲットとした顧客が、商品を購入した後、どのようなプロセス(体験)をたどるのかを時系列で可視化(カスタマージャーニーマップ)します。そして、その過程で企業と顧客が接点を持つポイント(タッチポイント)を、「商品の納品時」「1ヶ月後のフォローメール」「半期に一度のメンテナンス」といった形で全て洗い出します。

STEP3:各タッチポイントで提供する価値(施策)を設計する

洗い出した各タッチポイントで、「顧客は何を期待しているか?」「どんな情報やサポートを提供すれば、満足度が上がるか?」を考え、具体的な施策を設計します。例えば、「納品時」には「初期設定のサポート」、「1ヶ月後」には「便利な使い方のコツをメールで配信」といった形です。

STEP4:活動を評価するためのKPIを設定する

設計したアフターセールス活動が、実際に成果に繋がっているかを測るためのKPI(重要業績評価指標)を設定します。これにより、活動の客観的な評価と改善が可能になります。

KPIの例

顧客満足度(NPS)、リピート率、アップセル・クロスセル率、解約率(チャーンレート)、顧客推奨度など。

アフターセールスの代表的な7つの手法

ここでは、戦略を具体化するための代表的な7つの手法を紹介します。

手法1:オンボーディング支援(導入・初期設定サポート)

特にBtoBのITツールなどで重要です。顧客が商品・サービスをスムーズに使い始められるよう、初期設定や操作方法のトレーニングを提供します。初期段階でのつまずきを防ぎ、早期の成功体験を促すことが目的です。

手法2:定期的なメンテナンス・点検

機械設備や自動車などで一般的な手法です。定期的な点検やメンテナンスを通じて、製品の性能を維持し、顧客との継続的な接点を持ちます。

手法3:ニュースレター・お役立ちコンテンツの提供

購入した製品の活用方法や、関連する業界のトレンド情報など、顧客にとって有益な情報をメールマガジンやオウンドメディアで定期的に提供します。顧客の知識を深め、信頼関係を築きます。

手法4:アップセル・クロスセルの提案

顧客の利用状況やニーズの変化を捉え、より上位のモデル(アップセル)や、関連商品(クロスセル)を最適なタイミングで提案します。これは、アフターセールスが直接的に売上を生み出す瞬間です。

手法5:ユーザーコミュニティの運営

顧客同士が情報交換したり、学び合ったりできるオンライン・オフラインのコミュニティを運営します。顧客エンゲージメントを高めると同時に、企業にとっては顧客の声を効率的に収集できる場となります。

手法6:顧客向け限定セミナー・勉強会の開催

製品の応用的な使い方や、業界の最新動向などをテーマにした、既存顧客限定のセミナーや勉強会を開催します。顧客に特別な価値を提供し、ロイヤルティを高めます。

手法7:記念日や誕生日などのサプライズ演出

顧客の誕生日や、契約記念日などに、手書きのメッセージカードや小さなギフトを送るといった、パーソナルな心遣いです。顧客に「一人の人間として大切にされている」という感動を与え、強いファン心理を醸成します。

アフターセールスを「カスタマーサクセス」へと昇華させるために

近年、アフターセールスの考え方は、さらに一歩進んだ「カスタマーサクセス」へと進化・昇華しています。

受動的な「サポート」から、能動的な「成功支援」へ

従来のカスタマーサポートが、顧客からの問い合わせを待つ「受動的」な活動であったのに対し、カスタマーサクセスは、顧客の「成功」をゴールと定め、その実現のために企業側から「能動的」に働きかけることを目指します。単に問題解決を手伝うだけでなく、顧客が製品・サービスを最大限に活用し、ビジネス上の成果を出せるよう、パートナーとして伴走するのです。

ヘルススコアを活用した、プロアクティブな働きかけ

カスタマーサクセスでは、CRMなどに蓄積された顧客の利用状況データ(ログイン頻度、特定機能の利用率など)を基に、「ヘルススコア」と呼ばれる顧客の健康診断のような指標を設けます。このスコアが悪化している顧客(=解約の予兆)に対し、問題が深刻化する前に「何かお困りごとはありませんか?」と能動的にアプローチすることで、解約を未然に防ぎます。

成功企業の事例

事例1:【BtoB】Salesforce(ユーザーコミュニティによる成功支援)

CRMで世界トップシェアを誇るSalesforceは、「Trailblazer Community」という巨大なオンラインコミュニティを運営。ユーザー同士が質問し合い、ノウハウを共有する場を提供することで、顧客の自己解決能力を高め、製品へのエンゲージメントを深めています。

事例2:【BtoB】小松製作所(KOMTRAXによる稼働状況の可視化)

建設機械メーカーのコマツは、機械に搭載したGPSと通信システム「KOMTRAX」により、機械の稼働状況や燃料残量、故障の予兆などを遠隔で把握。最適なタイミングでのメンテナンス提案や、盗難防止に繋げ、顧客のビジネスを強力にサポートしています。

事例3:【BtoC】ヤマト運輸(クロネコメンバーズによる利便性向上)

荷物を受け取るだけの顧客を「クロネコメンバーズ」として会員化。配達予定の事前通知や、Web上での受け取り日時・場所の変更を可能にすることで、顧客の利便性を劇的に向上させ、競合他社との圧倒的な差別化要因を築いています。

アフターセールスに関するQ&A

Q. 専任の部署がありません。どこが担当すべきですか?

A. 理想は専任部署ですが、リソースがない場合は、既存の営業部門やカスタマーサポート部門が兼任する形から始めるのが現実的です。重要なのは、誰が担当するにせよ、「アフターセールスのKPI」を明確に設定し、その活動が正当に評価される仕組みを作ることです。

Q. アフターセールスのコストは、どう考えれば良いですか?

A. アフターセールスにかかる費用は、単なる「コスト」ではなく、未来の売上を生み出すための「投資」として捉えるべきです。アフターセールスによって得られたリピート売上やアップセル売上、そして削減できた新規獲得コストなどを計測し、投資対効果(ROI)を可視化することが重要です。

Q. 顧客からのクレームには、どう対応すればファンに繋がりますか?

A. クレームは、顧客の不満や期待を直接知ることができる、極めて貴重な機会です。対応のポイントは、①迅速かつ誠実な謝罪、②傾聴(言い分を最後まで聞く)、③原因の究明と明確な説明、④具体的な代替案や解決策の提示、⑤プラスアルファの気遣いです。このプロセスを誠心誠意行うことで、顧客の不満は感動に変わり、「ピンチがチャンスに」なることは少なくありません。

まとめ

本記事では、アフターセールスの本質的な重要性から、戦略の立て方、具体的な手法までを網羅的に解説しました。

「売って終わり」のビジネスが通用した時代は、終わりを告げました。これからの時代に成長し続ける企業は、例外なく、顧客との長期的な信頼関係を築くことに長けた企業です。

アフターセールスは、面倒なコストセンターではありません。それは、顧客の成功を支援することで、自社の持続的な成長と安定した収益を生み出す、最も確実で、最も重要な「未来への投資」なのです。この記事が、あなたの会社と顧客との関係を、より深く、より豊かなものへと変えるきっかけとなることを願っています。

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