【プロが解説】インテントセールスは売上を伸ばす魔法の杖?データの限界と賢い向き合い方
目次
「インテントセールスで、確度の高い見込み客にアプローチできる」
「データに基づいた効率的な営業で、成果が向上する」
BtoBビジネスに携わる中で、このような言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。特に、新規リード獲得に課題を抱えるマーケティング担当者や、営業のDX化を模索する責任者にとって、「インテントセールス」はまるで魔法の杖のように語られることがあります。
インテントセールスは、商材のジャンルによっては有効な営業手法の一つとなり得ます。しかしその一方で、相性の悪い領域で導入すると、期待した成果に繋がりにくく、コストと時間の浪費になってしまうケースも少なくありません。
この記事では、インテントセールスの効果を最大化するための「条件」とは何か、相性が良い事業領域はどこか、そして成果に繋がりにくい要因とその対策について解説します。
そもそもインテントセールスとは?

まず、インテントセールスの「仕組み」と「可能性」を正しく理解しておきましょう。
インテントセールスとは、企業の「インテント(intent=意図)」データを活用して、自社の商品やサービスに関心を持つ可能性が高い企業を特定し、適切なタイミングでアプローチする営業手法のことです。
この「インテントデータ」の代表格が、特定のキーワードによるWebサイトの検索や閲覧履歴です。これは「一個人が調べたものがIPアドレスと紐づき、どの会社が検索してきたかを表現する」という仕組みに基づいています。
実際に、特定の条件下ではインテントセールスは有効に機能します。
例えば、検索キーワードとニーズが直結するような非常にニッチな専門商材や、そのキーワードを調べること自体が明確な導入意図を示すようなケースです。このような場合、競合他社に先んじて、関心が高まっているタイミングでアプローチできるため、商談化率を高める可能性があります。
なぜ成果が出ないケースがあるのか?

ではなぜ「期待した成果が出ない」という声が上がるのでしょうか。それは、インテントセールスの根幹をなす「データ」の特性を理解せず、その特性を万能であるかのように誤解してしまうケースが多いからです。
多くの企業が直面する課題は、ツールの機能そのものよりも、データの「解釈」と「活用方法」に起因しています。
インテントセールスで成果を出すのが難しい3つの理由|データの限界を理解する

インテントセールスを成功させるには、まずそのデータが持つ「限界」や「注意点」を正しく知る必要があります。ここでは、成果に繋がりにくいとされる3つの代表的な理由を解説します。
理由1:データの曖昧さ ―「誰が」検索したか特定できないという課題
インテントデータの大きな特性は、その「曖昧さ」です。ツールが検知する「企業の検索行動」は、あくまで「その会社のIPアドレスを持つ誰かが、何かを検索した」という事実でしかありません。ここから「組織としての購買意図」を読み取るには、慎重な判断が求められます。
企業規模による精度のばらつき
社員数が30人以下の会社であれば、その中の1人が検索した情報が、比較的高い確度で会社全体の意向を反映している可能性はあります。しかし、従業員が100人、500人、ひいては1,000人を超える企業ではどうでしょうか。無数の部署に所属する膨大な数の従業員のうち、たった一人が検索した情報を、会社全体の「購買意図」と判断するのは早計かもしれません。「どの事業部のニーズなのか」「会社全体の方針と紐づいているのか」を特定するのは、このデータだけでは非常に困難です。
業務外の検索も含まれる可能性
さらに注意したいのは、その検索が「業務上の検討」ですらない可能性です。競合製品の情報を個人的に調べているだけかもしれませんし、学生がレポート作成のために検索しているだけかもしれません。あなたの会社に転職を考えている担当者が、情報収集のために検索している、というケースも考えられます。
担当者個人の情報収集や転職活動も「インテント」に含まれてしまう
さらに深刻なのは、その検索が「業務」ですらない可能性です。競合製品の情報を個人的に調べているだけかもしれませんし、学生がレポート作成のために検索しているだけかもしれません。
あなたの会社に転職を考えている担当者が、情報収集のために検索している、というケースすらあり得るのです。
理由2:意図の不透明さ ― 検索が「確定した購買ニーズ」とは限らない側面
第二に、たとえその検索が業務に関連するものだったとしても、「検索行動 ≠ 確定した購買ニーズ」であるという点です。検索している「意図や目的」の段階を見極める必要があります。
多様すぎる検索意図というノイズ
例えば、ある企業が「採用」というキーワードで頻繁に検索していたとします。これには、以下のように様々な意図が含まれる可能性があります。
- 本当に人材を採用したいのか?(→ニーズあり)
- 会社として新しい採用関連事業を検討しているのか?(→ニーズの種類が違う)
- 担当者自身が転職したくて、採用市場の動向を調べているのか?(→ニーズなし)
インテントデータだけでは、この違いを正確に判断することはできません。
アプローチの難しさという課題
こうした不確実性から、営業のアプローチにも工夫が求められます。公開情報ではない検索履歴を元に「〇〇と調べていましたよね?」とストレートに伝えるのは、相手に不信感を与えかねません。明確なエビデンスに基づいた自然な「連絡する理由」を組み立てにくい点は、このデータの取り扱いを難しくする一因です。
理由3:費用対効果の見極め ― 投資と成果のバランスをどう取るか
最後に、費用対効果の課題です。インテントセールスツールは、月額数十万円のコストがかかることも少なくありません。この投資に見合う成果を出すためには、前述したデータの「曖昧さ」や「不透明さ」を乗り越える工夫が必要になります。
曖昧な可能性のあるリードに対してアプローチを続けることで、営業工数がかさみ、結果としてCPA(顧客獲得単価)が悪化してしまうケースもあります。重要なのは、「インテントデータはあくまで仮説を立てるための一つの材料」と捉え、それだけに依存しない体制を築くことです。
インテントデータとの賢い付き合い方:「事実情報」との組み合わせで精度を高める

では、インテントデータの限界を乗り越え、その効果をより高めるにはどうすれば良いのでしょうか。 その答えは、インテントという曖昧な「意図」のデータと、客観的で揺るぎない「事実」のデータを組み合わせることにあります。
なぜ「事実情報」との組み合わせが重要なのか?
事実情報とは、企業の公式発表など、解釈の余地がほとんどない客観的なデータのことです。
- 求人情報(例:「インサイドセールスを5名募集」)
- プレスリリース(例:「〇〇の領域で新規事業開始」)
- 人事異動(例:「新しい情報システム部長が就任」)
これらの「事実」は、企業としての明確な動きや投資計画を示します。不確実性のあるインテントデータも、こうした確かな「事実」と掛け合わせることで、その仮説の精度を大きく向上させることができるのです。
例えば、「SFA/CRM」と検索している企業(インテント)が、同時に「インサイドセールスを5名募集」している(事実)としたらどうでしょうか。これは「確度の高い見込み客である可能性が高い」と、自信を持って判断できるはずです。
「事実情報」をどうやって集めるか

しかし、ここで新たな課題が生まれます。求人サイト、ニュースサイト、各企業のIRページなどを日々巡回し、価値ある情報を人手で収集・整理し続けるのは、膨大な時間と労力がかかります。
この「情報収集の非効率」という課題を解決するために、近年では企業の「事実情報」を網羅的に収集・データベース化し、営業活動に活用しやすくするサービスが登場しています。
例えば、私たち『SalesNow』は、まさにその思想に基づいて開発された、国内540万社以上の企業情報を網羅するデータベースです。
SalesNowを活用すれば、これまで手作業で行っていた「事実情報」の収集を自動化し、インテントデータと組み合わせることで、営業アプローチの質と効率を向上させることが可能です。
- インテントがあった企業が、どのような「求人」や「ニュース」を出しているかを瞬時に確認
- 特定の「事実」(例:「資金調達を実施した」)を持つ企業群に絞って、インテントの発生をモニタリング
- 組織図や部署直通の電話番号も活用し、仮説を持ってキーパーソンへアプローチ
これにより、営業担当者は情報収集という「作業」から解放され、データを多角的に分析し、顧客の課題を深く考えるという「本来の仕事」に集中できるようになります。
営業リスト作成は「SalesNow」で、情報収集を自動化
まとめ:インテントセールスを使いこなし、成果を出すために
本記事では、インテントセールスを多角的な視点から解説しました。
インテントセールスは、決して「効果がない」わけではありません。しかし、単体で万能な手法でもないのです。そのデータの特性と限界を正しく理解し、それだけに依存するのではなく、確度の高い「事実情報」と組み合わせることで、初めてその価値を高めることができます。
不確かな情報に振り回されるのではなく、複数のデータをインテリジェントに組み合わせ、自社の戦略に合わせて使いこなすこと。それこそが、これからのデータドリブン営業に求められることだと言えるでしょう。
よくある質問(Q&A)
Q1. インテントセールスで成功している企業もあるのでは?
A1. はい、もちろんです。記事中で触れたように、特に検索キーワードとニーズが直結しやすいニッチな商材を扱う場合や、他のデータと組み合わせて仮説の精度を高めている企業は、成果を上げています。重要なのは、自社の商材や状況がその「成功条件」に合致しているかを見極めることです。
Q2. インテントツールは全く使えないということですか?
A2. いいえ、決してそのようなことはありません。インテントツールは、市場の「兆候」をいち早く捉えるための有効なアンテナになり得ます。ただし、それ単体で完結させようとするのではなく、あくまで営業戦略全体の中の一つの「情報源」として位置づけ、本記事で提案したような「事実情報」で補完していくことが、賢明な活用法と言えます。
Q3. 「事実情報」はどこから収集すれば良いのですか?
A3. 求人サイトやニュースサイト、各企業のウェブサイトから手動で収集するのが基本です。しかし、ご指摘の通りこれは非常に手間がかかります。こうした「事実情報」の収集と活用を自動化・効率化するために、弊社の『SalesNow』のような企業情報データベースが有効な選択肢となります。ご興味があれば、一度どのような情報が取得できるかご覧いただくのも良いかもしれません。