これ1記事で完結!Salesforce分析の全手法 基本レポートからBI連携、AI予測まで徹底解説
目次
「Salesforceを導入したものの、データが蓄積されるだけで活用しきれていない…」
「上司からデータ分析を指示されたが、どこから手をつければ良いかわからない…」
多くの企業がSalesforceを活用する中で、このような悩みを抱えているのではないでしょうか。
この記事では、Salesforceの分析機能の全体像から、日々の業務ですぐに使えるレポート・ダッシュボードの作成ステップ、さらには営業成果に直結する具体的な分析テンプレートまで、網羅的に解説します。
Salesforce分析で実現できること
Salesforceでのデータ分析によって、具体的に何が実現できるのでしょうか。ここでは、多くの企業が分析を通じて達成している3つの代表的なゴールをご紹介します。この記事を読み進めることで、自社が目指すべき姿をより具体的にイメージできるはずです。
① 営業の「属人化」を防ぎ、チームの力を最大化する
「あのトップセールスのノウハウを、チーム全体に展開できれば…」
多くの営業マネージャーが抱くこの願いは、データ分析によって実現可能です。個々の営業担当者の活動履歴、商談の進捗、受注・失注の要因といったデータを分析することで、成果を上げている営業担当者の行動パターンや成功法則を客観的に可視化できます。感覚的な指導ではなく、データという事実に基づいて「どの顧客に、いつ、どのようなアプローチをすれば受注確度が高まるのか」を具体的に示せるため、チーム全体の営業力の底上げに繋がります。
② 変化に即応する「データドリブンな意思決定」
ビジネスの世界では、市場の変化や競合の動きに迅速に対応することが求められます。Salesforceの分析機能を使えば、最新の営業状況をリアルタイムで可視化できます。売上予測、パイプラインの状況、目標達成率などを常に最新の状態で把握できるため、問題の兆候を早期に発見し、迅速かつ的確な意思決定を下すことが可能になるのです。
③ 顧客を深く理解し「LTV」を最大化する
顧客との関係性を長期的に維持し、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を最大化することは、安定した事業成長に不可欠です。Salesforceに蓄積された顧客の購買履歴や問い合わせ履歴などを分析することで、顧客一人ひとりのニーズや関心事をより深く理解できます。いわゆる「顧客解像度」が高まり、個々の顧客に最適化されたコミュニケーションが可能となることで、顧客満足度とロイヤルティの向上に繋がるのです。
Salesforce分析の3つの基本機能
Salesforceには、特別なツールを導入しなくてもすぐに使える強力な分析機能が標準で備わっています。まずは基本となる3つの機能を理解し、それぞれの役割と使い分けをマスターしましょう。
① リストビュー:日々の業務で使う簡易的なデータ一覧
リストビューは、取引先、商談、リードといった各オブジェクトのデータ一覧画面です。「今月自分が担当する進行中の商談」や「特定エリアの未アプローチのリード」など、特定の条件でデータを絞り込んで表示できます。グラフ作成などの高度な分析はできませんが、日々の業務効率を高めるための簡易的なデータ確認・抽出に非常に便利な機能です。
② レポート:データを自由に集計・分析する
Salesforce分析の中核をなすのが「レポート」機能です。「担当者別の月次売上実績」や「リードソース別の商談化率」など、ビジネス上の問いに答えるための詳細なデータ集計が可能です。後述する4つのレポート形式を使い分けることで、様々な角度からデータを分析できます。
③ ダッシュボード:分析結果をグラフで可視化する
「ダッシュボード」は、複数のレポート結果をグラフや表などの形式で一つの画面にまとめて表示する機能です。いわば、ビジネスの状況を一目で把握するための「コックピット」のようなものです。データが更新されればダッシュボードも自動で最新の状態に保たれるため、常に新鮮な情報に基づいた状況把握とコミュニケーションが可能になります。
【実践編】レポート&ダッシュボード作成の4ステップ
実際にレポートとダッシュボードを作成する基本的な流れを、4つのステップに分けて解説します。
Step 1: ゴール設定
最も重要なのが、この最初のステップです。いきなりSalesforceの画面を開くのではなく、まず「この分析によって何を知り、どのようなアクションに繋げたいのか」を明確にしましょう。目的が明確であれば、必要なデータや見るべき指標が自ずと決まってきます。
Step 2: レポート形式の選択
目的が決まったら、それに合ったレポートタイプを選択します。Salesforceには主に4つの形式があり、用途に応じて使い分けることが重要です。
| レポートタイプ | 特徴 | 用途例 |
|---|---|---|
| 表形式 | Excelのように、データを一行ずつ表示する最もシンプルな形式。 | 特定条件のデータ一覧(今月の失注商談リストなど) |
| サマリー | 特定の項目で行をグループ化し、小計や合計を表示できる。グラフ作成の基本となる形式。 | 担当者別の売上合計、月別の商談数推移 |
| マトリックス | 行と列の両方でデータをグループ化するクロス集計表。 | 担当者別 × 商品別の売上実績、エリア別 × フェーズ別の商談件数 |
| 結合 | 異なるレポートタイプのブロックを複数まとめて表示できる高度な形式。 | 商談レポートとケース(問い合わせ)レポートを並べて表示 |
Step 3: データ抽出
レポートタイプを選んだら、レポートビルダー画面で分析に必要なデータを設定します。表示したいデータ項目(列)を選択し、必要に応じてグループ化を設定します。さらに、分析対象とするデータを「完了予定日」や「金額」といった条件で絞り込み、プレビュー画面で確認しながら調整しましょう。
Step 4: 可視化
データが正しく集計できたら、そのレポートにグラフを追加します。棒グラフや折れ線グラフなど、伝えたい内容に最も適した形式を選びます。作成したレポート(グラフを含む)は、ダッシュボードに追加することで、他のレポートと合わせて一覧表示できるようになります。
初心者がつまずきやすいポイントと解決策
つまずきポイント①:レポートタイプがわからない
【解決策】まずは「サマリーレポート」を使い倒してみましょう。行のグループ化と集計に慣れるだけで、分析の幅が大きく広がります。
つまずきポイント②:欲しい項目が見つからない
【解決策】Salesforceの「オブジェクトマネージャー」で、分析したいオブジェクト(例:商談)にどのような項目が存在するかを確認しましょう。また、そもそもデータが入力されていなければ分析できません。分析に必要な項目を定義し、入力ルールを徹底することも重要です。
つまずきポイント③:作ったレポートが誰にも見られない
【解決策】分析は、共有しアクションに繋げてこそ価値が生まれます。ダッシュボードを作成し、関係者に定期的に共有する仕組みを作りましょう。ダッシュボードの更新を通知するスケジュール機能を活用するのも有効です。
【目的別】Salesforce分析のテンプレート5選
基本的なレポート・ダッシュボードの作成方法を理解した次は、実践的な分析手法の解説です。ここでは、営業組織が直面する課題を解決するための、代表的な分析テンプレートを5つ紹介します。
① 予実管理分析
日々の進捗を感覚ではなくデータで把握し、月末に慌てる場当たり的な営業活動から脱却するには、予実管理分析が不可欠です。チームや個人の目標達成状況をリアルタイムに把握し、問題があれば早期に対策を打つことを目的とします。
| 分析の目的 | チームおよび個人の売上目標に対する進捗状況をリアルタイムで可視化し、早期に対策を打つ。 |
| 主な指標 | ・売上実績(受注済み) ・パイプライン(進行中商談) ・着地見込み、目標達成率 |
| 可視化の例 | ・目標達成率を示すゲージグラフ ・担当者別の実績ランキング(棒グラフ) |
この分析は、単に「目標に足りない」という結果だけでなく、「パイプラインの量が不足しているのか」「特定のフェーズで商談が停滞し、質に問題があるのか」といった原因まで深掘りします。それに基づき、個々のメンバーに対して的確なアドバイスやサポートを行うことが可能になります。
② 商談化プロセス分析
リードがなかなか受注に結びつかない場合や、営業プロセス全体の問題点を特定したい場合には、商談化プロセス分析が有効です。営業活動全体のどこで機会損失が発生しているか(ボトルネック)を特定し、改善に繋げます。
| 分析の目的 | リード獲得から受注に至るプロセスを分析し、機会損失が発生しているボトルネックを特定する。 |
| 主な指標 | ・各商談フェーズの件数 ・フェーズ間の移行率(転換率) ・各フェーズでの平均滞留日数 |
| 可視化の例 | ・プロセス全体を可視化するじょうご(ファネル)グラフ ・フェーズ別の滞留日数を示す表 |
ダッシュボード上のファネルグラフで「初回訪問から提案への移行率が極端に低い」といった事実が特定できれば、チーム全体で初回訪問の進め方やヒアリング内容を見直すなど、的を絞った改善活動に集中できます。
③ 行動分析
成果を出す営業担当者と他のメンバーとの違いをデータで明確にし、そのノウハウをチームの標準スキルとするためには、行動分析を用います。成果を上げているハイパフォーマーの行動特性を明らかにし、チーム全体のナレッジとして共有することを目指します。
| 分析の目的 | ハイパフォーマーの行動を分析し、成功要因(勝ちパターン)を解明してチーム全体にナレッジ展開する。 |
| 主な指標 | ・活動量(電話、メール、訪問など) ・新規商談の作成数・活動からの受注率 |
| 可視化の例 | ・パフォーマー群ごとの活動量比較(棒グラフ) ・活動量と成果の相関関係(散布図) |
この分析は、「トップセールスは単に活動量が多いだけでなく、初回接触から提案までのスピードが速い」といった具体的な成功法則を導き出します。その「勝ちパターン」をチームの標準プロセスとして共有・実践することが、組織全体のパフォーマンス向上に繋がります。
④ 顧客分析(RFM分析)
すべての顧客に画一的なアプローチを行うのではなく、限られたリソースを効果的に配分するためには、顧客分析(RFM分析)が役立ちます。顧客を購買行動に基づいてランク付けし、顧客ごとに最適なアプローチを行うことを目的とします。
| 分析の目的 | 顧客を購買行動に基づいてランク付けし、優良顧客の維持や離反防止など、的確なアプローチを行う。 |
| 主な指標 | ・Recency (最終購買日) ・Frequency (購買頻度) ・Monetary (累計購買金額) |
| 可視化の例 | ・顧客ランク別のリストレポート ・ランクごとの売上構成比(円グラフ) |
RFM分析により、顧客は「最優良顧客」「離反予備軍」といったグループに分類されます。これによって、「最優良顧客には手厚いサポートで関係を強化する」「離反しそうな顧客にはフォローコールで再アプローチする」など、顧客の状況に応じた的確なアクションを取ることが可能になります。
⑤ 休眠顧客分析
新規顧客の開拓コストが高い場合や、過去の顧客リストを有効活用できていない場合には、休眠顧客の掘り起こしが有効な一手となります。過去の顧客リストを再活用し、新たな商談機会を創出することを目的とします。
| 分析の目的 | 長期間取引のない休眠顧客を掘り起こし、新たな商談機会を低コストで創出する。 |
| 主な指標 | ・最終活動日からの経過日数 ・最終商談日からの経過日数 |
| 可視化の例 | ・「最終活動日から1年以上経過」などの条件で作成した休眠顧客リスト |
過去の顧客は、一度は自社の商品やサービスに価値を感じた見込みの高いリストです。このリストに対して的確なキャンペーンを実施することで、忘れられていた顧客との関係を再構築し、比較的低いコストで新たな商談機会を創出します。
BIツール連携で実現する高度なデータ分析
Salesforceの標準機能は非常に強力ですが、より複雑で高度な分析を行う際には、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールの連携が有効です。
なぜBIツールが必要なのか?
標準機能だけでは対応が難しいケースとして、例えば、Salesforce内のデータだけでなく基幹システムの販売データやWeb広告の成果データといった外部データを統合して分析したい場合や、標準機能では難しい複雑なデータ加工や統計処理を行いたい場合が挙げられます。さらに、よりインタラクティブで表現力豊かなグラフを作成したい場合や、数千万件を超えるような大量のデータを高速に処理したい場合にも、BIツールの活用が効果的です。
Tableau連携
Salesforce傘下のBIツールである「Tableau」は、直感的な操作性と美しいビジュアライゼーションが特長です。TableauとSalesforceを連携させることで、ドラッグ&ドロップの簡単な操作で、Salesforceのデータを様々な角度から深掘りできます。クリックしたデータに連動して他のグラフが動的に変化するダッシュボードなど、「データを探索する」ようなインタラクティブな分析体験が可能になります。
CRM Analytics
「CRM Analytics」(旧称: Einstein Analytics)は、Salesforceに完全に統合された、もう一つの強力な分析プラットフォームです。最大の強みは、AIを活用した「予測分析」にあります。「将来の売上予測」や「解約の可能性が高い顧客の特定」、「目標達成のために次に行うべき最適なアクションの提案」など、AIがデータからインサイトを自動で発見し、次の打ち手を提示してくれます。
【Q&A】Salesforceの分析に関するよくある質問
最後に、Salesforceの分析に関してよく寄せられる質問にお答えします。
Q. どのくらいのデータ量があれば有益な分析ができますか?
A. 必ずしも膨大なデータ量が必要なわけではありません。重要なのは「量」よりも、分析の目的に沿った「質」の高いデータが、継続的に「鮮度」高く蓄積されていることです。まずは数ヶ月分のデータでも構いません。スモールスタートで分析を始め、そこから得られた気づきをもとに、収集すべきデータや入力ルールを改善していくアプローチが現実的です。
Q. 分析スキルに自信がないのですが、何から学べば良いですか?
A. Salesforceが公式に提供している無料のオンライン学習プラットフォーム「Trailhead(トレイルヘッド)」から始めるのが最適です。レポートやダッシュボードの基本的な作成方法から高度な分析手法まで、ゲーム感覚で楽しく学ぶことができます。専門的な知識がなくても、実際に手を動かしながらスキルを習得できるので、初心者の方に非常におすすめです。
Q. 外部のデータ(例:広告データ)と組み合わせて分析できますか?
A. はい、可能です。先述のTableauやCRM AnalyticsといったBIツールを利用するのが最も一般的な方法です。これらのツールは、Salesforceだけでなく、Google Analyticsや各種データベースなど、様々なデータソースに接続し、データを統合して分析する機能を持っています。これにより、「どの広告経由の顧客が、最もLTVが高いか」といった、組織を横断したより深い分析が実現します。
まとめ
本記事では、Salesforce分析の重要性から、レポート・ダッシュボードの基本的な使い方、営業成果に直結する分析テンプレート、そしてBIツールと連携した高度な分析まで、幅広く解説しました。
Salesforceに蓄積されたデータは、活用しなければ単なる記録の山ですが、一度分析の方法を身につければ、ビジネスを成功に導く「宝の山」に変わります。
最初は簡単なレポート作成からで構いません。この記事で紹介したテンプレートを参考に、まずは一つ、あなたのチームの課題解決に繋がりそうな分析を試してみてください。その小さな一歩が、勘や経験だけに頼る組織文化を変え、データに基づいた的確な意思決定がなされる「データ主導型組織」へと変革する、大きな原動力となるはずです。