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No.24
更新日 2025年08月16日

カスタマーサクセスとは?仕事内容や立ち上げ方を徹底解説

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「新規顧客は順調に増えているのに、なぜか売上が思うように伸びない…」
「顧客がサービスを使いこなせないまま、次々と解約していく…」

もしあなたの会社がこのような「穴の空いたバケツ」状態に陥っているとしたら、その原因は、顧客を「獲得した後」の取り組みにあるのかもしれません。現代のビジネス、特にSaaSをはじめとするサブスクリプションモデルにおいて、企業の成長を左右する最も重要な鍵。それが「カスタマーサクセス」です。

この記事では、サブスクリプション時代のビジネス成長の鍵を握る「カスタマーサクセス」について、その本質的な概念から、具体的な業務内容、重要KPI、そして組織の立ち上げ方までを網羅的かつ体系的に解説します。

なぜカスタマーサクセスが重要なのか?

まず、カスタマーサクセスがなぜ現代ビジネスの「必須科目」と言われるのか、その定義と時代背景から解き明かしていきましょう。

カスタマーサクセスの定義

カスタマーサクセスとは、自社の製品・サービスを通じて「顧客の成功(Business Outcome)」を実現するために、能動的(プロアクティブ)に働きかけ、伴走していく一連の活動、またはその思想や組織を指します。

重要なのは、単に顧客を「満足」させるだけでなく、顧客が当初期待していた成果、あるいはそれ以上の成果を出せるように導くことです。顧客が成功すれば、サービスを継続的に利用し、より上位のプランへ移行し、さらには新たな顧客を紹介してくれます。つまり、顧客の成功が、自社の成功(=売上成長)に直結するという考え方が、カスタマーサクセスの根幹にあります。

サブスクリプション時代の到来と、「売ってからが始まり」へのビジネスモデル変革

カスタマーサクセスが急速に注目されるようになった最大の理由は、SaaSに代表されるサブスクリプションモデルの普及です。

従来の「売り切り型」モデルでは、「売った瞬間」がゴールでした。しかし、月額課金などのサブスクリプションモデルでは、顧客はいつでも簡単に解約できます。企業が継続的に収益を上げるためには、顧客に「このサービスを使い続ける価値がある」と常に感じてもらわなければなりません。

つまり、ビジネスのゴールが「受注」から「顧客の成功による契約継続」へとシフトしたのです。この「売ってからが本当の始まり」というビジネスモデルの変化こそが、カスタマーサクセスを不可欠な存在にしたのです。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの決定的な違い

「カスタマーサクセスって、要は手厚いカスタマーサポートのことでしょ?」これは非常によくある誤解です。両者は似て非なるものであり、その役割と目的は根本的に異なります。

比較項目カスタマーサクセス (Customer Success)カスタマーサポート (Customer Support)
スタンス能動的(プロアクティブ)受動的(リアクティブ)
目的顧客の成功、LTV向上、解約防止問題解決、顧客満足度向上
役割攻め(利益を生み出す)守り(損失を防ぐ)
時間軸中長期的・未来志向短期的・問題発生時

「攻め」のサクセス vs 「守り」のサポート

カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせやクレームといった問題が発生してから対応する「受動的」な守りの活動です。一方、カスタマーサクセスは、問題が発生する前に、データに基づいて顧客のつまずきを予測し、先回りして解決策を提案する「能動的」な攻めの活動です。

KGI/KPIの違い

その目的の違いは、評価指標(KPI)にも明確に表れます。カスタマーサポートが「問題の解決率」や「応答時間」といった効率性を問われるのに対し、カスタマーサクセスは「LTV(顧客生涯価値)」や「チャーンレート(解約率)」といった、事業の成長に直結する指標によって評価されます。

カスタマーサクセスが追うべき4つの重要KPI

カスタマーサクセスの活動成果を測るためには、適切なKPIの設定が不可欠です。ここでは代表的な4つの指標を紹介します。

解約率(チャーンレート)

一定期間内に、どれくらいの顧客が契約を解約したかを示す割合。 カスタマーサクセスが最も重視すべき指標の一つです。チャーンレートを低く抑えることが、安定した収益基盤の構築に直結します。

LTV(顧客生涯価値)

一人の顧客が、契約を開始してから終了するまでの間に、自社にもたらす利益の総額。 LTVが高いほど、一人の顧客から得られる収益が大きいことを意味します。LTVを最大化することが、カスタマーサクセスの最終的なゴールです。

アップセル・クロスセル率

アップセル

顧客が現在利用しているプランよりも、上位の高額なプランに移行すること。

クロスセル

関連する別の商品やサービスを追加で購入してもらうこと。
これらは、顧客の成功に伴ってLTVを向上させる重要なアクションです。

NPS(ネット・プロモーター・スコア)

「このサービスを友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問を通じて、顧客ロイヤルティ(企業やブランドに対する愛着・信頼)を数値化する指標。 顧客の推奨意向は、将来の契約継続や口コミに繋がる重要な先行指標となります。

ゼロから始めるカスタマーサクセス組織の立ち上げ方

では、実際にカスタマーサクセスを自社で立ち上げるには、何から始めれば良いのでしょうか。ここでは、実践的な5つのステップを紹介します。

STEP1:顧客を分類し、タッチモデルを定義する(ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ)

全ての顧客に同じ手厚い対応をするのは現実的ではありません。顧客を契約金額(LTVのポテンシャル)などに応じて階層分けし、それぞれに適したアプローチ方法(タッチモデル)を定義します。

種類内容
ハイタッチ大口顧客(エンタープライズ)向け。専任担当者が個別に手厚い支援を行う。
ロータッチ中小企業向け。複数の顧客を1人の担当者が担当し、集合セミナーや定期的なメールで支援。
テックタッチ小口顧客向け。システムやツール(チュートリアル動画、FAQサイトなど)を活用し、セルフサービスで成功できるよう支援。

STEP2:顧客の成功体験(オンボーディング)を設計する

顧客がサービスを契約してから、その価値を初めて実感し、自走できるようになるまでの初期プロセス「オンボーディング」を徹底的に設計します。この初期体験が、その後の契約継続率を大きく左右します。ウェルカムメールの送付、初期設定のサポート、チュートリアルの案内など、顧客がつまずきそうなポイントを先回りして支援するプログラムを構築します。

STEP3:顧客の状態を可視化する「ヘルススコア」を設計する

顧客がサービスを順調に活用できているか、解約のリスクはないかを客観的に判断するための「健康診断」のような指標、それが「ヘルススコア」です。サービスのログイン頻度、特定機能の利用率、サポートへの問い合わせ回数などのデータを基に、「健康(緑)」「注意(黄)」「不健康(赤)」のように顧客の状態をスコアリングします。このスコアが悪い顧客に対し、プロアクティブに働きかけることで、解約を未然に防ぎます。

STEP4:活動の基盤となるツール(CSMツール/CRM)を選定する

効率的なカスタマーサクセス活動には、ツールの活用が不可欠です。顧客情報や対応履歴を管理するCRMはもちろん、ヘルススコアの自動算出や、利用状況に応じたアラート通知などが可能なカスタマーサクセス専用ツールの導入を検討します。

STEP5:最初のCSM(カスタマーサクセスマネージャー)を採用・育成する

上記の戦略を実行する、カスタマーサクセスの専門家「CSM(カスタマーサクセスマネージャー)」を配置します。最初のCSMは、社内で顧客への共感力が最も高い、営業やカスタマーサポートのエース人材から抜擢するのが成功への近道です。

カスタマーサクセスマネージャー(CSM)の具体的な仕事内容

CSMは、顧客のライフサイクルの各段階で、多岐にわたる重要な役割を担います。

オンボーディング支援

契約直後の顧客に対し、サービスの導入目的やゴール(KGI/KPI)をヒアリングし、その達成に向けた具体的な活用プランを共に設計・実行支援します。

利用促進(アダプション)と成功事例の共有

定期的なミーティングやメールを通じて、顧客のサービス利用状況を確認し、より便利に使うための機能を紹介したり、他社の成功事例を共有したりすることで、サービスへの定着(アダプション)を促します。

アップセル・クロスセルの提案(エクスパンション)

顧客のビジネスが成長し、新たな課題が見えてきたタイミングで、それを解決できる上位プランやオプション機能の追加(アップセル・クロスセル)を提案し、顧客のさらなる成功と自社の売上拡大を両立させます。

契約更新の働きかけ(リニューアル)

契約更新の数ヶ月前から、サービスの導入効果やROIをまとめたレポートを提示し、顧客が安心して契約を更新できるよう働きかけます。

顧客からのフィードバック(VoC)の収集と社内展開

日々のコミュニケーションを通じて得られた顧客からの要望や改善点(VoC:顧客の声)を収集し、製品開発部門やマーケティング部門にフィードバックする、社内の「顧客代弁者」としての役割も担います。

【事例に学ぶ】先進的なカスタマーサクセスの取り組み

事例1:【BtoB SaaS】Salesforce

カスタマーサクセスの概念を世界に広めた先駆者。「Trailhead」という無料のオンライン学習プラットフォームや、ユーザー同士が助け合うコミュニティを提供し、顧客が自律的に成功できるエコシステムを構築しています。

事例2:【クリエイティブ】Adobe

PhotoshopやIllustratorといったクリエイティブツールを提供するAdobeは、豊富なチュートリアル動画や、トップクリエイターのテクニックを学べるイベントなどを通じて、ユーザーの「創造性の成功」を徹底的に支援しています。

事例3:【国内SaaS】Sansan

法人向け名刺管理サービスを提供するSansanは、各顧客企業に専任担当者をつけ、導入初期のオンボーディングから、全社展開に向けた活用コンサルティングまで、ハイタッチで手厚い支援を行うことで高い契約継続率を誇っています。

カスタマーサクセスに関するQ&A

Q. 専任のCSMは、顧客何社あたりに1人置くべきですか?

A. タッチモデルによって大きく異なります。個別対応が中心のハイタッチでは1人あたり数社〜数十社ロータッチでは1人あたり数百社が一般的です。テックタッチでは、CSMが直接担当するのではなく、仕組みで数千〜数万社をサポートします。

Q. カスタマーサクセスに求められるスキルや、向いている人の特徴は?

A. 顧客の課題に深く共感する傾聴力、課題解決に導くコンサルティング能力、社内外の関係者を巻き込むコミュニケーション能力などが求められます。何よりも、「顧客の成功を、自分の成功のように喜べる」というマインドセットを持つ人が向いています。

Q. 良いCSMツールを選ぶポイントは何ですか?

A. ①自社の既存システム(特にCRM/SFA)とスムーズに連携できるか、②ヘルススコアを柔軟にカスタマイズできるか、③顧客とのコミュニケーション履歴を一元管理できるか、といった点が重要な選定ポイントになります。

まとめ

本記事では、カスタマーサクセスの本質的な概念から、具体的な立ち上げ方、そして日々の業務内容までを網羅的に解説しました。

カスタマーサクセスは、単なる流行りの言葉や、一部のSaaS企業だけに必要な特殊な機能ではありません。それは、顧客を自社の「利益の源泉」としてではなく、共に成功を目指す「パートナー」として捉え、顧客との共存共栄を実現していくという、これからの時代の全ての企業に求められる、最強の経営戦略なのです。

顧客の成功なくして、自社の成功はあり得ない。このシンプルな真理に立ち返り、あなたの会社と顧客との関係を、より深く、より強固なものへと進化させる第一歩を、今日から踏み出してみてはいかがでしょうか。

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