Salesforce連携ツール徹底解説!おすすめ比較と目的別の選び方
目次
企業の成長に不可欠なツールとして定着したSalesforce。しかし、その真価は、他のSaaS(Software as a Service)と連携し、データを最大限に活用することで発揮されます。MAツール、会計ソフト、チャットツールなど、社内に散在するデータをSalesforceに集約・連携することで、手作業による非効率な業務をなくし、データに基づいた迅速な意思決定が可能になります。
一方で、「どのツールをどう選べば良いかわからない」「APIやETLなど専門用語が難しくて…」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、企業のDX推進を支援するITコンサルタントの視点から、2025年の最新情報に基づき、Salesforce連携を実現するツールを解説します
Salesforce連携による3つのメリット
Salesforce連携は、単なる「業務の効率化」に留まらない、企業の競争力を根本から高めるポテンシャルを秘めています。
メリット1:データの二重入力撤廃と業務プロセスの自動化
営業担当者が商談情報をSalesforceに、経理担当者が同じ顧客の請求情報を会計ソフトに、それぞれ手入力している…といった非効率な作業は、入力ミスや時間の浪費の温床です。
Salesforce連携ツールを使えば、例えば「Salesforceで商談が成立したら、自動的に会計ソフトに請求情報を作成し、担当者にSlackで通知する」といった一連の業務プロセスを自動化できます。これにより、従業員は単純作業から解放され、より付加価値の高い業務に集中できます。
メリット2:リアルタイムなデータ一元管理と正確な経営判断
マーケティング部門が持つ見込み客の行動データ、営業部門が持つ商談の進捗状況、カスタマーサポート部門が持つ顧客からの問い合わせ履歴。これらのデータが各システムに分散(サイロ化)していると、顧客の全体像を把握できません。
Salesforceをハブとして各システムのデータを一元管理することで、常に最新かつ正確な情報に基づいた分析が可能になります。例えば、ダッシュボードでマーケティング施策の費用対効果や、営業パイプラインの健全性をリアルタイムに可視化し、経営層はデータに基づいた迅速かつ正確な意思決定を下せるようになります。
メリット3:部門間のサイロ化を解消し、顧客体験を向上
データのサイロ化は、部門間の連携を阻害し、結果として顧客体験(CX)の低下を招きます。例えば、営業担当が顧客の過去の問い合わせ内容を知らずに商談を進めてしまったり、マーケティング部門がすでに失注した顧客にアプローチメールを送ってしまったりするケースです。
Salesforce連携によって、顧客に関する全ての情報がタイムラインに集約され、部門を横断して共有されます。これにより、どの担当者も一貫した質の高い顧客対応が可能となり、顧客満足度とロイヤルティの向上に繋がります。
Salesforce連携を実現する4つの方法
Salesforce連携を実現するには、主に4つの方法があります。それぞれに特徴があり、企業のスキル、予算、目的に応じて最適な選択肢が異なります。
| 連携方法 | 特徴 | こんな企業におすすめ |
|---|---|---|
| 1. iPaaS (クラウド連携サービス) | 【非エンジニア向け】 様々なSaaSをノーコード/ローコードで連携。シナリオ(レシピ)を作成し自動化。 | プログラミング知識がない業務部門が主体で、素早く複数のSaaS連携を実現したい中小企業。 |
| 2. ETL/EAI (データ連携ツール) | 【情シス・IT部門向け】 大量データの抽出・変換・加工・連携に強い。データ基盤構築に最適。 | 全社的なデータ統合を目指し、信頼性や拡張性の高いデータ連携基盤を構築したい中堅〜大企業。 |
| 3. 各SaaSのネイティブ連携 | 特定のSaaS間での公式連携機能。AppExchangeなどで提供。追加コスト不要な場合も。 | 連携したいSaaSが限定的で、かつ公式な連携機能が提供されている場合。 |
| 4. APIを利用した個別開発 | 最も自由度が高く、複雑な要件にも対応可能。ただし専門知識と開発コスト・期間が必要。 | 既存のツールでは要件を満たせず、独自の連携ロジックを実装する必要がある企業。 |
【目的・課題別】Salesforce連携ツールおすすめ18選
ここからは、具体的な連携ツールを「非エンジニア・業務部門向け」「情シス・データ基盤向け」「特定用途に強い」の3つのカテゴリに分けてご紹介します。各ツールの概要は、後述の「Salesforce連携ツール比較一覧表」でもご確認いただけます。
【非エンジニア・業務部門向け】おすすめiPaaSツール
プログラミングの知識がなくても、直感的な操作でSaaS間の連携を自動化できるのがiPaaS(Integration Platform as a Service)です。
Workato (ワークアート)
1,000以上のアプリに対応し、エンタープライズ向けの高度な自動化を実現するiPaaSです。豊富な連携シナリオ(レシピ)が用意されており、高機能ながら操作性も高いのが特徴。セキュリティやガバナンス機能も充実しているため、非エンジニアからIT部門まで幅広く活用できます。
Zapier (ザピアー)
6,000以上のアプリと連携できるiPaaSの代表格です。シンプルな「Zap」というルールを作るだけで、様々なサービスを簡単に連携可能。まずは無料で試してみたい、連携したいアプリが明確な個人や小規模チームに最適です。
Make (メイク)
処理の流れが視覚的にわかるシナリオ作成画面が魅力のiPaaSです。複雑な分岐や条件設定もノーコードで設計できるため、Zapierよりも少し凝った連携をコストを抑えて実現したい場合に適しています。
ActRecipe (アクトレシピ)
freeeや勘定奉行クラウドなど、日本の会計・人事労務SaaSとの連携を得意とする国産iPaaSです。Salesforceを中心としたバックオフィス業務全体の自動化・効率化を目指す企業にとって、心強い選択肢となります。
Anyflow (エニーフロー)
日本のビジネス環境に合わせた国産SaaSへの対応が豊富なiPaaSです。SlackやMicrosoft Teamsといったチャットツール上での操作を起点に連携を動かすなど、現場の使いやすさにこだわった機能が特徴です。
BizteX connect (ビズテクス コネクト)
クラウドRPAとiPaaSを国内で初めて統合したサービスです。SaaS間のAPI連携だけでなく、APIが提供されていないシステムやWebサイト上の定型作業もまとめて自動化できる点が大きな強みです。
ASTERIA Warp (アステリア ワープ)
100種類以上の連携アダプタを持ち、オンプレミスのシステムとクラウドサービスを繋ぐようなハイブリッド環境の連携にも対応できます。長年の実績があり、中小企業から大企業まで幅広いニーズに応えられる柔軟性が魅力です。
【情報システム・データ基盤向け】おすすめETL/EAIツール
大量のデータを安定的に処理し、全社的なデータ基盤を構築するならETL (Extract, Transform, Load) / EAI (Enterprise Application Integration) ツールが適しています。
MuleSoft Anypoint Platform (ミュールソフト)
Salesforce社が提供する、API主導でアプリケーションを連携させるためのプラットフォームです。APIを再利用可能な部品として管理することで、変化に強く、拡張性の高いIT基盤の構築を目指す大企業に適しています。
Informatica Cloud Data Integration (インフォマティカ)
データ連携・管理分野のグローバルリーダーです。オンプレミス・クラウドを問わない高い接続性と処理性能に加え、データ品質管理(MDM)まで含めた包括的なデータマネジメント基盤を構築したい場合に最適です。
Talend Cloud (タレンド)
オープンソースをベースとしており、コストパフォーマンスに優れるデータ統合プラットフォームです。データ連携からデータ品質、API連携までを単一の環境で提供し、柔軟なカスタマイズを求める企業に適しています。
DataSpider Servista (データスパイダー)
長年の実績を誇る国産EAIツールです。日本の商習慣やシステム環境に合わせた豊富なアダプタと、手厚い国内サポートが特徴で、安心して導入・運用を進めたい企業におすすめです。
Denodo Platform (デノド)
物理的にデータを一箇所に集めるETLとは異なり、「データ仮想化」という技術で各システムにデータを置いたまま統合・参照できるプラットフォームです。リアルタイム性の高いデータ活用を求めるニーズに応えます。
【特定用途に強い】おすすめ特化型連携ツール
特定の業務領域に特化し、Salesforceとのシームレスな連携を実現するツールです。多くはSalesforce AppExchangeで提供されています。
【MA連携】Salesforce Account Engagement (旧 Pardot)
Salesforce純正のBtoB向けマーケティングオートメーション(MA)ツールです。Salesforceの顧客・商談データと完全に連携し、リード獲得から営業へのスムーズな連携までを一元管理したい場合に最適な選択肢です。
【MA連携】Synergy! LEAD (シナジーリード)
Salesforceにインストールして利用する日本製のMAツール。使い慣れたSalesforceの画面上でメール配信やフォーム作成が可能で、多機能すぎない手軽なMAを始めたいユーザーに適しています。
【会計連携】freee for Salesforce
Salesforce上の商談情報から、会計freeeの見積書や請求書を数クリックで作成・連携できます。営業から経理まで、請求・入金管理プロセスを大幅に効率化したいfreeeユーザー企業に有効です。
【請求管理】請求管理ロボ for Salesforce
請求書の発行・送付から集金、消込、催促までを自動化するツールです。特に、毎月定額の請求が発生するサブスクリプションビジネスの請求管理業務を大きく効率化します。
【帳票】SVF Cloud for Salesforce
日本の複雑な帳票レイアウトに対応するクラウド帳票サービスです。Salesforceのデータを利用して、企業独自の精緻な見積書や請求書、各種証明書などをワンクリックで出力できます。
【電子契約】CloudSign for Salesforce
Salesforce上の顧客情報をもとに契約書を送信し、締結後は契約書ファイルが自動でSalesforceに保管されます。契約業務のスピードアップとペーパーレス化、コンプライアンス強化を同時に実現します。
Salesforce連携ツール比較一覧表
| カテゴリ | ツール名 | ターゲットユーザー | 特徴・強み | 料金体系の目安 |
|---|---|---|---|---|
| iPaaS | Workato | 業務部門~IT部門 | 高機能・高セキュリティなエンタープライズ向け自動化 | 要問い合わせ |
| Zapier | 非エンジニア・個人 | 圧倒的なアプリ対応数(6,000+)、手軽さが魅力 | 無料プランあり | |
| Make | 非エンジニア | 視覚的なシナリオ作成、複雑な分岐もノーコードで | 無料プランあり | |
| ActRecipe | 業務部門(特にバックオフィス) | 国産。日本の会計・人事労務SaaS連携に強い | 月額3万円~ | |
| Anyflow | 業務部門 | 国産。日本のビジネスSaaSへの対応が豊富 | 要問い合わせ | |
| BizteX connect | 業務部門 | クラウドRPAとiPaaSを統合、幅広い業務を自動化 | 要問い合わせ | |
| ASTERIA Warp | 業務部門~IT部門 | オンプレミス連携にも強い、豊富な導入実績 | 月額3万円~ | |
| ETL/EAI | MuleSoft Anypoint Platform | IT部門 | Salesforce純正。API主導で全社的な連携基盤を構築 | 要問い合わせ |
| Informatica Cloud Data Integration | IT部門 | データ品質・管理まで含めた包括的データマネジメント | 要問い合わせ | |
| Talend Cloud | IT部門 | オープンソースベースで高いコストパフォーマンス | 無料版あり | |
| DataSpider Servista | IT部門 | 国産。豊富なアダプタと手厚い国内サポート | 要問い合わせ | |
| Denodo Platform | IT部門 | データを移動させない「データ仮想化」技術 | 要問い合わせ | |
| 特化型 | Salesforce Account Engagement | マーケティング部門 | Salesforce純正のBtoB向けMA、営業連携がスムーズ | 本体ライセンスによる |
| Synergy! LEAD | マーケティング部門 | Salesforce上で完結する国産MAツール | 本体ライセンスによる | |
| freee for Salesforce | 営業・経理部門 | freee会計とのシームレスな請求・入金管理 | 本体ライセンスによる | |
| 請求管理ロボ for Salesforce | 経理・営業部門 | 請求・集金・消込・催促までを完全自動化 | 要問い合わせ | |
| SVF Cloud for Salesforce | 全部門 | 日本の複雑な帳票レイアウトに対応 | 要問い合わせ | |
| CloudSign for Salesforce | 営業・法務部門 | 契約業務のスピードアップとペーパーレス化 | 本体ライセンスによる |
Salesforce連携ツールを選ぶ5つの比較ポイント
数あるツールの中から自社に最適なものを選ぶためには、以下の5つのポイントを確認することが重要です。
1. 「誰が」「何のために」連携するのか目的を明確にする
最も重要なのが目的の明確化です。「非エンジニアのマーケ担当者が、Webからのリード情報を手入力なしでSalesforceに登録したい」のか、「情シス部門が、全社の基幹システムとSalesforceのデータを統合し、経営ダッシュボードを構築したい」のかで、選ぶべきツールはiPaaSかETL/EAIか、大きく変わります。
2. 連携したいアプリケーションに対応しているか
ツールによって対応しているアプリケーション(コネクタやアダプタ)の数は異なります。現在利用しているSaaSはもちろん、将来的に連携する可能性のあるSaaSに対応しているか、公式サイトなどで必ず確認しましょう。特に国産SaaSとの連携を考えている場合は、国産ツールのほうが対応しているケースが多いです。
3. 操作性(ノーコードか、専門知識が必要か)
誰が連携設定の構築・運用を行うのかを想定しましょう。業務部門の担当者が主体となるなら、WorkatoやZapierのような、プログラミング不要で直感的に操作できるノーコード/ローコードのiPaaSが適しています。一方、IT部門が管理・運用するなら、より高度で複雑な設定が可能なETL/EAIツールが選択肢に入ります。
4. 料金体系は自社の規模や利用頻度に見合っているか
料金体系はツールによって様々です。「月額固定制」「連携するタスク数やデータ量に応じた従量課金制」「連携コネクタ数による課金」などがあります。連携の頻度やデータ量を事前に見積もり、自社の利用規模に合ったコストパフォーマンスの高いツールを選びましょう。無料プランやトライアル期間を活用して、スモールスタートするのも良い方法です。
5. トラブルに備えたサポート体制は万全か
データ連携はビジネスの根幹に関わるため、トラブル発生時のサポート体制は非常に重要です。日本語でのサポートが受けられるか、対応時間はビジネスタイム内か24時間365日か、サポートはメールのみか電話でも可能か、といった点を確認しましょう。特に重要なデータを扱う場合は、国内に拠点があり、迅速な対応が期待できるベンダーを選ぶと安心です。
【Q&A】Salesforce連携に関するよくある質問
Q1. 無料で使える連携ツールはありますか?注意点は?
A. あります。ZapierやMakeなどのiPaaSには、連携できるタスク数やアプリ数に制限のある無料プランが用意されています。まずは手軽に試してみたい、個人的なタスクを自動化したいといった場合には非常に有効です。
注意点としては、無料プランは機能が制限されていたり、処理速度が遅かったり、ビジネスで利用するにはサポートが不十分だったりする場合があります。重要な業務で利用する場合は、機能やサポート体制が充実している有料プランへの移行を前提に検討することをおすすめします。
Q2. 連携設定はどのくらい難しいですか?
A. ツールによります。iPaaSツールであれば、多くはプログラミング知識を必要とせず、画面の指示に従って連携したいアプリを選び、どのデータ項目をどこに繋ぐかを設定するだけで完了します。数十分で簡単な連携を組むことも可能です。
一方、ETL/EAIツールやAPIでの個別開発は、データ構造の理解や専門知識が必要となるため、IT部門の担当者や開発パートナーの協力が必要になるケースが一般的です。
Q3. 導入後の運用で気をつけるべきことは何ですか?
A. 導入後に気をつけるべきは主に3点です。
1. エラー監視
連携が何らかの理由で失敗した際に、すぐに気づけるようにエラー通知の設定をしておきましょう。
2. 仕様変更への対応
連携しているSaaS側でアップデート(APIの仕様変更など)があった場合、連携が動かなくなることがあります。定期的に連携設定を見直し、必要に応じてメンテナンスを行う体制が必要です。
3. "野良連携"の防止
iPaaSの導入で誰でも簡単に連携が作れるようになると、管理者の知らないところで連携(野良連携)が増え、セキュリティリスクや管理コストの増大に繋がる可能性があります。利用ルールを定め、IT部門が全体を把握できる仕組みを整えることが重要です。
まとめ
本記事では、Salesforceの価値を最大化する連携ツールとその選び方を解説しました。
手軽に業務を自動化したい業務部門の方は、まずiPaaSの無料プランで連携のメリットを体験するのがおすすめです。一方、全社のデータを統合したい情報システム部門の方は、信頼性の高いETL/EAIツールを軸にデータ基盤全体の設計を検討すると良いでしょう。
最も大切なのは、ツール導入そのものを目的にせず、「どの業務課題を解決したいのか」を明確にすることです。この記事を参考に自社に最適なツールを見つけ、データのサイロ化を解消し、ビジネスの成長に繋げてください。