Salesforceを活用できない?原因診断と復活プランを徹底解説
目次
「大きな期待と投資をしてSalesforceを導入したのに、現場からは不満の声ばかり…」
「入力が面倒で、誰もデータを入れてくれない。これでは高価なExcelだ…」
「『活用しろ』と号令をかけるだけで、具体的な成果に繋がらず、完全に”宝の持ち腐れ”だ」
もしあなたが今、このような状況で頭を抱えているのなら、その焦りや失望感は痛いほどよく分かります。そして何よりお伝えしたいのは、その悩みは、決してあなたの会社だけの問題ではないということです。
世界No.1のCRM/SFAであるSalesforceは、正しく活用すればビジネスを劇的に変革する力を秘めています。
この記事は、なぜあなたの会社のSalesforceが活用されないのか、その根本原因を突き止めるための「診断チェックリスト」と、明日から具体的に何をすべきかという「復活(リバイバル)プラン」を紹介します。
Salesforceが“使われない”典型的な課題
まず、自社の状況を客観的に見てみましょう。「活用できていない」状態には、いくつかの典型的な課題が現れます。
課題1:データが入力されず、情報が不正確・不最新
営業担当者が活動履歴や商談情報を入力してくれない。そのため、Salesforce上のデータは古く、不正確なものばかり。結局、正確な情報は担当者個人のExcelや記憶の中にしか存在しない。
課題2:現場から「Excelの方が楽だった」という声が上がる
「入力項目が多すぎる」「画面が複雑で分かりにくい」「結局、二重入力になって仕事が増えた」といった現場の不満が噴出。「前のやり方に戻してほしい」という声まで聞こえてくる。
課題3:レポートやダッシュボードが誰も見ない「飾り」になっている
導入時にコンサルタントが作ってくれた、見た目は綺麗なレポートやダッシュボード。しかし、その元となるデータが不正確なため、誰もその数値を信用しておらず、全く見られていない。
課題4:導入したのに、会議のやり方や報告業務が変わらない
Salesforceを導入したにもかかわらず、週次の営業会議では、依然として各担当者が作成したExcelの報告資料が使われている。Salesforceのダッシュボードは、ただスクリーンに映されているだけの「お飾り」になっている。
Salesforceが活用できない5つの根本原因
これらの症状の裏側には、必ず根本的な原因が潜んでいます。あなたの会社がどの病に侵されているのか、考えてみてください。
原因1:何のために導入したのか、誰も答えられない
最も深刻な原因です。「DX推進のため」「競合も入れているから」といった曖昧な理由で導入し、「Salesforceを使って、会社の何を、どう変革したいのか」という明確な目的が、経営層から現場まで共有されていないケース。目的がなければ、誰もが「なぜ、この面倒な作業をしなければならないのか」という問いに答えられません。
原因2:現場の業務を無視した、理想論のシステムになっている
経営層やIT部門が主導し、現場の営業担当者のリアルな業務フローや意見を聞かずに、理想論だけでシステムを構築してしまったケース。結果として、「現場の実態に合わない」「使いにくい」システムが出来上がり、現場からそっぽを向かれてしまいます。
原因3:導入後のトレーニングやサポートが不十分
導入時に一度、集合研修を行ったきり。その後は「各自で勉強して慣れてください」と現場に丸投げ。これでは、ITツールに不慣れな担当者はすぐにつまずき、疑問を解決できないまま、使うことを諦めてしまいます。
原因4:経営層が活用状況に無関心で、「やらされ感」が蔓延
導入を決定した経営層自身が、Salesforceのダッシュボードを見ることもなく、会議でもデータに一切触れない。これでは、現場は「トップは本気じゃないんだな」「入力しても誰も見ていないなら意味がない」と感じ、「やらされ感」だけが募っていきます。
原因5:使っても自分にメリットがないと、現場が感じている
現場の担当者にとって、Salesforceへのデータ入力は「手間が増えるだけ」の作業になっていないでしょうか。「入力すれば、報告書作成が自動化されて楽になる」「他のメンバーの成功事例が見られて、自分の営業に活かせる」といった、入力の手間を上回る明確なメリット(見返り)がなければ、活用は進みません。
Salesforce活用度診断チェックリスト
根本原因を特定するために、以下の20の質問にYes/Noで答えて、自社の「病状」を客観的に診断してみましょう。
20の質問で、あなたの会社の課題を客観的にスコアリング
- Salesforce導入の目的を、現場の担当者が3つ以上、具体的に言えるか?
- 導入目的は、「受注率5%向上」のような具体的な数値目標(KPI)に落とし込まれているか?
- 導入目的が、会社の経営戦略や事業戦略と明確にリンクしているか?
- 「なぜ他のツールではなくSalesforceなのか」という理由を、関係者が説明できるか?
- 導入前の計画段階で、現場の担当者に対する十分なヒアリングを行ったか?
- 現在のSalesforceの入力項目や画面は、現場の業務フローに合っているか?
- 現場の担当者から「入力項目が多すぎる」「操作が複雑」という声が上がっていないか?
- 現場からの改善要望を定期的に吸い上げ、システムに反映させる仕組みがあるか?
- 全利用者を対象とした、体系的な導入時トレーニングを実施したか?
- 新入社員や中途社員向けの、Salesforceのトレーニングプログラムがあるか?
- 操作方法が分からない時、気軽に質問できる社内の担当者や窓口が決まっているか?
- Salesforceの無料学習ツール「Trailhead」の存在が、社内で周知されているか?
- 経営層(社長や役員)は、Salesforceのダッシュボードを定期的に見ているか?
- 部門の定例会議(例:営業会議)で、Salesforceのレポートやダッシュボードが議論の土台として使われているか?
- Salesforceの活用度が、人事評価やインセンティブの対象として(少しでも)考慮されているか?
- Salesforceの活用推進をミッションとする、専任の担当者またはチームが存在するか?
- Salesforceを使うことで、現場担当者の業務が何か一つでも明確に楽になっているか?(例:報告書作成の自動化など)
- Salesforceを活用した成功事例(小さなものでも)が、社内で共有される仕組みがあるか?
- Salesforce上のデータを使うことで、より良い営業判断ができたという成功体験が一つでもあるか?
- もし明日からSalesforceが使えなくなったら、明確に困る業務があるか?(=必須ツールになっているか)
【診断結果】
| Yesの数 | 判定 | コメント |
|---|---|---|
| 15個以上 | 健全 | 健全な活用状態です。さらなる高みを目指しましょう。 |
| 10〜14個 | 黄色信号 | いくつかの課題を抱えています。本記事の処方箋で早期に改善しましょう。 |
| 9個以下 | 赤信号 | 深刻な状態です。根本的な立て直しが必要です。 |
明日からできる再活性化(リバイバル)プラン
診断結果を踏まえ、あなたの立場で「明日から何をすべきか」という具体的なアクションプランを提示します。
Plan A:改めて「導入目的」を、ビジョンと共に語り直す
なぜSalesforceが必要なのか。それによって会社はどう変わり、社員にどんな未来が待っているのか。あなたの言葉で、情熱を持って、繰り返し語ってください。ビジョンなきプロジェクトに、魂は宿りません。
Plan B:活用状況を議題とする「定例会議」を主催する
週に一度、30分でも構いません。Salesforceのダッシュボードをスクリーンに映し、「この数字はどういうことか?」「来週、この数字を動かすために何をすべきか?」を議論する会議を主催してください。経営トップがデータを見ているという事実が、何よりのメッセージになります。
Plan C:「スモールサクセス」を意図的に作り、全社に共有する
「〇〇さんがSalesforceのレポート機能を活用して、報告書作成時間を週2時間も短縮したぞ!」といった、小さな成功事例を見つけ出し、全社で称賛・共有しましょう。小さな成功体験の積み重ねが、大きな変革のうねりを生み出します。
Plan D:チームメンバーの入力負荷をヒアリングし、改善要望をまとめる
「どこが面倒か?」「どの項目が不要か?」を、メンバー一人ひとりにヒアリングしましょう。現場のリアルな声を集め、具体的な改善要望としてシステム管理者にフィードバックすることが、あなたの重要な役割です。
Plan E:レポート・ダッシュボードを、チームの目標管理と連動させる
チームのKPIと個人の目標を、Salesforceのダッシュボードで管理しましょう。目標達成状況がリアルタイムで見える化されれば、メンバーの当事者意識が高まり、ゲーム感覚で目標を追うようになります。
Plan F:チーム内で活用ヒーローを見つけ、ナレッジを共有させる
チームの中に一人でも、「この機能、便利だよ」と使いこなしているメンバー(活用ヒーロー)がいるはずです。そのメンバーに簡単な勉強会を開いてもらうなど、現場の成功ナレッジを横展開する場を作りましょう。
Plan G:まずは自分の業務が楽になる「一点」を探す
全てを使いこなそうとする必要はありません。まずは、あなたの仕事が少しでも楽になる機能を一つだけ見つけて、マスターすることから始めましょう。それは「レポートの自動作成」かもしれませんし、「メールテンプレート」かもしれません。
Plan H:不満や改善要望を、具体的に上司や担当者に伝える
「使いにくい」と愚痴を言うだけでは何も変わりません。「この入力項目は不要だと思う」「このレポートが見たい」といった、具体的な改善要望として、勇気を持って声を上げましょう。
Plan I:社内の詳しい人や、Trailhead(無料学習ツール)を活用する
分からないことを一人で抱え込まず、社内の詳しい人に質問したり、Salesforceが提供する無料のオンライン学習ツール「Trailhead」を試したりしてみましょう。ゲーム感覚で、楽しくスキルアップできます。
Salesforce定着化を加速させる3つの秘訣
秘訣1:運用ルールを「シンプル」に保つ
最初から完璧なルールを目指してはいけません。入力項目や運用ルールは、必要最小限の「これだけは守ろう」というシンプルなものから始め、状況に応じて少しずつ改善していくのが成功のコツです。
秘訣2:ゲーミフィケーション要素を取り入れる
「月間入力件数No.1」を表彰したり、ダッシュボードでランキングを表示したりと、メンバーが楽しみながら競い合えるようなゲームの要素を取り入れることも、定着化に非常に有効です。
秘訣3:小さな改善を高速で回し続ける
現場から上がってきた改善要望に対し、完璧ではなくても、まずは素早く対応し、フィードバックを得ながら改善を繰り返していく。この「小さな改善の積み重ね」が、現場の信頼を勝ち取り、システムを自分たちのものとして育てていく意識を醸成します。
よくある質問 (Q&A)
Q1. 再活性化に取り組んでもダメな場合、「撤退(解約)」も選択肢ですか?
A1. それもまた重要な経営判断です。あらゆる手を尽くしても、ビジネスモデルと根本的に合わない、あるいは投資対効果が長期的に見込めないと判断した場合は、損切りとしての「撤退」も選択肢に入れるべきです。ただし、その判断を下す前に、本記事で紹介したような立て直しのためのアクションを、最低でも3ヶ月は本気で試してみることを強くお勧めします。
Q2. 活用を立て直すために、追加でパートナーに支援を依頼する場合の費用は?
A2. 状況によりますが、「定着化支援」や「活用コンサルティング」といったサービスを提供しているパートナーは多く存在します。費用は、月額10万円程度の顧問契約から、数百万円規模のプロジェクトまで様々です。重要なのは、現状の課題を正確に伝え、スコープを明確にした上で見積もりを取ることです。
Q3. 現場のITリテラシーが低い場合、何から始めるべきですか?
A3. まずは、入力負荷を極限まで下げることから始めるべきです。入力項目を減らし、選択リストを活用し、モバイルアプリからの簡単入力などを徹底します。そして、「入力すれば、〇〇が楽になる」という、ITリテラシーが低くても分かる、明確で直接的なメリットを一つでも提供することが、活用の入り口となります。
まとめ
Salesforceが活用できない原因は、ツールの性能にあることは稀です。そのほとんどが、導入の目的や、活用のプロセス、そして組織の文化に根差しています。
しかし、それは裏を返せば、ツールを入れ替えることなく、あなた自身の行動と思考を変えることで、状況は必ず好転するということです。
この記事で提示した診断チェックリストと処方箋は、あなたの会社のSalesforceを「宝の持ち腐れ」から「最強の武器」へと復活させるための、最初の、そして最も重要な一歩です。絶望する必要はありません。今からでも、あなたの会社は変われます。