競合調査のやり方とは?5つのステップから便利ツールまで徹底解説
目次
「新規事業を立ち上げるが、何から手をつければいいか分からない…」
「自社の製品やサービスの立ち位置が、市場で曖-昧になっている…」
「競合調査をやったはいいものの、膨大な情報を集めただけで、次のアクションに繋がらない…」
ビジネスという航海において、羅針盤や海図なしに進むのは無謀と言えるでしょう。「競合調査」は、自社の進むべき針路を定め、荒波を乗り越えるための、まさにその海図を手に入れるための極めて重要な活動です。しかし、多くの担当者がそのやり方が分からなかったり、「調査のための調査」で終わってしまったりしているのが実情です。
この記事では、あらゆるビジネス戦略の土台となる「競合調査」について、その基本的な考え方から、すぐに使えるフレームワーク、具体的な調査手順、そして便利なツールまでを、網羅的かつ体系的に解説します。
なぜビジネスに競合調査が不可欠なのか?
まず、競合調査がなぜこれほどまでに重要なのか、その定義と目的を再確認しておきましょう。
競合調査の定義
競合調査とは、自社が事業を行う市場や業界において、競合となる企業やサービスについて多角的に情報を収集・分析し、市場における自社の相対的な立ち位置(ポジション)を客観的に把握することです。
これは、単に「敵を知る」というだけでなく、「顧客を知り、自社を知る」ことでもあります。市場全体の構造を俯瞰することで、自社の進むべき道筋が明確になるのです。
競合調査の3つの主要な目的
競合調査を行う目的は、主に以下の3つに集約されます。
市場機会の発見
競合がまだ手をつけていない、あるいは弱い領域(ホワイトスペース)を発見し、新規参入や事業拡大のチャンスを見つけ出します。
自社の強みの再認識
競合と比較することで、自社の製品やサービスが持つ独自の強み(差別化要因)や、逆に弱みを客観的に把握し、マーケティング戦略や製品開発に活かします。
脅威の回避
競合の新たな動きや、新規参入者の動向をいち早く察知し、先手を打つことで、自社のシェアや利益を守ります。
【5ステップで実践】成果に繋がる競合調査の進め方
「何から始めればいいか分からない」という方のために、競合調査を成功に導くための具体的な5つのステップを紹介します。
STEP1:調査の「目的」と「ゴール」を明確にする
全ての調査は、目的設定から始まります。「なぜ、この調査を行うのか?」を明確にしましょう。例えば、「新規事業の価格設定の参考にしたい」「既存製品のマーケティング戦略を見直したい」「自社サイトのSEO戦略を立てたい」など、目的が具体的であるほど、その後の調査の精度は高まります。
STEP2:調査対象となる「競合」を定義・選定する
次に、「誰を」調査するのかを定義します。競合は、事業内容や顧客層の重複度合いから、以下の3つに分類できます。
| 種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 直接競合 | 製品・サービス、顧客層がほぼ同じ企業。 | トヨタにとっての日産 |
| 間接競合 | 製品・サービスは違うが、同じ顧客のニーズを満たす企業。 | カフェにとってのコンビニのイートインコーナー |
| 将来の競合 | 現在は競合していないが、将来的に参入してくる可能性のある企業。 | ― (具体例は業界や市場動向により変動するためここでは一般表現に留めます) |
全ての競合を調べるのは非効率なため、目的に応じて3〜5社程度の調査対象を選定するのが一般的です。
STEP3:調査項目を具体的にリストアップする
「何を」調べるのか、具体的な調査項目を洗い出します。これは後述の「競合調査の項目チェックリスト」を参考に、目的に合わせてカスタマイズしてください。項目を事前にリスト化しておくことで、調査の抜け漏れを防ぎます。
STEP4:情報収集を実行する(オンライン・オフライン)
リストアップした項目に従い、実際に情報収集を行います。
| 調査方法 | 内容 |
|---|---|
| オンライン調査 | 競合のWebサイト、SNS、プレスリリース、IR情報、口コミサイト、各種調査レポートなど。 |
| オフライン調査 | 競合製品の購入・利用、店舗への訪問、展示会への参加、顧客へのヒアリングなど。 |
STEP5:フレームワークを活用して情報を分析・整理し、戦略に落とし込む
集めた情報を、ただ眺めているだけでは意味がありません。後述する「フレームワーク」を活用して情報を整理・分析し、「自社は次に何をすべきか」という具体的な戦略やアクションプランに落とし込みます。このステップこそが、競合調査の最も重要な核心部分です。
競合調査で使える7つの主要フレームワークと実践的な使い方
ここでは、集めた情報を整理・分析し、戦略的示唆を得るための代表的なフレームワークを7つ紹介します。
【基本】3C分析:市場環境をマクロに捉える
Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの視点から市場環境を分析する最も基本的なフレームワークです。自社の置かれた状況を客観的に把握するのに役立ちます。
【戦略立案】SWOT分析:自社の内部・外部環境を整理する
自社のStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素を分析します。自社の強みを活かして機会を掴み、弱みを克服して脅威に備えるための具体的な戦略(クロスSWOT分析)を導き出します。
【マーケティング】4P/4C分析:製品・サービスの戦略を練る
4P(企業視点)
Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)
4C(顧客視点)
Customer Value(顧客価値)、Cost(顧客コスト)、Convenience(利便性)、Communication(対話)
競合と自社のマーケティングミックスを比較し、改善点を見つけ出します。
【業界構造】ファイブフォース分析:業界の収益性を分析する
①競合他社、②新規参入の脅威、③代替品の脅威、④売り手の交渉力、⑤買い手の交渉力という5つの力(Force)から、業界の構造的な魅力を分析します。自社が属する業界で、どこに収益機会があるのかを明らかにします。
【ポジショニング】STP分析:狙うべき市場を定める
Segmentation(市場の細分化)、Targeting(ターゲット市場の選定)、Positioning(自社の立ち位置の明確化)の3つのステップで、市場における自社の狙うべきポジションを定めます。
【顧客視点】バリューチェーン分析:事業活動の強み・弱みを特定する
企業の事業活動を、購買、製造、出荷、販売、サービスといった一連の流れ(チェーン)として捉え、どの部分で付加価値(バリュー)を生み出しているかを分析します。競合と比較し、自社のコスト構造や強みの源泉を特定します。
【Webサイト】競合サイト分析:SEO・コンテンツ戦略を丸裸にする
競合サイトが「どのようなキーワードで」「どれくらいのアクセスを集め」「どのようなコンテンツで」「どこから被リンクを得ているか」などを分析します。自社のWebマーケティング戦略、特にコンテンツSEO戦略を立案する上で不可欠です。
競合調査の項目チェックリスト
調査項目に迷った際は、以下のリストを参考にしてください。
会社概要・事業戦略
- 経営理念、ビジョン
- 従業員数、売上高、設立年
- 事業内容、収益モデル
- 中期経営計画、IR情報
製品・サービス(機能、品質、デザイン)
- 製品ラインナップ
- 各製品の機能、特徴、強み
- 品質、デザイン、UI/UX
- サポート体制
価格・料金体系
- 価格、料金プラン
- 割引、キャンペーンの有無
- 支払い方法
販売チャネル・提供方法(Channels)
- 直販か代理店か
- オンラインかオフラインか
- 店舗の立地、ECサイトの有無
プロモーション・マーケティング活動
- Webサイト(SEO、コンテンツ)
- Web広告(リスティング、ディスプレイ、SNS広告)
- SNSアカウントの運用状況
- プレスリリースの内容
- 展示会やセミナーの出展状況
顧客からの評判・口コミ
- 口コミサイトやレビューサイトでの評価
- SNSでの言及(ポジティブ/ネガティブ)
- メディアでの掲載実績
競合調査を効率化するおすすめツール10選
【Webサイト分析】SimilarWeb, Ahrefs
競合サイトのアクセス数、流入チャネル、流入キーワード、被リンク状況などを詳細に分析できます。
【SNS分析】Social Insight
競合のSNSアカウントのフォロワー数推移、エンゲージメント率、人気投稿などを分析できます。
【口コミ・評判分析】Googleアラート, X(旧Twitter)検索
競合の社名やサービス名でアラートを設定しておけば、Web上で言及された際に通知を受け取れます。
【資料・レポート収集】官公庁の統計データ, 業界団体のレポート
総務省統計局や各省庁、帝国データバンクなどが公開している統計データは、マクロな市場環境を把握する上で非常に信頼性が高い情報源です。
競合調査に関するQ&A
Q. 調査対象の競合は、何社くらい選べば良いですか?
A. 3〜5社に絞るのが一般的です。 多すぎると情報が発散し、分析が困難になります。自社と最も事業領域が重なる「直接競合」を2〜3社、少しビジネスモデルが異なる「間接競合」を1〜2社選ぶと、バランスの良い分析ができます。
Q. 調査結果は、どのようにまとめれば分かりやすいですか?
A. 調査目的と結論(So What?)を最初に示すことが重要です。集めた情報を羅列するのではなく、「この調査結果から、我々は〇〇という機会を発見した。したがって、△△という戦略を取るべきだ」というように、分析から得られた示唆と、次へのアクションプランをセットでまとめることを心がけましょう。本記事で紹介したフレームワークを活用するのも有効です。
Q. 調査しても、結局「隣の芝は青い」と感じるだけで終わってしまいます。
A. これは競合調査で非常によくある罠です。対策は、調査の目的を「模倣」ではなく「差別化」に置くことです。競合の強みを分析するのは、それを真似るためではなく、「その強みとは異なる土俵で、自社はどう戦うべきか」を考えるためです。自社の「強み」を再認識し、それをどう活かすかという視点を常に持つことが重要です。
まとめ
本記事では、競合調査の基本的な進め方から、実践的なフレームワーク、便利なツールまでを網羅的に解説しました。
競合調査の最終的なゴールは、競合の優れた点を真似することではありません。市場という全体地図の中で、競合のポジションと自社のポジションを客観的に把握し、自社だけが提供できる独自の価値(=差別化戦略)を見つけ出し、実行に移すことにあります。
この記事が、あなたの会社を唯一無二の存在へと導くための、強力な海図となることを願っています。