ペルソナとは?作り方を5ステップで徹底解説!
目次
「自社の商品やサービスの良さが、なぜか顧客に響かない…」
「Webサイトを作ったものの、誰に向けて情報を発信すればいいか分からない…」
「上司から『ペルソナを設定しろ』と言われたけど、そもそもペルソナって何?」
もしあなたが今、このような壁にぶつかっているのなら、その原因は「顧客の顔」が見えていないことにあるのかもしれません。
現代のマーケティングにおいて、顧客理解の精度を飛躍的に高める手法として「ペルソナ」設定が不可欠となっています。
この記事では、マーケティングの成果を劇的に変える「ペルソナ」について、ペルソナの基本や具体的な作り方などを誰にでも分かるように、順を追って徹底的に解説します。
そもそもペルソナとは?
まず、マーケティングの議論で必ず登場する「ペルソナ」と「ターゲット」の違いを明確に理解することから始めましょう。この2つは似ているようで、その本質は全く異なります。
ペルソナの定義:「たった一人の理想の顧客像」
ペルソナとは、自社の商品やサービスにとって最も重要で象徴的な顧客モデルを、あたかも実在する一人の人物かのように、詳細なプロフィールやストーリーを設定したものです。
年齢や性別といった情報だけでなく、その人の氏名、顔写真、性格、価値観、ライフスタイル、普段抱えている悩み、情報収集の方法まで、具体的に描き出します。目的は、「たった一人の顧客」を深く理解し、その人に向けてメッセージを届けることにあります。
「ターゲット」との違いは人物像の解像度の高さ
一方、「ターゲット」は、特定の属性を持つ「集団」を指します。
ターゲットの例
「首都圏在住の30代男性、会社員、年収600万円以上」
ペルソナの例
「田中健太さん(32歳)、東京都渋谷区在住。IT企業に勤める営業マンで、最近マネージャーに昇進。仕事は充実しているが、忙しくて自炊の時間がなく、健康的な食生活に課題を感じている。情報収集はスマホが中心で、ビジネス系ニュースアプリとSNSをよく見る…」
いかがでしょうか。ターゲットがぼんやりとした「集団の輪郭」であるのに対し、ペルソナは顔や人格まで見える「鮮明な個人像」であることが分かります。この解像度の高さこそが、両者の決定的な違いです。
ペルソナ設定がもたらす3つのメリット
では、なぜ時間と労力をかけてまで、この「たった一人」を詳細に設定する必要があるのでしょうか。それは、ペルソナがマーケティング活動に計り知れないメリットをもたらすからです。
メリット1:チーム内で「顧客像」のズレがなくなる
「うちの顧客は、たぶんこんな人たちだよね」という会話は、多くの企業で交わされます。しかし、この認識は、営業、マーケター、開発者といった立場によって微妙に、時には大きく食い違っているものです。
ペルソナを設定し、具体的な人物像を一枚のシートにまとめることで、チーム全員が「我々の顧客は、この田中健太さんのような人だ」という共通認識を持つことができます。 これにより、議論のズレや手戻りがなくなり、一貫性のあるアプローチが可能になります。
メリット2:ユーザー視点が生まれ、施策がブレなくなる
マーケティング施策を考えていると、「あれもやりたい」「この機能も必要かも」と、いつの間にか作り手側の都合や思い込みが先行しがちです。
そんな時、「この機能は、田中さんが本当に喜ぶだろうか?」「このキャッチコピーは、田中さんの心に響くだろうか?」と、ペルソナに問いかけることで、常にユーザー視点に立ち返ることができます。ペルソナは、施策がブレないように導いてくれる「判断の拠り所」となるのです。
メリット3:データに基づいた意思決定が迅速になる
ペルソナは、単なる空想の人物ではありません。後述するように、顧客へのインタビューやアンケート、Webサイトのアクセス解析といった客観的なデータに基づいて作成されます。
そのため、施策の方向性で意見が分かれた際も、「私はA案がいいと思う」「いや、B案だろう」といった主観のぶつかり合いではなく、「ペルソナの田中さんは、こういう価値観だからA案を支持するはずだ」という、データに基づいた建設的な議論が可能になり、意思決定の質とスピードが向上します。
【5ステップで解説】失敗しないペルソナの作り方
それでは、いよいよ具体的なペルソナの作り方を5つのステップに分けて解説します。この手順に沿って進めれば、初心者の方でもデータに基づいた精度の高いペルソナを作成できます。
STEP1:情報収集
ペルソナ作りは、まず「顧客を知る」ことから始まります。思い込みや憶測を排除し、客観的なデータを広く集めましょう。データには大きく分けて「定量データ」と「定性データ」があります。
定量データ(数値で測れる事実)
| データ源 | 内容 |
|---|---|
| Googleアナリティクスなど | サイト訪問者の年齢、性別、地域、閲覧ページ |
| 顧客データ | 既存顧客の購入履歴、年齢層、居住地 |
| アンケート調査 | 顧客満足度、サービス認知経路 |
定性データ(数値化できない感情や背景)
| 手法 | 内容 |
|---|---|
| ユーザーインタビュー | 既存顧客数名に直接ヒアリング。購入の決め手、日々の悩み、情報収集の方法などを深掘りする。(※これが最も重要) |
| 営業担当者へのヒアリング | 日々顧客と接している営業担当者から、顧客の生の声やよくある質問を集める。 |
| SNSやレビューサイトの調査 | 自社や競合のサービスについて、ユーザーがどんな評価や不満を投稿しているか確認する。 |
STEP2:情報整理
集めた膨大な情報を、付箋やマインドマップツールなどを使ってキーワードごとに書き出し、グルーピングしていきます。
例えば、「30代前半」「仕事が多忙」「スキルアップに関心」「情報収集はWebメディア」…といった形で、似たような属性、行動、価値観、悩みを分類し、整理します。この作業を通じて、ぼんやりとしていた顧客像の中から、いくつかの特徴的な顧客セグメント(グループ)が浮かび上がってきます。
STEP3:骨格作成
STEP2で見えてきた顧客セグメントの中から、自社にとって最も重要と思われるグループを一つ選び、そのグループの特徴を凝縮して、ペルソナの基本的なプロフィール(骨格)を作成していきます。後述するテンプレートの項目を埋めていくイメージです。
STEP4:人格設定
基本情報を埋めただけでは、まだ無味乾燥なデータです。ここに、血の通った人間としてのリアリティとストーリーを与えていきます。
- どんな1日を過ごしている?(平日/休日)
- どんなことに喜びを感じ、何に悩んでいる?
- なぜ、自社のサービスに興味を持ったのか?
- 彼の口癖は?
インタビューで得られた象徴的な発言やエピソードを盛り込むことで、ペルソナは一気に生き生きとした存在になります。この段階で、ペルソナのイメージに合うフリー素材の写真(顔写真)を設定すると、より感情移入しやすくなります。
STEP5:共有と命名
最後に、完成したペルソナに名前を付け、プロフィールシートとしてまとめ、チーム全員で共有します。「30代男性ユーザー」ではなく「田中健太さん」と呼ぶことで、チームメンバーはペルソナを共通の「仲間」として認識し、日々の業務で自然と活用できるようになります。
ペルソナ設定に含めるべき項目例
ペルソナにどのような項目を設定すればよいか、BtoC向けとBtoB向けに分けて具体例を紹介します。これらをベースに、自社のサービスに合わせてカスタマイズしてください。
BtoC向けペルソナの基本的な項目例
| カテゴリ | 項目 | 例 |
|---|---|---|
| 基本情報 | 顔写真、氏名、年齢、性別、居住地、職業、年収、最終学歴 | (イメージに合う写真)、田中健太、32歳、男性、東京都渋谷区… |
| ライフスタイル | 家族構成、休日の過ごし方、趣味・関心事、よく見るメディア、よく使うSNS | 独身、一人暮らし。休日はジムかカフェで読書。関心事は資産運用と自己投資。 |
| 性格・価値観 | 性格(内向的/外向的など)、価値観(何を大切にするか)、口癖 | 計画的で真面目。「コスパよりタイパ(タイムパフォーマンス)」が口癖。 |
| 課題・ニーズ | 現在抱えている悩みや不満、達成したい目標 | 仕事が忙しく食生活が乱れがち。手軽に栄養バランスの取れた食事をしたい。 |
| 自社との関わり | サービス認知のきっかけ、購入の決め手、利用シーン | Web広告で知った。初回お試しセットの手軽さが決め手で、平日の夕食に利用。 |
BtoB向けペルソナで追加すべき特有の項目例
BtoBの場合、購入を決定する「個人」と、その人が所属する「組織」の両方の視点が必要です。個人のプロフィールに加え、以下の項目を追加しましょう。
| カテゴリ | 項目 | 例 |
|---|---|---|
| 組織情報 | 会社名、業界、企業規模(従業員数・売上)、役職 | 株式会社〇〇、IT業界、従業員300名、マーケティング部 課長 |
| 業務内容 | 担当業務、職務上の役割、ミッション、KPI(評価指標) | Webサイトからのリード獲得数がミッション。KPIは月間リード数とCPA。 |
| 業務上の課題 | 業務で困っていること、組織としての課題 | リード数は足りているが、質が低く営業部門から不満が出ている。 |
| 情報収集 | 業務で使うツール、情報収集の方法(Webメディア、セミナー等) | 競合調査で業界ニュースサイトを巡回。情報収集はWebがメイン。 |
| 意思決定 | 決裁権の有無、稟議のプロセス、上司や関連部署 | 自身に決裁権はない。部長への稟議が必要。営業部門との連携が必須。 |
ペルソナ作りで陥りがちな3つの失敗例
せっかく作ったペルソナが、いつの間にか使われない「お蔵入りデータ」になってしまうケースは少なくありません。ここでは、よくある失敗例とその対策を解説します。
失敗例1:「こうだったらいいな」という理想や願望で作ってしまう
「自社のサービスを絶賛してくれる、都合の良い顧客像」を作ってしまうパターンです。これはペルソナではなく、単なる願望の投影です。必ずインタビューやアンケートなどの客観的なデータに基づいて作成し、社内の思い込みを排除しましょう。
失敗例2:「作ること」が目的化し、誰にも使われない
立派なペルソナシートが完成したことに満足し、その後の活用方法が全く議論されないケースです。ペルソナは「作ってからがスタート」です。完成したペルソナを基に、具体的に「サイトのキャッチコピーを変えよう」「次のブログ記事はこのテーマで書こう」といったアクションプランまで落とし込みましょう。
失敗例3:一度作ってから全く更新しない
市場や顧客は常に変化しています。1年前に作成したペルソナが、今も同じ価値観や課題を抱えているとは限りません。少なくとも半年に一度、または年に一度は見直しを行い、必要であればインタビューなどを再度実施して、ペルソナを現代に合わせてアップデートしていくことが重要です。
ペルソナの具体的な活用方法
作成したペルソナは、マーケティングのあらゆる場面で活用できます。ここでは代表的な活用例を3つ紹介します。
活用例1:刺さるコンテンツ(ブログ記事、動画)の企画立案
「田中さん(ペルソナ)は、今どんな情報に悩んでいるだろう?」
「田中さんが思わずクリックしてしまう記事のタイトルは?」
ペルソナを主語にして考えることで、ターゲットのインサイト(深層心理)を突いたコンテンツの企画が生まれます。ペルソナが使うであろうキーワードを盛り込んだSEO対策も、より効果的になります。
活用例2:WebサイトのUI/UX改善やキャッチコピー開発
「田中さんは、このサイトデザインを直感的に理解できるだろうか?」
「このボタンの文言は、田中さんの心に響き、クリックしたいと思うだろうか?」
Webサイトのデザインやナビゲーション、ボタンの文言一つひとつを、ペルソナの視点で見直すことで、ユーザーにとって使いやすく、コンバージョンに繋がりやすいサイトへと改善できます。
活用例3:新商品・サービスの開発や機能改善
「田中さんが本当に欲しがっている機能は、AではなくBではないか?」
「この新機能の価格設定は、田中さんにとって妥当だろうか?」
商品開発の初期段階からペルソナを議論の中心に置くことで、開発者の独りよがりな機能開発を防ぎ、真に顧客に求められる商品・サービスを生み出すことができます。
ペルソナに関するQ&A
Q. ペルソナは複数設定しても良いですか?
A. 問題ありません。 ただし、むやみに増やすのは禁物です。最初は最も重要だと思われる顧客像に絞って1体作成し、チームに浸透させることを優先しましょう。事業が拡大し、明確に異なる顧客セグメントが存在する場合は、2〜3体程度までペルソナを増やすことを検討します。
Q. 十分なデータがない場合、どうすればいいですか?
A. 創業期などで十分な顧客データがない場合は、仮説に基づいたペルソナ(プロトペルソナ)から始めるのも一つの手です。ただし、その場合も完全に空想で作るのではなく、経営者や担当者がこれまで接してきた数少ない顧客の記憶や、競合サービスのユーザーレビューなどを参考にします。そして、事業が進む中でデータが集まり次第、すぐに検証と修正を行いましょう。
Q. ペルソナとカスタマージャーニーマップの関係は?
A. ペルソナとカスタマージャーニーマップは、密接に関連するセットだと考えてください。ペルソナが「誰が」という顧客像を定義するのに対し、カスタマージャーニーマップは「その人(ペルソナ)が、商品を認知してから購入・利用するまでの間に、どのような行動・思考・感情をたどるか」を時系列で可視化したものです。ペルソナを設定した次のステップとして、カスタマージャーニーマップを作成することで、より効果的な施策立案が可能になります。
まとめ
この記事では、ペルソナの基本的な考え方から、具体的な作り方、そして活用方法までを網羅的に解説しました。
ペルソナとは、単なるプロフィールシートではありません。それは、データに基づいて顧客を深く理解し、チーム全員の目線を合わせ、あらゆるマーケティング施策の精度を高めるための「羅針盤」です。
感覚的なマーケティングから脱却し、顧客から本当に愛される商品・サービスを届けたいと考えるなら、まずは「たった一人」の理想の顧客像を真剣に描くことから始めてみてください。その地道な一歩が、あなたのビジネスを力強く前進させる、最も確実な推進力となるはずです。