製品デモのコツ10選!商談を成功に導く全技術
目次
「製品の機能は完璧に説明したはずなのに、お客様の反応が薄い…」
「デモの途中で、相手が飽きているのが画面越しに伝わってきて、焦ってしまう…」
「すごいですね、とは言われる。でも、その一言で終わってしまい、次のステップに進めない…」
BtoB営業、特にSaaSビジネスにおいて、商談の成否を分ける極めて重要なプロセス、それが「製品デモ」です。しかし、多くの営業担当者がその本質を理解しないまま、単なる「機能説明会」に終始してしまい、目の前の大きなビジネスチャンスを逃しています。
本記事では、BtoB営業、特にSaaSビジネスの成否を分ける「製品デモ」について、その戦略的な準備から、心を動かす構成、そして商談を次のステージに進めるための実践的なテクニックまでを、網羅的かつ体系的に解説します。
製品デモとは?
まず、製品デモに対するあなたの考え方を、根本からアップデートすることから始めましょう。
製品デモの本当の目的
製品デモの目的は、製品の機能を網羅的に説明することでは断じてありません。本当の目的は、あなたの製品・サービスを導入することで、顧客が抱える課題がどのように解決され、どのような素晴らしい未来(成功体験)が手に入るのかを、ありありと疑似体験してもらうことにあります。
優れた製品デモは、まるで映画の予告編のように、顧客をワクワクさせ、「この製品を使ってみたい!」という強い欲求を喚起させるのです。
なぜ、ほとんどの製品デモは失敗に終わるのか?
多くのデモが失敗する理由はただ一つ。「顧客」ではなく「製品」が主語になっているからです。「この製品には〇〇という機能があり、次に△△という機能があり…」と、製品の機能リストを順番に説明するだけのデモは、顧客にとって退屈な「機能説明会」でしかありません。顧客が知りたいのは機能の数ではなく、「その機能が、自分の何を解決してくれるのか」という、ただ一点なのです。
【準備編】デモの成果は、開始前の「ヒアリング」で9割決まる
最高のデモは、デモが始まる前に、その勝敗がほぼ決まっています。成果を出す営業担当者は、ヒアリング(事前準備)にこそ、最も時間をかけています。
コツ1:デモの前に、顧客の「課題」と「理想の姿」を徹底的に聞き出す
デモの前に、必ず顧客との間で「ディスカバリーコール」と呼ばれる事前ヒアリングの機会を設けましょう。そこで聞くべきは、「現在、どのような業務プロセスで、どんな課題(痛み)を感じていますか?」そして「その課題が解決されたら、どのような理想の状態になりますか?」という2点です。このヒアリングで得られた顧客自身の言葉こそが、デモのシナリオを構築するための最も重要な素材となります。
コツ2:参加者の役職と、それぞれの「関心事」を把握する
デモには、複数の役職の人が参加することがよくあります。事前に参加者のリストをもらい、それぞれの役職とミッションを把握しておきましょう。
| 立場 | 関心事 |
|---|---|
| 現場担当者 | 日々の業務がどれだけ楽になるか(操作性、効率化)に関心がある。 |
| マネージャー | チームの生産性や、管理コストがどう変わるかに関心がある。 |
| 経営層 | 投資対効果(ROI)や、会社全体の売上・利益にどう貢献するかに関心がある。 |
コツ3:ヒアリングに基づき、見せる機能と見せない機能を「選択」する
全ての機能を見せる必要は全くありません。むしろ、それは悪手です。STEP1と2で得られた情報に基づき、「今回の参加者の、最大の課題を解決するために、最も重要な機能」を3つ程度に絞り込みます。機能を取捨選択する「選択と集中」こそが、デモのメッセージを鋭く研ぎ澄ませるのです。
コツ4:顧客データを使った「自分ごと化」の準備
可能であれば、事前に顧客からサンプルデータ(もちろん機密情報を含まないもの)を提供してもらい、デモ環境にインポートしておきましょう。自社のデータが画面に表示されることで、顧客は「これは、まさに自分たちのためのデモだ」と、圧倒的な「自分ごと化」を感じることができます。
コツ5:失敗しないための、完璧な技術的リハーサル
「画面共有がうまくいかない」「デモ環境が固まってしまった」といった技術的なトラブルは、商談の流れを完全に壊してしまいます。インターネット接続の確認、ツールの操作方法の習熟、デモ環境の動作確認など、完璧なリハーサルを必ず行いましょう。
【構成・シナリオ編】顧客を惹きつけるストーリーの作り方
準備が整ったら、いよいよデモのシナリオを構築します。
コツ6:心を掴む「Before → After」ストーリー構成術
優れたデモは、一貫したストーリーで構成されています。最も強力なのが、「Before → After」型の構成です。
1. 課題の再確認(共感)
「先日のヒアリングで、皆様は〇〇という課題をお持ちだと伺いました。多くの企業様が、この点で苦労されていますよね」と、顧客の現状(Before)に深く共感します。
2. 理想の未来の提示
「もし、この課題が解決され、△△という状態になったとしたら、皆様のビジネスはどう変わるでしょうか?」と、製品がもたらす理想の未来(After)を提示し、期待感を高めます。
3. 理想を実現するデモンストレーション
「その未来を、今からこのデモで実現してみましょう」と宣言し、まさにその課題を解決する機能だけを、ストーリーに沿って見せます。
4. 価値(ROI)の要約
「ご覧いただいた通り、この機能によって、月間〇〇時間の工数削減、金額にして年間△△万円のコスト削減が見込めます」と、デモがもたらした価値を具体的な数値で要約します。
5. 次のアクションへの誘導
「この価値を、ぜひ皆様の実際の業務で体験していただきたいのですが、次のステップとして、〇〇はいかがでしょうか?」と、自然な流れでクロージングや次のアクションに繋げます。
コツ7:デモ全体を貫く、一本の「テーマ」を設定する
デモ全体を、「〇〇業務の属人化からの脱却」や「リモートワークにおけるチームの生産性向上」といった、顧客の最重要課題に紐づく一本の「テーマ」で貫きましょう。これにより、デモ全体に一貫性が生まれ、メッセージがより強く、深く、顧客の心に刻まれます。
【実践・対話編】デモ中に顧客を飽きさせない3つの技術
コツ8:一方的に話さない。5分に1度は「対話」を挟む
どれだけ素晴らしいストーリーも、一方的に話し続けては相手を眠らせるだけです。「5分に1回は、相手に質問を投げかける」など、自分なりのルールを決め、意識的に「対話」の時間を挟みましょう。「〇〇様、今お見せした機能ですが、現在の業務フローに当てはめると、どのようにお使いになれそうでしょうか?」
コツ9:機能を「操作」するのではなく、顧客の「課題を解決」する
デモ中にあなたがやるべきは、ツールのボタンをクリックする「操作」ではありません。顧客の課題を解決するという「シミュレーション」です。常に「先ほどお伺いした〇〇という課題は、この機能でこのように解決できます」と、顧客の課題とデモを結びつけて語りましょう。
コツ10:想定外の質問や、ネガティブな反応へのスマートな対処法
デモ中には、想定外の質問が飛んでくることもあります。即答できない場合は、慌てずに「非常に良いご質問ありがとうございます。その点については、正確にお答えしたいため、一度持ち帰って確認し、明日までにご回答させていただけますでしょうか」と誠実に対応しましょう。知ったかぶりは信頼を失います。
オンラインデモ特有のコツ
画面越しのエンゲージメントを高める工夫
対面以上に、オンラインでは相手の反応が見えにくいため、より意識的な工夫が必要です。定期的に「ここまで、ついてこられていますでしょうか?」と問いかけたり、相手の名前を呼びかけたりすることで、エンゲージメントを維持します。
複数の参加者の反応を把握する方法
Web会議ツールの参加者一覧を常に表示させ、誰が話しているか、誰がミュートを解除したかなどを注意深く観察します。発言していない人に対し、「〇〇部の△△様、今の点について、現場の視点から何かご意見はございますか?」と話を振ることで、議論を活性化させることができます。
製品デモに関するQ&A
Q. デモの最適な時間はどれくらいですか?
A. 顧客が集中力を保てる30分〜45分程度が理想です。もし1時間以上の時間をもらっている場合でも、デモ本体は30分程度に凝縮し、残りの時間は質疑応答やディスカッションに充てる方が、満足度は高くなります。
Q. 複数の顧客が参加するデモで、全員を満足させるには?
A. 全員を満足させることは不可能、と割り切ることが重要です。 事前ヒアリングで把握した、最も重要なキーパーソン(多くは決裁者)の課題解決にフォーカスしてデモを構成しましょう。全ての要望に応えようとすると、結局誰にも刺さらない、総花的で退屈なデモになってしまいます。
Q. デモの後に、必ずすべきことは何ですか?
A. デモ終了後、24時間以内に必ず「御礼メール」を送ります。 メールには、感謝の言葉に加え、①本日合意したネクストステップの確認、②デモで使った資料の共有、③質疑応答で出た内容の議事録、を添付します。この迅速で丁寧なフォローが、商談の熱量を維持し、次のステップへと繋げる鍵となります。
まとめ
本記事では、製品デモを成功に導くための、戦略的な準備から、ストーリー構成、そして実践的なテクニックまでを網羅的に解説しました。
もはや製品デモは、自社の機能を自慢する場ではありません。それは、顧客の抱える根深い「課題」に真摯に寄り添い、自社の製品・サービスを通じて、その課題が解決された素晴らしい「希望」に満ちた未来を、顧客と共に描き出す、共創の場なのです。
「機能」ではなく「価値」を語り、「説明」ではなく「体験」を提供する。その意識改革こそが、あなたの製品デモを、そしてあなたの営業成果を、次のステージへと引き上げる、最も確実な一歩となるでしょう。