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No.73
更新日 2025年08月25日

リードクオリフィケーションとは?やり方と基準、MQLの作り方を解説

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「マーケティングチームが集めてきたリード、営業に渡しても『質が低い』と全くフォローしてくれない…」
「営業チームは『もっと質の高いリードをよこせ』と言うが、そもそも『質が高い』ってどういう状態なんだろう?」
「大量の見込み客リストを前に、どこから手をつければいいか分からず、結局ほとんどのリードを無駄にしてしまっている…」

BtoBビジネスの現場で日常的に繰り広げられる、マーケティング部門と営業部門の深刻なすれ違い。その根本原因は、両者の間に「有望な見込み客(リード)を選別するための、共通のモノサシ」が存在しないことにあります。この課題を解決し、両部門を強力な「一つのチーム」に変える鍵こそが、「リードクオリフィケーション」です。

本記事では、BtoBマーケティングにおける「デマンドジェネレーション」の最終関門である「リードクオリフィケーション」について、その基本的な概念から、具体的な実践ステップ、そして成功の鍵となるフレームワークまでを、網羅的かつ体系的に解説します。

リードクオリフィケーションとは?

まず、リードクオリフィケーションという言葉の定義と、マーケティングプロセス全体におけるその重要な役割を理解しましょう。

リードクオリフィケーションの定義

リードクオリフィケーションとは、獲得・育成してきた多くの見込み客(リード)の中から、購買意欲や条件が一定の基準に達した、営業がアプローチすべき「有望な見込み客」を選別(Qualification = 適格性の確認)するプロセスのことです。

簡単に言えば、大量の砂の中から、キラリと光る金の粒を効率的に見つけ出す作業、とイメージすると分かりやすいでしょう。

デマンドジェネレーションにおける3つのプロセス

リードクオリフィケーションは、BtoBマーケティングにおける一連のプロセス「デマンドジェネレーション」の最終段階にあたります。

1. リードジェネレーション(獲得)

Webサイトや展示会などで、潜在顧客との接点を持ち、リード情報を獲得する。

2. リードナーチャリング(育成)

獲得したリードに対し、有益な情報を提供し続け、購買意欲を高める。

3. リードクオリフィケーション(選別)

育成したリードの中から、有望なリードを選び出し、営業部門へ引き渡す。

なぜリードクオリフィケーションが、マーケティングと営業の「架け橋」になるのか?

この「選別」のプロセスがなければ、マーケティング部門は質の低いリードを、営業部門は属人的な勘を、それぞれ一方的に相手に押し付け合うことになります。リードクオリフィケーションは、客観的なデータと合意に基づいた「基準」を作ることで、両部門の活動をスムーズに繋ぎ、組織全体の生産性を最大化する、極めて重要な「架け橋」の役割を果たすのです。

【最重要】MQLとSQLを理解する

リードクオリフィケーションを実践する上で、絶対に理解しておくべき2つの重要な用語が「MQL」と「SQL」です。これは、部門間の共通言語となります。

MQL (Marketing Qualified Lead) とは?

MQLとは、「マーケティング活動によって創出され、マーケティング部門が『有望である』と判断したリード」のことです。例えば、「リードスコアが100点を超えた」「特定のセミナーに参加した」など、あらかじめ定められた基準(クオリフィケーション基準)を満たしたリードを指します。

SQL (Sales Qualified Lead) とは?

SQLとは、「MQLの中から、インサイドセールスなどが実際にコンタクトを取り、営業担当者が本格的な商談を進めるべきだと判断した、より質の高いリード」のことです。MQLに対してヒアリングを行い、「具体的な課題があり、予算も確保されている」といった、商談化の条件を満たしたリードを指します。

MQLからSQLへのスムーズな連携が、成功の鍵

マーケティング部門のゴールは「MQLの創出」、営業部門のゴールは「SQLを商談化・受注させること」です。このMQLの定義と、SQLへの転換率を両部門で共有し、改善し続けることが、リードクオリフィケーションを成功させる鍵となります。

【5ステップで実践】失敗しないリードクオリフィケーションの進め方

では、実際に自社でリードクオリフィケーションの仕組みを構築するには、どうすれば良いのでしょうか。失敗しないための5つのステップを紹介します。

STEP1:【現状分析】まずは、既存の受注顧客を徹底的に分析する

新しい基準を作る前に、まずは足元にある「答え」から学びます。過去に受注に至った優良顧客のデータをCRM/SFAで分析し、「どのような属性(業種、役職など)の」「どのような行動(Web閲覧、問い合わせなど)を取った」顧客が、最も受注に繋がりやすかったのか、その共通項を徹底的に洗い出します。

STEP2:【合意形成】営業部門と「有望なリードの基準」をすり合わせる(SLAの締結)

これが最も重要なステップです。STEP1の分析結果と、トップセールスの経験知を基に、マーケティング部門と営業部門が合同で「我々にとっての有望なリード(MQL)とは何か」という基準を徹底的に議論し、合意形成します。そして、その合意内容をSLA(Service Level Agreement)として明文化します。

STEP3:【基準の設計】具体的な選別基準(フレームワーク)を設計する

SLAで合意した基準を、具体的な選別フレームワークに落とし込みます。多くの企業では、後述する「BANT条件」と「リードスコアリング」を組み合わせて、客観的な基準を設計します。

STEP4:【仕組み化】MA/SFAツールを活用し、選別のプロセスを自動化する

設計した基準を、MA(マーケティングオートメーション)ツールに設定します。リードの行動を自動でトラッキングし、スコアリングを行い、スコアがMQLのしきい値に達したら、自動的にSFAに通知が行く、といった選別のプロセスを自動化・仕組み化します。

STEP5:【改善】営業からのフィードバックを受け、基準を定期的に見直す

リードクオリフィケーションは、一度作って終わりではありません。営業部門から「MQLとして渡されたリードが、その後どうなったか(商談化率、受注率など)」というフィードバックを定期的に受け、「我々の基準は、本当に正しかったか?」を常に検証し、改善し続けることが不可欠です。

リードクオリフィケーションで使う、2大フレームワーク

フレームワーク1:【定性的】BANT条件によるヒアリング

BANT条件は、法人営業で古くから使われている、リードの質を判断するための基本的なフレームワークです。インサイドセールスなどがリードと対話する中で、これらの情報をヒアリングします。

項目内容
B(Budget/予算)導入のための予算が確保されているか
A(Authority/決裁権)担当者に決裁権があるか、または決裁者への影響力があるか
N(Needs/必要性)解決すべき具体的なニーズが明確になっているか
T(Timeframe/導入時期)具体的な導入時期が決まっているか

フレームワーク2:【定量的】リードスコアリングによる点数化

リードの属性や行動に応じて点数を付け、合計点でリードの温度感を客観的に評価する手法です。

スコア種類内容
属性スコア企業のプロフィール情報に基づく加点・減点役職が部長以上なら +20点
行動スコアWebサイトなどでの行動履歴に基づく加点・減点料金ページの閲覧なら +15点

【具体例】自社に合ったクオリフィケーション基準の作り方

BANT条件とスコアリングを組み合わせたハイブリッドモデル

最も効果的なのは、これら2つのフレームワークを組み合わせることです。

1. MAツールで、リードの行動スコアと属性スコアを自動で計測する(定量的評価)。

2. 合計スコアが一定のしきい値を超えたリードをMQLと認定する。

3. インサイドセールスがMQLに対して電話などで接触し、BANT条件をヒアリングする(定性的評価)。

4. BANT条件のうち、例えばN(必要性)とT(導入時期)が明確になったリードをSQLと認定し、フィールドセールスに引き渡す。

MQL認定の基準(しきい値)設定の考え方

リードスコアのMQL認定しきい値は、過去の受注顧客の平均スコアを参考に設定するのが一般的です。例えば、受注顧客の平均スコアが120点だった場合、まずは100点あたりをしきい値に設定し、運用しながら調整していきます。

クオリフィケーション後の効果的な営業アプローチ

インサイドセールスによる迅速なヒアリングとSQL化

MQLが生まれたら、スピードが命です。インサイドセールスが迅速に(可能であれば数時間以内に)コンタクトを取り、BANT条件のヒアリングや、課題の深掘りを行います。そして、見込み度が高いと判断すればSQLとして、フィールドセールスにパスします。

マーケティング情報を活用した、質の高い商談の実現

フィールドセールスは、商談の前に、MA/SFAに記録されたマーケティング情報(閲覧したページ、ダウンロードした資料など)を必ず確認します。顧客の興味・関心を事前に把握することで、より顧客の心に響く、質の高い提案が可能になります。

リードクオリフィケーションに関するQ&A

Q. どのくらいのリードがMQLになるのが理想ですか?

A. 一概に「〇%が理想」という数値はありません。 MQLの基準を厳しくすれば量は減り質は上がりますし、緩くすれば量は増えますが質は下がります。重要なのは、自社の営業チームが、質を維持しながら対応できるMQLの件数を、営業部門と合意の上で見極めることです。

Q. BANT条件が全て揃わないと、MQLにはなりませんか?

A. 必ずしも全て揃う必要はありません。 例えば、中小企業では担当者が決裁権を持っていることも多く、A(決裁権)の重要度は低いかもしれません。自社のビジネスモデルに合わせて、BANTのどの項目を特に重視するか、優先順位を決めておくことが重要です。

Q. 営業から「結局、MQLの質が低い」と言われてしまいます。

A. 絶好の改善チャンスです。 「なぜ、質が低いと感じるのか」を、具体的な案件を例に、営業担当者と徹底的に議論しましょう。「役職は高いが、ニーズがまだ顕在化していなかった」「Webでの行動は活発だが、予算が全くなかった」など、具体的なフィードバックをもらうことで、スコアリングの点数設計や、MQLの定義そのものを見直すことができます。このフィードバックループこそが、クオリフィケーションの精度を高める鍵です。

まとめ

本記事では、リードクオリフィケーションの基本的な考え方から、具体的な基準の設計、そして運用プロセスまでを網羅的に解説しました。

リードクオリフィケーションは、単なるリードの選別作業ではありません。それは、マーケティング部門と営業部門が、顧客という同じ目標に向かって、客観的なデータという共通言語で対話し、お互いの活動をリスペクトし合うための、極めて重要なプロセスです。

このプロセスを真摯に実践すること。それこそが、部門間の見えない壁を壊し、あなたの会社を、顧客の成功に貢献する、真の「One Team」へと進化させる、力強い第一歩となるはずです。

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