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No.79
更新日 2025年07月25日

営業ヒアリングシートの作り方!トップセールスが実践する項目と質問例を完全公開

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「お客様の課題をもっと深く聞いてこいと言われるが、具体的に何を聞けばいいか分からない…」
「商談のたびに聞くことがバラバラで、提案の質が安定しない…」

もしあなたが営業担当者や営業マネージャーとして、このような悩みを一つでも抱えているなら、その解決策は「営業ヒアリングシート」にあります。

この記事では、必須項目の理由、成果直結のヒアリングシート作成5ステップ、BANT・SPINなどのフレームワーク、そして形骸化させない運用ルールまでを一気に解説します。

あなたのヒアリング、ただの「御用聞き」になっていませんか?

多くの営業担当者が、良かれと思って顧客にこう質問します。「何かお困りごとはありますか?」しかし、この質問で顧客の心を動かすことは、ほとんどありません。

この質問では、顧客はすでに自覚している「顕在的なニーズ」しか話してくれません。しかし、本当に価値のある提案は、顧客自身も気づいていない「潜在的なニーズ」を掘り起こすことから生まれます。

例えば、顧客が「ホームページのアクセス数を増やしたい」と話したとします。

御用聞き営業

「かしこまりました。では、SEO対策プランをご提案します」

できる営業

「ありがとうございます。ちなみに、なぜアクセス数を増やしたいとお考えなのでしょうか?最終的なゴールは、お問い合わせ数の増加ですか、それともブランド認知度の向上ですか?」

このように一歩踏み込んで質問することで、初めて顧客の「真の目的」が見え、より本質的な提案が可能になるのです。

トップセールスと普通の営業を分ける「聞く力」の正体

トップセールスは、決して話が上手いだけの人ではありません。彼らは例外なく「聞く力」に長けています。そして、その「聞く力」を支えているのが、構造化され、戦略的に練られた質問リスト、すなわち「ヒアリングシート」なのです。

彼らはヒアリングシートを武器に、商談という限られた時間の中で、聞くべきことを漏れなく、かつ効果的な順番で質問し、顧客から質の高い情報を引き出します。この仕組みがあるからこそ、常に質の高い提案ができ、安定して成果を出し続けることができるのです。

営業ヒアリングシートとは?

それでは、改めてヒアリングシートの本当の目的と、それがもたらす絶大なメリットを確認しましょう。

顧客の「真の課題」を引き出し、最適な提案に繋げる“設計図”

ヒアリングシートの最終目的は、顧客の表面的な要望を聞くことではありません。顧客のビジネス全体を理解し、その中にある本質的な課題(真のニーズ)を特定し、自社の製品やサービスがどのように貢献できるかを示す、最適な提案ストーリーを構築するための“設計図”です。この設計図があることで、あなたの提案は、顧客にとって「自分たちのことを深く理解してくれている、信頼できるパートナーからの提案」へと昇華します。

メリット1:ヒアリング漏れを防ぎ、質を標準化する

体系的に整理されたシートを使うことで、「あれを聞き忘れた…」といった致命的なミスを防ぎます。誰が使っても、最低限必要な情報を確実にヒアリングできるようになるため、営業担当者個人のスキルに依存せず、商談の質を一定以上に標準化できます。

メリット2:営業の属人化を防ぎ、組織全体のレベルを底上げする

トップセールスの頭の中にある「聞くべきこと」「聞くべき順番」をシートに落とし込むことで、そのノウハウが組織の資産になります。若手や中堅の営業担当者も、そのシートを使うことでトップセールスの思考プロセスを追体験でき、チーム全体の営業力が底上げされます。これこそが、営業の属人化を防ぐ最も効果的な方法です。

メリット3:提案の質と受注率を劇的に向上させる

質の高い情報が網羅的に集まることで、提案書の内容は驚くほど具体的で、説得力のあるものになります。「おそらく、〇〇にお困りでしょう」という推測ではなく、「ヒアリングさせていただいた貴社の〇〇という課題に対し、この解決策が最適です」と、事実に基づいた提案ができるため、顧客の納得感が高まり、結果として受注率も劇的に向上します。

絶対に押さえるべきヒアリングシートの必須項目一覧

ここからは、実際のヒアリングシートに盛り込むべき必須項目を、具体的な質問例とともに解説します。

【基本情報】BANT条件で商談の確度を測る

BANT条件は、その商談が「受注見込みの高い案件」かどうかを判断するための基本的なフレームワークです。

カテゴリー質問例
Budget(予算)「今回のプロジェクトにご用意されているご予算は、どのくらいでしょうか?」
「もし〇〇(自社製品)を導入する場合、どのくらいの費用感を想定されていますか?」
Authority(決裁権)「最終的に導入を決定されるのは、どなたになりますか?」
「今回の選定プロセスには、どのような部署の方が関わられますか?」
Needs(必要性)「現在、どのような点に最も課題を感じていらっしゃいますか?」
「その課題が解決されると、どのような理想の状態になりますか?」
Timeframe(導入時期)「いつ頃までに、この課題を解決したいとお考えですか?」
「もし導入する場合、いつ頃からの利用開始をご希望ですか?」

【現状と課題】As-Is/To-Beでギャップを明らかにする

顧客の「現状(As-Is)」と「理想の状態(To-Be)」、そしてその間にある「ギャップ(課題)」を明確にします。

カテゴリー質問例
現状(As-Is)「現在、〇〇の業務はどのようなフローで行っていますか?」
「その業務に、何人くらいの方が、どのくらいの時間をかけていますか?」
理想(To-Be)「将来的には、どのような状態になっているのが理想ですか?」
「〇〇という課題が解決されたら、会社にとってどのようなインパクトがありますか?」
課題(Gap)「理想の状態を実現する上で、現在、何が一番の障壁になっていますか?」

【体制とプロセス】決裁者と意思決定の流れを把握する

誰に、どのようにアプローチすれば受注に繋がるのかを理解します。

カテゴリー質問例
決裁者・関係者「今回のプロジェクトの責任者様はどなたですか?」
「現場のご担当者様以外に、〇〇部の方なども関わられますか?」
意思決定プロセス「稟議など、社内の承認プロセスはどのようになっていますか?」
「過去の類似ツール導入の際には、どのように意思決定されましたか?」

【競合と予算】競争環境と投資意欲を理解する

自社の立ち位置と、顧客の本気度を測ります。

カテゴリー質問例
競合情報「弊社の他に、比較検討されている企業様はありますか?」
「他社様のお話を聞かれて、どのような点を重視されていますか?」
予算・投資対効果「今回の投資によって、どのようなリターンを期待されていますか?」
「費用対効果は、どのような指標で判断されますか?」

【その他】ネクストアクションと宿題事項

商談を次に繋げるための重要な項目です。

カテゴリー質問例
ネクストアクション「本日の内容を踏まえ、次は〇月〇日頃に、具体的なご提案をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
宿題事項・懸念点「本日お答えできなかった〇〇について、次回までにお調べしてまいります」
「本日のお話で、何かご懸念点はございますか?」

最強のヒアリングシートの作り方【5ステップ】

テンプレートはあくまで土台です。ここからは、自社に合わせて最強のヒアリングシートを作り上げるための5つのステップを解説します。

Step 1: 目的とターゲット顧客を明確にする

まず、「誰に」「何を売る」ためのヒアリングシートなのかを明確にします。高単価なコンサルティングと、低単価なSaaSツールでは、聞くべき項目の深さや優先順位が異なります。自社の商材やターゲット顧客の特性を考慮し、シートの目的を定義しましょう。

Step 2: 営業プロセス全体を可視化し、シートの位置づけを決める

あなたの会社の営業プロセス(例:初回アポ→課題ヒアリング→デモ→提案→クロージング)を書き出し、今回のヒアリングシートが「どの段階で」「何を明らかにする」ために使われるのかを明確にします。初回訪問用と、提案前の最終確認用では、シートの内容も変わってきます。

Step 3: 必須項目を洗い出し、具体的な質問例を作成する

前述の必須項目一覧を参考に、自社の営業活動に必要な項目を洗い出します。そして、それぞれの項目について、複数の具体的な質問例を作成します。質問例は、「はい/いいえ」で終わらない「オープンクエスチョン(5W1H)」を意識すると、より多くの情報を引き出せます。

Step 4: テンプレートに落とし込み、誰でも使えるフォーマットにする

洗い出した項目と質問例を、ExcelやGoogleスプレッドシートなどのテンプレートに落とし込みます。誰が見ても分かりやすいように、項目ごとにセクションを分けたり、色を使ったりして、視覚的に整理されたフォーマットを心がけましょう。

Step 5: チームで実践し、定期的に改善を繰り返す(PDCA)

ヒアリングシートは、作って終わりではありません。実際にチームで使ってみて、「この質問は聞きにくい」「この項目は不要だ」といったフィードバックを集め、定期的に内容を見直しましょう。この改善のサイクル(PDCA)を回し続けることが、シートを本当に「使える」ツールへと進化させます。

ヒアリングの質を劇的に高める3つのフレームワークと質問術

ヒアリングシートは、あくまで「何を」聞くかのチェックリストです。ヒアリングの質をもう一段階高めるためには、「どのように」聞くかという質問の技術が重要になります。ここでは、その助けとなる3つの有名なフレームワークをご紹介します。

① BANT条件

前述の通り、BANT条件は商談の確度を測る上で非常に有効です。しかし、ただ単に「予算は?」「決裁者は?」と聞くだけでは、尋問のようになってしまいます。自然な会話の流れで聞き出すことが重要です。

(悪い例) 「ご予算はおいくらですか?」
(良い例) 「ありがとうございます。ちなみに、もし弊社のサービスが〇〇様の課題解決にぴったりだった場合、どのくらいの投資価値があるとお考えになりますか?」

② SPIN話法

SPIN話法は、顧客の潜在的なニーズを顕在化させるための強力な質問フレームワークです。

S (Situation Questions / 状況質問)

顧客の現状を把握する質問。「現在、〇〇の業務はどのような体制で行っていますか?」

P (Problem Questions / 問題質問)

顧客が抱える問題や課題を引き出す質問。「その業務を行う上で、何か非効率だと感じる点や、お困りの点はありますか?」

I (Implication Questions / 示唆質問)

その問題がもたらす悪い影響(痛み)を認識させる質問。「その非効率が原因で、月にどのくらいの残業時間が発生していますか?」「それが原因で、他の重要な業務にしわ寄せが来ていませんか?」

N (Need-payoff Questions / 解決質問)

もし問題が解決されたら、どのような利益があるかを顧客自身の口から語らせる質問。「もし、この非効率な業務が半分になったら、空いた時間でどのような新しい取り組みができそうでしょうか?」

SPINを使うことで、顧客は「この課題は、今すぐ解決すべき重要な問題だ」と自覚し、提案を受け入れる準備が整います。

③ 3C分析

3C分析は、顧客のビジネス環境を理解し、より大局的な視点から提案を行うためのフレームワークです。

Customer (市場・顧客)

「最近、お客様の業界ではどのようなトレンドがありますか?」

Competitor (競合)

「お客様の競合他社様は、どのような動きをされていますか?」

Company (自社=顧客企業)

「そうした市場や競合の動きの中で、貴社としては今後どのような点に力を入れていきたいとお考えですか?」

この視点を持つことで、単なる製品売りではない、顧客の事業成長に貢献する「ビジネスパートナー」としての提案が可能になります。

【要注意】ヒアリングシートを形骸化させないための運用ルール

最後に、最も重要なことをお伝えします。どれだけ素晴らしいヒアリングシートを作っても、それが現場で使われなければ何の意味もありません。「作っただけ」で終わらせないための、3つの運用ルールを徹底しましょう。

ルール1:目的とメリットをチーム全員で共有する

なぜこのヒアリングシートを導入するのか、その目的と、使うことで各営業担当者にどのようなメリットがあるのか(例:提案書作成の時間が短縮できる、受注率が上がる)を、丁寧に説明し、全員の納得感を得ることがスタートラインです。「やらされ仕事」ではなく、「自分のための武器」だと認識してもらうことが重要です。

ルール2:SFA/CRMと連携し、入力の手間を最小化する

ヒアリングシートの内容と、SFA/CRMの入力項目を一致させましょう。可能であれば、ヒアリングシートに入力した内容が、自動でSFA/CRMに反映されるように連携させると理想的です。二重入力の手間をなくし、現場の負担を最小限に抑える工夫が、継続的な利用に繋がります。

ルール3:シートを基にしたロールプレイングを定期的に実施する

週に一度の営業会議などで、ヒアリングシートを使ったロールプレイング(模擬商談)の時間を設けましょう。互いにフィードバックをし合うことで、シートの使い方が洗練されるだけでなく、チーム全体のヒアリングスキルが向上します。成功事例が出たら、その時のシートの使い方を共有することも非常に有効です。

よくある質問(Q&A)

Q1. ヒアリングシートを使うと、会話がぎこちなくなりませんか?

A1. 非常に重要なご指摘です。ヒアリングシートは、あくまで「聞き漏らしを防ぐためのチェックリスト」や「思考を整理するための地図」として活用するものです。シートの項目を上から順に質問するのではなく、自然な会話の流れの中で、関連する質問を挟み込んでいくことが重要です。記事で紹介したSPIN話法のように、相手に「気づき」を与えるような質問の流れを意識することで、尋問ではなく「課題解決に向けた心地よい対話」になります。定期的なロールプレイングで、自然に使いこなす練習をすることをお勧めします。

Q2. シートにある項目は、毎回すべて聞かなければいけないのでしょうか?

A2. いいえ、その必要はありません。商談のフェーズや顧客の状況によって、質問の優先順位は変わります。例えば、初回訪問ではまず関係構築と大きな課題の把握に重点を置き、提案前の打ち合わせでは決裁プロセスや具体的な予算について深掘りするなど、柔軟に使い分けることが大切です。ヒアリングシートは網羅的な「武器庫」のようなものだと考え、その場の状況に応じて最適な武器(質問)を取り出すという意識を持つと良いでしょう。

Q3. 経験の浅い営業担当でも、ヒアリングシートをうまく使いこなせますか?

A3. はい、むしろ経験の浅い担当者にとってこそ、ヒアリングシートは強力な武器となります。何をどの順番で聞けばよいかが明確になるため、経験不足を補い、自信を持って商談に臨むことができます。トップセールスのノウハウが詰まったシートを使うことは、それ自体が最高のOJT(実務を通じたトレーニング)となり、個人の成長を加速させ、営業組織全体のレベルを底上げすることに繋がります。

まとめ

この記事では、営業ヒアリングシートの作り方から、ヒアリングの質を高める質問術、そして形骸化させないための運用方法まで、幅広く解説しました。

もはや、ヒアリングシートが単なる質問リストではないことは、ご理解いただけたかと思います。

戦略的に作られ、正しく運用されるヒアリングシートは、若手営業にとっては、自信を持って商談に臨むための「羅針盤」となり、マネージャーにとっては、チームの成果を最大化するための「ゲームプラン」となります。

そして何より、それはあなたを、単にモノを売るだけの「御用聞き」から、顧客の課題に寄り添い、その成功に貢献する「ビジネスパートナー」へと進化させてくれる最強の武器なのです。

ぜひ、本記事で提供したテンプレートと知識を活用し、あなたの営業活動を次のステージへと引き上げてください。

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