営業レビューのやり方は?「詰め会」を「育て会」に変えるコツ
目次
「週次の営業レビューが、ただただ重苦しい空気で終わってしまう…」
「部下を問い詰めても、出てくるのは言い訳ばかり。どう指導すればいいんだ…」
「上司からの数字のプレッシャーが辛い。レビューの時間が来るのが憂鬱で仕方ない…」
営業組織において、定期的に行われる「営業レビュー」。本来は、チームの成果を最大化し、メンバーの成長を促すための重要な機会であるはずが、多くの現場で、その実態は単なる数字の進捗確認や、一方的な詰問が飛び交う、非生産的で、重苦しい「詰め会」と化してしまっています。
本記事では、多くの営業組織で形骸化しがちな「営業レビュー」について、その本質的な目的から、生産性を最大化する具体的な進め方、そしてマネージャーとメンバー双方の役割までを、網羅的かつ体系的に解説します。
あなたの営業レビュー、「詰め会」になっていませんか?
まず、あなたのチームで行われている営業レビューが、本来の目的から逸脱していないか、自己診断してみましょう。
営業レビューの本当の目的
営業レビューの本当の目的は、過去の実績について誰かを責めることではありません。その本質は、客観的なデータ(事実)を基に、チームや個人の現状を正しく把握し、目標達成に向けた「次の一手(未来のアクション)」を、全員で合意形成することにあります。そして、その対話のプロセスを通じて、メンバー一人ひとりの成長を支援する「コーチング」の場でもあるのです。
なぜ、多くの営業会議は不毛な「詰め会」になってしまうのか?
多くのレビューが「詰め会」に陥る原因は、「Why(なぜ、できなかったんだ?)」という過去への詰問が中心になっているからです。これでは、メンバーは萎縮し、自己防衛のための言い訳に終始してしまいます。成果を出すレビューは、「How(どうすれば、次はうまくいくか?)」という未来志向の対話が中心となります。
成果を出す営業レビューがもたらす3つの強力なメリット
営業レビューを「育て会」に変革することで、組織は計り知れないメリットを享受できます。
メリット1:チーム全体の営業力が底上げされる
成功事例だけでなく、失敗事例も安全に共有し、その原因と対策をチーム全体で議論することで、組織としての「勝ちパターン」と「負けパターン」が蓄積されます。個人の経験が、チーム全体の知見へと昇華され、組織全体の営業力が底上げされます。
メリット2:目標達成への道筋が明確になり、メンバーの主体性が高まる
レビューを通じて、各メンバーは自身の課題と、それを乗り越えるための具体的なアクションプランを、自らの言葉で語れるようになります。「やらされ仕事」ではなく、自ら考え、行動する「主体性」が育まれます。
メリット3:マネージャーとメンバーの信頼関係が深まる
マネージャーが、詰問者ではなく、メンバーの成功を支援する「コーチ」として振る舞うことで、両者の間には強固な信頼関係が生まれます。風通しの良い、心理的安全性の高いチーム文化が醸成されるのです。
成果に繋がる営業レビューの進め方
では、具体的にどのような流れでレビューを進めれば良いのでしょうか。ここでは、5つのフェーズに分けて解説します。
フェーズ1:【準備】レビューの成果は、会議の前に決まっている
マネージャーもメンバーも、事前にSFA/CRMのダッシュボードに目を通し、話すべき論点を整理しておきます。特にメンバーは、「報告」「共有」「相談」したいことを明確にしておくことが重要です。
フェーズ2:【冒頭】目的の共有と、ポジティブな雰囲気作り
会議の冒頭で、マネージャーは「このレビューの目的は、〇〇(メンバー名)さんの目標達成を、チームでサポートすることです」と、ポジティブな目的を明確に伝えます。そして、まずは今週の成功事例や良かった点(Good News)の共有から始め、明るい雰囲気を作りましょう。
フェーズ3:【レビュー】SFAのデータを基に、事実(ファクト)を確認する
個人の感覚的な報告ではなく、全員で同じSFAのダッシュボードを見ながら、「今週のパイプラインの進捗は、先週と比較して〇〇円増加していますね」「失注理由として、〇〇が増えているようです」といったように、客観的な事実(ファクト)を基に現状を確認します。
フェーズ4:【コーチング】質問を通じて、メンバー自身に気づきを促す
ファクトを確認したら、マネージャーの腕の見せ所です。解決策を教えるのではなく、後述する「魔法の質問術」を使い、メンバー自身に課題の原因と解決策を考えさせ、気づきを促します。
フェーズ5:【ネクストアクション】具体的で、明確な次の一手を決める
レビューの最後には、必ず「では、来週までに、誰が、何を、いつまでに行うか」という、具体的で明確な次の一手(ネクストアクション)を全員で合意形成します。「頑張ります」といった曖昧な言葉で終わらせてはいけません。
【マネージャー必見】メンバーを育てる「魔法の質問術」
過去を問う「Why」ではなく、未来を創る「How」を問う
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| NGな質問(Why) | 「なぜ、目標が未達なんだ?」「なぜ、あのお客様から失注したんだ?」 |
| OKな質問(How) | 「目標達成に向けて、どうすればこのギャップを埋められるだろうか?」「この失注経験から学んで、次にどう活かせると思う?」 |
メンバーの思考を深掘りする質問の具体例
| 質問の種類 | 内容 | 例文 |
|---|---|---|
| 現状認識を促す質問 | 相手が自分の状況を客観的に捉えることを助ける | 「この状況を、あなた自身はどう捉えていますか?」 |
| 原因分析を促す質問 | 課題の根本原因を探るよう促す | 「そのボトルネックを生み出している、根本的な原因は何だと思いますか?」 |
| 解決策の発見を促す質問 | 解決のための選択肢やアイデアを引き出す | 「その課題を解決するために、どんな選択肢が考えられますか?」 |
| 行動計画を促す質問 | 具体的なアクションに落とし込み、実行を後押しする | 「その中で、明日からすぐに始められることは何ですか?」 |
やってはいけないNGな質問
| 質問のタイプ | 内容 | 例文 |
|---|---|---|
| 詰問・尋問 | 相手を追い詰めるように問いただす。責められている印象を与えるため逆効果になりやすい。 | 「なぜ、できないんだ?」 |
| 誘導尋問 | 自分の考えに同意させるように質問する。相手の主体的な意見を引き出せない。 | 「〇〇が原因だと、私は思うんだけど、君もそう思うよね?」 |
| 多すぎる質問 | 一度に矢継ぎ早に複数の質問を投げかける。相手が混乱し、十分に答えられなくなる。 | ― |
【メンバー向け】営業レビューを「成長の機会」に変える準備と臨み方
事前にSFAのデータを整理し、自分の仮説を立てておく
レビューに臨む前に、自身のSFAデータを振り返り、「今週の活動の成果と課題は何か」「なぜ、その結果になったのか」「次に、どうすべきか」という、自分なりの仮説を持っておきましょう。これにより、上司からの質問に的確に答えられ、より深い議論が可能になります。
失敗事例も、学びの機会としてオープンに共有する勇気を持つ
レビューは、成功を自慢する場であると同時に、失敗から学ぶ場でもあります。うまくいかなかった案件についても、「実は、〇〇の点でヒアリングが不足していました。次はこう改善しようと思います」と、自らの課題と改善策をセットでオープンに共有する勇気を持ちましょう。その誠実な姿勢は、必ず上司や同僚からの信頼に繋がります。
営業レビューで活用すべきKPIとSFAダッシュボード
パイプライン全体の健全性を見る
チーム全体のパイプラインの案件数や総額、各フェーズの移行率(歩留まり率)などを可視化し、事業全体の健康状態を把握します。
個別の案件の進捗と、ネクストアクションの妥当性を見る
各メンバーが担当する個別の重要案件について、その進捗状況と、設定されているネクストアクションが適切かを確認します。
メンバーの活動量と、成果の相関関係を見る
各メンバーの商談数やコール数といった「活動量」と、受注率や受注額といった「成果」の相関関係を分析し、個々の強みや課題を特定します。
営業レビューに関するQ&A
Q. レビューは、どのくらいの頻度で、どれくらいの時間をかけるべきですか?
A. 週に1回、30分〜60分程度が一般的です。重要なのは、定期的かつ短いサイクルで行うことです。月1回、2時間かけて行うよりも、週1回30分の方が、細かな軌道修正が可能になり、効果的です。
Q. メンバーの言い訳が多く、建設的な議論になりません。
A. それは、レビューが「詰め会」になっている証拠です。まずは、マネージャー自身が「Why」ではなく「How」を問う質問を徹底し、「この場は、君を責める場ではなく、一緒に解決策を考える場だ」という心理的安全性を確保することから始めましょう。
Q. オンラインでの営業レビューで、気をつけることはありますか?
A. 対面よりも相手の反応が見えにくいため、意識的にファシリテーションを行うことが重要です。発言していないメンバーに話を振ったり、チャットや投票機能を活用して意見を求めたりと、全員が参加できる工夫をしましょう。また、SFAのダッシュボードを常に画面共有し、全員が同じデータを見ながら話すことを徹底してください。
まとめ
本記事では、多くの営業組織が抱える「営業レビュー」の課題と、それを乗り越え、チームを成長させるための具体的な手法を解説しました。
優れた営業レビューは、単なる進捗管理の会議ではありません。それは、データという客観的な鏡を通じて、メンバー一人ひとりが自身の現在地を知り、未来への道筋を描くための、最も効果的で、最も人間的な「人材育成」の場なのです。
「詰め会」を「育て会」へ。その変革の先に、メンバーの成長と、チームの輝かしい成果が待っているはずです。