売れる営業提案書の作り方とは?構成7ステップ・書き方のコツ・デザインの原則を徹底解説
目次
「お客様のために、時間をかけて一生懸命作った提案書なのに、なぜか手応えがない…」
「伝えたいことは全部盛り込んだはずが、商談の反応が薄い…」
営業担当者であれば、一度はこのような悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。熱意を込めて作成した提案書が、お客様の心に響かず、受注に繋がらない。それは非常にもどかしく、辛い経験です。
提案書が営業の成果を左右する理由
営業活動において、提案書は単なる「説明資料」ではありません。それは、お客様との対話を促進し、課題解決への道のりを共に描くための「コミュニケーションツール」です。
優れた提案書は、お客様自身も気づいていなかった潜在的な課題を浮き彫りにし、「この人(会社)なら、私たちのことを理解し、未来を任せられる」という信頼を勝ち取るための有効な手段となります。逆に、どれだけ素晴らしい商品やサービスであっても、提案書の質が低ければ、その価値は半減し、競合にチャンスを奪われてしまうことさえあるのです。
【これだけ押さえればOK】受注に繋がる営業提案書の基本構成7ステップ
優れた営業提案書には、受注に繋がるための普遍的な「型」が存在します。それは、顧客の心理に寄り添い、論理的に納得感を生み出すストーリーの流れです。ここでは、その基本となる7つの構成ステップを、「なぜそれが必要なのか」「何を書くべきか」を明確にしながら解説します。
1. 表紙・タイトル:誰に、何を提案するのか一目で分かる
なぜ必要か?
表紙は、提案書の「顔」です。忙しい決裁者は、多くの資料に目を通します。その中で、一瞬で「これは自分たちに関係のある、読むべき資料だ」と認識してもらえなければ、中身を読んでもらえない可能性すらあります。誰から誰への、何の提案なのかを明確に示し、相手の興味を引く最初の関門です。
何を書くべきか?
表紙には、提出先の会社名・部署名・担当者名を正確に記載します。加えて、提案タイトル、自社の情報(会社名、担当者名)、提出日を明記しましょう。「〇〇のご提案」というだけでなく、「〇〇を活用した業務効率化とコスト削減のご提案」のように、導入によって得られるメリットを具体的にタイトルに含めることで、相手の読む意欲を高めます。
2. 提案の背景・現状の課題(As-Is):顧客の課題を「相手の言葉」で定義する
なぜ必要か?
このパートの目的は、「私たちは、あなたの状況と課題をこれだけ深く理解していますよ」というメッセージを伝えることです。いきなり自社製品の話をするのではなく、まずはお客様が置かれている現状や抱えている課題に焦点を当てることで、「この営業は、私たちのことを分かってくれている」という信頼感と共感を生み出します。
何を書くべきか?
まず、顧客を取り巻く市場や業界のトレンドといった外部環境を、客観的なデータと共に示します。次に、事前のヒアリングで得た情報を基に、お客様の現状の業務フローや体制(As-Is)を整理します。その上で、顕在化している課題と、そこから推測される潜在的な課題を提示します。ここで最も重要なのは、ヒアリングで聞いたお客様の言葉をそのまま使うことです。「〇〇様がおっしゃっていた…」と記述することで、一気に「自分ごと」として捉えてもらえます。
3. 提案によって実現する未来(To-Be):導入後の理想の姿を具体的に示す
なぜ必要か?
課題を提示しただけでは、お客様の心は動きません。その課題が解決された先に、どのような素晴らしい未来が待っているのか(To-Be)を具体的に示すことで、「そうなりたい!」という期待感や導入へのモチベーションを醸成します。ここは、提案全体の中で最もワクワクするパートです。
何を書くべきか?
「As-Is」で提示した課題が、一つひとつどのように解決されるのか、理想の姿を対比させて示します。「従業員のモチベーション向上」といった定性的な効果に加え、「年間300万円のコスト削減」のような定量的な効果を具体的な数値で示すと、提案の説得力が高まります。明るい未来を連想させるイラストや成功事例のイメージなどを活用し、視覚的に訴えかけることも有効です。
4. 提案内容・具体的な解決策:課題をどう解決するのかを明確に
なぜ必要か?
「理想の未来(To-Be)」を示した後、いよいよその未来を実現するための具体的な方法論を提示します。ここで初めて、自社の商品やサービスが登場します。課題から未来への架け橋として解決策を提示することで、単なる製品紹介ではなく、「顧客の課題を解決するための手段」として、ロジカルにその必要性を示すことができます。
何を書くべきか?
まず提案の全体像を簡潔に伝え、次に具体的な提供内容(商品・サービス)を説明します。その際、機能の羅列にならないよう注意が必要です。「〇〇という機能によって、△△というメリットがあり、その結果、□□というお客様の利益に繋がります」というように、機能とそれがもたらす利益(ベネフィット)を連携させて説明します。なぜ競合ではなく自社が最適なのか、独自の強みも客観的な根拠と共に示しましょう。
5. 導入スケジュール・体制:実現までの道のりを具体化し安心感を醸成
なぜ必要か?
どんなに素晴らしい提案でも、「本当に実現できるのだろうか?」「導入が大変そう…」といった不安がお客様に残っていると、意思決定のブレーキになってしまいます。具体的なスケジュールやサポート体制を示すことで、提案の実現性を高め、導入後の道のりを明確にイメージさせ、お客様の不安を払拭し、安心感を醸成します。
何を書くべきか?
契約から導入、本稼働までの一連の流れを、具体的な期間と共に図(ガントチャートなど)で示します。また、お客様側と自社側でそれぞれ誰が何を担当するのか、役割分担を明確にしましょう。導入後の問い合わせ窓口や定期的なミーティングといった手厚いサポート体制をアピールすることで、「導入して終わり」ではない、長期的なパートナーであることを示せます。
6. 料金・お見積もり:費用対効果が伝わる提示方法
なぜ必要か?
料金提示は、提案のクライマックスです。単なる価格表を見せるだけでは、「高いか安いか」という価格勝負に陥りがちです。重要なのは、「この投資によって、どれだけのリターンが得られるのか」という費用対効果(ROI)をお客様に明確に理解してもらうことです。
何を書くべきか?
初期費用、月額費用など、何にいくらかかるのかを分かりやすく、透明性をもって提示します。その上で、「3. 実現する未来」で示した定量的効果と比較し、「〇ヶ月で投資回収が可能です」といった具体的な試算を示すと効果的です。また、予算やニーズに応じてお客様が選択できるよう、複数のプラン(例:基本、標準、フルサポート)を提示するのも有効なテクニックです。
7. 会社概要・実績:信頼性を裏付ける最後のひと押し
なぜ必要か?
提案の最後に、自社が「この提案を実現するにふさわしい、信頼できるパートナーである」ことを改めて示すパートです。特に、決裁者が初めてあなたの会社を知る場合、この会社概要や実績が、最終的な意思決定を後押しする重要な判断材料となります。
何を書くべきか?
設立年や事業内容といった基本情報に加え、企業理念やビジョンを簡潔に記載します。そして、特に提案先と同じ業界や、同じような課題を抱えていた企業の導入事例を具体的に紹介することが極めて重要です。「同業のA社も成功しているなら」という安心感に繋がります。メディア掲載履歴や受賞歴なども、客観的な信頼性を補強する材料となります。
【差がつく!】営業提案書の質を飛躍させる5つの書き方のコツ
基本構成をマスターしたら、次は提案書の説得力と伝わりやすさを一段階引き上げるための「書き方のコツ」を実践しましょう。これらのテクニックを意識するだけで、あなたの提案書は劇的に分かりやすく、相手の心に響くものに変わります。
コツ1:1スライド・1メッセージを徹底する
1枚のスライドに複数の情報を詰め込みすぎると、結局何が言いたいのかがぼやけてしまいます。「このスライドで、一番伝えたいことは何か?」を自問自答し、メッセージを一つに絞り込みましょう。情報を削る勇気が、伝わる提案書への第一歩です。
コツ2:結論から書く(PREP法を意識)
ビジネスコミュニケーションの基本であるPREP法は、提案書作成においても非常に有効です。これは、まず結論(Point)を述べ、次にその理由(Reason)、そして具体例(Example)を挙げて、最後にもう一度結論(Point)で締めくくる構成術です。この流れで各スライドや章を構成することで、話の要点が明確になり、聞き手はストレスなく内容を理解できます。
コツ3:専門用語を避け、誰が読んでも分かる言葉で書く
提案書の読み手は、現場の担当者だけでなく、ITに詳しくない役員や他部署のマネージャーである可能性も大いにあります。「中学生が読んでも理解できる言葉で書く」くらいの意識を持ちましょう。どうしても専門用語を使う必要がある場合は、必ず注釈を入れるか、平易な言葉で言い換えるなどの配慮が不可欠です。
コツ4:図やグラフを用いて視覚的に分かりやすくする
文字だけの説明は、読み手を疲れさせ、内容の理解を妨げます。例えば、文章での比較は比較表に、プロセスの説明はフローチャートに、数値の羅列は棒グラフや円グラフに置き換えることで、視覚的に分かりやすくなります。「百聞は一見に如かず」、視覚情報は文字情報の何倍もの情報を瞬時に伝える力を持っています。
コツ5:ストーリーテリングで相手の感情を動かす
人は、論理だけで納得しても、すぐには行動しません。最終的に人の心を動かし、行動を促すのは感情です。提案書全体をお客様を主人公とした一つの物語として構成してみましょう。お客様が抱える「課題」を、自社のサービスという「解決策」で乗り越え、輝かしい「未来」を手に入れる。このような物語仕立てにすることで、お客様は提案内容を自分ごととして捉えやすくなります。
【パワポ・Googleスライド】見やすい提案書デザインの3つの原則
提案書の中身はもちろん重要ですが、その「見た目」も相手に与える印象を大きく左右します。ここでは、デザイナーでなくてもすぐに実践できる、見やすい資料作成の3つの原則をご紹介します。
テンプレートを活用し統一感を出す
毎回ゼロから資料を作成すると、スライドごとにデザインがバラバラになり、素人っぽい印象を与えてしまいます。事前に自社オリジナルのテンプレートを作成し、ロゴ、基本カラー、フォントなどをあらかじめ設定しておくことで、誰が作成しても統一感のあるプロフェッショナルな資料を効率的に作成できます。
使う色は3色以内に抑える
資料全体で使う色は、3色に絞るのが基本です。資料の大部分を占める「ベースカラー」(白や薄いグレー)、企業のロゴカラーなどテーマを象徴する「メインカラー」、そして最も目立たせたい箇所に限定して使う「アクセントカラー」(赤やオレンジなど)です。このルールを守るだけで、資料全体が洗練され、伝えたい情報が際立ちます。
フォントの種類とサイズを揃える
1つの資料で使うフォントは、原則1種類、多くても2種類までにしましょう。Windowsなら「メイリオ」や「游ゴシック」など、可読性の高いゴシック体がビジネス文書には適しています。また、見出し、小見出し、本文など、役割ごとにフォントサイズを決めて資料全体で統一することで、情報の階層構造が明確になり、格段に読みやすくなります。
【すぐに使える】営業提案書のテンプレート紹介
ここでは、これまで解説してきた基本構成を基にした、汎用的なテンプレートの構成例を、BtoB向けと課題解決型の2パターンでご紹介します。この流れに沿って情報を整理するだけで、説得力のある提案書の骨子が完成します。
BtoB向け汎用テンプレートの構成例
| ページ番号 | スライドタイトル | 主な内容 |
|---|---|---|
| 1 | 表紙 | 宛名、提案タイトル、提出日、提案者情報 |
| 2 | 本日のアジェンダ | これから話すことの全体像を提示し、聞き手の理解を助ける |
| 3 | 会社紹介(サマリー) | 我々は何者か?を1枚で簡潔に紹介 |
| 4 | 提案の背景 | 市場の動向や社会情勢など、マクロな視点での現状認識 |
| 5 | 現状の理解と課題の整理(As-Is) | ヒアリングに基づくお客様の現状と、そこから導き出される課題 |
| 6 | 課題がもたらすリスク | 課題を放置した場合に起こりうる未来を提示し、変革の必要性を喚起 |
| 7 | 目指すべき姿(To-Be) | 課題解決後に実現できる理想の未来像 |
| 8 | ご提案の全体像 | 理想の未来を実現するための、今回の提案のコンセプトや概要 |
| 9-11 | 具体的なご提案内容 | 課題を解決するための具体的な手法、サービス、機能などを解説 |
| 12 | 導入事例のご紹介 | 信頼性を高めるための成功事例(同業他社がベスト) |
| 13 | 導入スケジュール | 実現までの具体的な道のりを提示し、安心感を醸成 |
| 14 | サポート体制 | 導入後も安心して任せられることをアピール |
| 15 | お見積もり | 費用対効果が分かる形での料金提示 |
| 16 | 会社概要・実績 | 企業としての信頼性を裏付ける情報 |
| 17 | お問い合わせ先・質疑応答 | 次のアクションを促すためのクロージング |
課題解決型提案テンプレートの構成例
| ステップ | 見出し | 主な内容 |
|---|---|---|
| 1 | 【現状の課題】 | 〇〇様は、現在△△という課題をお持ちです(ヒアリング内容の再確認、リスクの提示) |
| 2 | 【解決後の未来】 | 本提案により、□□という未来を実現します(定性・定量的メリットの提示) |
| 3 | 【具体的な解決策】 | そのために、弊社は☆☆をご提供します(サービス概要、自社の強み・差別化点) |
| 4 | 【実行計画】 | 〇ヶ月で導入し、□□の実現をサポートします(スケジュール、サポート体制、お見積もり) |
【Q&A】営業提案書に関するよくある質問
最後に、営業提案書に関して多くの人が抱く疑問についてお答えします。
Q. 提案書の適切なページ数はどれくらいですか?
A. 一概に「〇〇ページが正解」というものはありません。重要なのは、相手の役職や商談の時間に合わせて最適化することです。
| 対象者・状況 | ページ数の目安 | ポイント・注意点 |
|---|---|---|
| 担当者レベルへの詳細説明 | 15〜30ページ程度 | 具体的な仕様や運用方法など、詳細な情報を盛り込みます。 |
| 役員・決裁者へのプレゼン | 10ページ以内 | 要点、特に費用対効果を絞って簡潔に伝えます。 冒頭に全体概要を1枚にまとめた「エグゼクティブサマリー」を付けると有効です。 |
| Web会議システムでの提案 | 15ページ前後 | 対面より集中力が持続しにくいため、1スライドあたりの情報量を減らし、テンポよく進めることを意識します。 |
Q. オンライン商談の場合、提案書で気をつけるべき点はありますか?
A. はい、対面とは異なるいくつかの工夫が必要です。
文字サイズと情報量
相手がノートPCなどで見ている可能性を考慮し、通常より文字を大きく、1スライドあたりの情報量を絞ってシンプルにします。
視線誘導の工夫
PowerPointのポインター機能などを活用し、「今、どこを説明しているのか」を明確に示しながら話を進めると、相手の理解を助けます。
対話の機会を設ける
一方的に話し続けるのではなく、「ここまでの内容で、ご不明な点はございませんか?」など、意識的に質問を投げかけ、対話のキャッチボールを心がけることが大切です。
Q. 提出方法はデータ(PDF)と紙、どちらが良いですか?
A. 基本的には、レイアウト崩れや意図しない改変を防げるPDF形式でのデータ提出が推奨されます。
| 形式 | メリット |
|---|---|
| PDF (データ) | ・どのデバイスで見てもレイアウトが崩れない ・ファイルサイズを軽くできる ・編集や改ざんがされにくい ・オンラインでの共有や印刷が容易 |
| 紙 (印刷物) | ・直接書き込みながら検討してもらえる ・「モノ」として手元に残り、印象に残りやすい ・重要な商談では、より丁寧な印象を与える場合がある |
基本はPDFで送り、相手の状況や商談の重要度に応じて、紙での提出を組み合わせるのが良いでしょう。
まとめ
本記事では、受注率を上げる営業提案書の書き方について、基本構成から具体的な作成のコツ、デザインの原則までを網羅的に解説しました。
優れた提案書とは、徹底的に顧客視点に立ち、「あなたの課題を深く理解し、共に未来を創るパートナーでありたい」という想いを、論理的かつ情熱的に伝えるためのコミュニケーションツールです。
今回ご紹介した「型」と「コツ」は、あなたの営業活動を支える大きな助けとなるはずです。しかし、最も大切なのは、目の前のお客様一人ひとりと真摯に向き合い、その成功を心から願うことです。その想いが土台にあって初めて、テクニックは真価を発揮します。
この記事を参考に、ぜひあなた自身の言葉で、お客様の心を動かす提案書を作成してみてください。あなたのビジネスが、より一層飛躍することを心から応援しています。