「企業情報APIを導入したいが、サービスが多すぎてどれを選べばいいかわからない」「無料APIと商用APIの違いを整理したい」。こうした悩みを抱える開発者やDX推進担当者は少なくありません。
企業情報APIはサービスごとにデータ範囲・更新頻度・料金体系が大きく異なります。導入後の乗り換えにはシステム改修が伴うため、最初のサービス選定が極めて重要です。
本記事では、企業情報APIの主要サービスを料金・データ範囲・API仕様の観点で徹底比較します。無料で使える公的APIから商用APIまで網羅しているため、自社の目的に合ったサービス選定にお役立てください。企業情報APIの基本的な仕組みについては「企業情報APIとは?仕組み・できること・導入メリットを徹底解説」もあわせてご覧ください。
企業情報APIの比較が必要な理由
企業情報APIは一度システムに組み込むと長期にわたって利用するものです。だからこそ、導入前の比較検討が欠かせません。ここでは比較が必要な2つの理由を解説します。
サービスごとにデータ範囲・精度・料金が大きく異なる
企業情報APIと一口に言っても、サービスによって提供されるデータの内容は大きく異なります。たとえば、国税庁の法人番号APIは法人名・所在地・法人番号のみですが、商用APIでは売上高・従業員数・業種・連絡先・求人情報まで取得できるものもあります。
料金体系も従量課金・月額定額・年間契約などさまざまです。自社の利用頻度やデータ量に合わない料金体系を選ぶと、コストが想定の数倍になるケースもあります。経済産業省の「DXレポート」でも指摘されているように、データ基盤の選定ミスはDX推進の大きな障壁となります。
導入後の乗り換えコストが高い
企業情報APIはCRMやSFA、自社プロダクトに深く組み込まれるため、一度導入すると乗り換えには以下のコストが発生します。
- システム改修コスト:APIのエンドポイント・レスポンス形式・認証方式の違いに対応するための開発工数
- データ移行コスト:既存データのIDマッピングやフォーマット変換の作業
- 運用停止リスク:移行期間中のデータ取得停止による業務への影響
こうした乗り換えコストを考慮すると、最初の選定段階で自社の要件に合ったサービスを選ぶことが、長期的なコスト最適化につながります。
企業情報APIの比較ポイント5つ
企業情報APIを比較する際に確認すべき5つのポイントを解説します。サービス選定のチェックリストとして活用してください。
1. データ網羅性(収録企業数・カバレッジ)
最も重要な比較ポイントは、APIが返す企業データの網羅性です。確認すべき項目は以下のとおりです。
| 確認項目 | 具体的な質問 |
|---|---|
| 収録企業数 | 国内法人を何社カバーしているか(登記ベース約500万社に対して何%か) |
| 対象法人の範囲 | 株式会社のみか、合同会社・個人事業主も含むか |
| 業種カバレッジ | 特定業界に偏りがないか |
| 地域カバレッジ | 全国対応か、首都圏のみか |
営業リスト作成やマーケティング用途では、特定の業界・地域に偏りのない網羅的なデータベースが求められます。
2. データ項目の充実度
企業の基本情報(社名・住所・法人番号)だけでなく、活用目的に応じた付加情報が取得できるかを確認しましょう。主なデータ項目は以下のとおりです。
- 基本情報:法人番号、商号、本店所在地、設立年月日、資本金
- 財務情報:売上高、営業利益、従業員数
- 連絡先情報:代表電話番号、部署直通番号、メールアドレス
- 組織情報:役員情報、部署構成、組織図
- 活動情報:求人情報、ニュースリリース、採用動向
3. 更新頻度・データ鮮度
企業情報は常に変化するため、データの更新頻度は重要な比較ポイントです。移転・代表者変更・倒産などの情報が古いままだと、営業効率が大きく低下します。
| 更新頻度 | 適する用途 | 注意点 |
|---|---|---|
| リアルタイム | 与信判断、営業タイミング検知 | API料金が高くなる傾向 |
| 日次〜週次 | 営業リスト作成、CRMデータ補完 | 多くの商用APIがこの頻度 |
| 月次〜四半期 | 市場分析、レポート作成 | 無料APIに多い更新頻度 |
4. 料金体系(従量課金 vs 定額)
企業情報APIの料金体系は主に3つのパターンがあります。自社の利用量に応じた最適な料金体系を選びましょう。
| 料金体系 | 特徴 | 向いている企業 |
|---|---|---|
| 従量課金 | APIコール数やデータ取得件数に応じた課金 | 利用量が少ない・変動が大きい企業 |
| 月額定額 | 月間の上限件数内で定額利用 | 利用量が安定している企業 |
| 年間契約 | 年単位の契約で割引が適用 | 長期利用が確定している企業 |
料金比較の際は、初期費用・月額基本料・超過料金・最低利用期間の4点を必ず確認してください。詳しい料金の考え方は「企業情報APIの料金相場」で解説しています。
5. API仕様・開発者体験(ドキュメント・SDK・サポート)
実際に組み込む開発者にとっては、API仕様の使いやすさも重要です。以下の点をチェックしましょう。
- レスポンス形式:JSON対応か、XMLのみか
- 認証方式:APIキー認証、OAuth 2.0など
- SDK提供:Python、JavaScript等の公式ライブラリがあるか
- ドキュメント:APIリファレンスの充実度、サンプルコードの有無
- レート制限:1秒・1分あたりのリクエスト上限
- サポート体制:技術サポートの対応時間・チャネル
無料で使える企業情報API
まずは無料で利用できる公的な企業情報APIを紹介します。コストをかけずにプロトタイプを作りたい場合や、基本的な法人情報のみで十分な場合に適しています。各APIの詳細は「無料で使える企業情報API一覧」でも解説しています。
法人番号API(国税庁)
国税庁が提供する法人番号公表サイトのWeb-API。法人番号・商号・本店所在地の3項目を取得できます。2015年のマイナンバー制度開始に伴い、すべての法人に付番された13桁の法人番号をキーにした検索が可能です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提供元 | 国税庁 |
| 取得可能データ | 法人番号、商号(法人名)、本店所在地、変更履歴 |
| 更新頻度 | 月数回(届出処理完了後) |
| レスポンス形式 | XML、CSV |
| 利用料金 | 無料 |
| 制約 | 取得項目が限定的、JSON非対応、売上高・従業員数等の取得不可 |
gBizINFO API(経済産業省)
経済産業省が運営するgBizINFOのAPI。法人番号APIより多くの項目が取得可能で、補助金・届出・特許情報など、政府が保有する企業関連データを横断的に検索できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提供元 | 経済産業省 |
| 取得可能データ | 法人基本情報、届出認定情報、補助金情報、特許情報、調達情報、財務情報(一部) |
| 更新頻度 | 月次程度(データソースにより異なる) |
| レスポンス形式 | JSON、CSV |
| 利用料金 | 無料(要ユーザー登録) |
| 制約 | データの欠損が多い項目がある、連絡先情報は取得不可 |
無料APIの比較まとめ
| 比較項目 | 法人番号API | gBizINFO API |
|---|---|---|
| 取得項目数 | 少ない(3項目) | 多い(10項目以上) |
| レスポンス形式 | XML、CSV | JSON、CSV |
| 連絡先情報 | なし | なし |
| 財務情報 | なし | 一部あり |
| ドキュメント | 基本的 | 比較的充実 |
| 適した用途 | 法人番号ベースのデータ統合 | プロトタイプ開発、市場調査 |
無料APIは基本的な法人情報の取得には十分ですが、営業・マーケティング用途で必要となる連絡先情報や組織情報は取得できません。実務で活用するには、次に紹介する商用APIとの併用が必要になるケースがほとんどです。
主要商用企業情報APIの比較
ここでは、実務で広く利用されている主要な商用企業情報APIを比較します。各サービスの特徴を把握した上で、自社の目的に合ったものを選びましょう。
主要サービスの比較表
| 比較項目 | SalesNow API | 帝国データバンク(TDB) | 東京商工リサーチ(TSR) |
|---|---|---|---|
| 収録企業数 | 1,400万件超(国内法人100%網羅) | 約160万社 | 約400万社 |
| 基本情報 | 法人番号、商号、所在地、設立年、資本金 | 法人番号、商号、所在地、設立年、資本金 | 法人番号、商号、所在地、設立年、資本金 |
| 財務情報 | 売上高、従業員数 | 詳細な財務諸表データ | 詳細な財務諸表データ |
| 連絡先情報 | 代表電話、部署直通番号 | 代表電話 | 代表電話 |
| 組織情報 | 部署構成、役員情報 | 役員情報 | 役員情報 |
| 活動情報 | 求人情報、ニュース、採用動向 | なし | ニュース(一部) |
| 与信情報 | なし | 評点、信用スコア | 評点、信用スコア |
| 更新頻度 | 日次〜週次 | 月次 | 月次 |
| レスポンス形式 | JSON | XML、JSON | XML、JSON |
| 料金体系 | カスタム見積り | 従量課金(1件あたり) | 従量課金(1件あたり) |
| 強み | データ網羅性、連絡先情報の充実、営業活動に直結するデータ | 信用調査データの深さと歴史 | 財務データの網羅性と正確性 |
SalesNow APIの特徴
SalesNow APIは、1,400万件超の国内法人を100%網羅した企業データベースにAPIでアクセスできるサービスです。営業・マーケティング用途に特化しており、他のAPIにはないデータ項目を多数保有しています。
- 部署直通番号:代表電話だけでなく、営業部門や人事部門への直通番号を取得可能。営業のアポ率向上に直結
- 求人情報・採用動向:企業の最新の求人情報をリアルタイムに取得でき、営業タイミングの検知に活用可能
- 日次更新:データが日次で更新されるため、最新の企業情報を常に取得可能
- RESTful API・JSON対応:モダンなAPI設計で、開発者が組み込みやすい仕様
帝国データバンク・東京商工リサーチの特徴
帝国データバンク(TDB)と東京商工リサーチ(TSR)は、日本を代表する信用調査会社です。数十年にわたる調査実績に基づく信用スコアや詳細な財務情報が最大の強みです。
- 信用調査の深さ:独自の信用スコア・評点による企業の信用力評価が可能
- 財務諸表の詳細データ:貸借対照表・損益計算書レベルの詳細な財務情報を取得可能
- 1件あたりの料金:従量課金が中心で、大量のデータ取得にはコストが膨らみやすい
与信管理やリスク評価が主目的であれば、TDB・TSRのAPIが適しています。一方、営業リスト作成やCRM連携が目的の場合は、データ網羅性と連絡先情報の充実度でSalesNow APIに優位性があります。
目的別おすすめの選び方
企業情報APIは「何のために使うか」で最適なサービスが変わります。以下の目的別に、おすすめの選び方を解説します。
営業リスト作成が目的 → 網羅性重視
新規開拓のための営業リスト作成が目的なら、データの網羅性と連絡先情報の充実度を最優先で選びましょう。
| 重視すべきポイント | 理由 |
|---|---|
| 収録企業数の多さ | ターゲット条件で絞り込んでも十分な件数が残る |
| 部署直通番号の有無 | 受付突破率に直結し、商談獲得率が大きく変わる |
| 業種・従業員数での絞り込み | ターゲティングの精度を高められる |
| 求人・ニュース等の活動情報 | アプローチのタイミング判断に活用できる |
この用途では、1,400万件超を網羅し部署直通番号や求人情報まで取得できるSalesNow APIが特に適しています。導入企業では営業担当者1人あたり月8.6時間の工数削減を実現しています。
SalesNow APIは、パーソルキャリアやLINEヤフーなどの大手企業にも導入されています。API経由で取得した企業データを営業リスト作成やCRM連携に活用し、商談数2.3倍の成果を達成した事例もあります。
CRM連携が目的 → データ項目重視
SalesforceやHubSpotなどのCRMに企業データを自動連携する用途では、CRMの項目と一致するデータが取得できるかがポイントです。
- CRMの必須項目(業種、従業員数、売上高等)が取得可能か
- 法人番号をキーにした名寄せが可能か
- 既存データとの重複チェック機能があるか
- Webhook等によるデータ変更通知に対応しているか
与信管理が目的 → 財務データ重視
取引先の信用力評価や与信限度額の設定が目的であれば、財務諸表データと信用スコアの充実度を重視しましょう。この用途では帝国データバンクや東京商工リサーチのAPIが強みを発揮します。信用スコア、倒産確率、財務諸表の時系列データなど、リスク判断に必要な情報が充実しています。
企業情報APIとWebスクレイピングの違い
企業情報を取得する方法として、APIの代わりにWebスクレイピングを検討するケースもあります。しかし両者には大きな違いがあり、ビジネス用途ではAPIの利用が推奨されます。
比較表:API vs Webスクレイピング
| 比較項目 | 企業情報API | Webスクレイピング |
|---|---|---|
| 法的リスク | 低い(正規のデータ提供契約) | 高い(著作権法・不正競争防止法に抵触する可能性) |
| データ品質 | 高い(構造化・クレンジング済み) | 低い(HTML解析のため表記揺れ・欠損が発生) |
| 安定性 | 高い(SLA保証あり) | 低い(サイト構造変更で動作停止) |
| 運用コスト | 月額料金のみ | スクレイパーの保守・サーバー費用が継続発生 |
| データ更新 | 自動(API側で更新) | 手動(クローリング設定の維持が必要) |
| 取得速度 | 高速(ミリ秒単位) | 低速(1ページずつ取得・待機が必要) |
Webスクレイピングは一見コストが低く見えますが、法的リスク・運用保守コスト・データ品質の観点から、ビジネスでの継続利用には大きなリスクがあります。総務省の「国民のためのサイバーセキュリティサイト」でも、Webサイトへの無断アクセスに関する法的留意点が示されています。
企業情報APIの品質面での違いについては「企業情報APIのデータ品質」で詳しく解説しています。
まとめ
本記事では、企業情報APIの主要サービスを料金・データ範囲・API仕様の観点で比較しました。要点を整理します。
- 企業情報APIは導入後の乗り換えコストが高いため、最初の選定が極めて重要
- 比較ポイントは「データ網羅性」「データ項目」「更新頻度」「料金体系」「API仕様」の5つ
- 無料APIは法人番号API(国税庁)とgBizINFO API(経産省)の2つが利用可能だが、連絡先や詳細な企業情報は取得できない
- 商用APIでは、営業・マーケティング用途ならSalesNow API(1,400万件網羅・部署直通番号・求人情報)、与信管理なら帝国データバンク・東京商工リサーチが適している
- Webスクレイピングは法的リスク・品質・運用コストの面でAPIに劣るため、ビジネス用途ではAPI利用を推奨
自社の利用目的を明確にした上で、データ範囲・料金・API仕様を総合的に比較し、最適なサービスを選定してください。
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よくある質問
Q. 企業情報APIを比較する際の重要なポイントは何ですか?
企業情報APIを比較する際の重要ポイントは5つです。①収録社数と網羅率(国内法人を何%カバーするか)、②データ更新頻度(毎日か月次か)、③収録項目の深さ(部署直通電話・組織図・財務情報等の有無)、④料金体系(従量制か月額制か)、⑤ドキュメントとサポート体制の充実度です。
Q. 企業情報APIとWebスクレイピングの違いは何ですか?
企業情報APIは合法的・安定的に大量のデータを取得できる一方、Webスクレイピングはサイトの利用規約違反となる場合があり、サイト構造変更で突然使えなくなるリスクもあります。ビジネス利用には公式APIの活用を推奨します。APIは認証・利用規約が明確で、安定した大量データ取得が保証されます。
Q. SalesNow APIは他の企業情報APIと比べてどのような特徴がありますか?
SalesNow APIの特徴は、1,400万件超の国内法人100%網羅・毎日230万件のリアルタイム更新・部署直通電話番号と組織図の提供にあります。法人番号API(無料・基本情報のみ)やEDINET(上場企業限定)では取得できない営業活用データを豊富に保有しており、SaaS・AI開発への組み込みに最適化されています。