「帝国データバンクに信用調査を依頼したいが、費用と流れが分からない」「取引先でもない帝国データバンクから調査の連絡が来たが、どう対応すればいいのか」——帝国データバンクの調査をめぐる疑問は、立場によって中身がまったく変わります。
前者は与信管理を担う側の実務であり、後者は調査に協力するかどうかを判断する側の話です。本記事は、この2つの立場を分けて整理した、帝国データバンクの信用調査の実務ガイドです。
本記事では、信用調査でわかること(調査報告書の9項目)、調査の種類、依頼の流れ4ステップ、調査問合票の料金体系と納期、費用を無駄にしない調査対象の決め方、調査の訪問連絡を受けた側の対応、そして本調査の前に行う一次スクリーニングまでを順に解説します。
与信管理そのものを仕組み化したい方は「与信管理システム比較10選|タイプ別おすすめと選び方・料金体系」を、取引開始前のもう1つの確認である反社チェックの手順は「反社チェックのやり方6つの方法|手順・対象範囲・頻度と証跡の残し方」をあわせて参照してください。
審査業務をシステム側で自動化したい場合は「企業情報APIで与信管理・審査を自動化する方法を解説」で実装パターンを解説しています。
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帝国データバンクの信用調査は「依頼する側」と「受ける側」で読む場所が違う
「帝国データバンク 調査」と検索する方は、大きく2つの立場に分かれます。1つは、新規取引先の与信判断のために調査を依頼したい側です。もう1つは、帝国データバンクの調査員から訪問の連絡を受け、どう対応するか判断したい側です。同じ「調査」という言葉でも、必要な情報はまったく別物です。
信用調査とは、取引相手の経済状況を把握するために行う調査を指します。
帝国データバンクの公式サイトでは、対象は個人の場合と企業の場合があるものの、同社では個人の信用調査は行っておらず「企業信用調査」のみを実施していると案内されています(出典:帝国データバンク「信用調査の訪問連絡を受けた方」/2026年8月8日確認)。
帝国データバンクの信用調査を一文で言うと、調査員が現地に赴いて取材し、非公開情報まで含めた報告書にまとめる有料の企業調査です。この「人が現地で取材する」という設計が、後述する費用と納期の根拠になっています。
調査以外も含めた同社の事業構成やサービス全体像は「帝国データバンクとは?事業内容・使い方・評判をわかりやすく解説」で解説しています。
なぜ企業間取引に信用調査が必要なのか
現在の商取引の多くは、代金の後払いを基本とする信用取引(与信取引)です。商品やサービスを先に提供し、代金の回収は後になります。この構造がある限り、取引前に相手の支払能力を見極める工程は避けて通れません。
そこで使われるのが第三者による信用調査です。調査会社の調査員が対象企業に直接赴き(現地現認)、財政状況をはじめ、長所や技術力といった「信用」を裏付ける情報を集めます。信用調査は、後払い取引の代金回収リスクを判断するための調査です。
信用調査と与信調査は何が違うのか
信用調査は、与信調査と呼ばれることもあります。両者に厳密な使い分けが定着しているわけではなく、実務では「取引相手の支払能力を確かめる調査」を指して同じ意味で使われるのが一般的です。
あえて区別する場合、与信調査は自社が与信限度額や支払条件を決めるまでの判断プロセス全体を指し、信用調査はその判断材料として第三者機関に依頼する調査を指す、という整理がされます。
与信調査の費用を見積もる場面では、自社で行う情報収集の工数と、外部に依頼する信用調査の費用の両方を見込んでおくと精度が上がります。
依頼する側が知りたいこと
調査を依頼する側の関心は、費用・納期・報告書の中身・依頼の手続きに集約されます。特に費用は、社内稟議を通すために必要となるため、最初に確認したい項目です。帝国データバンクの企業信用調査は会員制サービスで、料金体系は公式サイトに公開されています。詳細は後述します。
調査を受ける側が知りたいこと
一方、調査の訪問連絡を受けた側の関心は、費用負担の有無・応じる義務があるのか・誰が依頼したのか・何を聞かれるのかに集中します。これらは帝国データバンクの公式Q&Aに回答が掲載されています。
本記事の読み進め方
立場ごとに読むべき場所が異なるため、先に対応表を示します。
| 立場 | 主な疑問 | 読むべきセクション |
|---|---|---|
| 依頼する側 | 何がわかるのか/どんな種類があるのか/どう申し込むのか/いくらかかるのか/どの取引先に使うべきか | 2章〜6章 |
| 受ける側 | 費用はかかるのか/応じる義務はあるのか/依頼者は誰か/何を聞かれるのか | 7章 |
| 両方 | 本調査の前後で何をしておくべきか | 8章〜9章 |
信用調査でわかること|調査報告書に載る9つの項目
調査を依頼して、結局どんな情報が手に入るのか。ここが曖昧なまま見積もりを取ると、費用の妥当性を判断できません。帝国データバンクは、信用調査報告書に含まれる内容を公式サイトで9項目に整理して公開しています。
| 報告書の項目 | 内容 |
|---|---|
| 評点 | 定性・定量情報をもとに、企業の総合的な信用度を100点満点で表す評価 |
| 代表者 | 社長の経営経験、業界経験、得意分野、人物像など |
| 系列・沿革 | グループ構成や資本構成、設立経緯、沿革 |
| 業績 | 業況や収益性をチェックする最大6期の業績 |
| 取引先・取引銀行 | 支払・回収の条件、取引先との関係、メインバンクとの関係など |
| 資金現況 | 資金繰りの現況、資金調達力、不良債権など |
| 現況と見通し | 企業の事業内容と特色、業績動向と今後の事業の見通し |
| 財務諸表・分析 | 最大3期の財務諸表分析結果 |
| 不動産登記写 | 会社や関係者の所有不動産と取得日、債権者、抵当権設定状況など |
出典:帝国データバンク「信用調査を依頼する方」(2026年8月8日確認)
数字だけでなく定性情報が載る
この9項目を見ると、財務データだけで構成されていないことが分かります。代表者の人物像、業界における位置づけ、今後の事業の見通しといった、決算書には現れない情報が含まれています。
帝国データバンクは「現地現認」をポリシーとして掲げ、調査員が現地に赴いて経営者と面談し、実質本店の確認や将来見通しの把握まで行うと公式サイトで説明しています。
数字の裏側にある事業の実態を、人が確認して記述する構造です。信用調査報告書の価値は、公開情報では埋まらない定性情報にあります。
インターネットで集まる情報との違い
帝国データバンクは、国内企業の99.7%が中小企業であるため、企業情報は基本的に非公開情報であると説明しています。上場企業であれば有価証券報告書で財務を確認できますが、大多数を占める非上場の中小企業にはその手段がありません。
だからこそ、取材によって非公開情報を収集する信用調査に固有の役割があります。逆に言えば、公開情報だけで判断できる範囲は限られており、金額の大きい取引ほど調査の必要性が高まります。
調査報告書と企業概要データは別物
混同されやすい点として、帝国データバンクには「信用調査報告書(CCR)」とは別に、企業概要データという商品があります。公式Q&Aでは、企業概要データは調査報告書をもとに、商号・所在地・業種・従業員数・売上高・評点など最大54項目を抽出したものだと説明されています。
つまり、報告書は数十ページに及ぶ詳細レポート、企業概要データはそこから抜き出した要約データという関係です。「評点だけ見たい」のか「事業の中身まで読みたい」のかで、必要な商品が変わります。
評点そのものの見方と点数の目安は「帝国データバンクの評点とは?100点満点の見方・目安・評価項目」で解説しています。
報告書の取り扱いには制限がある
実務上、見落とされがちなのが利用範囲の制限です。帝国データバンクは「調査報告書取扱規定」で、報告書を内部資料としてのみ利用すること、外部への持ち出しその他の手段で第三者に内容を漏らすことを禁止しています。複製・貸与・翻訳など著作権を侵害する行為も禁止されています。
調査報告書は社内利用限定で、第三者への開示は禁止されています。取引先や親会社に共有する前提で調査を依頼すると規定違反になるため、社内の与信管理フローを設計する段階で確認が必要です。
信用調査の種類|新規調査・コピーサービスの使い分け
「調査を依頼する」と一口に言っても、帝国データバンクの企業信用調査には性質の異なる2つの方式があります。ここを知らないと、急ぎの案件で不必要に長い納期を待つことになります。
| 種類 | 内容 | 消費する調査問合票 | 向くケース |
|---|---|---|---|
| 新規調査 | 依頼のたびに調査員が現地へ赴き、新たに調査報告書を作成する方式。時事情報・公開情報に加え、全国の情報ネットワークと社内蓄積情報を活用する | 1枚+付帯料金 | 与信額が大きい/最新の経営状態を確認したい/過去の報告書がない |
| コピーサービス | 過去に実施した既存の調査報告書を提供する方式。調査年月日を確認したうえで利用する | 1.0枚(調査完了後2か月未満) 0.5枚(2か月以上) |
急ぎで判断材料が欲しい/一次的な確認で足りる/件数が多い |
出典:帝国データバンク「企業信用調査」(2026年8月8日確認)
鮮度を取るか、スピードを取るか
新規調査は、依頼を受けてから現地に赴くため、報告書の内容はその時点の最新状態を反映します。一方で、後述するとおり納期は最短でも7営業日前後、通常は29営業日前後を要します。
コピーサービスは既存の報告書を提供する方式のため、すぐに入手できる代わりに、内容は前回調査時点のものです。調査完了から2か月以上経過した報告書は消費枚数が0.5枚になる設計で、鮮度と費用が連動しています。急ぎならコピーサービス、鮮度を重視するなら新規調査です。
コピーサービスを使うときの注意点
コピーサービスを利用する際は、報告書の調査年月日を必ず確認する必要があります。公式サイトでも、過去の調査報告書を数多く保有しているため、調査年月日を確認したうえで利用するよう案内されています。
どこまでの鮮度を許容するかは、取引金額で線を引くのが実務的です。金額の大きい取引の可否をコピーサービスだけで判断するのは避け、新規調査に切り替えるか、直近の公開情報とあわせて確認する運用が安全です。
逆に、取引候補が多く、まず全体を粗く把握したい段階ではコピーサービスが有効です。ここで対象を絞り込み、残った数社に新規調査をかける組み立てにすると、調査予算の消化を抑えられます。
企業信用調査以外の調査メニュー
帝国データバンクは、国内企業を対象とした企業信用調査のほかに、海外企業信用調査、業界・市場調査、企業定点観測サービスといった調査系サービスも公開しています。海外の取引先を評価したい場合や、個社ではなく市場全体を把握したい場合は、企業信用調査とは別のメニューが該当します。
本記事では、検索需要が最も大きい国内の企業信用調査に絞って解説します。
帝国データバンクに信用調査を依頼する流れ4ステップ
ここでは、実際に調査を申し込んでから報告書を受け取るまでの流れを、公式サイトの記載に沿って整理します。最初に押さえるべき前提は、帝国データバンクの企業信用調査は会員制サービスであるという点です。単発でスポット購入する形式ではありません。
前提:調査会員への申し込みと調査問合票の発行
公式サイトでは、調査会員に申し込むと「調査問合票」が発行され、この問合票を使うことで企業信用調査をはじめとする各種情報サービスを利用できると説明されています。調査問合票1枚につき1社の企業信用調査を依頼できる仕組みです。
申し込み前には「調査報告書取扱規定」の確認が求められます。前章で触れた第三者開示の禁止など、社内の運用ルールに関わる内容が含まれるため、法務・情報管理の担当部門にも共有しておくとスムーズです。
STEP1:調査を依頼する
企業信用調査の依頼は、電話・FAX、またはオンライン企業情報サービスから申し込みます。オンラインサービスを利用する場合は、事前の申し込みが必要です。
このとき重要なのが、依頼主の匿名性です。公式サイトでは、公平中立な調査を行うため、調査依頼企業の情報は調査員に知らされない仕組みになっており、調査先企業にも知られることはないと明記されています。
STEP2:調査が実施される
調査員が調査先企業に直接足を運び、現地を確認しながら、業績数値などの定量情報と定性情報を取材します。現地では、経営者との面談、実質本店の確認、現状と将来見通しの把握、財務情報の確認などが行われます。
これに加えて、帝国データバンクが長年蓄積してきた独自情報と、登記情報・官公庁公開資料・マスメディア情報といった公開情報が組み合わされます。現地取材・独自情報・公開情報の3層で報告書が組み立てられる構造です。
STEP3:情報が集約・分析される
集めた情報は、社内の担当者がさまざまな角度から客観評価・分析し、報告書としてまとめられます。この工程を経ることで、調査員個人の印象ではなく、同一基準で他社と比較できる評価に変換されます。
STEP4:調査報告書を受け取る
完成した調査報告書は、郵送、FAX、またはオンライン企業情報サービス経由のPDFファイルで受け取れます。PDFで受け取る場合は、事前にオンラインサービスへの申し込みが必要です。
依頼できる対象・できない対象
公式Q&Aでは、調査対象の制限が明示されています。実務で問い合わせが多い3点を整理します。
- 法人は規模を問わず依頼できる:株式会社・有限会社などの法人は、規模の大小にかかわらず調査を受け付けていると案内されています
- 個人調査は受け付けていない:プライバシー保護の観点から個人調査は行っていません。ただし個人営業主については、法人と同様に調査対象として受け付けています
- 自社・グループ会社の調査は依頼できない:公式Q&Aで「自社(グループ会社含む)調査は、お受けすることができません」と明記されています
自社およびグループ会社の調査は依頼できません。「自社の評点を確認するために調査を依頼する」という使い方はできない点に注意が必要です。
依頼前に決めておくと迷わない4点
申し込みをスムーズに進めるため、社内で先に確定しておきたい項目があります。
- 対象企業の特定情報:商号・所在地・代表者名。同一商号の企業が複数存在するケースがあるため、法人番号まで押さえておくと誤りが防げます
- 希望納期:いつまでに報告書が必要か。速度オプション(超特急・特急)を使うかどうかが決まり、その案件の付帯料金に直結します
- 想定与信額:調査費用に見合う取引規模かどうかの判断材料になります
- 社内の決裁ライン:会員制のため、単発の稟議ではなく契約としての決裁が必要になります
帝国データバンクの信用調査の費用【2026年8月時点・公式サイト記載】
信用調査の費用は「1社いくら」というシンプルな料金ではありません。帝国データバンクの企業信用調査は、調査問合票をあらかじめ購入し、1社の調査ごとに1枚を消費する前払い方式です。この構造を理解すると、見積もりの読み方が変わります。
調査問合票の料金表
公式サイトに掲載されている調査問合票の料金は次のとおりです。枚数が多いほど1枚あたりの単価が下がる設計になっています。
| 枚数 | 料金 | 1枚あたりの参考価格 |
|---|---|---|
| 5枚 | 120,000円 | 24,000円 |
| 9枚 | 200,000円 | 22,222円 |
| 15枚 | 300,000円 | 20,000円 |
| 27枚 | 500,000円 | 18,519円 |
| 63枚 | 1,000,000円 | 15,873円 |
| 99枚 | 1,500,000円 | 15,152円 |
| 150枚 | 2,250,000円 | 15,000円 |
出典:帝国データバンク「企業信用調査」ご利用料金(2026年8月8日確認)。調査問合票の有効期間は、申し込みの月またはその翌月から1年間と案内されています。
新規調査は「問合票1枚+付帯料金」
公式サイトでは、新規調査の費用は「1社につき調査問合票1枚+付帯料金」と説明されています。つまり、問合票の単価だけで総額が決まるわけではありません。付帯料金として案内されているのは次の項目です。
- 出張調査料金:調査対象企業が調査担当事業所と同一市内および東京23区の場合は無料、それ以外は有料地域と案内されています
- 商業登記閲覧料金・不動産登記閲覧料金:登記情報の取得にかかる実費相当
- 速度料金(選択オプション):超特急 4,000円(本体価格)/特急 3,000円(本体価格)
付帯料金の一部は、条件を満たせば調査問合票で精算できるサービスもあると案内されています。利用条件は最寄りの事業所への確認が必要です。
納期は出張料区分と速度オプションで変わる
費用と納期は連動します。公式サイトに掲載されている調査日数の目安は次のとおりです。
| 出張料区分 | 超特急 | 特急 | 普通 |
|---|---|---|---|
| 無料地域 | 7営業日前後 | 11営業日前後 | 29営業日前後 |
| 10,000円未満 | 9営業日前後 | 14営業日前後 | 29営業日前後 |
| 10,000円以上 | 11営業日前後 | 16営業日前後 | 29営業日前後 |
出典:帝国データバンク「企業信用調査」ご利用料金(2026年8月8日確認)。一部、超特急・特急に対応できない地域や冬期調査不能の地域があると案内されています。
速度オプションを使わない「普通」では、どの区分でも29営業日前後です。営業日ベースであるため、実日数では1か月半程度を見込む必要があります。信用調査の納期は、通常で29営業日前後、超特急でも7営業日前後です。
「1社あたりいくらか」の考え方
総額を概算する場合は、次の式で組み立てます。
調査1社あたりの費用=調査問合票の単価(購入枚数で決まる)+出張調査料金+登記閲覧料金+速度料金(使う場合)
問合票の単価は、5枚購入なら24,000円、150枚購入なら15,000円と、購入規模で約9,000円の差があります。年間の調査件数が読める組織ほど、まとめ買いの効果が大きい設計です。逆に、年間数件しか使わない場合は単価が最も高い水準になります。
見積もりを取る前に確認すべき4点
費用の見誤りを防ぐため、社内で先に整理しておきたい項目を挙げます。
- 年間の調査見込み件数:問合票の単価を左右する最大の変数です
- 調査対象の所在地:出張調査料金の有無が変わります
- 年間で急ぎ案件が占める割合:案件ごとの納期判断(第4章)とは別に、速度料金が年間を通じて常時発生するのか例外的なのかで、年間総額の見込みが変わります
- 有効期間内に使い切れるか:調査問合票の有効期間は申し込みの月またはその翌月から1年間です
※本章の金額・日数は、いずれも帝国データバンク公式サイトに2026年8月8日時点で掲載されている内容です。速度料金は公式サイト上で「本体価格」と表記されています。最新の料金・条件は必ず公式サイトおよび最寄りの事業所でご確認ください。
調査費用をかける相手を絞り込むには、その前段で候補企業の基本情報と動きを把握しておく工程が効きます。SalesNowのサービス資料 では、1,400万件超の企業・組織データの収録項目と、独自のJCコードを基準とした名寄せ・情報付与の仕組みを解説しています。
調査費用を無駄にしない設計|どの取引先に本調査をかけるか
「新規取引先はすべて調査したいが、予算が足りない」——与信管理の現場で必ず突き当たる制約です。調査問合票の単価は購入規模によって15,000円から24,000円の水準にあり、これに付帯料金が加わります。全件調査は、多くの企業にとって現実的な選択肢になりません。
そこで必要になるのが、調査の深さを段階に分ける設計です。本調査は、与信額の大きい取引先に絞って使うのが基本です。
与信判断を3層に分ける
| 層 | 目的 | 主に使う情報 |
|---|---|---|
| 一次スクリーニング | 候補企業の実在性・規模・事業内容・直近の動きを短時間で確認し、明らかに条件に合わない先を外す | 企業データベース、登記情報、公開情報、求人・ニュースなどの動態情報 |
| 二次判定 | 取引条件(与信限度額・支払サイト)を仮置きし、優先順位を付ける | 与信管理システム、企業概要データ、社内の取引実績 |
| 本調査 | 金額の大きい取引・長期契約について、非公開情報まで踏み込んで判断する | 信用調査会社の調査報告書(帝国データバンクの企業信用調査など) |
この3層に分けると、限られた調査予算をどこに配分すべきかが明確になります。一次スクリーニングで母集団を絞り、二次判定で優先順位を付け、本調査は上位の取引先だけに使う流れです。
二次判定で使う企業概要データの単価や、無料で確認できる範囲は「帝国データバンクの料金と無料でできること|公式料金表・500円の中身・個人利用の可否」で解説しています。
調査対象を決める3つの基準
どの取引先を本調査に回すかは、担当者の勘ではなく基準で決めるべきです。実務でよく使われるのは次の3つです。
- 想定与信額:一定金額を超える取引は本調査を必須にします。金額の閾値は、貸倒れが発生した場合に自社が耐えられる水準から逆算します
- 取引期間と継続性:単発の取引か、継続的な供給契約か。継続取引は残高が積み上がるため、初回の判断が重くなります
- 回収条件:前払い・現金決済であればリスクは限定的です。支払サイトが長いほど調査の必要性が高まります
基準を社内ルールとして明文化する
基準を決めても、文書化されていなければ運用は属人化します。与信管理規程や取引先審査基準として「どの条件に該当したら本調査を実施するか」を明記し、稟議のテンプレートに組み込むのが定石です。
調査を仕組みとして回す段階に入ると、システム側での管理が必要になります。与信管理を支えるツールの種類と選び方は「与信管理システム比較10選|タイプ別おすすめと選び方・料金体系」で解説しています。
SalesNowは国内1,400万件超の企業・組織データを収録し、日次230万件以上の更新を行っています。データソースは100万件以上にのぼり、企業の基本情報に加えて、従業員数の推移、求人の出稿状況、ニュース・プレスリリースといった活動シグナルまでを継続的に取得しています。
出典: SalesNow公式サービス情報(2026年8月時点)
帝国データバンクから信用調査の連絡が来たときの対応
「取引先でもない帝国データバンクから、突然調査の連絡が来た」——初めて連絡を受けた経営者や管理部門の方が戸惑うのは自然なことです。ここでは、帝国データバンクが公式サイトで案内している内容をもとに、事実関係を整理します。
なぜ自社が調査対象になるのか
帝国データバンクは、信用調査というと「倒産リスクや経営悪化を疑われているのでは」と思われがちですが、実際には取引の継続・拡大や新規取引先選定のためなど、ポジティブな依頼のほうが多く寄せられていると説明しています。
公式サイトで挙げられている依頼内容の例は、新事業立ち上げに伴う取引先の選定、取引継続中の現状把握、取引金額を拡大するための情報収集などです。加えて、データベースに登録された企業情報を最新に保つため、定期的な更新取材を行う場合があるとも案内されています。
公式Q&Aで案内されている内容
受ける側から寄せられる疑問について、帝国データバンクは公式サイトで次のように回答しています。
| よくある疑問 | 公式サイトでの案内内容 |
|---|---|
| 調査費用はかかるのか | 企業信用調査の費用は依頼者および利用者側が全額負担する制度のため、調査を受ける企業側の負担はまったくないと案内されています |
| すべて答える義務はあるのか | 民間の企業であるため、調査への対応はあくまでも任意でお願いしているとされています。一部回答できない情報がある場合は、調査担当スタッフに相談できると案内されています |
| 依頼者は教えてもらえるのか | 依頼者はデータベース利用者を含めて複数になることが多く、特定の依頼者のみを意識した情報としないため、依頼者は知らせていないとされています。調査担当スタッフにも依頼者名は通知されていません |
| 他社は協力しているのか | ほとんどの企業が調査に協力していると案内されています |
| 営業をされることはないか | 調査に絡めた強制的営業は一切行っていないとされています。ただし、聞き取りの中で経営改善や売上拡大に役立つ商品・サービスの提案を行う場合があるとも記載されています |
出典:帝国データバンク「信用調査の訪問連絡を受けた方」Q&A(2026年8月8日確認)
なお公式サイトでは、情報を開示することへの不安から、はじめは協力を得られない場合もあると率直に記載されています。そのうえで、調査スタッフが調査を受けるメリットを説明することで理解を得られ、協力に至るケースがほとんどだと説明されています。
つまり、対応はあくまで任意である一方で、実務上は協力する企業が多数派という2つの事実が併存しています。この両面を踏まえたうえで、自社としてどう対応するかを決めるのが現実的な進め方です。
調査に協力するメリットとして案内されている内容
公式サイトでは、調査が行われる目的が明示されています。新規取引先候補に対しては取引可否を判断するため、既存取引先に対しては継続的な取引や取引金額の拡大を検討するための情報収集です。
そのうえで帝国データバンクは、調査を受けることのメリットを次のように説明しています。情報がないために新たなビジネスチャンスを失うことや、不必要に厳しい支払条件を課されることを防ぐことにつながる、という内容です。
また、調査員は調査の過程で経営課題を把握するとともに、それを乗り越えるための施策や将来の展望についてもヒアリングし、今後の経営相談にも対応すると案内されています。調査に応じることは、自社の情報が正しく評価される機会にもなります。
調査当日の流れと、あると話が早い資料
公式サイトに掲載されている流れは、①依頼主から調査依頼を受託、②帝国データバンクの調査員から訪問連絡、③現地での調査、④調査報告書の作成・報告、⑤その後の経営サポート、という5段階です。
調査方法は、調査担当スタッフが訪問して経営責任者から直接話を聞くことをベースに、取引先などへの裏付け取材、商業・不動産登記簿や入札業者登録といった公的情報の確認、公開情報の収集を組み合わせる形とされています。
報告書に載る項目(第2章参照)から逆算すると、会社概要・沿革、直近の決算書、主要な取引先と取引条件、今期の見通しといった情報が手元にあると、当日の説明がスムーズになります。
どこまで開示するかは自社の情報管理方針で判断する
公式サイトでも案内されているとおり、調査への対応は任意です。そのうえで、どの情報をどこまで開示するかは、各社の情報管理方針や取引方針に沿って判断すべき事項です。回答が難しい項目がある場合は、その旨を調査担当スタッフに相談できると案内されています。
本記事は、公式に公開されている情報を整理するものであり、応じるべき・応じないべきといった判断を推奨するものではありません。社内の判断材料として活用してください。
なりすましへの注意
帝国データバンクは、同社と無関係の者が社名を騙って電話連絡や訪問営業をするケースがあるとして、不審に思った場合は最寄りの事業所へ問い合わせるよう公式サイトで注意喚起しています。
連絡を受けた際は、担当者名・事業所名を確認し、公式サイトに掲載されている事業所の連絡先から折り返すのが安全な進め方です。
本調査の前に行う一次スクリーニング|工程の前後で役割を分ける
ここでは、信用調査を依頼する前の工程に焦点を当てます。信用調査は「深く狭く」の手段です。1社ごとに人が現地へ赴き、非公開情報まで踏み込むからこそ、単価と納期が生じます。その手前には、必ず「広く浅く」の工程が存在します。
一次スクリーニングは、本調査をかける相手を絞り込む工程です。ここを整えるほど、限られた調査予算が効くようになります。
一次スクリーニングで確認すること
取引候補が挙がった段階で確認したいのは、財務の詳細ではありません。まず押さえるべきなのは、その企業が実在するか、想定どおりの規模・事業内容か、直近で動きがあるか、という3点です。
- 実在性と同定:商号・所在地・法人番号が一致しているか。同一商号の別法人と取り違えていないか
- 規模と属性:従業員数、設立年、資本金、業種、上場区分
- 直近の動き:求人の出稿状況、ニュース・プレスリリースの配信、従業員数の推移
- 社内の重複:既存顧客・過去の失注先として、すでに社内に情報がないか
法人番号は、国税庁の法人番号公表サイトで誰でも無償で確認できます。商号や所在地の表記揺れに左右されない共通キーとして、社内データの名寄せにも本調査の対象特定にも使えます。
SalesNowが担う工程と、担わない工程
SalesNowは、国内1,400万件超の企業・組織データを収録した企業データベースです。信用調査を依頼する前の一次スクリーニング、すなわち候補企業の基本情報と直近の動きを短時間で把握する工程が、SalesNowの担当領域です。
境界を明確にするため、担う範囲と担わない範囲を整理します。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| SalesNowが担う | 企業の基本情報(商号・所在地・業種・従業員数・設立年・資本金・上場区分など)の確認、独自のJCコード(SalesNowが企業・組織に採番する識別コード)を基準とした名寄せ・情報付与、求人やニュースなど活動シグナルによる動態把握、条件を指定した候補企業の抽出 |
| SalesNowが担わない | 支払能力の評価、与信限度額の算定、信用調査報告書に相当する非公開情報の取材・提供。SalesNowは信用調査サービスではなく、信用調査会社の報告書や評点に代わるものではありません |
この線引きは重要です。取引の可否判断そのものは、信用調査会社の報告書や社内の与信基準に基づいて行うべき領域です。一次スクリーニングは、その判断にかける対象を絞り込み、社内で持っている情報を整える工程として位置づけられます。
SalesNowスコアで動きのある企業を捉える
SalesNowには、企業の活発度を100点満点で示す独自指標「SalesNowスコア」があります。会社情報の更新、従業員数の推移、求人の出稿状況、ニュース・プレスリリースの配信、上場状況という5つの一次データから算出する汎用指標です。
これは利用者の受注データを学習するものではなく、また信用力や支払能力を評価するものでもありません。「その企業が今動いているかどうか」を測る指標であり、候補企業の優先順位付けや、既存取引先の状況変化に気づくきっかけとして使えます。
SalesNowは企業データベース収録件数No.1・法人網羅率No.1(※)の評価を得ています。導入企業では商談数2.3倍、売上1.5倍、1人あたり8.6時間の工数削減といった成果が報告されています。
※2025年10月期_企業データベースにおける市場調査 調査機関:日本マーケティングリサーチ機構
導入企業の広がり
UPSIDER、YOUTRUST、ROBOT PAYMENT、クラウドワークス、パーソルキャリア、LINEヤフー、ベルシステム24など、SaaS・人材・BPO・大手事業会社まで幅広い業種で導入されています。取引先データの整備と新規開拓を同時に進めたい組織での採用が中心です。
審査業務に組み込む場合はAPIという選択肢もある
一次スクリーニングを人の目視で行うのではなく、自社の審査フローや基幹システムに組み込みたい場合は、企業データをAPIで取得する方法があります。申込フォームに入力された商号から法人を特定し、基本情報を自動で補完する、といった実装が可能です。
具体的な実装パターンは「企業情報APIで与信管理・審査を自動化する方法を解説」で解説しています。また、取引開始前のもう1つの確認である反社チェックの手順・対象範囲・証跡の残し方は「反社チェックのやり方6つの方法|手順・対象範囲・頻度と証跡の残し方」で詳しく扱っています。
SalesNow MCPで自然言語×取引先の一次確認を実装する
2026年に入り、企業情報の確認方法は「検索画面で条件を組み立てる」形から「AIに自然言語で依頼する」形へ移りつつあります。取引先の一次確認のように、都度発生する調べ物ほど、この変化の恩恵が大きい領域です。
これを可能にするのがMCP(Model Context Protocol)です。SalesNow MCPを接続すると、ClaudeなどのAIアシスタントから直接1,400万件超の企業データにアクセスでき、企業の特定・属性の確認・直近の動きの要約までを1つの会話で完結できます。
一次確認が面倒になる最大の理由は、確認したい項目が案件ごとに少しずつ違うことです。ある案件では従業員数と設立年を知りたい一方、別の案件では直近の資金調達やニュースを確認したい、といった具合です。
画面の検索条件を毎回組み替えるより、必要な項目を文章で伝えるほうが速い場面が増えています。
ユースケース①:商号から法人を特定する
「この商号と所在地から法人番号を特定して、業種・従業員数・設立年をまとめて」と依頼すれば、同一商号の別法人と取り違えるリスクを下げられます。信用調査を依頼する際の対象特定にも、そのまま使える情報です。
ユースケース②:取引先リストの重複と表記揺れを洗う
「このリストの企業名と所在地から同一の企業を特定して、重複している行をまとめて」と依頼すれば、社内に散らばった取引先データの整理を会話のまま進められます。同じ会社を別々の取引先として登録していないかを確認する用途に向きます。
ユースケース③:直近の動きを短時間で把握する
「この会社の直近6か月のニュース・プレスリリースと、求人の出稿状況、従業員数の増減をまとめて」と指示すれば、候補企業の状況が一度に揃います。本調査に進むかどうかを検討する際の材料として使えます。
MCPの接続手順と実際の使い方は「Claudeで法人検索する3つの方法|MCPで1,400万社にアクセス」で詳しく解説しています。
まとめ
帝国データバンクの信用調査について、依頼する側の実務と、調査を受ける側の対応を整理しました。要点は次のとおりです。
- 信用調査とは、取引相手の経済状況を把握するために行う調査です。帝国データバンクは個人の信用調査は行わず、企業信用調査のみを実施しています
- 調査報告書には、評点・代表者・系列沿革・業績(最大6期)・取引先と取引銀行・資金現況・現況と見通し・財務諸表分析(最大3期)・不動産登記写の9項目が含まれます
- 報告書は内部資料としてのみ利用でき、第三者への開示・複製・貸与は禁止されています
- 調査方式は、現地調査を行う「新規調査」と、既存報告書を提供する「コピーサービス」の2種類です
- 企業信用調査は会員制で、調査問合票1枚につき1社を依頼する方式です。料金は5枚120,000円(1枚24,000円)から150枚2,250,000円(1枚15,000円)までの7区分が公開されています(2026年8月8日時点・公式サイト記載)
- 新規調査の費用は「問合票1枚+付帯料金」です。付帯料金には出張調査料金・登記閲覧料金・速度料金(超特急4,000円/特急3,000円・本体価格)があります
- 納期は普通で29営業日前後、特急で11〜16営業日前後、超特急で7〜11営業日前後です
- 費用単価が15,000〜24,000円の水準にあるため、全件調査ではなく「一次スクリーニング→二次判定→本調査」の3層設計で対象を絞ります
- 調査の訪問連絡を受けた側に費用負担はなく、対応は任意とされています。依頼者は開示されず、調査に絡めた強制的営業も行わないと公式に案内されています
- 本調査の前段にあたる一次スクリーニング(候補企業の基本情報と動態の把握)は、企業データベースが担う領域です。信用調査の代替ではありません
SalesNowは、国内1,400万件超の企業・組織データと、独自のJCコードを基準とした名寄せ・情報付与により、信用調査を依頼する前の一次スクリーニングを支えます。取引先データの整備と、候補企業の絞り込みを同じ基盤で進めたい組織は、検討候補に加える価値があります。