「動いている企業を、どうやって見つけるか」——SalesNow・Sales Marker・infoboxの3社が同じ検討テーブルに並ぶのは、この一点で問いが重なるからです。ただし3社は、同じ問いに対してまったく違う場所からデータを取っています。
Web上の検索行動を見るのか、自社サイトへの訪問と接点履歴を束ねるのか、企業側で実際に起きた出来事を追うのか。本記事は、この「シグナルの源泉の違い」を軸に、3社を判断しきるための比較ガイドです。
本記事では、3社が比較される理由を整理したうえで、一覧比較表、シグナルの源泉の違い、母集団の設計、検知したあとの動線(実行機能・連携・データ整備)、料金、評判の傾向を解説します。
そのうえで「Sales Markerが向いているケース」「infoboxが向いているケース」「SalesNowが向いているケース」を同じ粒度で示し、最後に選定を5つの分岐点に落とし込みます。
インテントデータそのものの仕組みを先に押さえたい方は「インテントデータとは?意味・種類・営業活用方法を徹底解説」をご覧ください。
外部シグナルから見込み客を検知する実務手順は「シグナル営業でホットリードを見つける方法|外部シグナル検知のやり方と実例」で解説しています。
企業データベースというカテゴリ全体の選択肢は「企業データベース比較12選【2026年最新】目的別おすすめ・選び方・比較表付き」であわせて整理しています。
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- infoboxとの1対1の比較は「SalesNowとinfobox(インフォボックス)の違いを徹底比較|機能・データ・料金・評判」で解説しています
- SalesNow自身の弱みを含めた率直な評価は「SalesNowと主要企業データベース・営業リストツールの違い総まとめ」で公開しています
※SalesNow側のシグナルとデータ範囲を先に確認したい方は、SalesNowのサービス資料で1,400万件超の企業・組織データの中身をご確認いただけます。
3社が同じ検討テーブルに並ぶ理由|「動いている企業をどう見つけるか」という共通の問い
営業リストの母数はある程度そろっているのに、商談数が伸びない。この状態に行き着いた組織が次に探すのは、「手元のリストの中で、今動いている企業はどれか」を教えてくれる仕組みです。SalesNow・Sales Marker・infoboxの3社は、いずれもこの問いに答える製品として比較検討に上がります。
ところが、3社の機能一覧を並べても違いは見えてきません。どれも企業データベースを持ち、どれもスコアや通知で優先順位を出し、どれも部署の直通番号にたどり着けます。この粒度で比べているかぎり、判断材料は出てきません。
3社に共通するのは「優先順位を出す層」を持っていること
3社はいずれも、企業データベースの上に「今アプローチすべき理由」を付ける層を重ねています。その層にあたるのが、Sales Markerのセールスシグナル®、infoboxの適合度・接点強度・購買検討温度感を掛け合わせたスコア、SalesNowのSalesNowスコアとアクティビティ通知です。
部署直通番号と組織図についても、3社は重なります。Sales Markerは公式サイトで210万件の部署データを含むと記載し、infoboxは組織図・部署直通番号・SNS情報を主要ポイントに掲げ、SalesNowは部署直通電話番号と組織図を提供しています(いずれも2026年8月時点・各社公式サイト)。
この領域は差別化要因ではなく、3社に共通する前提条件です。
分かれるのは「そのシグナルがどこから来たデータか」
3社の違いを一文で言うと、シグナルの源泉が違います。Sales MarkerはWeb上の検索行動、infoboxは自社サイトの訪問履歴と外部メディアのログに自社の接点データを重ねたもの、SalesNowは求人・ニュース・従業員数推移といった企業側で起きた事実を、それぞれ根拠にしています。
源泉が違えば、見える企業も、見えない企業も変わります。検索していない企業は検索行動からは検知できませんし、求人もニュースも出していない企業は企業活動シグナルには現れません。シグナルの精度は機能表では比べられず、「何を観測しているか」を見ないと判断できません。
比較の前に決めておきたい3つの問い
3社の優劣を一般論で決めることはできません。判断が分かれるのは、次の3点にどう答えるかによります。
- 自社の商材は、買い手がWebで調べてから買う商材か——検討行動がWeb上に出る市場かどうかで、インテント型の検知量が変わります
- ターゲットの母集団はすでに固定されているか、これから広げるか——母集団が固定なら順位付けの設計が効き、広げる予定があるならデータベースの網羅性が効きます
- 課題は「当てる順番」か、「当てる先のデータそのもの」か——順番が課題ならスコアリング、データが課題なら整備機能が判断軸になります
この3つの答えを持ったうえで、次のセクションの比較表を読んでください。答えがないまま機能を見比べると、どれも良く見えて決められなくなります。
SalesNow・Sales Marker・infoboxの3社比較表【2026年8月時点】
比較表の見方|公式に記載がない項目は「記載なし」と書いている
3社の違いを一覧で整理します。公式に公開されていない項目は「公式サイトに記載なし」と記載しています。
| 比較軸 | SalesNow | Sales Marker | infobox |
|---|---|---|---|
| サービスの型 | 企業データベース型。企業データを土台に、リスト作成からデータ整備までを担う | インテントデータ型。需要が発生した企業を検知し、アプローチ実行までをつなぐ | 営業データプラットフォーム型。企業データと自社の営業データを統合して提示する |
| シグナルの源泉 | 求人・ニュース・従業員数推移・上場状況など、企業側で起きた事実の一次データ | Web上の検索行動。3rdパーティは1日およそ50億レコードの検索行動データ | 自社サイトの訪問履歴と外部メディアのログ。自社の営業データと統合して解析 |
| スコアの考え方 | SalesNowスコアは企業の活発度を100点満点で示す独自指標。5つの一次データから算出 | セールスシグナル®で設定キーワードの検索企業を通知。1st/2nd/3rdパーティに対応 | 適合度・接点強度・購買検討温度感の3軸を掛け合わせる。スコアは日次で更新 |
| データの規模 | 法人単位で580万社以上。企業・組織・部署を含む収録件数では1,400万件超 | 公式FAQに560万社の法人データ・950万件の人物データ・210万件の部署データと記載 | インボイス登録法人255万社を網羅すると公式に明記 |
| 部署・人物データ | 部署直通電話番号と組織図を提供。担当部署へのダイレクトアプローチに対応 | 部署名・直通電話番号・住所などを含むと記載。人物データは対象プランで利用可 | 組織図・部署直通番号・SNS情報を提供。キーパーソン特定を主要ポイントに掲げる |
| データ整備(名寄せ) | 独自のJCコードを基準とした名寄せ・情報付与に対応。マスタ整備を用途に含む | 機能一覧に名寄せを掲載。リード情報の最適化に活用する機能として紹介されている | 自社の営業データとinfoboxデータを統合してAI分析する設計。整備専用機能の記載はなし |
| アプローチ実行機能 | リスト出力とSFA/CRM連携で、既存の営業オペレーションに乗せる設計 | シーケンス機能に加え、コール・フォーム・メール・広告・DM/レターを内包 | 実行チャネルを製品内に持つという記載は公式サイトで確認できず |
| SFA/CRM連携 | Salesforce連携(SalesNow for Salesforce)とHubSpot連携に対応 | Salesforce連携・API連携・Slack投稿が機能一覧に掲載されている | Salesforce・HubSpotなど各種CRMとの連携に対応。画面遷移の運用例も公開 |
| API・AI連携 | SalesNow APIとSalesNow MCPを提供。プロダクトやAIから直接利用できる | API連携を機能一覧に掲載。MCP提供に関する記載は確認できず | APIやMCPの提供について、公式サイトに記載は確認できず |
| 料金 | 要問い合わせ。利用範囲や契約条件によって変動する | スタンダード/プロフェッショナル/エンタープライズの3プラン。金額の記載はなし | 初期費用+月額費用。アカウント無制限、100名以上は個別見積もり |
| データ更新 | 日次230万件以上の更新。データソースは100万件以上にのぼる | 更新頻度に関する具体的な記載は公式サイトで確認できず | 3ヶ月ごとのデータ更新・検証を実施。インテントスコアの変動は日次で更新 |
※「データの規模」は3社で単位が異なります。社数どうしで並べられるのは「580万社以上(SalesNow)」「560万社(Sales Marker)」「255万社(infobox)」の組み合わせで、SalesNowの1,400万件超は企業・組織・部署を含む収録件数のため、社数と直接比較することはできません。詳細は母集団の設計を3社で比較するで解説します。
※Sales Markerのデータ件数は2026年8月時点の公式サイト「よくある質問」の記載に基づきます。公式サイト内でも掲載ページにより記載が異なり、機能紹介ページでは520万社以上の法人データ・570万件の人物データ・160万件の部署データとも記載されています。最新の数値は各社公式サイトでご確認ください。
※上記はいずれも2026年8月時点で各社公式サイトに記載されている内容に基づきます。料金・機能は変更される可能性があるため、最終的な判断は各社への問い合わせでご確認ください。
比較表のSalesNow側の項目を実物で確認したい方は、SalesNowのサービス資料 をご覧ください。1,400万件超の企業・組織データの内訳、アクティビティ通知で取得できるシグナルの種類、部署直通・組織図の粒度をまとめています。
比較表の読み方|差が出るのは「源泉」「母集団」「実行」の3点
11項目を並べても、判断に効く差は「シグナルの源泉」「母集団」「実行機能」の3点しかありません。残りの項目は3社とも押さえており、比較軸として機能しないためです。
ここから先のセクションは、この3点を1つずつ掘り下げる構成です。内訳は次のとおりです。
- シグナルの源泉:検索行動を見るか、Web行動と自社接点を束ねるか、企業側で起きた事実を追うか
- 母集団の設計:全法人を網羅するか、日本最大級のデータベースを持つか、インボイス登録法人に絞るか
- 検知したあとの動線:実行チャネルを製品内に持つか、既存のSFA/CRMや架電体制に流すか
逆に言えば、部署直通番号・組織図・CRM連携の有無は3社とも押さえているため、ここを比較軸に置いても判断は進みません。
シグナルの源泉を3社で比較する|検索行動・接点統合・企業活動の一次データ
ここが本記事の中心です。「今アプローチすべき企業」を出す機能は3社ともに備えていますが、その根拠になっているデータの出どころは3社3様です。源泉が違えば、検知できる企業の層も、シグナルが立つまでの時間軸も変わります。
Sales Marker|Web上の検索行動を源泉にする
Sales Markerのセールスシグナル®は、自社が設定したキーワードを検索している企業を検知して通知する機能です。公式サイトでは日本初の機能として紹介されており、競合サービス名をキーワードとして設定することも可能と記載されています(2026年8月時点・公式サイト)。
インテントデータは1stパーティ(自社サイト訪問)、2ndパーティ(提携メディア)、3rdパーティ(1日およそ50億レコードの検索行動データ)の3種類に対応しています。
加えて、競合サイトや比較サイトなど外部ドメイン上の行動から比較検討の状況を捉える「ドメインインテント」、自社サイト上の行動から関心の深さを捉える「ビジターインテント」という区分も説明されています。
複数のインテントデータを組み合わせることで、実際には検討していないのに関心があるように見えてしまう偽陽性シグナルを低減しているという説明も、公式サイトに記載されています。
Sales Markerが観測しているのは、突き詰めれば「買い手が何を調べたか」です。インテントデータの3分類そのものは「インテントデータとは?意味・種類・営業活用方法を徹底解説」で詳しく解説しています。
infobox|Web行動ログと自社の接点履歴を束ねる
infoboxは、自社サイトの訪問履歴や外部メディアのログをインテントデータとして解析し、顧客が関心を持っているタイミングと内容をスコア化すると説明しています。スコアの変動は日次で更新される点も公式サイトに明記されています。
特徴的なのは、そこに自社が保有する営業データ(商談ログ・取引実績・名刺接点)を統合してAIが分析する構造を取っている点です。そのうえで「適合度」「接点強度」「購買検討温度感」の3つを掛け合わせ、今成約につながりやすい顧客を可視化する設計が示されています。
infoboxが観測しているのは、「買い手のWeb行動」に加えて「自社とその企業の関係の濃さ」です。公式サイトでは、これら自社側のデータを統合してAIが分析すると説明されています。自社にどの程度の接点データが蓄積されているかは、デモや商談の場で確認しておきたい点です。
SalesNow|企業側で起きた事実を源泉にする
SalesNowが取得するのは、求人の出稿、ニュース・プレスリリースの配信、従業員数の推移、会社情報の更新、上場状況といった、企業側で実際に起きた出来事です。これらはアクティビティ通知として受け取れ、「事業拡大の動きがある」「特定職種の採用を始めた」といった変化を起点にアプローチを組み立てられます。
SalesNowスコアは、これらの一次データから企業の活発度を100点満点で示す独自指標です。
会社情報の更新・従業員数推移・求人出稿状況・ニュース/プレスリリース配信・上場状況の5要素から算出する汎用指標であり、利用者の受注データを学習するものでも、受注の確度を予測するものでもありません。「その企業が今動いているかどうか」を測る指標です。
SalesNowが観測しているのは、買い手のWeb行動ではなく、企業側で起きた事実です。そのため、まだ何も検索していない企業、Web上での情報収集が発生しにくい業界の企業についても、動きがあればシグナルとして捉えられます。
外部シグナルを実務でどう運用するかは「シグナル営業でホットリードを見つける方法|外部シグナル検知のやり方と実例」で具体的に解説しています。
SalesNowのデータ更新規模
SalesNowは国内1,400万件超の企業・組織データを収録し、日次230万件以上の更新を行っています。データソースは100万件以上にのぼり、企業の基本情報に加えて、従業員数の推移、求人の出稿状況、ニュース・プレスリリースといった活動シグナルまでを継続的に取得しています。
出典: SalesNow公式サービス情報(2026年8月時点)
源泉の違いが生む4つの構造的な差
3つの源泉を並べると、性能の優劣ではなく構造の違いとして差が現れます。次の表は、その差を4つの観点で整理したものです。
| 比較の観点 | 検索行動型 (Sales Marker) |
接点統合型 (infobox) |
企業活動型 (SalesNow) |
|---|---|---|---|
| 観測対象 | 買い手がWeb上で行った検索・閲覧の行動 | Web行動ログに自社の商談ログ・名刺接点を重ねたもの | 企業側で発生した事実。求人・ニュース・従業員数推移など |
| 検知できる層 | 検討が顕在化し、能動的に調べ始めた層 | すでに何らかの接点があり、再び動き出した層 | まだ検討していない潜在層を含む、動きのある企業全般 |
| 自社データの位置づけ | 3rdパーティの検索行動データを主軸と公式に説明。自社データの統合は必須とされていない | 自社の商談ログ・取引実績・名刺接点を統合して分析すると公式に説明 | 求人・ニュース等の公開情報が主軸。自社データの統合は前提としていない |
| 検知できない領域 | Web上で調べない企業。検討をオフラインで進める領域 | Web行動も自社接点もない完全な未接触企業 | 買い手の購買意欲そのもの。事実から仮説を立てる前提 |
※本表の分類・区分は、2026年8月時点の各社公式サイトの説明にもとづく当編集部の整理です。各社が公式に用いている区分ではありません。各社が公表している事実については、本文および出典先をご確認ください。
この表からわかるのは、3社が同じ企業群を奪い合っているわけではないということです。検討を始めた企業を確実に捉えるなら検索行動型、既存の接点を再燃させるなら接点統合型、まだ検討していない企業に先回りするなら企業活動型が噛み合います。
「なぜ今アプローチするのか」を相手に説明できるか
源泉の違いは、営業トークの作りやすさにも直結します。ここは資料には書かれていませんが、実務では判断に効く観点です。
企業活動シグナルは、求人票やプレスリリースといった公知の事実が根拠です。そのため「先日、営業職の採用を始められていましたが」という形で、そのまま会話の入り口に使えます。相手にとっても自分が公開した情報なので、話が通じやすくなります。
一方、検索行動を源泉にするシグナルは、根拠をそのまま相手に伝えることが基本的にできません。「御社が当社の競合を検索されていたので」とは言えないため、シグナルはあくまで社内での優先順位付けに使い、トークは別に組み立てる必要があります。
接点統合型は「以前資料をご覧いただいていたので」と自社との接点を根拠にできるため、この点では中間に位置します。
シグナルを「社内の優先順位」に使うのか、「相手への切り出し」にも使うのかで、必要な源泉は変わります。インサイドセールスのトークスクリプトを設計する段階で、この違いを織り込んでおくと運用がぶれません。
母集団の設計を3社で比較する|シグナルは母集団の外には立たない
シグナルの精度をいくら上げても、そもそもデータベースに載っていない企業のシグナルは立ちません。母集団の設計は、シグナルの性能と同じかそれ以上に成果を左右します。
3社が公表しているデータ規模と、単位の違い
まず数字を正しく並べます。3社の公表値は単位が揃っていないため、そのまま横並びにすると比較を誤ります。
| サービス | 公表されているデータ規模 | 母集団の定義 |
|---|---|---|
| SalesNow | 法人単位で580万社以上。企業・組織・部署を含む収録件数は1,400万件超 | 法人番号が付与された法人を広く網羅する設計 |
| Sales Marker | 公式FAQに560万社の法人データ・950万件の人物データ・210万件の部署データと記載 | 日本最大級のデータベースと説明。政府公開法人データを含む複数の公開ソースを利用 |
| infobox | インボイス登録法人255万社の企業情報を網羅と明記 | 取引対象になりうる法人に母集団を絞る設計 |
※いずれも2026年8月時点で各社公式サイトに記載されている内容です。社数どうしで比較できるのは580万社以上・560万社・255万社の3つで、SalesNowの1,400万件超は企業・組織・部署を含む収録件数のため、社数とは別の指標です。
母集団を絞る設計と、広く取る設計
infoboxが母集団の基準にしているインボイス登録は、適格請求書発行事業者としての任意の登録制度です。仕組みの詳細は国税庁 インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトで確認できます。
この基準には明確な合理性があります。登録している法人は課税事業者としてBtoB取引を行っている可能性が高く、休眠状態の法人が母集団に混ざりにくいという利点があります。件数が絞られている分、リストのノイズが少ないという設計思想です。
その代わり、登録が任意である以上、母集団から外れる法人も存在します。消費税の免税事業者は登録すると課税事業者となるため、小規模な法人があえて登録していないケースがあります。設立して間もない法人も、登録手続き前の期間はデータベースに載りません。
一方、SalesNowは法人番号が付与されているすべての法人を対象に網羅する設計です。法人番号は国税庁が設立登記法人などに指定する13桁の番号で、国税庁 法人番号公表サイトで商号・所在地とあわせて無償で公開されています。網羅性が高い分、条件設定を丁寧にしないとノイズが混ざるという裏返しの課題もあります。
これは優劣ではなく、精度と網羅性のトレードオフのなかで、どちら側に寄せた設計かという違いです。どちらが自社に合うかは、次に述べるターゲット定義で決まります。
SalesNowの網羅性に関する調査結果
SalesNowは、企業データベース収録件数No.1・法人網羅率No.1(※)の評価を得ています。網羅性は、ターゲット戦略を後から変更したときに施策が止まらないかどうかを左右します。
※2025年10月期_企業データベースにおける市場調査 調査機関:日本マーケティングリサーチ機構
ターゲット別に見た3社の相性
カバレッジの優劣は、ターゲット定義によって逆転します。次の表は、想定するターゲット像ごとの考え方を整理したものです。
| ターゲット像 | 母集団の観点から見た相性の考え方 |
|---|---|
| 従業員100名以上のエンタープライズ中心 | 対象企業の大半がどのデータベースにも収録されているため、母集団の差は出にくい。シグナルの源泉とキーパーソン情報の充足率で選ぶことになる |
| 全国の中小企業を面で開拓 | 免税事業者や小規模法人が母集団に含まれるかが効く。網羅性を優先する設計のほうが取りこぼしを減らせる |
| 新設法人へのアプローチ | 設立直後の法人をどれだけ早く捕捉できるかが要件。法人番号ベースの網羅と更新頻度が判断軸になる |
| Web上で検討行動が出にくい業種 | インテント型の検知量そのものが少なくなる。企業活動シグナルのように公開情報から動きを捉える源泉のほうが適する |
※本表の分類・区分は、2026年8月時点の各社公式サイトの説明にもとづく当編集部の整理です。各社が公式に用いている区分ではありません。各社が公表している事実については、本文および出典先をご確認ください。
資料の件数ではなく、自社ターゲットでの引き当て率で測る
資料上の収録件数は、自社のターゲット業種でのカバー率とは別物です。既存顧客や失注先を100社ほどリストアップし、デモの場で何社ヒットするか、部署情報がどこまで取れるかを実測してください。
この検証は3社すべてに同じリストで実施するのが要点です。同じ100社を使えば、収録件数の大小に関係なく、自社にとっての実力差がそのまま数字で出ます。1回の実測は、あらゆる比較資料より確実な判断材料になります。
検知したあとの動線を3社で比較する|実行機能・連携・データ整備
シグナルは立てただけでは商談になりません。検知したあと、誰がどの経路でアプローチし、その結果がどこに残るのか——ここは3社で設計が大きく分かれます。
アプローチ実行機能を製品内に持つか
Sales Markerは、検知したシグナルに対してアプローチを設計・実行するシーケンス機能を持っています。
実行チャネルとしては、インテントコール(アウトバウンド専門部隊による架電)、インテントフォーム、インテントメール、インテント広告、インテントレター/DM、インテントSNSが公式サイトに掲載されています。リスト作成から実行までを1つの製品内で完結できる構成です。
infoboxについては、架電代行やDM送付といった実行チャネルを製品内に持つという記載を、2026年8月時点の公式サイトで確認できませんでした。設計としては、優先順位を提示し、既存の営業チームが動く前提と読めます。
SalesNowも、データを既存のSFA/CRMや架電体制に流し込む設計です。すでに営業オペレーションが確立している組織では、実行機能を持たない設計のほうが導入摩擦は小さくなります。逆に実行チャネルを社内に持っていない組織では、内包型の構成に価値が出ます。
SFA/CRM連携の範囲と、確認すべきポイント
CRM連携については3社とも対応しています。Sales Markerは、機能一覧にSalesforce連携・API連携・Slack投稿を掲載しています。
infoboxはSalesforce/HubSpotなど各種CRMとの連携を公式サイトの構成図に明記し、SalesNowはSalesforce連携(SalesNow for Salesforce)とHubSpot連携に対応しています。
ここで確認すべきは「連携できるか」ではなく、どの項目が、どの方向に、どの頻度で同期されるかです。参照リンクを張るだけの連携と、取引先レコードの属性を継続的に更新する連携では、運用にかかる手間がまったく変わります。デモの場では画面遷移のデモではなく、同期される項目の一覧を見せてもらってください。
名寄せ・データ整備をどこまで担うか
営業リストの精度が上がらない原因が、ツール側ではなく自社のSFA/CRM側にあるケースは珍しくありません。この観点では3社の設計に差があります。
- SalesNow:独自のJCコードを基準とした名寄せと情報付与を機能として提供。SFA/CRMのマスタ整備そのものを用途に含みます
- Sales Marker:機能一覧に名寄せを掲載。リード情報の最適化に活用する機能として紹介されています
- infobox:自社の営業データとinfoboxデータをAIが統合して分析する構造。マスタ整備専用の機能は公式サイトに記載がありません(2026年8月時点)
注意したいのは、「統合して分析すること」と「マスタを整えること」は別だという点です。分析のためにデータを突き合わせても、SFA/CRMに残った重複レコードや表記揺れは解消されません。名寄せの手順そのものは「名寄せとは?やり方5ステップとExcel・ツール活用を徹底解説」で詳しく解説しています。
実務的な確認方法としては、SFA/CRMの取引先レコードを法人番号で名寄せしたとき、実数がどれだけ減るかを測ってみてください。ここで大きく減るようであれば、当てる順番を最適化する前に土台の整備が必要な状態です。
API・MCPで営業チームの外に出せるか
2026年に入り、企業データの使われ方は「営業がツールの画面で検索する」形から「システムやAIがデータを直接受け取る」形へ広がっています。この観点は3社で差が出た項目です。
SalesNowはSalesNow APIとSalesNow MCPを提供しており、自社プロダクトや社内システム、AIアシスタントから企業データを直接利用できます。Sales MarkerはAPI連携を機能一覧に掲載しています。
infoboxについては、APIやMCPの提供に関する記載を公式サイトで確認できませんでした(2026年8月時点)。
営業チームだけがデータを使う前提であれば、この差は問題になりません。しかし、会員登録フォームでの企業情報の自動補完、審査フローでの属性取得、社内データ基盤への定期取り込みといった用途まで視野に入れる場合、APIの有無は導入後に効いてきます。
料金の考え方を3社で比較する|3社とも要問い合わせ、比べるのは条件面
比較検討で最も情報が集まらないのが料金です。結論から言えば、3社とも具体的な金額は公開されておらず、机上で「どれが安いか」を決めることはできません。比べられるのは条件面です。
なお、利用範囲や契約条件によって金額が変わるBtoBのデータサービスでは、個別見積もり方式は一般的な運用です。
3社の料金に関する公式記載
| サービス | 公式に公開されている料金情報 | 無料で試せる範囲 |
|---|---|---|
| SalesNow | 要問い合わせ。利用範囲や必要な機能構成によって変動する | 無料デモとサービス資料を案内 |
| Sales Marker | スタンダード/プロフェッショナル/エンタープライズの3プラン。金額の記載はなし。基本プランに個別オプションを組み合わせるカスタマイズが可能 | 無料デモの申し込みを案内。無料プラン・無料トライアルの記載はなし |
| infobox | 初期費用+月額費用(詳細は問い合わせと明記)。利用部署/アカウント無制限、100名以上は個別見積もり。一部オプション機能は別途料金 | 無料プラン・無料トライアルの記載はなし。導線は資料ダウンロードと問い合わせ |
※いずれも2026年8月時点で各社公式サイトに記載されている内容に基づきます。
課金の「単位」が3社で違う点に注意する
金額が非公開でも、課金の考え方は比較できます。infoboxのアカウント無制限という条件は、営業組織が大きいほど1人あたりの実質単価が下がる構造です。逆に、少人数のチームで一部のメンバーだけが使う想定では割高に感じる可能性があります。
SalesNowとSales Markerは、利用範囲や必要機能に応じた個別見積もりです。そのため、見積もり依頼の時点で「何人が使うか」「どの機能まで必要か」を具体的に提示できるかどうかが、比較の精度を左右します。
なお、継続利用ではなく少量のリストを都度購入したいという要件であれば、検討すべき製品カテゴリ自体が変わります。少量利用向けの選択肢は「SalesNow LiteとMusubu・BIZMAPS比較|少量企業リスト【2026年】」で比較しています。
見積もりは「1商談あたりのコスト」に換算してから比べる
金額が非公開のサービス同士を比較する場合、実効コストは「単価」ではなく「1商談あたりのコスト」で見るのが実務的です。具体的には、リスト件数×接触率×商談化率という3段階の歩留まりを、自社の実績値で置いてから見積額と突き合わせます。
母集団を絞る設計のサービスは母数が少なく歩留まりが高い方向に、母集団を広く持つ設計のサービスは母数が多く歩留まりが平準化する方向に振れます。同じ土俵に乗せるには、この計算が欠かせません。
この計算には接触率と商談化率の自社実績値が必要です。比較検討を始める前に、直近半年の数字を揃えておいてください。数字がないまま商談に入ると、各社の提示条件を比較できないまま検討が長期化します。
見積もり時に3社共通で確認したい4点
- 月額固定に含まれる機能の線引き——どこまでが基本機能で、どの機能がオプションになるのか
- シグナル・キーワードの設定上限——検知対象として設定できるキーワードやインテント項目の数に上限があるか
- データ出力の条件——CSVエクスポートの件数上限、CRM連携時に同期できる項目の範囲
- 契約期間と増減の扱い——最低契約期間、途中でのプラン変更、利用人数が増えた場合の見積もり方式
評判・口コミの傾向を3社で比較する|レビュー母数の差に注意する
公式サイトに書かれていないことを知るには公開レビューが手がかりになりますが、3社はレビューの母数が大きく異なります。件数を確認してから中身を読むのが正しい順番です。
3社の公開レビュー件数と評価スコア
先に結論を書くと、3社のレビュー件数は3件から44件まで開いており、スコアを横並びで比較しても意味はありません。下表は「どの製品が高評価か」を示すものではなく、母数の違いを確認するための一覧です。件数が少ないほどスコアは個々の投稿に左右されます。
| サービス | ITreview(2026年8月時点) | その他の公開レビュー |
|---|---|---|
| SalesNow | 総合満足度 4.8/レビュー20件 | — |
| Sales Marker | 総合満足度 4.2/レビュー44件 | — |
| infobox | 総合満足度 4.5/レビュー3件 | BOXIL 総合評価 4.72/5.0(18件) |
※出典:ITreview 各製品のレビューページ、BOXIL(いずれも2026年8月時点で確認)。
読み取るべきは点数ではなく、各社のレビューで繰り返し言及されている内容です。以下、3社それぞれの傾向を整理します。
Sales Markerのレビュー傾向
評価されている点として繰り返し挙がっているのは、セールスシグナルによる優先順位付け、部署直通番号を含むデータベース、リスト作成工数の削減の3点です。
改善要望としては、人物・部署情報の更新タイミングや正確性、企業リスト作成時などの画面動作の重さ、シグナルの精度に関して関連性の低い企業が含まれる場合があるという指摘、連携できるCRMツールの範囲を広げてほしいという要望が見られます。
なお公式サイトでは、複数のインテントデータを組み合わせることで偽陽性シグナルを低減していると説明されています。シグナル精度の評価は対象キーワードや業種によって体感が変わる領域のため、デモの段階で自社のキーワードを使って確かめるのが実務的です。
infoboxのレビュー傾向
評価されている点は、直感的に操作できるUI、部署番号・キーマン情報・組織図といったアプローチに直結する情報の充実、リスト作成時間の短縮とアポイント取得率の改善です。改善要望としては、人物情報の重複や鮮度、SFAとの連携強化、部署情報が収録されていない企業が一定数あるという指摘が投稿されています。
対象企業の規模については、従業員100名以上向けという印象を持ったという投稿がある一方、SMB規模の企業も掲載されているという投稿もあり、評価が分かれています。レビューの評価が分かれる領域は、たいてい自社のターゲット定義との相性が原因です。
SalesNowのレビュー傾向
SalesNowについては、部署直通情報によるアプローチ精度と、条件を細かく切って抽出できる柔軟性が評価されやすい傾向が読み取れます。ただしレビュー件数は20件であり、改善要望として傾向を抽出できるほどの母数はありません。
当社の製品である以上、レビューの解釈にバイアスが入ることは避けられません。SalesNow自身の強みと弱みを含めた率直な整理は「SalesNowと主要企業データベース・営業リストツールの違い総まとめ」で公開していますので、そちらもあわせてご確認ください。
Sales Markerが向いているケース
比較記事である以上、SalesNowが向かないケースも正直に示します。ここからは3社それぞれについて、公式サイトの記載内容と公開レビューの傾向から、設計が噛み合いやすいケースを同じ粒度で整理します。
Sales Markerを選ぶ判断軸は、母数の広さではなく「当たるタイミングの精度」です。
①検討タイミングの検知を最重要視する場合
アプローチできる母数よりも、当たるタイミングの精度を上げたい組織には、検索行動を源泉にする設計が向いています。特にインサイドセールスの人数が限られ、1日にかけられる架電・メール数に上限がある場合、シグナルによる優先順位付けはそのまま生産性に効きます。
②競合の比較検討に入った企業を捉えたい場合
公式サイトでは、競合サービス名をキーワードとして設定できること、ドメインインテントによって競合サイトや比較サイト上の行動から比較検討の状況を捉えられることが説明されています。競合とのコンペが常態化している市場で、比較検討フェーズに入った企業を早期に捉えたい場合には、この機能が判断材料になります。
③リスト作成からアプローチ実行までを1製品で完結させたい場合
架電・フォーム送信・メール配信・広告・DMといった実行チャネルを社内に十分持っていない、あるいは複数ツールに分散していて運用が煩雑という状況では、実行機能を内包する構成にメリットがあります。特にアウトバウンド専門部隊による架電やフォーム送信の代行まで任せたい場合は、この点が決め手になり得ます。
④インテントセールスの運用設計から伴走支援を受けたい場合
公式サイトでは、導入前の目標設定から導入後の効果測定まで最低3ヶ月間、専任コンサルタントが伴走すること、戦略構築・KPI管理・キーワード選定まで支援することが記載されています。
インテントデータの運用はキーワード設計とシグナル後のアクション設計が成果を左右するため、社内に運用ノウハウがない段階では伴走支援の価値が大きくなります。
infoboxが向いているケース
infoboxを選ぶ判断軸は、母集団の広さではなく「すでにある母集団の中での優先順位」です。現場が日常的に使いこなせるかどうかも、あわせて効いてきます。
①ターゲットがエンタープライズ中心で、課題が「順番」にある
ターゲットが従業員100名以上の企業に限られている場合、母集団の広さは差別化要因になりません。対象企業のリストはすでに手元にあり、課題は「その中でどこから当たるか」という優先順位のほうにあります。適合度・接点強度・購買検討温度感を掛け合わせて順位を出す設計は、この状態に直接効きます。
②自社サイト・自社CRMに接点データが蓄積されている
infoboxは、自社が保有する商談ログ・取引実績・名刺接点をinfoboxデータと統合してAIが分析すると公式に説明しています。すでに商談履歴や名刺データが社内に蓄積されている組織であれば、その資産を優先順位付けの材料として活かす構成になります。
③アカウント数無制限で営業組織全体に配りたい
公式サイトに明記されているアカウント無制限という条件は、営業組織が大きいほど効いてきます。ID課金の製品では「使う人を絞る」判断が必要になりますが、無制限であれば全メンバーが同じ情報を見られる状態を作れます。
インサイドセールス、フィールドセールス、マーケティングが同じデータを参照して会話できる状態は、それ自体が組織的な価値を生みます。
④導入後の伴走サポートと現場の使いやすさを重視する
公式サイトでは「Data UX」を4つ目の柱として掲げ、膨大なデータを直感的に扱えるUX設計と、専属のカスタマーサポートによる伴走が明記されています。公開レビューでも操作性への評価が最も多く見られました。
社内にデータ活用の推進役がいない、あるいは初めてこの種のツールを導入するという状況であれば、この点は比較軸として正当です。
SalesNowが向いているケース
SalesNowの設計が噛み合うのは、課題が「当てる順番」ではなく「当てる先のデータそのもの」にある場合です。判断のポイントは次の4点に整理できます。
①Webで検討行動が発生しにくい商材を扱っている
既存の取引関係で決まる領域や、買い手が事前にWeb検索をしないニッチな産業設備などでは、検索行動を源泉にするシグナルの検知量そのものが少なくなります。この場合、求人・ニュース・従業員数推移といった企業側の事実からアプローチの根拠を作るほうが、シグナルの量を確保できます。
SalesNowスコアは企業の活発度を100点満点で示す独自指標であり、買い手のWeb行動に依存しません。「まだ検討していないが、動いている企業」に先回りする設計です。
②中小企業・新設法人まで含めて母集団を広く取りたい
全国の中小企業を面で開拓する、あるいは設立間もない法人にいち早くアプローチするという戦略であれば、母集団の広さがそのまま成果の上限になります。法人番号ベースで網羅する設計は、ターゲットを後から広げたときにも施策が止まりません。
SalesNow導入企業で確認されている効果
SalesNowの導入企業では、商談数2.3倍、売上1.5倍、リスト作成に関わる工数削減8.6時間/人といった成果が報告されています。導入企業にはUPSIDER、YOUTRUST、ROBOT PAYMENT、クラウドワークス、パーソルキャリア、LINEヤフー、ベルシステム24などが含まれます。
③SFA/CRMのデータ整備から解決したい
重複レコード、表記揺れ、属性の欠損が残ったままでは、どんなスコアリングも精度が出ません。独自のJCコードを基準とした名寄せと情報付与を、新規開拓と同じ基盤で実行できる点は、データ整備が課題の組織にとって直接的な解決策になります。
特に、過去リードや失注企業の掘り起こしを仕組み化したい場合、マスタが整っていることが前提条件です。整備と開拓を別々のツールで回すと、どちらも中途半端になりがちです。
④APIやAIに企業データを渡して、営業以外にも展開したい
SalesNow APIとSalesNow MCPによって、企業データを営業チームの画面の外へ出せます。プロダクトへの組み込み、審査フローでの属性取得、AIアシスタントからの直接利用まで含めて設計したい場合、この選択肢の有無は導入後の展開余地を左右します。
アカウント単位で攻める体制を組みたい場合の設計手順は「ABMとは?アカウントベースドマーケティングの手法と実践5ステップ」で解説しています。
3社の選び方|5つの分岐点で判断する
ここまでの比較を、実際に選ぶときの手順に落とします。
選定は機能比較ではなく、5つの問いに順番に答えるほうが速く決まります。
分岐1:自社の商材は、買い手がWebで調べてから買うか
SaaSや人事系ツールのように、買い手が事前に比較サイトや業界メディアで情報収集する市場であれば、検索行動を源泉にするシグナルの検知量が確保できます。逆に、Web上での検討行動がほとんど発生しない商材では、インテント型の投資対効果が出にくくなります。
この分岐で「発生しない」側に立つなら、企業活動を源泉にする設計を軸に考えてください。判断材料はシグナルの源泉を3社で比較するで整理しています。
分岐2:ターゲットの母集団はすでに固定されているか
母集団が固定されていて、リストも手元にあるなら、課題は順位付けです。この場合は母集団の広さより、スコアの設計と現場の使いやすさで選びます。逆に、これから業種や規模帯を広げる計画があるなら、データベース側が対応していないと施策が止まります。各社の母集団の定義は母集団の設計を3社で比較するで確認できます。
分岐3:自社サイトとCRMに接点データが蓄積されているか
商談ログや名刺接点が数年分たまっている組織であれば、その資産をスコアに変換できる設計が活きます。一方、CRMを入れたばかりで接点データが薄い段階では、自社データの統合を前提としない源泉のほうが立ち上がりは早くなります。各社が自社データをどう位置づけているかはシグナルの源泉を3社で比較するの表に整理しています。
分岐4:アプローチの実行チャネルは社内にあるか
架電・メール・フォーム送信の体制が社内にあるなら、実行機能を持たない設計のほうが導入摩擦は小さくなります。体制がない、あるいは代行まで含めて任せたいなら、実行チャネルを内包する構成が候補になります。3社の実行機能の違いは検知したあとの動線を3社で比較するで解説しています。
分岐5:企業データを営業チーム以外にも渡すか
プロダクトへの組み込み、社内データ基盤への取り込み、AIアシスタントからの利用まで視野に入れるなら、APIとMCPの有無が判断軸に加わります。営業チームだけで完結するなら、この分岐は無視して構いません。3社のAPI・MCPの対応状況は3社比較表の「API・AI連携」の行で確認できます。
5つの分岐をまとめると、次の表のようになります。
| 分岐点 | この答えなら「検知の設計」を優先 | この答えなら「データ基盤の設計」を優先 |
|---|---|---|
| 買い手はWebで調べるか | 調べる。比較サイトや業界メディアが機能している市場 | 調べない。既存の取引関係やオフラインで検討が進む市場 |
| 母集団は固定か | 固定。ターゲットリストはすでに手元にある | 拡張予定。業種・規模帯・地域を今後広げる計画がある |
| 接点データの蓄積 | 豊富。商談ログ・名刺データが数年分ある | これから。CRM導入直後で履歴が薄い |
| 実行チャネル | 社内にない。代行まで含めて任せたい | 社内にある。既存オペレーションにデータを流したい |
| データの利用範囲 | 営業チームで完結する | プロダクト・他部門・AIまで広げる |
※本表の分類・区分は、2026年8月時点の各社公式サイトの説明にもとづく当編集部の整理です。各社が公式に用いている区分ではありません。各社が公表している事実については、本文および出典先をご確認ください。
右側に多く当てはまるほどSalesNowの設計が噛み合い、左側に多く当てはまるほどSales Markerやinfoboxのようなタイミング検知型の設計が合います。左側の中でも、実行チャネルまで任せたいならSales Marker、母集団固定で組織全体に配りたいならinfoboxが候補になります。
ただし、左右のどちらにも当てはまる項目が混在する場合は、1つに絞りきれないこともあります。次はその場合に検討する併用の考え方を整理します。
3社は併用できるか|源泉が違うから重ねられる
3社の源泉が違う以上、重ねれば見える範囲は広がります。ただし、重ねる前に決めておくべき順番があります。
併用が意味を持つ条件
併用が検討に値するのは、「アプローチのタイミングが分からない」と「そもそも当てるべき企業のデータが整っていない」という2つの課題を同時に抱えている場合です。片方だけが課題であれば、その課題に対応するサービスを1つ選ぶほうがコスト効率は高くなります。
具体的な重ね方としては、データ基盤側で市場全体のアカウントリストと部署・組織情報を整えたうえで、検知側で「今動いている企業」に優先順位を付ける分担が考えられます。逆にいえば、シグナルが立った企業に対して部署直通の連絡先や組織構造がすぐ引ける状態になっていなければ、検知した機会を活かしきれません。
順番を間違えないための3ステップ
予算やツール管理の観点から1つに絞るのであれば、次の順で考えると迷いにくくなります。
- 営業リストの母数は足りているか——足りていないなら、まず母集団を持つデータベース側が先
- 接触先の精度は足りているか——代表電話止まりなら、部署直通・組織図の有無が先
- 母数も接触先も足りているのに商談化率が低いか——この状態で初めて、タイミング検知の投資対効果が高くなる
母集団と接触先の精度が不十分な状態でタイミングだけを最適化しても、成果は頭打ちになります。順番を間違えないことが、比較検討で最も費用対効果に効く判断です。
SalesNow MCPで自然言語×シグナル検知を実装する
ここまでは「どの製品を選ぶか」という軸で整理してきました。最後に、選んだあとの使い方そのものが変わりつつある点にも触れておきます。
2026年の比較検討で新しい論点になっているのが、AIアシスタントから直接企業データとシグナルを扱えるかどうかです。管理画面で条件を選ぶ操作から、自然言語で条件を伝える操作へと、ターゲット抽出の主戦場が移りつつあります。
SalesNow MCPは、Model Context Protocolに対応し、ClaudeなどのAIアシスタントからSalesNowの企業データを呼び出せるようにする仕組みです。
シグナル活用の文脈では、「どんな動きをしている企業を出すか」を画面の条件項目に翻訳せず、そのまま言葉で試行錯誤できるという運用上の差につながります。
自然言語でシグナルを扱う3つのユースケース
①「今動いている企業」を条件文でそのまま切り出す
「東京都・神奈川県で従業員50〜300名のSaaS企業のうち、直近3ヶ月でエンジニア求人を出している企業」といった条件を、文章のまま指定して抽出できます。シグナルの条件を少し変えて何度も試す探索的なターゲティングでは、画面操作より試行回数を稼げます。
②シグナルが立った企業の部署・キーパーソンを会話で確認する
動きを検知した企業について、部署構成やキーパーソンの所在をAIに問い合わせて整理できます。シグナルを検知してからアプローチ先を特定するまでの時間を圧縮する用途です。検知の鮮度は、この工程の速さで目減りします。
③商談前に企業の動きをまとめてブリーフィングする
商談の直前に「この企業の直近のニュース・求人動向・従業員数の推移」を聞くだけで、企業理解に必要な材料が揃います。情報源が分散していて準備に時間がかかるという課題に直接効きます。
具体的な接続手順と実際の操作イメージは「Claudeで法人検索する3つの方法|MCPで1,400万社にアクセス」で詳しく解説しています。
まとめ
SalesNow・Sales Marker・infoboxの3社を、シグナルの源泉・母集団・実行機能・料金・評判の観点で比較しました。要点は次のとおりです。
- シグナルの源泉が3社で違う:Sales MarkerはWeb上の検索行動(3rdパーティは1日およそ50億レコード)、infoboxは自社サイト訪問と外部メディアのログに自社の接点データを重ねたもの、SalesNowは求人・ニュース・従業員数推移といった企業側で起きた事実
- 源泉が違えば検知できる層が違う:検索行動型は検討が顕在化した層、接点統合型は既存接点が再燃した層、企業活動型はまだ検討していない潜在層まで含む
- 母集団の定義も違う:SalesNowは法人単位で580万社以上・収録件数1,400万件超、Sales Markerは公式FAQで560万社、infoboxはインボイス登録法人255万社(いずれも2026年8月時点・公式サイト)
- 検知後の動線が違う:Sales Markerはコール・フォーム・メール・広告・DMまで内包、SalesNowはSFA/CRMに供給して既存オペレーションに乗せる設計、infoboxは実行チャネル内包の記載なし
- 料金は3社とも要問い合わせ:金額は3社とも非公開のため、比べられるのは課金単位や含まれる機能といった条件面のみ
- レビューは母数が3件〜44件と開いている:スコアの横並び比較は成立しない。読むべきは繰り返し言及されている内容
- 選定順序を間違えない:母数と接触先の精度が不十分な状態でタイミング検知だけを最適化しても、成果は頭打ちになる
買い手がWebで調べる市場で、タイミングの精度と実行までの一体化を求めるならSales Marker。母集団が固定されていて、自社の接点データを活かしながら組織全体で使いたいならinfobox。
母集団を広く取りたい、SFA/CRMのデータ整備から解決したい、APIやAIにも企業データを渡したいならSalesNowの設計が噛み合います。
どの場合でも、自社の主要顧客100社を同じリストで3社に投げ、引き当て率と部署情報の粒度を実測する工程だけは省略しないでください。