最も顕著なのはIT業の急落で、4月81,955件(3位)から6月49,005件(7位)へ-40%・4段階下落となった。新年度DX採用ラッシュ後の反動と解釈できる。反対に、労働集約型・人手不足業種が夏季採用でシェアを拡大しており、建設・工事・土木(+25%、6位→4位)、医療・製薬・福祉(+21%、5位維持)が求人数を大きく伸ばした。
人材業は依然として1位(500,113件、構成比31.4%)を維持しつつも、構成比は4月33.0%から6月31.4%へ低下。「求人仲介者」以外の実勢業種が夏季採用シーズンに向けてシェアを取り戻す動きが観測されている。厚労省「労働経済動向調査」でも建設業・医療福祉業は「不足」超過が最大の業種であり、SalesNowデータと整合的である。
調査概要
Key Findings
IT業-40%の急落 — 4月81,955件(3位)から6月49,005件(7位)へ4段階下落
2026年4月から6月にかけて業種別の求人ランキングが大きく変動した。特に注目すべきはIT業の急落である。4月時点で81,955件(3位、構成比4.9%)だったIT業は、6月に49,005件(7位、構成比3.1%)へ4段階下落・-40%となった。
この急落は、4月の新年度DX採用ラッシュの反動と読み取れる。IPA「DX白書2024」で企業の85.1%がDX人材不足を実感している構造は変わっていないため、この動きは一時的な調整局面と解釈できる。4月に集中的に採用計画を実行した企業が、選考・入社プロセスに移行することで新規掲載を減らしている可能性が高い。
IT業 2026年4月
前月3月時点から2階級上昇
85.1%の企業がDX人材不足を実感
IT業 2026年6月
新規掲載が選考・入社プロセスへ移行
7月以降の下半期採用シーズンで再拡大の可能性
| 業種 | 4月順位 | 6月順位 | 順位変動 | 6月求人数 | 4月比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 人材 | 1 | 1 | → | 500,113 | -10% |
| 外食 | 2 | 2 | → | 102,689 | -11% |
| 小売・販売 | 4 | 3 | ▲1 | 75,030 | -5% |
| 建設・工事・土木 | 6 | 4 | ▲2 | 74,305 | +25% |
| 医療・製薬・福祉 | 5 | 5 | → | 74,052 | +21% |
| その他サービス | 7 | 6 | ▲1 | 55,876 | +2% |
| IT | 3 | 7 | ▼4 | 49,005 | -40% |
| エンタメ | 8 | 8 | → | 38,973 | -7% |
| 運送・物流・輸送 | 9 | 9 | → | 31,952 | -2% |
| 機械系 | 10 | 10 | → | 31,650 | +5% |
出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年7月6日時点) / 業種別Top10 / ▲は4月比で順位上昇、▼は下落を示す
ITと並んで4月から縮小した業種は多いが、下落幅で見るとIT-40%は突出している。人材(-10%)、外食(-11%)、エンタメ(-7%)などは季節要因程度の減少にとどまるのに対し、IT業の下落幅は他業種の3〜4倍規模。新年度DXラッシュの反動という解釈が最も自然である。
IT業自体は求人媒体上での需要が消えたわけではなく、ランキングとしても10位圏内は維持している。7月以降の下半期採用シーズン(10月入社を狙う採用活動が本格化)でIT業が再び順位を上げる可能性は残されている。
建設・工事+25%、医療・製薬・福祉+21% — 人手不足業種が夏季採用でシェア拡大
IT業の急落と対照的に、建設・工事・土木は+25%(59,525件→74,305件、6位→4位)、医療・製薬・福祉は+21%(61,232件→74,052件、5位維持)と大幅増加を記録した。両業種はいずれも労働集約型で、慢性的な人手不足が続いている。
厚労省「労働経済動向調査」(2026年5月)によると、業種別の労働者過不足判断DI(不足-過剰)は建設業・医療福祉業が最大の「不足」超過を示しており、SalesNowの求人データと整合している。両業種の求人急増は、夏季の採用活動が本格化したタイミングと重なっている。
| 4月比増減 順位 | 業種 | 4月求人数 | 6月求人数 | 4月比 | 解釈 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 建設・工事・土木 | 59,525 | 74,305 | +25% | 労働経済動向調査で「不足」DI最大の業種 |
| 2 | 医療・製薬・福祉 | 61,232 | 74,052 | +21% | 慢性的人手不足、夏季に採用強化 |
| 3 | 機械系 | 30,228 | 31,650 | +5% | 製造業の自動化・省人化投資関連 |
| 4 | その他サービス | 54,600 | 55,876 | +2% | ほぼ横ばい |
| 5 | 運送・物流・輸送 | 32,650 | 31,952 | -2% | 2024年問題後の採用一巡 |
| 6 | 小売・販売 | 78,931 | 75,030 | -5% | 季節要因程度の減少 |
| 7 | エンタメ | 42,101 | 38,973 | -7% | 季節要因程度 |
| 8 | 人材 | 554,621 | 500,113 | -10% | 仲介業だが構成比は低下傾向 |
| 9 | 外食 | 115,522 | 102,689 | -11% | アルバイト採用の季節調整 |
| 10 | IT | 81,955 | 49,005 | -40% | Finding 1参照:新年度DXラッシュの反動 |
出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年7月6日時点) / Top10業種の4月→6月変動 / 順位は増減率降順
建設・医療は景気循環に左右されにくい「必需サービス」型業種で、ITのような一時的ラッシュを起こしにくい代わりに、慢性的な人手不足が求人拡大の圧力を継続的に生み出している。厚労省「一般職業紹介状況」でも建設・介護・医療は有効求人倍率が全業種平均を大きく上回る水準で推移しており、夏季も採用ペースを緩めずに掲載を増やす行動と整合的である。
両業種の増加は絶対数でも6万件以上に達している(建設+14,780件、医療+12,820件)。IT業の減少幅(-32,950件)を大部分吸収する規模である。夏季採用市場では、業種間で「玉突き」的な人材需要のシフトが起きている構図が浮かび上がる。
「玉突き型」の業種間シフト — 6月+15.1%の内訳が示す夏季採用の構造
Finding 1(IT-40%)とFinding 2(建設+25% / 医療+21%)を統合すると、2026年6月の求人159.4万件(前年同月比+15.1%)は単純な採用市場拡大ではなく、業種間の「玉突き型」シフトを含んだ増加であることが読み取れる。
IT業の減少(-32,950件)と建設・医療の合計増加(+27,600件)を比べると、規模的にはIT業からの減少をほぼ吸収する形で人手不足業種が拡大している。全体の+15.1%は、この業種間シフトに加えて前年6月からの底堅い採用需要の継続によって生み出されている。
| 業種グループ | 4月合計 | 6月合計 | 増減件数 | 4月比 |
|---|---|---|---|---|
| 人手不足業種(建設+医療+機械系) | 150,985 | 180,007 | +29,022 | +19% |
| 新年度反動業種(IT) | 81,955 | 49,005 | -32,950 | -40% |
| 季節調整業種(外食+人材+小売) | 749,074 | 677,832 | -71,242 | -10% |
| 横ばい業種(その他サービス+運送+エンタメ) | 129,351 | 126,801 | -2,550 | -2% |
| Top10業種 合計 | 1,111,365 | 1,033,645 | -77,720 | -7% |
出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年7月6日時点) / Top10業種を4区分にグループ化 / 業種グループ分類は本レポート独自
Top10業種の合計は4月比で-7%となっているが、全体の月次求人数は前年同月比+15.1%と増加している。この差はTop10圏外の業種(教育・コンサル・不動産・食品・製造など)と業種未分類の求人が全体を押し上げていることを示す。特に業種未分類の求人(構成比約28.2%)には、多様な小規模事業者が含まれると考えられる。
この分析から見えるのは、「単一業種の勢いで市場が動く時代ではなく、複数業種の変動が同時進行して総量を形成する構造」である。採用市場を業種横断で捉えることの重要性が改めて示された。
業種別「人材争奪戦」の見取り図
本Vol.9で観測された4月→6月の業種別変動を、争奪戦の構図として整理した。
- 採用シェアを拡大した業種(勝ちグループ): 建設・工事・土木、医療・製薬・福祉、機械系 — 慢性的人手不足を背景に夏季採用を活発化
- 採用シェアを縮小した業種(調整グループ): IT — 新年度DXラッシュの反動で一時的に縮小、下半期に再拡大の可能性
- 季節性で調整した業種: 外食、人材、小売・販売 — 春の繁忙期からの自然減
- 安定推移した業種: 運送・物流・輸送、機械系、エンタメ — 大きな変動なく夏季採用を継続
反対解釈: 本レポートは4月と6月の2時点比較のため、月次の変動には季節要因が含まれる。「争奪戦」という表現は業種間の相対的な求人動向を捉えたメタファーであり、実際に人材が業種間を移動しているかは本データから直接判定できない。また、4月と6月では対象求人媒体・クロール状況が完全に同一とは限らないため、絶対比較には注意が必要である。
リサーチノート
- 本レポートの求人データは、AI企業データプラットフォーム「SalesNow」が全求人媒体からクロールした求人掲載情報を、月次で全数集計したものである。同一求人が複数媒体に掲載されている場合は媒体ごとに1件としてカウント(延べ件数)
- 業種分類はSalesNow独自の業種タクソノミーに基づく。日本標準産業分類(JSIC)や業界団体・業界調査機関の分類とは一部異なる場合がある。「IT/Web・通信・インターネット系」と「IT」は別業種としてカウントしており、本Findingで扱う「IT業」は一般的なSIer・システム開発会社を対象としている
- 本レポートで提示した「人手不足業種」「新年度反動業種」「季節調整業種」「横ばい業種」の4区分は本Vol.9独自の分類であり、業界標準の分類ではない。業種特性を理解する補助的フレームワークとして参照されたい
- 2026年5月分はクロール取得の一部遅延により、当初取得値から段階的に補完された復元段階の値を含む。単月では-23.3%と過小に見える点に留意されたい。6月分は正常に集計されている
- 4月と6月では対象求人媒体・クロール状況が完全に同一とは限らないため、絶対比較には注意が必要である。継続観測により7月以降のトレンドを検証していく
- 本レポートに記載した数値は2026年7月6日時点の集計結果であり、求人媒体・掲載状況・業種分類の改定等により変動する可能性がある。継続的な参照には最新版の確認が必要
- 本レポートは公開情報に基づく独自分析であり、特定企業の信用評価や投資判断を目的としたものではない
このデータを引用する
出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年7月)
株式会社SalesNow (2026)「SalesNow Data Flash Vol.9: 夏季採用×業種別人材争奪戦 — IT業4月比-40%の反動と建設・医療+25%の躍進、6月求人159.4万件の内訳」SalesNow Data Lab, 2026年7月6日. https://salesnow.jp/insights/data-flash-vol-9/
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