業種別に見ると、Top15のうち14業種で前月比マイナス。減速幅の大きい順に、教育-32.1%、外食-21.8%、食品-20.1%、不動産-16.2%、建設-15.1%、エンタメ-14.7%、医療-14.3%、運送-14.1%、小売-13.6%、機械系-9.1%、その他サービス-6.5%と広範囲で二桁減が観測された。
プラス側は人材業(+2.1%)のみ。ただしこれは「仲介経由の求人」であり、実需求人が縮小する中で人材業の相対比重が高まる構造(Top15構成比43.3%→47.7%)と読める。IT業だけが例外的にほぼ横ばい(-0.0%)で下げ止まっている。これはVol.10「テック人材需給の三重反転」で観測した月次求人-40%(4月→6月)からの巡航状態への移行を意味しており、テック領域では調整が一巡した可能性が示唆される。厚労省「一般職業紹介状況」の有効求人倍率は2026年5月時点で1.20倍前後の高水準を維持しており、「採用意欲は底堅いが求人媒体経由の掲載行動は縮小」という乖離が広がっている。
調査概要
Key Findings
過去2年連続で観測された「7月ピーク」が今年は不在 — 秋採用の立ち上がりに構造的変調
2026年7月の求人掲載数は1,468,972件で前月比-8.6%となった。過去2年の同月データを見ると、7月は3月と並ぶ年間の第二ピークだった。2025年7月は前月比+40.7%で急伸し、6月138.5万件から一気に194.8万件へと膨らんだ。ところが今年は逆に減速している。
7月ピークの構造的背景は、企業が10月入社・配属に間に合わせるため、選考期間2〜3ヶ月を逆算して7月に求人掲載を集中させる「下半期採用の前倒し」にある。この行動が2年連続で明確な季節パターンを形成してきた。にもかかわらず今年、この慣行が姿を消した。
2025年7月(例年パターン)
年間の第二ピークを明確に形成
企業の「大量掲載型」採用行動が可視化
2026年7月(今年)
過去2年の季節性から明確に乖離
秋採用の企業行動に構造変化の可能性
| 年月 | 求人掲載数 | 前月比 | 季節性上の位置付け |
|---|---|---|---|
| 2025年6月 | 1,384,612 | +2.5% | 7月ピーク直前の立ち上がり |
| 2025年7月 | 1,947,690 | +40.7% | 下半期採用の前倒し「7月ピーク」 |
| 2025年8月 | 1,443,652 | -25.9% | ピーク後の反落 |
| 2026年3月 | 2,042,092 | +13.1% | 新年度採用の「3月ピーク」(例年通り健在) |
| 2026年6月 | 1,607,358 | +54.0% | 5月低下(クロール一部遅延)からの復調 |
| 2026年7月 | 1,468,972 | -8.6% | 例年観測された「7月ピーク」不在、逆に減速 |
出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年8月6日時点) / SalesNow保有の約580万社に紐づく全求人媒体データを月次で全数集計
3月ピークは今年も健在(2026年3月2,042,092件、前月比+13.1%)で、新年度採用の集中掲載パターンは維持されている。にもかかわらず7月ピークだけが消えたことは、企業の採用行動が「新年度は従来通り、下半期は変化」という非対称な構造変化を示唆する。
15業種中14業種で前月比マイナス — 教育-32%、外食-22%、食品-20%と広範囲で二桁減
2026年7月の業種別Top15を見ると、15業種のうち14業種が前月比マイナスとなった。プラス側は人材業(+2.1%)のみで、Top15全体では6月116.2万件→7月107.7万件と-7.3%の減速である(人材業を除いた実需系業種では-9.6%)。
減速幅の大きい順に並べると、教育-32.1%(30,158件→20,487件)、外食-21.8%(103,490件→80,944件)、食品-20.1%(21,909件→17,495件)、不動産-16.2%(22,317件→18,692件)、建設-15.1%(74,920件→63,588件)、エンタメ-14.7%(39,256件→33,473件)、医療-14.3%(74,571件→63,927件)、運送-14.1%(32,415件→27,854件)、小売-13.6%(75,736件→65,468件)と広範囲で二桁減が観測された。
| 7月順位 | 業種 | 6月求人数 | 7月求人数 | 前月比 | 減速幅の位置付け |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 人材 | 503,380 | 513,723 | +2.1% | 唯一のプラス(仲介経由の構造要因) |
| 2 | 外食 | 103,490 | 80,944 | -21.8% | 減速幅2位、アルバイト採用の夏季調整 |
| 3 | 小売・販売 | 75,736 | 65,468 | -13.6% | 中位減速 |
| 4 | 医療・製薬・福祉 | 74,571 | 63,927 | -14.3% | 夏休み期の医療機関稼働縮小 |
| 5 | 建設・工事・土木 | 74,920 | 63,588 | -15.1% | 夏休み期の工事現場稼働縮小 |
| 6 | その他サービス | 56,788 | 53,094 | -6.5% | 減速幅最小の非例外業種 |
| 7 | IT | 49,239 | 49,234 | -0.0% | 唯一の横ばい(Finding 3参照) |
| 8 | エンタメ | 39,256 | 33,473 | -14.7% | 中位減速 |
| 9 | 機械系 | 31,925 | 29,032 | -9.1% | 減速幅比較的小 |
| 10 | 運送・物流・輸送 | 32,415 | 27,854 | -14.1% | 中位減速 |
| - | 教育(15位圏外だが減速最大) | 30,158 | 20,487 | -32.1% | 15業種中最大の減速幅(夏休み期の学習塾需要縮小) |
出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年8月6日時点) / 2026年6月・7月の業種別Top15求人掲載数の前月比較
減速幅上位に共通するのは夏休み期の需要縮小である。教育(学習塾の夏期講習で通常時と異なる採用サイクル)、外食(アルバイト採用の季節調整)、医療・建設(現場稼働縮小に伴う採用ペース調整)はいずれも季節要因が働いている。ただし、これらの業種は例年もこの季節性を持っており、今年特有の現象ではない。
より注目すべきは、季節性が弱い業種でも減速している点である。小売-13.6%、機械系-9.1%、運送-14.1%、エンタメ-14.7%は例年7月に大きく減速する業種ではない。これらの業種でも一様に前月比マイナスとなっている事実は、Finding 1で示した「7月ピーク不在」が業種横断的な現象であることを裏付けている。
IT業だけが下げ止まり + 人材業だけが増加 — 「実需縮小と仲介比重上昇」の非対称な調整
15業種中プラス/横ばい維持となったのは人材業(+2.1%)とIT業(-0.0%)の2業種のみ。この2業種はまったく異なる文脈で説明できるため、それぞれ切り分けて解釈する必要がある。
IT業の下げ止まりは、Vol.10「テック人材需給の三重反転」(2026-07-20公開)で観測した6月時点の月次求人-40%(4月81,955件→6月49,005件)からの動きの続報である。7月データでは49,239件→49,234件でほぼ完全に横ばいとなり、急落局面が一巡した可能性を示唆する。他業種が総じて減速する中で相対的な存在感を高め、業種別Top15構成比では6月4.2%→7月4.6%と上昇した。
人材業の増加は構造的な特殊要因による。人材紹介・派遣会社は、クライアント企業から受託した求人を自社名義で各媒体に掲載する。実需求人(事業会社の直接掲載)が全体的に縮小する中で、仲介経由の求人数だけが増えれば、人材業の相対比重が上昇する。実際にTop15構成比は6月43.3%→7月47.7%と4.4pt上昇している。
| 切り口 | 2026年6月 | 2026年7月 | 増減 | 解釈 |
|---|---|---|---|---|
| Top15 全体 | 1,161,595 | 1,077,174 | -7.3% | Top15合計も減速、7月ピーク不在の裏付け |
| 人材業 | 503,380 | 513,723 | +2.1% | 唯一のプラス、仲介経由求人の相対比重上昇 |
| Top15 - 人材業 | 658,215 | 563,451 | -14.4% | 実需系業種は二桁減、実勢としての減速大 |
| IT業 | 49,239 | 49,234 | -0.0% | Vol.10三重反転からの下げ止まり |
| Top15 - 人材業 - IT業 | 608,976 | 514,217 | -15.6% | 「実需×非IT」で見ると-15.6%の大幅減 |
| 人材業のTop15構成比 | 43.3% | 47.7% | +4.4pt | 実需縮小の裏で仲介比重が急上昇 |
出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年8月6日時点) / 2026年6月・7月のTop15業種求人数から算出
この非対称な調整は「秋採用シーズン」の企業行動として何を意味するか。可能性として2つの解釈が並立する。
解釈1: 大量掲載型から継続採用型への移行。企業がAI活用等で選考効率を高め、必要な母集団規模が縮小した結果、7月に集中的に大量掲載する必要がなくなった。実需求人は減っても、通年で継続的に少数採用する行動へシフト。
解釈2: 一時的な採用停滞。景気先読みや業績調整で一部業種が採用を保留し、8-9月に持ち直す可能性。この場合は8月データで補正的な求人急増が観測されるはず。
企業の秋採用行動 3視点まとめ
Vol.11で観測された「秋採用の立ち上がり不発」を3つの視点から整理する。
- 季節性の視点(Finding 1): 過去2年連続の「7月ピーク」が今年は不在。3月ピークは健在なので、企業行動の「非対称な変化」を示唆
- 業種横断の視点(Finding 2): 15業種中14業種で前月比マイナス。夏休み期の季節性が働く業種(教育・外食・建設・医療)以外でも減速が広がる
- 実需 vs 仲介の視点(Finding 3): 人材業だけが+2.1%で仲介比重4.4pt上昇。「Top15 - 人材業 - IT業」(実需×非IT)は-15.6%と大幅減。IT業は下げ止まりでVol.10三重反転の続報
- 政府統計との照合: 有効求人倍率は1.20倍前後の高水準を維持。企業の採用意欲は底堅いが、求人媒体経由の掲載行動は縮小。「意欲」と「実行動」の乖離が広がる
反対解釈: 「7月ピーク不在」の観測サンプルは1年分(過去2年の季節性からの乖離を今年1回観測)のみである。単発的な変動(例: 特定媒体のクロール一時不調、企業側の意思決定タイミングずれ)の可能性も排除できない。8-9月データで「補正的求人急増」が観測されれば「タイミングずれ」、逆に減速が続けば「構造変化」という解釈が強まる。継続観測により結論を出していく必要がある。
リサーチノート
- 本レポートは、SalesNow保有の約580万社に紐づく全求人媒体のクロールデータ(1〜2時間毎更新)を、2025年5月〜2026年7月の15ヶ月間で月次全数集計したものである。業種分類はSalesNow独自の業種タクソノミーに基づく
- 「7月ピーク不在」の判定は過去2年(2024年・2025年)の同月データとの比較による。観測サンプルが少ないため、単発的な変動なのか構造変化なのかは、8-9月データの継続観測を経ないと結論できない
- 前月比較(2026年6月→7月)は同一媒体構成のため媒体追加による構造的影響を受けない。一方、前年同月比(2025年7月→2026年7月)はindeed 2025年11月追加等の影響を含むため、実勢乖離幅とは言い切れない。本レポートでは前月比較を主軸に、季節性照合を副軸として分析している
- Finding 3のIT業下げ止まりは、Vol.10「テック人材需給の三重反転」(2026-07-20公開)の続報である。IT業のみ2026年6月→7月で-0.0%と横ばい維持を確認したが、これも次回集計で継続確認する必要がある
- 人材業のTop15構成比上昇(43.3%→47.7%)は「仲介業が実需業種と同じ土俵で計測されている」ことに起因する構造要因である。求人データを「採用実需」の代理変数として使う場合は、人材業を除いた集計(本レポートの「Top15 - 人材業」列)を参照することを推奨する
- 教育業は2026年6月Top15圏内(15位、30,158件)だったが7月はTop15圏外に落ちた(20,487件、-32.1%)。夏休み期の学習塾採用は例年少なく、Top15順位変動は季節性の反映と読める
- 業種分類はSalesNow独自の業種タクソノミーに基づく。日本標準産業分類(JSIC)や業界団体・業界調査機関の分類とは一部異なる場合がある。「IT業」は一般的なSIer・システム開発会社を対象とし、Vol.8で扱った「IT/Web・通信・インターネット系」(上場ネット企業)とは別業種として集計している
- 本レポートは公開情報に基づく独自分析であり、特定企業の信用評価や投資判断を目的としたものではない
このデータを引用する
出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年8月)
株式会社SalesNow (2026)「SalesNow Data Flash Vol.11: 秋採用の立ち上がりが不発 — 2026年7月ピーク不在、全業種減速の中でIT求人だけが下げ止まり」SalesNow Data Lab, 2026年8月10日. https://salesnow.jp/insights/data-flash-vol-11/
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