DATA FLASH Vol.3

新年度ラッシュが消えた
3月の求人が前年比-21.9%、新設法人も3ヶ月連続マイナス

例年、日本企業の会計年度が始まる4月に向けて、3月は求人掲載・新設法人ともに「駆け込みピーク」を迎える月である。しかし2026年3月は、求人・新設法人の双方で前年同月比マイナスが同時発生した。AI企業データプラットフォーム「SalesNow」が保有する1,400万超の企業・組織データから、年度替わりの異変を可視化する。

Published 2026-04-20 by SalesNow Data Lab

Key Takeaway: 例年、3月は新年度4月入社・4月新設を見据えた「年度替わりラッシュ」が観測される月である。しかし2026年3月は求人掲載数が1,885,242件(前年同月比-21.9%)、新設法人数が13,768社(前年同月比-1.1%)と、双方ともマイナスに転じた。新設法人に至っては3ヶ月連続の前年割れ(1月-12.5%→2月-5.9%→3月-1.1%)である。ただし求人の-21.9%は2025年3月の突出値(2,414,390件、15ヶ月間で最大)とのベース効果が大きく、また新設法人はマイナス幅が縮小しつつある。本来ピークであるはずの4月のデータが揃った時点で、構造的転換か一時的調整かを判断する必要がある。
-21.9%
2026年3月 求人掲載数 前年同月比
2026年3月: 1,885,242件 vs 2025年3月: 2,414,390件
-1.1%
2026年3月 新設法人数 前年同月比
3ヶ月連続前年割れ(1月-12.5%→3月-1.1%)
-6.6%
2026年Q1 新設法人 前年同期比
36,870社(2025年Q1: 39,465社)

調査概要

データソース AI企業データプラットフォーム「SalesNow」保有データベース 対象 求人データ: 全求人媒体からのクロールデータ / 新設法人データ: 国税庁法人番号公表サイトの新規指定法人(全数) 分析期間 求人データ: 2025年1月〜2026年3月(15ヶ月間の月次推移) / 新設法人データ: 2024年1月〜2026年3月(27ヶ月間の月次推移) 分析手法 求人データ: 全求人媒体の月次延べ掲載件数を全数集計(同一求人が複数媒体に掲載されている場合は媒体ごとに1件)。新設法人データ: 法人番号指定日を設立日として月次全数集計 N数 企業・組織データ総数: 1,400万超 / 2026年3月求人データ: 1,885,242件 / 2026年Q1新設法人: 36,870社 データ取得日 2026年4月20日 補足 求人データには2025年11月以降、indeed掲載分を追加収集している。2026年各月の前年同月比には媒体追加による構造的な増加分が含まれる可能性があり、単純な「求人需要の増減」として解釈できない点に留意が必要である。詳細は定点観測「求人市場動向レポート」を参照

出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年4月20日時点) / 過去3年の3月における求人掲載数・新設法人数の推移

出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年4月20日時点) / 対象: 約580万社に紐づく全求人媒体データ / ※Y軸は100万件〜表示(0起点ではありません)

出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年4月20日時点) / 対象: 法人番号新規指定法人の全数集計 / 過去3年のQ1(1-3月合計)推移

Key Findings

1

3月求人 前年同月比-21.9% — ただし2025年3月が特異な突出値

2026年3月の求人掲載数は1,885,242件。これは2025年3月(2,414,390件)を約53万件下回る水準であり、前年同月比で-21.9%の大幅減となった。ただし、この数字の解釈には注意が必要である。

2025年3月の2,414,390件は、分析対象である15ヶ月間(2025年1月〜2026年3月)で最大の突出値であり、他の月(概ね130万〜170万件台)と比較して1.5倍以上の差があった。この突出には年度替わりの季節要因に加え、データ収集タイミングの影響を含む可能性がある。したがって、2026年3月の-21.9%は「本来の3月水準」への正常化という側面を含む可能性を排除できない。

一方で、2026年3月の絶対水準(1,885,242件)は14ヶ月間の月平均(約157.3万件)を約20%上回っており、絶対値としては例年の3月より高い位置にある。つまり「前年比では大きく減少したが、中長期レンジでは決して低くない」という二面性を持つ。2026年1月は前年同月比+19.4%、2月は+6.4%と好調だったため、3月の-21.9%は数値上の落差が大きく見える構造にある。

リサーチノート: 厚労省「一般職業紹介状況」の有効求人倍率は2026年1月時点で1.18倍(前月比-0.02pt)、dodaの転職求人倍率も2.57倍(前年同月比-0.17pt)と、求人市場全体がやや低下傾向にあることは複数の統計と整合する。ただし、これらの倍率系指標の低下幅(0.02pt〜0.17pt)と比較して、SalesNowの-21.9%は桁違いに大きい。両者の差は主に2025年3月のベース効果によるものであり、「採用需要が約2割縮小した」という単純な解釈は適切でない。4月のピーク月(2024年4月14,305社超の4月新設法人、2025年4月15,305社超)のデータが出揃った時点で、トレンドの方向性をより正確に判断できる。
2

新設法人Q1 合計36,870社で前年同期比-6.6% — 3ヶ月連続マイナスだがマイナス幅は縮小傾向

2026年第1四半期(1-3月)の新設法人数は合計36,870社。2025年Q1の39,465社を2,595社下回り、前年同期比-6.6%となった。2024年Q1(38,646社)と比較しても約-4.6%の減少であり、単月の振れ幅ではなく「四半期の傾向」として減速が確認できる水準である。

求人(月次)

-21.9%
2026年3月 前年同月比
1月: +19.4%
2月: +6.4%
3月: -21.9%(急落)

新設法人(月次)

-1.1%
2026年3月 前年同月比
1月: -12.5%
2月: -5.9%
3月: -1.1%(縮小傾向)

月次の推移を見ると、新設法人はマイナス幅が急速に縮小している。1月-12.5%→2月-5.9%→3月-1.1%と、絶対値で月を追うごとに半減以上のペースで縮小しており、減速の「勢い」は明確に弱まっている。これは求人データの-21.9%のような急減とは対照的な動きであり、新設法人については底入れのシグナルとも読める。

ただし、Q1全体で見ると-6.6%のマイナスは事実である。2025年までの「新設法人の伸び率はプラス基調(年間+3.3%)」とは方向性が逆転しており、2026年は通年でも減速が続く可能性を含む。特に4月は年度開始月で新設法人が集中する時期(2024年4月14,305社、2025年4月15,305社)であり、このピーク月で前年比プラスに戻るかどうかが、通年の動向を占う重要な分水嶺となる。

リサーチノート: 新設法人と求人の「同時マイナス」は一見、採用減速と起業減速が同期しているように見えるが、両者は異なるメカニズムで動いている。求人の-21.9%は既存企業の採用意欲の変化を反映するのに対し、新設法人の-1.1%は起業家の参入意欲を反映する。両者が同時にマイナスになる現象は、経済全体の踊り場局面で起こりやすいが、今回の場合は求人側にベース効果(2025年3月の突出)があるため、「同質の減速」とは断定できない。
3

年度替わりの「季節ピーク」が弱まる — 4月データが上半期トレンドの分水嶺

日本企業の大多数は4月を会計年度の開始月とするため、3月と4月は求人掲載・新設法人の双方でピークが集中する月である。しかし2026年3月は、このピークが過去2年と比較して弱い形で現れた。

項目 2024年3月 2025年3月 2026年3月 推移の特徴
求人掲載数 - 2,414,390件 1,885,242件 2025年3月は15ヶ月間最大の突出値
新設法人数 13,776社 13,922社 13,768社 3年で最少だが差は±1%以内

出典: SalesNow DB(2026年4月20日取得) / 求人データは2024年データが本分析の対象外のため2024年3月値を非掲載

新設法人については、2024年3月・2025年3月・2026年3月の3年間で差は±1%以内の狭いレンジに収まっており、「3月の水準は13,700〜13,900社の安定月」である。2026年の3年で最少という事実は減速トレンドを示唆するが、統計的ノイズの範囲内とも言える水準である。

重要な論点は4月ピーク月である。2024年4月は14,305社(3月比+529社)、2025年4月は15,305社(3月比+1,383社、前年比+7.0%)と、4月は例年3月を上回るピーク月として機能してきた。2026年4月がこの水準を維持できるかどうか、特に2025年4月を超える15,300社超を達成できるかどうかが、2026年通年が「過去最多更新のストリーク継続」となるか「5年ぶりの前年割れ」となるかを分ける分岐点となる。

市場環境との照合

本レポートが示す「年度替わりの季節ピーク減速」は、以下の外部統計と方向性が整合する。

  • 厚労省「一般職業紹介状況」: 有効求人倍率 1.18倍(2026年1月、前月比-0.02pt)。求人市場全体が穏やかに低下傾向
  • doda「転職求人倍率レポート」: 転職求人倍率 2.57倍(前年同月比-0.17pt)。民間求人も低下基調
  • TDB「全国企業倒産集計 2025年報」: 2025年倒産件数 10,261件(12年ぶりの1万件超、人手不足倒産が過去最多を更新)
  • TSR「2024年 全国新設法人調査」: 2024年新設法人数 153,938社(過去最多、前年比+0.3%)。SalesNowの2025年集計値は159,897社(+3.3%)でさらに記録更新

反対解釈: SalesNowのデータが示す「求人-21.9%」は、倍率系指標の微低下(0.02pt〜0.17pt)と比較すると桁違いに大きい。この差の主因は2025年3月のベース効果であり、構造的な減速と同一視することはできない。また、新設法人の3月水準(13,768社)は過去3年で最少だが、2024年3月・2025年3月との差はそれぞれ8社・154社程度であり、統計的ノイズの範囲内である。2026年通年のトレンドを確定させるには、4月〜6月のデータを待つ必要がある。

リサーチノート

データの特性と限界について:
  • 求人データは全求人媒体からのクロール情報を月次で全数集計した延べ件数である。同一求人が複数媒体に掲載されている場合は媒体ごとに1件として計上する
  • 求人データには2025年11月以降、indeedの掲載分を追加収集している。これ以前の月との前年同月比には媒体追加による構造的な増加分が含まれる可能性がある
  • 新設法人データは国税庁法人番号公表サイトの新規指定法人を法人番号指定日ベースで全数集計したものである。登記日ベースの統計(TSR等)とは集計基準が異なる
  • 2025年3月の求人数2,414,390件は15ヶ月間で最大の突出値であり、年度替わりの季節要因に加えてデータ収集タイミングの影響を含む可能性がある。2026年3月の-21.9%は、この特異点とのベース効果を含む値として解釈する必要がある
  • 本レポートは公開情報に基づく独自分析であり、特定企業の信用評価や投資判断を目的としたものではない

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出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年4月)
株式会社SalesNow (2026)「SalesNow Data Flash Vol.3: 新年度ラッシュが消えた — 3月の求人が前年比-21.9%、新設法人も3ヶ月連続マイナスの異変」SalesNow Data Lab, 2026年4月20日. https://salesnow.jp/insights/data-flash-vol-3/

本レポートに含まれるデータ・グラフは、出典として「AI企業データプラットフォームSalesNow調べ」とURLを明記することを条件に、報道・記事での引用・転載を許諾する。グラフ画像の二次利用も同条件で許諾する。引用時はURLの掲載を必須とする。

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