DATA FLASH Vol.4

新陳代謝の加速
創業過去最多と雇用縮小の同時進行、成長企業率50%超はIT一強へ縮小

2025年の日本経済は「創業の過去最多」と「倒産12年ぶりの1万件超」という正反対のシグナルが同時に観測された。2026年3月時点では既存企業の雇用動態にも変化が出ており、業界別の成長企業率50%超の業界が2月版の3業界から1業界(IT)のみに縮小した。AI企業データプラットフォーム「SalesNow」が保有する1,400万超の企業・組織データから、企業の新陳代謝が加速する構造を可視化する。

Published 2026-04-20 by SalesNow Data Lab

Key Takeaway: 2025年の新設法人は159,897社(前年比+3.3%)で過去最多を更新し、帝国データバンクの企業倒産件数は10,261件と12年ぶりに1万件を超えた。創業と退出の双方が活発化する「新陳代謝の第1フェーズ」である。さらに2026年3月時点の既存企業の雇用動態を見ると、業界別成長企業率50%超の業界が2月版の3業界(IT・コンサル・医療)から1業界(IT50.1%)に縮小。創業の活発化が続く一方で、既存企業の過半数が雇用を縮小させる「第2フェーズ」に入っている。新規参入と既存減衰が同時進行する状況は、企業生態系の再編成が本格化していることを示唆する。
159,897社
2025年 新設法人数
前年比 +3.3%(過去最多更新)
10,261件
2025年 企業倒産件数(TDB)
12年ぶりの1万件超、人手不足倒産が過去最多
1業界
2026年3月 成長企業率50%超の業界数
2月版3業界 → 3月版1業界(IT50.1%のみ)

調査概要

データソース AI企業データプラットフォーム「SalesNow」保有データベース(284.3万社・4,370万人の従業員データ) 対象 新設法人: 国税庁法人番号公表サイトの新規指定法人(全数) / 雇用動態: SalesNow保有の業界タグ付き上位15業界・709,951社(従業員総数2,406万人) 分析期間 新設法人: 2024年1月〜2026年3月 / 雇用動態: 2026年3月時点スナップショット(2026年4月20日時点のDB値) 分析手法 新設法人数は法人番号指定日を設立日として月次全数集計。業界別成長企業率は「従業員数が前年同月比で増加した企業の割合」として算出(成長企業数 / (成長企業数 + 縮小企業数) × 100)。従業員数は社会保険被保険者数ベース N数 企業・組織データ総数: 1,400万超 / 新設法人(2025年通年): 159,897社 / 従業員データ: 4,370万人(日本の就業者6,806万人の64.2%) データ取得日 2026年4月20日 外部統計 倒産件数は帝国データバンク(TDB)「全国企業倒産集計 2025年報」を参照。新設法人の外部比較値は東京商工リサーチ(TSR)「2024年 全国新設法人調査」による。両外部統計は登記日ベース集計のため、SalesNowの法人番号指定日ベース集計とは差異がある

出典: SalesNow調べ(2026年4月20日時点)/ TDB「全国企業倒産集計 2025年報」/ 新設法人数(2024年比)と倒産件数の年次推移。新設法人はSalesNow集計、倒産は帝国データバンク発表値

出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年4月20日時点) / 15業界の成長企業率。50%を超える業界はITのみ(50.1%)

出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ / 2月版(2026-03-10公開)vs 3月版(2026-04-20公開)の成長企業率比較。上位6業界を抽出

Key Findings

1

創業は過去最多を維持、倒産は12年ぶりの1万件超 — 新陳代謝の第1フェーズ

2025年の新設法人数(SalesNow集計)は159,897社で、2024年の154,719社を5,178社上回り、前年比+3.3%で過去最多を更新した。東京商工リサーチの2024年データ(153,938社、前年比+0.3%)からさらに上積みした水準である。

参入(創業)

159,897社
2025年 新設法人数(前年比+3.3%)
2024年: 154,719社
2025年: 159,897社(過去最多)
2026年Q1: 36,870社(前年同期比-6.6%)

退出(倒産)

10,261件
2025年 企業倒産件数(TDB発表)
2013年以来12年ぶりの1万件超
人手不足倒産が過去最多を更新
労働市場の逼迫が既存企業の存続に直接影響

帝国データバンクの2025年企業倒産集計では、件数が10,261件と2013年以来12年ぶりに1万件を超えた。特に「人手不足倒産」が過去最多を更新しており、労働市場の逼迫が既存企業の存続に直接影響している構造が浮かび上がる。創業の増加と退出の増加が同時に発生する状態は、企業の新陳代謝が加速する第1フェーズに該当する。

ただし、2026年Q1(1-3月合計)の新設法人数は36,870社で前年同期比-6.6%と、2025年までの増加基調から反転の兆しを見せている。過去最多水準の維持と足元の減速が併存する段階に入っており、2026年通年の方向性はQ2以降のデータで判断する必要がある。

リサーチノート: 本Findingは「創業」と「倒産」の同時発生を指摘するが、両者の因果関係を主張するものではない。創業の増加が倒産を引き起こしているわけでも、その逆でもない。いずれもマクロ経済環境の異なる側面として並行的に観察されている事象である。人手不足倒産の増加は、新規参入側にも同じ制約(人材不足)が及ぶことを意味し、創業数の伸び率が+3.3%にとどまる要因の一つと考えられる。
2

成長企業率50%超は3業界→1業界に縮小 — 既存企業側で雇用縮小が加速する第2フェーズ

既存企業の雇用動態に注目すると、2026年3月時点で業界別成長企業率(従業員がYoYで増加した企業の割合)が50%を超えた業界はITのみ(50.1%)となった。2月版では3業界(IT 51.7%、コンサル 50.4%、医療・製薬・福祉 50.3%)が50%を超えていたが、コンサルと医療・製薬・福祉が50%を割り込み(48.0%、48.6%)、「過半数の企業が雇用を増やしている」状態が3業界から1業界に縮小した。

業界 2月版 成長企業率 3月版 成長企業率 差分 3月版 判定
IT 51.7% 50.1% -1.6pt 唯一50%超を維持
コンサル 50.4% 48.0% -2.4pt 50%割れ
医療・製薬・福祉 50.3% 48.6% -1.7pt 50%割れ
外食 50.0% 47.7% -2.3pt 縮小側に転落
運送・物流・輸送 47.3% 46.3% -1.0pt 縮小側で維持
人材 47.6% 46.2% -1.4pt 縮小側で維持

出典: SalesNow DB(2026年4月20日取得) / 業界別成長企業率の月次変化(2月版 vs 3月版)

注目すべきは、15業界中14業界で成長企業率が低下している点である(微増の業界なし)。ITも51.7%→50.1%と1.6pt低下しており、唯一50%超を保っているものの、縮小企業が急接近している。外食は50.0%→47.7%と特に大きな低下幅を示した。業界横断的に「雇用拡大の勢い」が弱まっており、新規参入の増加とは逆方向の動きが既存企業側で進行していることがうかがえる。

リサーチノート: 2月版から3月版にかけて、SalesNow全体の従業員総数は45,120,412人から43,704,937人へ約142万人減少した。ただしこれは実態的な雇用減ではなく、DB側の精緻化(社会保険離脱者データの反映、重複・異常値の除去)による影響が大きい。個社レベルの成長企業率はDB精緻化の影響を受けにくい独立指標であり、業界横断的な成長企業率の低下は純粋な雇用動態のシグナルとして読み取れる。
3

二極化の第2フェーズに入った可能性 — Q2以降のデータで構造的転換かを判断

2025年に観測された「創業過去最多 × 倒産12年ぶりの1万件超」という二極化構造は、2026年に入り新しい局面に移行している可能性がある。Finding 1で見た通り、2025年通年の新設法人は+3.3%で過去最多を維持した一方、2026年Q1は前年同期比-6.6%と明確に反転した。加えてFinding 2で見た通り、既存企業の成長企業率50%超は3業界から1業界に縮小している。創業側の増加ペースが鈍化しつつ、既存企業の雇用縮小が加速する構造である。

この変化を「二極化の第2フェーズ」と仮称するならば、以下の3つの論点が成立する。

論点 2025年までの構造(第1フェーズ) 2026年3月版の構造(第2フェーズの兆候)
創業側 新設法人は過去最多を更新、+3.3%の増加基調 2026年Q1は前年同期比-6.6%に反転、増加基調が途切れた
退出側 倒産10,261件で12年ぶりの1万件超、人手不足倒産が過去最多 TDB 2026年データは未発表。ただし雇用縮小の広がりは退出圧力の増大を示唆
既存企業 3業界で成長企業率50%超、雇用拡大の裾野があった 50%超はITのみに縮小、14/15業界で成長企業率低下

この解釈にはいくつかの反証可能性がある。第一に、新設法人の2026年Q1の-6.6%は2025年Q1の+2.1%が高すぎた可能性もあり、2024年Q1比較では-4.6%にとどまる。季節要因や2025年Q1の特殊要因を除いた「真の趨勢」は4月以降のデータで判断が必要である。第二に、既存企業の成長企業率の低下は、業界単位で見ると4月以降の新年度予算反映で回復する可能性もある。第三に、SalesNowのデータは社会保険被保険者数ベースであり、業務委託・フリーランスの増加を捕捉できない。働き方の多様化が進む中で、「成長企業率の低下」を単純に「雇用縮小」と同一視することは適切でない。

市場環境との照合

本Findingの解釈を裏付ける外部統計・調査を以下に示す。

  • TSR(東京商工リサーチ): 2024年新設法人数 153,938社(過去最多、前年比+0.3%)。2023年の+0.3%からほぼ横ばいで、伸び率の鈍化は2023年以降のトレンドとして認識されていた
  • TDB(帝国データバンク): 2025年倒産10,261件(12年ぶり1万件超)。人手不足倒産が過去最多を更新、労働市場の逼迫が既存企業の存続を圧迫
  • 厚労省「一般職業紹介状況」: 有効求人倍率 1.18倍(2026年1月、前月比-0.02pt)。求人市場全体がやや低下傾向
  • TDB「2025年の経営計画に関する企業意識調査」(2024年12月発表): 「人員強化が最優先」と回答した企業90.2%。採用意欲自体は依然として高い

反対解釈: 「採用意欲90.2%」と「成長企業率50%超=1業界のみ」という数字の乖離は、「出したい求人」と「実際に採れる企業」の差が拡大していることを示す。必ずしも企業側の採用意欲が減退しているわけではなく、構造的な労働力供給制約の中で「採れる企業」が集中している可能性がある。この場合、二極化の第2フェーズは「大手集約化の加速」として解釈することもできる。

リサーチノート

データの特性と限界について:
  • 新設法人データはSalesNow独自の法人番号指定日ベース集計(2025年通年159,897社)。東京商工リサーチの登記日ベース集計(2024年153,938社)とは約+0.5%の差異があるが、これは集計基準の違いに起因する
  • 倒産件数はTDB発表値の引用。SalesNow自身は倒産統計を独自発表していない。倒産と新設は集計主体が異なる点に留意が必要である
  • 成長企業率はSalesNow独自指標で「従業員数が前年同月比で増加した企業の割合」。従業員数に変化がない企業は母数から除外される。社会保険被保険者数ベースのため業務委託・フリーランスは含まない
  • 業界分類はSalesNow独自の30区分体系のうち、従業員データが豊富な上位15業界を分析対象とした。日本標準産業分類(JSIC)とは対応が異なる場合がある
  • 本レポートは公開情報に基づく独自分析であり、特定企業の信用評価や投資判断を目的としたものではない

このデータを引用する

出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年4月)
株式会社SalesNow (2026)「SalesNow Data Flash Vol.4: 新陳代謝の加速 — 創業過去最多と雇用縮小の同時進行、成長企業率50%超はIT一強へ縮小」SalesNow Data Lab, 2026年4月20日. https://salesnow.jp/insights/data-flash-vol-4/

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