調査概要
Key Findings
新設法人は4ヶ月連続前年割れ — ピーク月4月で-10.3%、過去最多更新ストリーク途切れの可能性
2026年4月の新設法人数は13,729社で、前年同月(15,305社)を1,576社下回り、前年同月比-10.3%となった。これで2026年1-4月は4ヶ月連続の前年割れとなり、3月までの「マイナス幅縮小トレンド(1月-12.5% → 2月-5.9% → 3月-1.1%)」は4月で大幅に反転した。例年最大のピーク月である4月で2桁マイナスとなったことは、季節要因では説明しきれない構造的シグナルである。
4月ピーク月(2025年)
2025年4月: 15,305社
ピーク月として通年トレンドを牽引
4月ピーク月(2026年)
1-4月累計: 50,599社(-7.5%)
過去最多更新ストリーク途切れの可能性
2026年1-4月の累計は50,599社で前年同期比-7.5%(2025年1-4月: 54,770社)。Q1(1-3月)時点の-6.6%から、4月を加えた1-4月で-7.5%にマイナス幅が拡大した。これは「Q1の減速はQ2のピーク月(4月)で巻き返される」という前回時点の楽観シナリオが成立しなかったことを意味する。仮にこの-7.5%ペースが通年で続けば、2026年通年は約148,000社前後となり、2025年通年159,897社で達成した過去最多更新ストリークが途切れる可能性が現実味を帯びる。
4月の-10.3%が特に重要な理由は、年度開始月という季節的な意味合いに加え、過去2年(2024年4月14,305社、2025年4月15,305社)と比較して3年で最少の絶対水準となった点である。2025年4月の異常値の反動という見方もあるが、2026年4月の13,729社が2024年4月14,305社をも下回るため、特異点反動だけでは説明しきれない。
業界別雇用は全15業界で成長企業率が改善 — 前回「14業界悪化」から大反転、雇用縮小ペースに歯止め
2026年4月時点の業界別成長企業率(従業員がYoYで増加した企業の割合)を見ると、全15業界で前回(3月版)から成長企業率が改善した。前回は14/15業界で成長企業率が低下していたため、方向性が完全に逆転した格好となる。改善幅は最大で機械系の+1.2pt(43.8%→45.0%)、最小でも0.5pt前後と、全業界が等しく改善方向に動いた。50%超は依然 IT(51.2%、前回50.1%、+1.1pt)のみだが、医療・製薬・福祉(48.6%→49.0%、+0.4pt)とコンサル(48.0%→48.7%、+0.7pt)が50%ラインに再接近している。
| 業界 | 前回(3月版) | 今回(4月版) | 変化 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| IT | 50.1% | 51.2% | +1.1pt | 50%超を強化 |
| 医療・製薬・福祉 | 48.6% | 49.0% | +0.4pt | 50%再接近 |
| コンサル | 48.0% | 48.7% | +0.7pt | 50%再接近 |
| 外食 | 47.7% | 48.3% | +0.6pt | 復帰候補 |
| 食品 | 47.2% | 47.9% | +0.7pt | 改善 |
| 車・乗り物 | 46.0% | 46.9% | +0.9pt | 改善 |
| 運送・物流・輸送 | 46.3% | 46.9% | +0.6pt | 改善 |
| 人材 | 46.2% | 46.7% | +0.5pt | 改善 |
| その他サービス | 45.7% | 46.3% | +0.6pt | 改善 |
| 教育 | 45.0% | 45.5% | +0.5pt | 改善 |
| 不動産 | 44.2% | 45.1% | +0.9pt | 改善 |
| 機械系 | 43.8% | 45.0% | +1.2pt | 最大改善幅 |
| 建設・工事・土木 | 43.4% | 44.2% | +0.8pt | 改善 |
| 製造 | 43.4% | 44.2% | +0.8pt | 改善 |
| 小売・販売 | 42.6% | 43.1% | +0.5pt | 改善 |
出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年5月18日時点) / 業界別成長企業率の月次変化(3月版 vs 4月版) / 成長企業率 = 成長企業数 ÷(成長企業数+縮小企業数)× 100
業界間の改善幅にはバラツキがあり、機械系(+1.2pt)と IT(+1.1pt)が最大、小売・販売や教育・人材が最小(+0.5pt)。労働集約型業界(建設・小売・運送)の改善幅と、知識集約型業界(IT・コンサル・医療)の改善幅に大きな差はない。前回時点では「労働集約型ほど低下幅大」の傾向があったが、今回は「業界横断で一斉に微増」の構図に変わった。これは特定セクター固有の要因ではなく、マクロ環境(雇用市場全体)の変化を反映している可能性を示唆する。
「創業最多×倒産最多」から「創業鈍化×雇用反転」へ — 中小企業セクターの新陳代謝が第3フェーズへ
Finding 1(新設法人の4ヶ月連続前年割れ、ピーク月-10.3%)と Finding 2(全15業界での雇用反転、IT 51.2%強化)を組み合わせると、中小企業セクターの新陳代謝が新しい局面に入った構造が浮かび上がる。2025年型の「創業最多×倒産最多」(Data Flash Vol.4で「新陳代謝の第2フェーズ」と呼んだ局面)から、2026年は「創業鈍化×雇用反転」という第3フェーズに移行している可能性を示す。
| フェーズ | 新規参入(創業) | 退出(倒産) | 既存企業の雇用 | 時期 |
|---|---|---|---|---|
| 第1フェーズ | 過去最多更新基調 | 低水準 | 業界横断で増加基調 | 2024年まで |
| 第2フェーズ (創業最多×倒産最多) |
2025年159,897社で過去最多 | 2025年10,261件(12年ぶり1万件超) | 業界別成長企業率は徐々に低下 | 2025年 |
| 第3フェーズ (創業鈍化×雇用反転) |
2026年Q1-6.6%、1-4月-7.5%、4月-10.3% | TDB 2026年データ未発表(要監視) | 全15業界で成長企業率改善、IT 51.2%強化 | 2026年4月時点 |
出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年5月18日時点) / 「フェーズ」分類は本レポート独自の解釈
この第3フェーズの含意は、中小企業セクターにおける「新陳代謝の質的転換」にある。第2フェーズでは新規参入と退出が同時に増えていたが、第3フェーズでは新規参入のペースが落ちる一方で、既存企業(特に中小・中堅)の雇用は持ち直す方向に動いている。これは「採用市場で人材を確保できた既存企業」と「人材確保できずに参入を断念または倒産する新規企業」の選別が進んでいる可能性を示唆する。
一方で、この第3フェーズの解釈には複数の留意点がある。第一に、雇用動態の改善は1ヶ月単独の観測であり、構造的転換か一時的な振れ戻しかは複数月の継続観測が必要である。第二に、新設法人の-10.3%が「2025年4月の異常値の反動」である可能性は依然として残る。第三に、退出側(倒産統計)の最新データが本レポート時点では2025年通年までしか公表されていない。「創業鈍化×雇用反転」のシナリオを確定するには、5-6月の新設法人データ、雇用動態の継続的な改善傾向、そしてTDBの2026年上半期倒産統計の3点が揃う必要がある。
市場環境との照合
本Findingの第3フェーズ仮説を裏付ける外部統計・調査を以下に示す。
- TSR(東京商工リサーチ)「2024年 全国新設法人調査」: 2024年新設法人数 153,938社(過去最多、前年比+0.3%)。2025年159,897社で更新後、2026年Q1-4月で-7.5%の反転
- TDB(帝国データバンク)「全国企業倒産集計 2025年報」: 倒産10,261件で12年ぶり1万件超、人手不足倒産が過去最多。2026年データは未発表
- 厚労省「一般職業紹介状況」: 有効求人倍率 1.18倍(2026年2月、前月比横ばい)。雇用市場の逼迫が新規参入の抑制要因となっている可能性
- 総務省 労働力調査: 完全失業率2%台後半で低位安定。既存企業の雇用反転は、確保した人材の定着・拡大が進んでいる可能性を示唆
- 日本政策金融公庫「新規開業実態調査」: 創業融資実績は堅調も、参入意欲と実際の登記の時間差が大きい。2026年4月の-10.3%は2024年下半期から2025年Q1の参入意欲低下を反映している可能性
反対解釈: 「第3フェーズ」は本レポート独自の仮説的フレームであり、確定した経済局面の概念ではない。雇用動態の改善はDB精緻化のピーク越えに伴う統計的な見え方の変化である可能性もある。また、新設法人の-7.5%は「過去最多反動」の自然な調整であり、構造的局面転換とは無関係である可能性もある。複数月の継続観測と外部統計の補強で精度を上げていく必要がある。
リサーチノート
- 新設法人データは国税庁法人番号公表サイトの新規指定法人を法人番号指定日ベースで月次全数集計したもの。SalesNowの集計値は東京商工リサーチ(TSR)の登記日ベース集計と約+0.5%の差異があるが、集計基準の差異の範囲内である
- 業界別成長企業率は社会保険被保険者数に基づく従業員データを月次でクロールし、各企業のYoY変化を集計したもの。パートタイム等で社会保険未加入の従業員は含まない可能性がある。業界分類はSalesNow独自基準であり、日本標準産業分類(JSIC)とは対応が異なる場合がある
- 本レポートで提示した「第3フェーズ」概念は、SalesNowデータと外部統計の組み合わせに基づく仮説的フレームであり、確定した経済局面の概念ではない。複数月の継続観測と外部統計の補強で精度を上げていく
- 従業員総数は3月版(43,704,937人)から4月版(43,674,243人)まで約3万人減(0.07%減)と前月(約142万人減)から大きく縮小しており、DB精緻化のピークは過ぎたと見られる。これにより観測された成長企業率の改善は、実態的な雇用動態の変化を反映している可能性が前回より高い
- 退出側(倒産統計)はSalesNow独自集計ではなく、TDB(帝国データバンク)の発表値を参照している。2026年の倒産統計は2026年上半期分が2026年7月頃に公表予定であり、本レポート時点では2025年通年までを参照
- 本レポートは公開情報に基づく独自分析であり、特定企業の信用評価や投資判断を目的としたものではない
このデータを引用する
出典: AI企業データプラットフォーム「SalesNow」調べ(2026年5月)
株式会社SalesNow (2026)「SalesNow Data Flash Vol.6: 創業鈍化下の雇用反転 — 中小企業セクターの新陳代謝が次の局面へ」SalesNow Data Lab, 2026年5月26日. https://salesnow.jp/insights/data-flash-vol-6/
本レポートに含まれるデータ・グラフは、出典として「AI企業データプラットフォームSalesNow調べ」とURLを明記することを条件に、報道・記事での引用・転載を許諾する。グラフ画像の二次利用も同条件で許諾する。引用時はURLの掲載を必須とする。