取り組みの目的
- AIを前提とした「AIネイティブ経営」の組織モデルを、採用・育成から営業までワンストップで実装する
- 営業領域において、顧客側のデータ(SalesNow)と営業側のデータ(PeopleX AIセールス)を掛け合わせ、受注率を最大化する
- AI時代の人事・営業のロールモデルとなる「AIで経営する会社」を自社で体現し、その知見を大企業へ提供する
直面していた課題
- 創業初日からAIを前提に経営する以上、AIに人と同じ情報量を与え、経営データをデジタルツイン化(経営の実態を仮想空間に丸ごと再現すること)しなければ、AIを意思決定に関与させられない。その全社的なデータ基盤づくりが不可欠だった
- 営業現場では、商談を書き起こしてCRMに転記するだけの旧来型のAI活用では受注率が上がらず、商談中にリアルタイムで受注率を引き上げる仕組みを自ら構築する必要があった
- 「顧客側の分析」はあっても「営業側の分析」が世の中に存在せず、両者を掛け合わせた最適なマッチングによる受注率最大化が実現できていなかった
得られた成果
- AI活用により、営業1人あたりの顧客保有数が約3倍に、ARPU(顧客あたり単価)が約2倍に。この掛け合わせで1人あたり営業生産性は約6倍に
- 従来1週間かかっていた企業分析レポートを自動生成し、1日5商談分の準備が可能に。"超ハイタッチ営業"をAIによる"超テックタッチ"で実行
- 経営データをデジタルツイン化し、AIに経営シミュレーションを実行させて最適解を現実に反映
- リード〜商談はSalesforce × SalesNow、商談以降はPeopleX AIセールスで、ファネル全体をAIとデータで設計

生成AIの登場以降、多くの企業が営業現場へのAI導入を進めています。しかし、その多くは「商談を書き起こしてCRMに転記する」「文章生成を補助する」といった部分最適にとどまり、営業プロセスそのもの、ましてや経営そのものの変革には至っていないのが実情です。
こうした中、創業初日からAIを前提に会社を設計し、人事と営業の両領域で「AIで経営する」ことを徹底しているのが、「AI for the People.」を掲げる株式会社PeopleX様です。2024年4月の創業以降、生成AIを前提とした営業プロセス・人材に関するプロセスをAIファーストで構築。グループ全体で3,000社超の支援実績を持ち、自社の経営データそのものをデジタルツイン化してAIに意思決定を委ねる、文字通りのAIネイティブ企業です。
そして、このAIネイティブ経営を根底から支えているのが、データの存在です。AIがどれだけ進化しても、その判断の精度は、最終的に参照するデータの質によって決まります。PeopleX様の営業組織において、AIが意思決定の拠り所とする「顧客側のファクトデータ」を供給しているのが、日本最大級の企業データベース「SalesNow」です。リードから商談、そして受注に至るまで——営業活動のすべての起点を、AI時代の企業データインフラとして足元から支えています。
本記事では、PeopleX様の営業組織におけるAI活用の全貌と、その土台を支えるデータ活用の考え方を、代表取締役CEOの橘大地様に伺いました。

人間とAIが溶け込んで共創する。私たちは創業初日から、社員を採用するのと同じようにAIワーカーを採用し、経営の意思決定の半分以上をAIと共に行ってきました。
橘大地様 — 株式会社PeopleX 代表取締役CEO
会社概要
──「AI for the People.」を掲げるAIネイティブ企業
PeopleXは2024年4月に創業し、ちょうど2年が経ちました。事業は大きく2つで、ひとつはAIで人事課題を解決する事業です。採用から育成、活躍支援まで、人事の領域をAIで一気通貫に支援します。もうひとつが、今回新たに参入したAIで営業の生産性を高める事業です。人事と営業、この2つの課題を解いていくのが私たちの事業です。
今年4月には、パーパスを「AI for the People.」へと刷新しました。AI時代が到来し、人々の働き方、そして労働そのものが変わっていく。人間とAIが共創する社会が必ず訪れます。創業当初は人々の働き方(エンプロイーサクセス)のみにフォーカスしていましたが、AIと人が共に働く時代はもう待ったなしです。だからこそ、AIと人との共創モデルを自社でつくり、それを大企業の皆様の変革支援にも展開していく、という方針へと舵を切りました。
創業初日からのAIファースト
私たちは2024年4月、つまり生成AI誕生以降に創業した会社です。だからこそ、AIを前提として会社をつくることができました。営業活動も、人材に関するプロセスも、すべてAIファーストで設計しています。この「AIを前提とした設計思想」そのものを他社の皆様にも提供できる——これが私たちの一番の強みです。
実績面では、グループ全体で3,000社超の支援実績があります。セブン-イレブン・ジャパン様、サイバーエージェント様、GMOインターネットグループ様、SUBARU様をはじめとする大手企業に、国産のAIアプリケーションを導入いただいています。LLM単体を除いた国産AIアプリケーションとしては、導入実績で日本最大級の規模だと自負しています。
点ではなく、面で支援する
AI面接、AIロープレ、AI面談といった機能を、それぞれ独立した「点」のソリューションとして提供しているわけではありません。ひとつのデータベースに対して、多面的にひとつのアプリケーションで展開できる——これがAI時代のタレントマネジメントの条件だと考えています。AI面接というシングルプロダクトではなく、その人に合わせた多面的な支援ができることが、私たちの特徴です。

経営のリアルデータを、デジタルツインとして常に再現し続けています。社員を1人採用したら、バーチャル上のツインも1人増える。常に二重で経営が走っているような状態です。
橘大地様 — 株式会社PeopleX 代表取締役CEO
AI・データ活用の位置づけ
──「AIで経営する」を徹底する
私たちはAIを前提として会社づくりをしているので、社員を採用するのと同じように、AIワーカーを採用していきます。経営の意思決定自体も、半分以上をAIに相談しながら、AIの示唆を受けて全員が働いています。人間とAIが溶け込んで共創している、というコンセプトです。
そのうえで重要になるのがデータです。売上、商談数、受注数、どの経路で受注したか——こうした経営のリアルデータを、デジタル上でもAIが常にトラックできる環境を整えています。社員を1人採用したら、バーチャル上のピープルツイン(社員一人ひとりをデジタル上に再現した分身)も1人増える。常にツインが二重で走っているような状態を実現し、AIも働きやすい会社をつくっています。
ファクトデータだけでは「デジタルツイン」にならない
AIでデジタルツインを動かすうえで、ファクトデータだけを持っていても意味がありません。たとえば、AさんとBさんの仲が良くない、という事実はAIには分かりません。「誰と誰が仲が悪いか」「誰が誰を尊敬しているか」「この人の趣味はサッカーだ」——そこまで再現できている会社は、ほとんどないと思います。
これを実現できている背景には、明確な考え方があります。AIも私たちの重要な社員だ、ということです。新しく入った社員に何の情報も渡さなければ、その人は判断ができず、働きづらい。AIもまったく同じで、情報へのアクセス権がなければ働きづらい。AIと共創するうえで、関係性も人となりも分からなければ、一緒に働くことは難しい。だからこそ、AIに人と同じ情報量を与えることを徹底しています。
AIによる経営シミュレーション
PeopleXという会社が、デジタル上に完全再現されている状態です。売上もマーケ状況も現金残高も、全社員のプロフィールや性格、関係性グラフまでがバーチャル上に存在しています。関係性グラフは、私たちがAI面談サービスを提供している関係で、AIが全社員と1on1をしているため、リアルタイムで観測・再現できています。
そのうえで、未来の変数を変えていきます。「セールスを1人増やしたらバーンレート(資金燃焼率)はどうなるか」「デジタルマーケの予算を上げたら売上・商談はどう動くか」「頑固な性格の人を1人採用したら、誰がつまずくか」——こうした変化を、AパターンからZパターンまで、経営をAIに走らせて、最も結果が良かった一手を現実社会で実行する。そういう経営をしています。
営業領域のAI設計思想
──常に「ダブルトラック」で走らせる
ビジネス・営業側でも、Claudeが登場した今年から特に力を入れています。個社に合わせた営業資料が自動で作られ、想定問答集もAIが作成する。商談が「今何点で、何が足りなかったか」というフィードバックが自動で届き、次回のメールや次回アクションもAIの示唆のもとで動いています。資料作りからQAの回答、商談後のフィードバック、次回アクションプランまで、AIが上長のように私たちに指示を出してくれる状態です。
そのうえで徹底しているのが、常にダブルトラックで走らせるという考え方です。人間だけでも判断しない、AIだけでも判断しない。人間とAIが常に客観的にダブルフィードバックを返し合う。逆に言えば、これまでのように人間だけで判断するほど危ういものはなく、AIだけで判断するのも危ない。だからこそ、常に両方から判断する設計にしています。
経営も同じです。自分の判断が正しいかどうかは分からないので、常にAIで検証しながら進めています。

PeopleX AIセールスなしの営業は、いわば竹槍を持って戦っているようなもの。商談を書き起こしてCRMに転記するだけでは、受注率は上がりません。
橘大地様 — 株式会社PeopleX 代表取締役CEO
現場実装
──採用から商談まで、自社プロダクトをフル活用する
入り口(採用)からのAI活用
自社のAIプロダクトを、入り口からすべて活用しています。まずAI面接で、PeopleXに合う「因子」を持った人かどうかを見極めます。どんな理由でPeopleXを受けているのか、面接の内容がすべてデータとして蓄積されるので、「採用サイトのこの言葉をこう変えれば母集団形成の質がこれだけ変わる」といったことまでAIがトラックします。母集団形成から、なぜ受けているのか、内定承諾率、どうすれば最後にご決断いただけるか——ここまでをAI面接というプロダクトで一気通貫に把握しています。
入社後は、AI面接の段階で能力値や育成の因子が特定できているので、オンボーディングを一律ではなく一人ひとりに最適化できます。その人に合ったAIロープレ、AI面談が入社初日から走り、感情が少しでも下がれば人事に通知が届く。リアルな人間がすぐにサポートに動く仕組みです。全社員が定期的にAI面談を行うため、悩みが自然と集まってきて、全社員の状態を私自身が常に把握できています。
営業現場でのAI活用
──リアルタイム商談サポート
営業領域で私たちが開発しているのが、商談サポートから受注、さらにカスタマーサクセス、プロダクトへのフィードバックまでを支援する「PeopleX AIセールス」です。
今のAIの使われ方の多くは、人間が話した商談を書き起こしてCRMに転記する、というものです。しかしそれは、竹槍を持った人間の様子を写真に撮って台帳に上げているようなもので、それでは受注率は上がりません。
PeopleX AIセールスは、リアルタイムでAIが受注率を予測し、「今何を話すべきか/話せていないか」を商談中にサポートします。具体的には、オンライン会議の画面に、「予算確認がまだ終わっていない」「決裁プロセスを確認できていない」「決裁者が誰か確認できていない」といった項目が、AIによってリアルタイムで表示される。商談が進むごとにそれが埋まっていき、次回アクションとして何をすれば受注できるかをパイプラインで管理してくれます。次回アクションが2ヶ月ほど滞っていれば、「こういうメールを送っておきますか」という提案が届き、承諾すれば自動で送信される。こうしたソリューションを自社で使い、それを外販しています。
プロダクトと現場をつなぐフィードバックループ
商談で出たプロダクトへのフィードバックや機能要望も、AIが自動で抽出し、プロダクトチームに届けています。日々の多数の商談の中で寄せられる要望ランキングが自動でプロダクトチームに共有される。営業が「この機能を作ってほしい」と感覚で依頼するのではなく、実際のファクトデータに基づいて届くのです。すべての商談パイプライン、機能要望、顧客の声が、会社全体で理解できている状態になっています。

営業のマッチングは、人材紹介に似ています。"顧客側のデータ"がSalesNow、"営業側のデータ"がPeopleX。この2つの掛け算により、受注率の最大化に繋がっています。
橘大地様 — 株式会社PeopleX 代表取締役CEO
SalesNowの位置づけ
──「顧客側の分析」を担うデータインフラ
リードのお問い合わせをいただいた段階で、Salesforceに自動で格納され、そこにSalesNowのデータ——従業員数や業種といった企業情報——が紐づきます。それによってTier付けがなされ、最適な担当者に自動で割り振られる。つまり、リードから商談までをSalesforceとSalesNowで、商談以降をPeopleX AIセールスでカバーしている形です。
「顧客側の分析 × 営業側の分析」というマッチング
営業のマッチングは、人材紹介に似ていると考えています。人材紹介は候補者と企業の最適なマッチングがビジネスの核ですよね。営業のファネルで言えば、最適なお客様を分析するのがSalesNowの強いところで、営業側を分析するのが私たちのPeopleX AIセールスです。
この2つのマッチングでなければ意味がありません。お客様側の分析だけでも、CRMのパイプライン分析だけでも足りない。営業側の能力や得意領域が分からなければ、最適なマッチングはできないのです。逆に言えば、これまで「営業側の分析」は存在しませんでした。だからこそ、特別な能力を上げなくても、PeopleX AIセールスとSalesNowを掛け合わせて最適なマッチングをするだけで、受注率は無理なく高まります。
実際に、たとえば「この営業担当は建設業界の1,000〜3,000名規模が得意」といった得意ゾーンを全営業について把握しており、SalesNowの企業情報と掛け合わせて、マッチングを自動化しています。従業員100名のおもちゃメーカーからお問い合わせが来たら、最適な営業に自動でマッチングされる、というイメージです。全社員の営業成績も点数ベースで可視化されています。

1人あたりの生産性が約6倍になりました。顧客保有数が約3倍に増え、しかもサポートの質が上がる。この掛け算で生産性が伸びています。
橘大地様 — 株式会社PeopleX 代表取締役CEO
組織変革後の成果
──1人あたり生産性約6倍、超ハイタッチ営業を超テックタッチで
1人あたり生産性約6倍
AIを活用することで、営業1人あたりが抱えられる顧客保有数は約3倍に拡張されました。しかも、より手厚いサポートができるようになるため、顧客あたりの単価(ARPU)も上がる。保有数約3倍 × ARPU約2倍で、1人あたりの営業生産性は約6倍になっています。これは、AIを使いこなせば起きる、ごく自然な現象だと考えています。
シンプルな方程式です。顧客数 × ARPU。手厚くすれば単価が上がり、AIがメール作成や商談の書き起こしといった付随業務を引き受けることで保有数が増える。この掛け算で生産性が伸びていきます。
「超ハイタッチ営業」を「超テックタッチ」で
定性面でも大きな変化があります。営業というサービス業において、お客様にとって丁寧で行き届いていることは非常に重要です。私たちは、お客様から最も信頼される営業チームだと自負していますが、それはAIなしには成り立ちません。
たとえば、ある上場人材サービス企業様への提案では、まず先方が今どんな人的・財務的課題を抱えているかを分析しました。人材ビジネスは長らく「採用人数を増やせば売上が伸びる」モデルでしたが、ここ数年で「1人あたり生産性を上げなければ、採用しても売上が伸びない」状況へと変わっています。つまりKPIそのものが変わっている。そのためにはAI活用による育成が必要だ——と提案したところ、「そのKPIの変化に気づいていなかった」と、会社のKPI変更そのものを後押しする結果になりました。
その分析レポートは、すべて無償で作成しています。本来であれば外部のコンサルティングファームが多額の費用をかけて行うような分析を、1社ずつ無料で提供しながら提案している。これを実現できるのもAIの力です。従来、営業担当者が1週間専念しなければ作れなかったレポートが、今では1日5商談分作成できる。だから保有数も単価も上がる。お客様の状況をすべてレポートで分析して臨む"超ハイタッチ営業"を、"超テックタッチ"で実現している状態です。
今後の展望
──生産性10倍・20倍、そして「AIで経営する会社」のロールモデルへ
まだまだAI時代の幕開けです。逆に言えば、今は1人の営業が他社で言う6人分の生産性しか出せていない。これを10倍、20倍にしていく余地が、まだ十分にあると思っています。
電話・コール業務のAI自動化にも取り組めますし、カスタマーサクセス業務の高度化にもすでに着手しています。さらに、経営の意思決定自体をもう一段AIで自動化できると考えており、それによってAIと人間が共創できる会社のロールモデルを自社でつくっていきたい。その先には、営業利益率80%の会社も実現できると見ています。
営業の文脈で言えば、もはやAIなくして人間が活動できない状態になっています。これからもAIを賢くし続け、お客様のサポート品質を、今まで以上に感動いただけるレベルに高めていきます。
SalesNowへの期待
──AIの「ファクトデータ」基盤として
SalesNowについては、AIのデータソースとして——とりわけ営業におけるファクトデータの基盤として——活用していけると考えています。AIが生きるうえで欠かせない、営業上の重要なデータを生成してくれる存在です。
加えて、Salesforceに蓄積された受注実績・商談実績との掛け合わせも重要なポイントです。昨年から蓄積が進んでいるこれらの実績データを、SalesNowのデータと統合できることが、大きな価値になると考えています。
なお、PeopleXでは「経営のAI OS化」を支援する事業も展開しています。こうした取り組みに関心のある企業の皆様には、ぜひお声がけいただければと思います。