取り組みの目的
- 「HubSpot × AI × データ」の3軸で、支援会社そのものをAIを前提とした組織へと再設計する
- インバウンドが大半の営業組織において、限られたリソースを最適な顧客・最適な担当者へ振り分け、1人あたりの生産性を最大化する
- 自社で成果の出たAI活用を、いち早くお客様へ提供する「AIネイティブ・エージェンシー」のロールモデルを自ら体現する
直面していた課題
- お客様のCRM・AI活用を支援する立場だからこそ、まず自社そのものをAI中心の組織へ再設計し、お客様に「半歩先」を示し続けられるかが問われていた
- AIを全社の成果に結びつけるには、その判断の土台となる企業データの品質——名寄せ・正規化・エンリッチ——を、いかに整え、維持し続けるかが根本的な課題だった
- インバウンドが大半を占める中、増え続けるお問い合わせに対し、1人あたりの生産性を最大化し、限られたリソースを最適な顧客・最適な担当者へ振り分ける仕組みが必要だった
得られた成果
- AI活用により、1人あたりが対応できる顧客数が約1.5倍に。打ち合わせ数も週5本から7〜8本へと増加
- 資料作成などの作業工数をAIで削減し、お客様との対話やプロジェクトそのものに使える時間を捻出
- デザイン・コーディングなどの開発コスト・外注コストの削減と案件数の増加が、PL(損益)に直接インパクト
- SalesNowにより企業データが整い、必要な情報をすぐに取り出せるように。「どこを攻め、どこをやめるか」の意思決定とPDCAのスピードが大きく向上

生成AIの登場以降、多くの企業が営業やバックオフィスへのAI導入を進めています。しかし、その多くは「議事録の書き起こし」や「文章生成の補助」といった部分最適にとどまり、事業モデルそのものの変革には至っていないのが実情です。
こうした中、自社そのものを「HubSpot × AI × データ」で再設計し、AIを組み込んだ組織へと変貌を遂げているのが、アジアで初めてHubSpot Eliteパートナーに認定された株式会社100様です。「半歩先をてらす。」を掲げ、創業以来およそ400社の支援を積み重ねてきた同社は、HubSpot Best Partner in Japanを3年連続で受賞。世界7,000社超のパートナーのうち、トップ100に入るティアを保有する、名実ともに国内最高峰のHubSpotパートナーです。
そして、このAIを前提とした経営を根底から支えているのが、データの存在です。AIがどれだけ進化しても、その判断の精度は、最終的に参照するデータの質によって決まります。100様の営業組織において、AIが意思決定の拠り所とする「顧客側のファクトデータ」を供給しているのが、国内約1,400万件を網羅する企業データベース「SalesNow」です。インバウンドで寄せられたお問い合わせを、誰に・どう返すか——その営業活動の起点を、AI時代の企業データインフラとして足元から支えています。
本記事では、100様の「HubSpot × AI × データ」による組織変革の全貌と、その土台を支えるデータ活用の考え方を、代表取締役 田村 慶様に伺いました。
「自分たちで試して、成果が出たものだけをお客様に提供する。『半歩先をてらす。』——それが私たちのドッグフーディングの思想です。」
—— 株式会社100 代表取締役 田村 慶様
会社概要 — アジア初のHubSpot Eliteパートナー

田村様 100は、HubSpotのパートナーとして、企業様のCRM活用をご支援してきた会社です。私自身はHubSpotに14年近く携わり、会社としても創業来8年にわたって向き合ってきました。古くからHubSpotを深く理解しているメンバーが多く、これまでにおよそ400社のご支援をさせていただいています。
私たちの強みは、マーケティング・営業・カスタマーサポート——今でいうGTM(Go-To-Market)の領域を、デジタルを用いてどう管理し、どんな施策を打つかまで一気通貫で見られることです。マーケティングのコンテンツをひとつ作るところから、サイト構築、システム開発、他システムとの連携まで、ワンストップで提供できる。これが私たちの特徴です。
その積み重ねの結果として、私たちはアジアで初めてHubSpot Eliteパートナーに認定されました。世界に7,000社を超えるパートナーがある中で、トップ100に入るティアを保有しています。導入社数だけでなく、お客様のサポート状況や継続率といった複合的な指標で決まるもので、HubSpot Best Partner in Japanも3年連続で受賞しています。
AI・データ活用の位置づけ — すべての起点は「データを整えること」

田村様 私たちの経営は、「HubSpot × AI × データ」という3つの軸で成り立っています。中でもすべての起点になるのが、データをいかに整えるかです。
AIの領域では、HubSpotにバンドルできるAIワークフローを自社で開発・提供したり、会社データの名寄せエンジンを作って提供したりしています。企業様のデータをクリーニングし、エンリッチする——つまり、汚れたデータをきれいにし、足りない情報を補う仕組みを、あらゆるビジネスの前提に置いています。
最近では、このデータの幅がさらに広がっています。構造化されたデータだけでなく、非構造のデータをいかにCRMに取り込むか。録音デバイスで会議の議事録を取り込んだり、展示会のようなオフラインで得たデータを取り込んだり。データそのものというより、そこから導き出せるコンテキストをいかにHubSpotに集約できるかに注力しています。
こうした取り組みの延長線上で、企業様の中にAIエージェントを構築する「100 Agent Works」というサービスを提供開始しました。基盤の選定から、どんなエージェントを作るかまでご一緒します。さらに、AI開発プラットフォーム「Lovable」の国内正式初パートナーにもなりました。私たちは、AIをひとつのツールにロックインするのではなく、その用途に合わせて最大化する——そういう考え方で取り組んでいます。
営業領域のAI設計思想 — 「自律実行」を活用と定義する

田村様 私たちの営業は、ほぼインバウンドです。アウトバウンドはほとんど行っていません。だからこそ、いただいたお問い合わせの一つひとつに、いかに質の高い提案で応えるかが勝負になります。
お問い合わせは、フォームでしっかりと情報量をいただく仕組みにしています。その情報をもとに、AIで企業分析とお客様の課題整理を行い、初回の打ち合わせに臨む前の提案書レベルまで作り込む。私たちに寄せられるご相談は「ちょっと相談したい」ではなく「これに困っている」という具体的なものが多いので、その課題に対してどうアプローチできるかを、事前に用意して打ち合わせに挑みます。打ち合わせ自体も音声でHubSpotに取り込まれ、その書き起こしからさらに深い提案をAIと人で導き出していく。この流れを作っています。
そのうえで私たちが徹底しているのが、AI活用の定義です。AIに聞いて、返ってきた答えを参考にする——それは「チャット」であって、まだ活用ではありません。私たちは「自律実行」こそを活用と定義しています。ルーティンのタスクをAIが自ら実行し、一人のスタッフのように動いてくれる。そこまでいって初めて活用だと考えています。
現場実装 — 「規制を緩めて、体験させ、締める」

田村様 AIやデータ活用を現場に定着させるうえで意識しているのは、「まず規制を緩めて、AIが自ら動く体験をしてもらい、その後でルールを締める」という順番です。この順番でしか、AIは組織に根づきません。
勉強会はもちろん開きます。社内ではGemini・ChatGPT・Claudeを発行し、Claude Codeの勉強会も開いて、全員がエージェンティックに仕事を進められるよう働きかけています。ただ、それだけでは「使う人は使うが、使わない人は全く使わない」で終わってしまう。そこで、まずはパーソナルエージェントを体験してもらうところから始めました。毎週手作業で出していたレポートが勝手に作られる、定期的なSlackメッセージをAIが勝手に送ってくれる——そういう「エージェントのいる世界観」を、まず全員に体験してもらったのです。
そのうえで今取り組んでいるのが、個人の仕事を担うエージェントから、チーム・会社で共通して使うエージェントへの発展です。最近ではClaudeをSlackに常駐させ、普段のコミュニケーションの場にAIがいる状態を作っています。人がAIを使う場所に出ていくのではなく、人が普段いる場所にAIがいる。組織としてAIを使ううえで、これは非常に大事な視点でした。
田村様 守りの面も、AIを前提とした組織であるために欠かせません。私たちはISO27001・9001に加え、AIを安全かつ倫理的に開発・運用するための世界初の国際規格「ISO42001(AIマネジメントシステム)」の取得に取り組んでいます。エージェントの権限設計も、「この人にどこまで権限を与えるか」と人になぞらえて考えるのが一番わかりやすい。役員レベルのエージェントなのか、一般スタッフレベルなのか——そう設計しています。攻めと守りの両輪で、AI活用を進めています。
SalesNowの位置づけ — インバウンドの判断を支える「顧客側のデータ」

田村様 インバウンドが大半の私たちにとって、SalesNowは営業判断の土台となる企業データインフラです。
お問い合わせをいただいた段階で、まずICPに合致しているかを見極める必要があります。その従業員規模・業種といった情報をエンリッチし、AIでICPの振り分けを行う。さらに、お問い合わせの内容——「サイトを作ってほしい」「HubSpotを構築してほしい」「他システムから移行したい」——はテーマによって最適な担当者が変わるので、その内容をAIで分析し、誰にルーティングするのが最適かを判断する。この一連の判断の土台に、SalesNowの企業データを使っています。
データは、判断だけでなく分析にも効いています。失注分析も受注分析も、SalesNowのデータの切り口で行っています。HubSpot内の取引・コンタクトにSalesNowのデータがエンリッチされてくるので、HubSpotのAI『Breeze』にも、Claudeにも、同じ整ったデータを参照させることができる。会社データの名寄せ・正規化は今なお私たちの研究テーマですが、その根っこを支えているのがSalesNowです。
組織変革後の成果 — 1人あたり顧客数 約1.5倍、そしてPLインパクトへ

田村様 AIを活用することで、1人あたりが対応できる顧客数は約1.5倍になりました。資料作成をはじめとする「作業」の工数をAIが引き受けてくれるので、その分、お客様との対話やプロジェクトそのものに時間を使えるようになる。打ち合わせも、以前は週に5本ほどだったのが、今は7〜8本こなせるようになっています。
田村様 成果は、案件数だけではありません。AI活用により、デザインやコーディングといった開発コストの削減が大きく進んでいます。これまで外注していた作業を自社で担えるようになり、外注コストの削減にもつながっています。これらはそのまま、PL(損益)へのインパクトとして表れています。もちろんトークン使用量やクレジットコストは予算を取って上げていますが、PLベースでAIの利用料と人件費・外注費を比較しながら、投資として最適化しています。
案件の「質」も変わってきました。CRM導入というメインストリームに加えて、AX(AIトランスフォーメーション)の案件が徐々に増えています。従来はお断りせざるを得なかったご相談も、AIを使ったサービス提供なら、より短い時間・より適正な価格でお引き受けできる。できることの幅そのものが広がっています。
田村様 SalesNowを導入して最も変わったのは、会社情報がきれいに整い、データを出すスピードが大きく上がったことです。どこを攻め、どこをやめるか——その意思決定とPDCAのスピードが格段に上がりました。これは経営だけの話ではありません。ウェビナー担当のような現場のメンバーまで、データを起点に動けるようになっています。
もともと私たちにはデータドリブンな文化がありました。その土台があったからこそ、AIの活用もスムーズに進んだ。データドリブンな体制の上に、AIを掛け合わせている——この順番が重要だったと感じています。
今後の展望 — 「AIネイティブ・エージェンシー」を先駆ける
田村様 これからの経営で重要なのは、SalesNowのデータも含めた構造化データと、議事録や展示会データのような非構造データを、いかにHubSpotに取り込み、そのコンテキストを活かすかです。その仕組みづくりと、社内のAI文化づくり。この2つを両輪で進めていきます。
そして、自社活用にとどまらず、お客様へのサービス提供として「AIネイティブ・エージェンシー」を先駆けたいと考えています。受託ビジネスでは、これまで10時間かかっていた仕事が、AIで30分でできるようになる。多くの会社はその差分を自社の利益にしますが、私たちは違う判断をしています。AIを使って「30分でできます」とお客様にお伝えし、その方法で実際にやる。その価値をお客様に還元していく。そうしなければ、AIを前提とした会社には絶対になれず、いずれ取り残されてしまうからです。
田村様 SalesNowには、SaaSのインターフェースからAgentic(AIエージェントによる自律実行)な活用へと、できることをどんどん増やしていってほしいと思っています。
たとえば、グループ系企業のデータベースをSalesNowで保有し、子会社の構造まできれいに管理できる状態。お客様は、まずその会社の構造を理解するところで苦労されています。ここがMCPやAgenticにできると、非常に価値が高い。そして最終的には、企業データがCRMに最初からバンドルされているのが当たり前になる。SalesNowには、その中核を担ってほしいと期待しています。
AIのアウトプットの質は、プロンプトとデータソースで決まります。プロンプトは各メンバーが磨けますが、データソースには限界がある。そこにSalesNowのような整った企業データがつながることで、私たちの、そしてお客様のAI活用の質そのものが引き上がっていく。これからも、企業データインフラとしての進化を楽しみにしています。